読んだ:『応答、しつづけよ。』 (original) (raw)

ティム・インゴルドのエッセイを読み終えた。

読みながら、いくつかの章は、『オラファー・エリアソン展』のアートと解説を読んでいるみたいだったなぁ、と思った。オラファー・エリアソンにも風に吹きつけて描いた絵があったり、石をつくって空中に浮かんでいるオブジェがあったりするのだけど、普段の世界を取り巻くものたち(線、手紙、森、火、石、桟橋など)を言葉にして、そのものの歴史や広がっていく意味について書いてあるエッセイだったので、これまで読んできた「エッセイ」とは全然違うタイプのエッセイだなと思った。

私は、「北カレリアのあるところで……」と「幸運の諸元素」が好きです。

インゴルドの文体が独特なのか、文体それひとつとってみても、言葉の運びとして面白かった。村上春樹の文章を読んでいるみたいに、何かちょっと慣れなさを感じるのだけど、一つには展開している世界が『オラファー』のように、人工物と自然とアートというところからスタートしているから、身近にあったものについての目線の広がり方が珍しかったからかもしれない。

今、ここにフィンランド製のマグカップマリメッコとアラビア)があるのだけど、こういう、北欧デザインの美しさのようなものが文体から出ている。

書いていて行き詰ったりしたときに、こういう物に触れることはよいことなのかもしれない。

インゴルドがフィンランドに住んでいることから、私も北海道にいる間に、自然というものをよく観察しておきたいと思うようになった。人が行ってもいい森や、キャンプをしたりすることで、また動物たちと触れ合ってみることで、これまでに自分が出会わなかった新しい概念・言葉たちと出会えるかもしれないという可能性を見つけた。

函館行の車窓で読んだり、家で読んだりしたのだけれど、旅の途中に読むのにちょうどいい本なのかな、とも思った。