北タイの露天風呂(6) (original) (raw)

ココア バレー

部屋の中、天井が高かった。

テラスの露天風呂、板に腰かけて休む

カフェのチョコレート菓子

カカオの実

木になっているカカオ

北タイの露天風呂(6)

■水浴の習慣がない国も

人間、何でも自分の経験を基準に考える。自分は時間を守るし、日本ではみな守ったからタイでも人は時間を守るはず。朝から豪雨であれば1日中雨かと思いこんでしまう。異国において思い込みは禁物だ。国によってTPO も違ってくる。チェンライでは高級レストランに行くときでも短パン、Tシャツ、サンダルでも構わない。日本のレストランに同じ格好で行ったならば、待ち合わせた友人に「お前、なんだよ、その格好は」と言われ、友人は元友人になってしまう。

風呂も首まで熱い湯に浸かって、石鹸で体を洗って、再度湯に浸かってリラックス、は日本特有な風習である。アメリカでは風呂に入る習慣は無くてもシャワーは頻繁に浴びるようだ。でも欧州となるとシャワーを浴びるのは週に一回程度だという。乾燥しているし、上下水道のインフラが弱く、湯量も少ない。日本の団体客が泊まるホテルでは、客がホテルに戻ると一斉にシャワーを浴びるので、10分もしないうちに温水が出なくなると聞いた。

1週間ほど遊牧地域のゲルに宿泊し、乗馬、緑の草原、広大な星空を楽しむモンゴルツアーが人気だという。ゲルにはシャワーはない。数日シャワーを浴びなくても人は死なない。でもどうしても、という人は街のシャワー施設に連れて行ってもらうそうだ。

ウズベキスタンも乾燥気候だから、基本的にシャワーを浴びる習慣がない。通訳のベク君の実家、サマルカンドに数日滞在したことがある。「先生、お疲れでしょう、ここが浴室ですから汗を流してください」などと言う配慮は全くなかった。到着して2,3日も経つのに風呂どころかシャワーも勧めない。結局、一族郎党とサマルカンドを流れるザラフシャン川の遠足にいった時に川に飛び込んで体や頭をゴシゴシ洗ったものだ。

■シャワーは日課

タイ人は1日に何度も水を浴びる。起きたらまずシャワー、タイ語の先生に「ええっ、起きてからシャワー浴びないの」と路上生活者を見るような目で言われたことがある。

高温多湿の昨今では日本でもとりあえずシャワーが必要ではないか。女高生の朝シャンを贅沢だ、などと非難がましく眺めていたことがあるが、今では朝シャワーが普通になってしまった。郷に入りては郷に従え、だ。

今は雨季であるから、買い物に出たり、ちょっと散歩をすれば汗だくになり、体がベタベタしてくる。家に戻ったらシャツを脱いでシャワー、タオルで体を拭くころには部屋の冷房が効き始めている。シャワーの間にブアさんがマンゴーの皿とフォークを机の上に置いてある。子供の頃は家にクーラーなんかなかった。あの頃に比べれば今は王侯の暮らしだ。あー、長生きはするものだ、と少し幸せな気分になってしまう。

■カカオの生るホテル

ナーンの古刹ワット・プーミンに近いGood Dayというホテルにはテラスに大きなバスが置かれていた。眺望は楽しめないが空間的には半露天風呂の開放感を楽しんだ。ナーンのあとのボークルアでは塩の買い出しは出来たけれど、肝心の露天風呂ホテルは休館。でも代わりに泊まったボークルアの日光金谷ホテル、ボークルア・ビュー・リゾートは、露天風呂はなかったものの従業員の気配りを随所に感じるいいホテルだった。

ボークルアから約50キロ、一山越えたところにプアがある。同じナーン県内であるがボークルアとプアには別の王国が栄えていたらしい。ナーン県とラオスは国境を接しており、ナーン県のフゥアイコ-ンのイミグレから何度かラオスに行ったことがある。フゥアイコ-ンの手前の街がプアだ。いくつかの主要道路が交わる宿場町で何度も泊まっている。

プアではCocoa Valleyというチョコレート工場敷設のホテルに泊まった。カカオが茂る山の斜面に建てられた山小屋風の部屋がお薦めという。

チョコレートの原料カカオ豆生産量の世界一はコートジボワールで、世界シェアは39.0%(2019年)、2位のガーナ、3位のインドネシアと合わせて全世界の約7割を生産する。タイは10位以内も入っていないが、北タイのプアでカカオ豆からチョコレートを生産しているとは知らなかった。ウェルカムドリンクにも朝食にも各種のチョコレートがついてきた。ホテルの庭で生まれて初めて木になっているカカオ豆を見た。このカカオ豆は発酵、乾燥、焙煎、粉砕と様々な工程を経てチョコレートになる。頼めばチョコレート工場を見学させてくれるし、カカオ畑を見下ろすカフェレストランでは何十種類ものチョコレートが楽しめる。

チョコレート風呂ではなかったが、山の斜面にせりだした広いテラスに置かれた半露天の大型バスで充分に旅の湯気分を味わうことができた。