パブリック・ディプロマシー日本外交に望むこと (original) (raw)
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以前のブログからこのブログに移行する際、テーマを3つに分けた。
- ひとつは衣食住に関すること、
- ふたつ目は不動産、
- そしてパブリックディプロマシー。
パブリックディプロマシーとは? 国の外交=ディプロマシーに関係する人は、皇室、首脳、閣僚、高官、外交官等の政府関係者に限らない。一般の人、パブリックが担うディプロマシー=外交をパブリックディプロマシー(以下PD)と呼ぶ。メディアもPBの担い手のひとつである。忘れてもらっては困る。
福島原発事故の処理水放出で、中国人がSNSで日本を批判したり、日本の官公庁に嫌がらせ電話をかけてきたりしているが、これはPDではない。中国共産党政権が日本けしからん、と公式外交レベルで非難し、日本産の水産物の全面禁輸をしているので、この事態を忖度して日本を叩けばいいんだな、と感じた中国人民=パブリックと称する人々による官製PBだ。中国政府、共産党の鶴の一声で収まるものは真のPDではない。
人々、パブリックには企業も含まれる。その観点からは、個人としてのジャニー喜多川、会社組織としてのジャニーズ事務所、そして沈黙、隠ぺいしてきた日本のマスメディアの犯した罪は、日本のPBにとり致命的だ。
当局が行う「外交」について、メディアや世論=パブリックは失敗したとか、成果を上げたとか評価する。例えば、中国の日本の水産物全面禁輸を想定できず、「処理水」を「汚染水」と口を滑らせた農林水産大臣による「外交大失態」のように。
ジャニー喜多川と大手メディアは、日本のパブリックディプロマシーをずたずたにした
大手メディアはその隠ぺいに加担してきたが、仮にハーヴェイ・ワインスタインによる性加害を報道したニューヨーク・タイムズのようなメディアがひとつでもあれば、ジャニーが日本に与えた打撃をある程度和らげることができたはずだ。ジャニーが亡くなる前に、そんなメディアがひとつでも登場すれば、被害者の数も減っていたことだろう。
ジャニー喜多川の性加害事件では、ジャニーとジャニーズ事務所とその共犯者マスメディアは、PBにおいて大失態を演じた。上沼恵美子がいみじくも言っている。
「恥さらしやねん。日本の芸能界の恥さらしになったと思いますねん。下の下の下のオッサンやねん。」「死んでる場合ちゃうねん。生き返って謝れ!」
日本のマスメディアも世界に恥をさらした。反省ポーズだけとったフリしたら済むと思うな!
「週刊文春」では、世論の大きなうねりにつながらなかったわけとは
大手マスコミが立派だとは言わないが、週刊文春も普段からずいぶんいい加減な記事を書いている。得意分野は「文春砲」と言われる有名人の不倫暴露。それから嫉妬にかられた人物が相手を引きずり降ろそうとするタレコミネタ。こんな記事ばかりを売りにしてきたから、ジャニー喜多川の性加害のような由々しき犯罪も同列に扱われたのではないか?所詮は芸能人の下ネタ、嫉み、妬み、恨みに狂ったヤツのタレこみ…
事実に反することを書いて訴えられても逃げられるようにスレスレの記事を掲載し、抗議して自殺した人もいるという。ジャニーズ事務所のようなお金も力もあり、有能な弁護士を雇える相手を記事にする場合は、相当気を付けるのだろうが、そんな力のない一般人相手なら意図的に虚実相半ば(いや、9対1くらいか)する内容にし、虚の方を印象付ける見出しや記事にするのは常套手段。私は文芸春秋社の出版物は絶対に買わない。
週刊文春は、被害少年の「人権」を正面に押し出していたのか?被害少年の人権侵害を救済すべきだという思いからキャンペーン記事を連載したのか?ジャニーの変態ぶりを世間に晒すことに主眼があったのではないのか? 大体、文春に当時も今も「人権意識」などあるのか?
K- POPもJ-POPもPBの担い手
ジャニーズのタレントは、アジア地域でも人気があるという。韓国のK-POPのようにアジアだけでなくよりグローバルに活躍しているグループはいないようだが、彼らはエンターテイナーとして日本のPBにおおいに貢献してきたことは間違いない。が、その積み上げられた日本への好感度につながる財産は、創業者である元社長の犯罪により壊滅的打撃を受け、帳消しどころか、マイナスになった。負の遺産をゼロのレベルにするだけでも長い年月を要する。
TBSを始めとするテレビ局は、タレントに罪はない、と言ってこれまで通りジャニタレを使い続ける、と早々と表明している。他方で、東京海上日動火災やJALはジャニタレをCMに使うことは控えるとか、契約は更新しない方針とか伝えられている。グローバルにビジネスを展開する企業であればあるほど、自社のみならず、取引相手企業の人権状況にも配慮せざるを得ない。そういう意味でK-POPのスターを育てた韓国の事務所の方が、「ビジネスと人権」に敏感なのかもしれない。
NHKを含めた日本国内のテレビ局は、国内の1億2千万人の結構大きなマーケットだけを相手にしているから、日本語で身内の論理だけで動いてしまう。人口が日本の半分以下の韓国の国内市場は同様に半分の規模だから、世界の視聴者を相手にするのだろう。もっとも、韓国ではタレントの自殺が相次いで報道されたこともあり、彼の地のエンタメ業界も高い倫理感に立っていると単純に信じることはできない。
企業もその広告塔もPBの担い手
CMにジャニタレを起用することを見合わせる、としている企業にとっても、「ビジネスと人権」を監視する「外の目」の方が怖い。中国の官製不買運動は科学的根拠がないと反論できる。が、子ども相手に男色欲を抑えられなかった「変態じいさん」が作った会社と取引しているビール会社、航空会社、損保会社というレッテルを貼られれば、企業イメージに対する損失は大きい。
多数の少年に対し性加害を繰り返した、多数のカトリック聖職者はカトリックに対するイメージをぶっ壊した。が、加害行為が報じられた欧米諸国のカトリック教会は、マスメディアと取引関係にあったわけではない。「ビジネスと人権」という概念が確立する前の犯罪であるが、被害少年たちはスターになるために教会に通ったわけではなく(懺悔に行ったら、神父にわいせつ行為をされた、というのもおぞましい話だが)、あちこちに散らばる教会がひとつの組織として少年を集め、これら諸国のテレビ局と取引関係にあったわけではない。
日本のマスメディア(テレビ局、新聞社、雑誌社等)は、被害少年たちが所属し、未来のタレントとして育成されることになっていたひとつの事務所と取引関係にあったのである。
低いランキングの日本の報道の自由度もPBにとってマイナス
また、2023年の日本の報道の自由度ランキングは世界68位。世界各国の報道機関の独立性や透明性についてスコア化し、順位をつけたものである。いわゆる先進国と言われるOECD加盟国は38か国なので、このランキングによれば、先進国でなくとも、日本より報道の自由度の高い国が多数ある、ということになる。報道の独立性は、主に政府との関係において論じられるものだが、ひとつの芸能事務所との関係において、「忖度」「触れてはいけない問題」「噂には聞いていたけど、追求しなかった」という「独立性」とは程遠い情けない状態にあったのである。
この報道の自由度も、PBの構成要素である。日本のPBに与えたダメージに加担したマスメディアの罪は非常に重い。
9月7日のジャニーズ事務所の記者会見には、忖度してジャニー喜多川の悪行に触れてこなかった大きなメディアだけに限らず、フリーのジャーナリストや外国人記者も出席していた。
日本政府の記者会見では、官邸記者クラブや各省庁所属のクラブが仕切る。記者クラブの幹事社が政府と協力してお膳立てをする。かつては外国人記者や日本人でもフリージャーナリストは、役所の記者会見には参加できなかった。
鈴木エイトさん登場
ジャニーズ事務所の記者会見では、山上徹也による安倍元総理暗殺の前から、ずっと統一教会を追い続けて来た鈴木エイト氏も質問していた。地道に調査報道を重ねるフリージャーナリストがいるのだ。
そういえば、ビッグモーターの不祥事で、加藤久美子さんという自動車ジャーナリストもテレビで見かけることが多くなった。大手メディアに勤務する、地位が保証された記者と異なり、取材費もまずは自分で捻出しなければならないし、相手から信頼を得ないと取材もさせてもらえない。努力されてきたのだろう。
望月以塑子記者の声を初めて聞いて
安倍総理の官房長官だった菅さんに徹底的に嫌われていた東京新聞の望月以塑子記者の声を初めてこの記者会見中継で聞いた。甲高い声で猛烈なスピードでまくしたてていた。
東山紀之新社長の若いころのセクハラ、パワハラ疑惑についての質問は、耳を覆いたくなるような内容だった。
確か、記者会見の数日前に行われた性加害被害者の当事者の会の記者会見では、望月記者は「これから対話により問題解決、補償にもっていきたい、と言いながら国内での提訴や海外での訴訟をちらつかせるのはいかがなものか?」という趣旨の質問をしており、結構被害者に対しても、耳の痛い質問をするのだな、と感心していた。もっとも、被害者をけしかけるような発言もしていたらしく、70代の被害者である著名な作曲家服部公一さんの息子さんの奥さんにたしなめられるシーンもあったそうだ。
木花の回答に終始する菅官房長官に果敢に挑んでいる記者という私の中の比較的ポジティブなイメージは、9月7日のヒステリックなまくしたて質問を聞いて、「そら官邸からつまみ出されるわな」と思ってしまった。
日大の記者会見よりマシ
会見を仕切る女性のモタツキとお行儀の悪い記者も多いことが露呈した記者会見だったが、4時間余りの間、質疑応答に辛抱強く対応していたのは、謝罪会見だから当然とはいえ、そうしない組織もあるのだから一応それなりに評価できる。
日大のアメフト部の悪質タックル問題の時は、元大手メディア記者出身の人が大学の広報担当で、強引に記者会見を仕切り、短時間で切り上げて反発を招いたのとは対照的であった。
ジャニーズ事務所にとり、今回の記者会見はそれほど難敵ではなかったはず
マシとはいうものの、事務所にしてみれば、死んだ人を鞭打てば済むし、その死者とともに犯罪を隠蔽してきたマスメディア相手なんだから、ちっとも怖くはない記者会見だったに違いない。
氏
最悪の人物はもう鬼籍に入っている。ジュリー前社長にとっては親ではなく叔父。ちょっと遠い。隠ぺい工作、圧力を行使して来たメリーは実の母親だから、辛かっただろう。が、それでも物故者。東山新社長にすればジャニーは恩人だろうが、所詮「他人」と割り切ることもできる。
厳しく追及されることを覚悟で記者を選別せず、門戸を広く開け、どんな嫌な質問も受けいれることができたのは、(もう死んじゃった)「あの人」の「鬼畜の所業」と言えばすむし、相手にする記者たちも、どんなに偉そうに質問しようが、長らく隠ぺいに加担してきた共犯者。
カウアン・オカモト氏の告白を引き出したガーシーの功績には、マスメディアはまた沈黙
ジャニーズ事務所に関する情報をフォローする中で、ガーシー前議員も登場してきた。暴露系ユーチューバーだそうで、国会議員になったものの一度も国会に出席しないまま、ドバイから帰国して逮捕された人だ。本名は東ナントカさんらしい。今年の春に外国特派員協会で顔出し記者会見をしたカウアン・オカモト氏がガーシーのユーチューブ動画に登場して初めて被害を告白したという。それが、昨年秋。BBCのドキュメンタリー番組放映に先立つこと半年前。
ガーシー氏も歴史的犯罪事件を広く世間に知らせることに一役買ったのだ!
米国の大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性加害事件を報道したニューヨーク・タイムズと同じくらいの功績か?
報道はどのみち知られていないことを広く公開するという意味では「暴露」である。
BBCという「外圧」が、半世紀以上にわたる性犯罪の隠ぺいの扉をこじ開けた、と一般に報じられている。日本はやはり「外圧」がないと変われない国なのだ、と言わんばかりに。
今頃になって何人かのメディア関係者が反省の弁を述べている。
「週刊文春」は2000年前後に数週間にわたるジャニー喜多川の犯罪を記事にし、名誉棄損で事務所から訴えられたが、最終的には勝訴したと威張っている。もちろん他のメディアよりましだが、勝訴後は沈黙に近いようだ。ジャニー喜多川の葬式の時は、どんな記事を書いたのだろう。
ガーシーよりガイアツ効果の方が座りがいい
「週刊文春」の前には、フォーリーブスの北公次による暴露本もあった。「なぜその時、もっと大々的に取り上げなかったのか」と振り返る記事を読んだが、この本の出版社や背後にいる人物も今のガーシー氏同様、当時はキワモノ扱いされていたらしい。
「NHKから国民を守る党」から出馬して、すったもんだの末逮捕された暴露系ユーチューバーより、BBCにお手柄を差し上げる方が座りがいい。天下の英国公共放送BBCの方が、日本の公共放送NHKに牙をむくN党の変なオッサン=キワモノより説得力、権威があるということだろう。
能年玲奈はいまだに本名で活動できない
ひろゆき氏は、既に表に引っ張りだされたジャニーズ事務所を後出しジャンケンで叩くよりも、現在進行形で本名の能年玲奈で活動することを阻害している事務所を叩け、と言っている。2ちゃんねる創設者、というのもキワモノ扱いかも知れないが、間違ったことも言うが、時々いいことを言う人でもある。
例えガイアツや「外の目」でも、事態が動く方が良いけど
CMにジャニタレを起用することを見合わせる、としている企業にとっても、「ビジネスと人権」を監視する「外の目」の方が怖い。経済的損失の度合いはともかく、中国の官製不買運動は科学的根拠がないと反論できる。が、子ども相手に男色欲を抑えられなかった「変態じいさん」が作った会社と取引しているビール会社、航空会社、損保会社というレッテルを貼られる方が、企業イメージに対する損失は大きい。
キワモノの言うことにも耳を傾けるオープンさもメディアリテラシー
やっぱりガーシーよりガイアツ。
が、キワモノ情報が真実だった例はいくらでもある。
タブロイド紙やスポーツ紙は、早くからサリン事件はオウム真理教の犯罪だと報じていたという。一方、彼らの行き過ぎた報道が、冤罪を後押ししたこともあるらしい。
でも時にはキワモノの言うことにも耳を傾けるオープンさこそ、メディアリテラシー向上につながる、と私は思う。官製報道だけを信じているのでは中国と変わらない。
(2023年9月9日記)
「外部専門家による再発防止特別チーム」報告書
2023年8月29日、ジャニー喜多川による性加害に関する「外部専門家による再発防止特別チーム」による記者会見が行われた。予想以上に踏み込んだ内容だった。
7月4日の国連人権理事会*「ビジネスと人権」作業部会の専門家による記者会見に続くものだ。60年にもわたり、広範に、おそらく数百名に及ぶ少年たちに対する性犯罪は、もう「なかったこと」にはできない。
*各国の企業活動による人権侵害を調査し、対処を促すことを目的とする
特別チームは「マスメディアの沈黙」が犯罪に加担したことに言及している。NHKと民放がほぼ横並びのコメントを出した。が、具体的にこれからジャニーズ事務所との関係、事務所所属のタレントとの関係をどうするのかは不明。TBSは今後もジャニーズタレントを使い続ける、と表明している。
- 長年子どもに対する人権侵害を続け、それを隠蔽してきた事務所は、これからも所属タレントを提供し、テレビ局とのビジネス(取引)で収入を得ていくのだろうか?
- スポンサーは、ジャニーズタレントが出演するテレビ局の番組を支援し続けるのだろうか?
- 企業はジャニーズタレントを自社のCMに使い続けるのだろうか?
米映画「She Said―その名を暴け」
報道しない、という不作為により、日本のメディアは間接的にしろ性犯罪を隠ぺいしてきたことが糾弾される中、アマゾンプライムで2022年11月公開の米映画「She Said―その名を暴け」を見た。
「#Me Tooに火をつけたジャーナリストたちの戦い」という説明が付いた映画だ。
2017年からニューヨーク・タイムズが、ハーヴェイ・ワインスタインという米国の大物映画プロデューサーによる女性たちへの性加害の取材を開始し、圧力に屈せず報道に踏み切る過程を描いた映画だ。「#Me Too 私も被害に遭った」という世界的な告発運動につながった。
外務省の外国プレス担当の国際報道課長職にあった時も、それ以降もニューヨーク・タイムズは日本社会の歪んだ側面ばかりをこれでもか、と強調し、あたかも米国は聖人君子の国であるかのような立場で報道するので好きな新聞ではない。それでも、ジャニー喜多川のおぞましい犯罪を正面から取り上げたのが日本では「週刊文春」だけで、他の(ニューヨーク・タイムズのような)大手メディアは見て見ぬふりをしてきたという「不自然」さは、まさに日本社会の歪んだ側面だ。
ハーヴェイ・ワインスタインとジャニー喜多川の犯罪比較
似ている部分とそうでない部分がある。
共通点は、
- 何十年にもわたり、
- 強い立場を利用して弱い立場の者に対し、
- 性加害を繰り返し、
- 表明化しそうになると様々な隠ぺい工作に走った点。
ワインスタインは「示談」で「口外しない」という約束を取り付け、取材をするメディアに対しては嫌がらせをした。同様に、ジャニー喜多川と姉メリー喜多川は、性犯罪を隠ぺいするため、メディア、テレビ局に対してだけでなく、被害少年にも口外できないよう脅したのだろう。事務所退所をせまる、デビューできない、デビューしてもセンター位置にはつけない等々の不利益をちらつかせる。その一方で、言うことを聞いてればいいことがあるよ、と思わせる。
どんな組織でも、こうして立場の弱い部下をてなずける風潮はあるだろう。性加害も出世も取引の手段。政権への忖度を促すのもその一形態。
異なる点は、
ワインスタインは存命中で、収監されており、性暴力の対象は成人を含む異性の女性で合ったのに対し、
ジャニー喜多川は物故者で、その性犯罪の被害者は同性の少年たち、「子ども」ばかりだったこと。
日本では、令和5年(2023年)6月16日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)が成立し、7月13日から施行されることになった。結果、性交同意年齢**が、13歳未満から16歳未満に引き上げられたようだ。改正前と比べ、より厳しく罰せられることになる「子ども」の対象が広くなった。
**性交がどのような行為か理解し、性交をするかどうか自分で判断できるとみなされる年齢
ジャニー喜多川生存中の犯罪は改正前で、13歳以上の少年も中にはいただろう。が、特別チームは被害者に「立証責任」を要求しないし、犯罪の「時効」も認めないとしている。この考え方に沿えば、被害に遭った時に13歳以上であったから、性交とはどのような行為か判断できたはず、なんてことも問わないだろう。犯罪の悪質さを考えれば当然だ。子どもに対する性犯罪には時効をなくせ、という声もある。
成人女性が相手だったからと言って、ワインスタインの性加害の方がましだ、と言うことではない。ばあさんになっていても、卑猥な言葉を投げかけられただけで本当に嫌なものだ。が、子どもに対する犯罪はあまりに卑劣だ。隠ぺいされていた欧米のカトリックの神父たちの犯罪と同様に実におぞましい。
ジャニーズ事務所、ジャニタレの今後
では、これからジャニーズ事務所、特に事務所のタレント(以下ジャニタレ)はどうなっていくのだろう。
ある弁護士は「ジャニーズ」という名称を外した事務所とジャニーズ事務所のふたつに分け、それぞれ別の役割を担うことを提案している。
前者は、経営陣も刷新し、所属タレントの人権を守りつつ、テレビ局等と取引する。
後者は、ジャニーが犯した犯罪の謝罪と賠償に徹し、その責務終了後消滅する。
なるほど。
所属タレントに罪はない、という人がいる。
が、既に功成り名を遂げた年配のジャニーズタレント(東山紀之、櫻井翔、井ノ原快彦等)はどうなのか?退所して別の事務所を立ち上げた滝沢秀明をジャニー喜多川の犯罪との関係でどう評価すべきなのか。
消費者である私にできることは何か。
テレビ番組視聴
ジャニタレが出演している番組は見ない、なんて大人気ないかもしれない。が、これまで大して面白くもない番組に漫然とチャンネルを合わせていたのが、この人もジャニタレか、と思ってチャンネルを変えるきっかけにはなる。まさに今日日曜の午前11時半からのテレビ東京「男子ごはん」なんかは即その対象になった。
大体この番組のレシピを試してみて美味しいことは一度もなかった。国分太一もアイドルと言うには肌のくすんだひげ面の中年男だし、あの栗原はるみの息子だという、レシピを披露する栗原なんたらは手が汚い。もこみちの長い指で包丁を握るとそれだけで美味しく感じたものだ。もう終了したあのMoco's Kitchenの料理も美味しかったことは一度もなかったけど。
どうでもいい番組をみなくなるきっかけになる。
消耗品や食品の購入
ジャニーズのタレントをCMに起用するスポンサーが提供する商品やサービスは購入しない。例えば、木村拓哉のマクドナルド。
断捨離に努め、できるだけモノを買わずに済まそうと考えている年金生活者には、それほど苦痛ではない。時々マックのホットアップルパイを食べたくなるが、これからは我慢する。今思えば、TOKIOが福島の物品を応援してきたことは国策支援だったのかもしれないが、ジャニタレが応援しようとしまいと、自分は毎年意識的に福島の桃を美味しく食べてきた。今年も、これからも。
夏も終わりだが、虫刺されの「ムヒ」のCMは、相葉雅紀から中川大志に代わった。若返ったし、イケメン度73点くらいの相葉君より、98点の大志君の方がいい。ジャニーズオタクでもない限り、消費者なんてそんなもの。いずれにしろ、消費の主たる対象がわずかな消耗品である自分の影響力などほとんどない。
耐久消費財、家、不動産に関わる消費
木村拓哉は日産自動車のCMに出ているが、当面自分は車を買うことはないだろう。今後自動運転車が広く日本の公道で使えるようになった時、ジャニタレをCMに起用しているメーカーの自動運転車は買わない。ジャニーズ事務所が名称も変え、被害者救済に全力で取り組み、解体的出直しをしない限りは。
その他にお金を投じる可能性があるのは家や庭のリフォームになる。ジャニタレが宣伝しているリフォーム会社があったとしたら使わない。企業活動は取引相手の人権尊重姿勢にも配慮しなければならないのだから。そして、リフォーム契約当事者である私は、企業からみればどんなに少額でも契約相手が提案する製品、部品を提供する企業のその先の人権意識を問うて行こう。考えうるメーカーは、リンナイ、パロマ、LIXIL、TOTO、 YKK、東京ガス、大阪ガス、Harman等々。輸入品なら独グロエ、米Kohlerの水回り製品。エンタメ業界のジャニーズ事務所に限らず、異なる業界のメーカーも製品製造過程で人権を尊重しているか、しっかり見て行かないと。
かつて、スニーカーのNIKEが、まともな労働環境ではない途上国の生産現場で製造した靴を世界中で売りまくっていたことが糾弾された。靴を履けない労働者が靴を作っている!として。国連人権理事会の「ビジネスと人権」というテーマはこのあたりが発端となったのだろう。
消費者も自分の手に取る製品、サービスのその先にある現場の人権状況に心を配るべきなのだ。爆安日本の250円の持ち帰り弁当なんて買う前に、どれだけ調理現場で、また食材提供の現場で高齢労働者、外国人労働者が搾取されているか、想像力を働かせないと。
なぜ、メディアは沈黙してきたのか?
ここまでは消費の当事者としての心構えだが、以下はもっと深い日本の闇に関わるかも知れない。
ニュース、情報番組へのジャニタレの進出
東山紀之、中居正広、桜井翔がキャスターを務めるニュース番組は見ない、なんてのは私にとっては簡単だ。ほとんど見てこなかったのだから。別にジャニタレにウクライナ情勢やコロナ問題、少子高齢化対策を扱う番組を仕切って欲しいと思わない。日本の政局や中国、ロシアのことが気になれば、BSの報道番組でその分野の専門家が延々と解説している。同意するかどうかは別として。
安倍政権とジャニーズ事務所
ここで由々しい事態と振り返るのは、安倍政権とジャニーズ事務所の緊密な関係だ。
安倍さんが暗殺された後、多くの地方議会議員選挙で、自民党を中心に立候補者が統一教会の選挙協力に頼っていたことが報じられた。全国津々浦々に統一教会に好意的な政治家を送る計画だったのだろう。地方議員から国会議員へと統一教会の影響力は浸透していく。ジャニーズ事務所もNHKや民放各局に所属タレントを送り込み、報道のコンテンツにまで影響力を及ぼし、がんじがらめにしてきた手法はよく似ている。テレビ局も喜んで巻き込まれてきたのだろう。視聴率を上げるのだ!という号令の下に。
「マスメディアの沈黙」が特別チームの報告書のキーワードのひとつだが、メディアを黙らせた背景には、安倍政権の影も見え隠れする。東山紀之以外にも国分太一や中丸雄一らが報道やワイドショーに出演してきた。「日刊ゲンダイ」ネットによると、ジャニタレが報道番組のMCに登用されはじめたのも安倍政権時代と符号するそうだ。
今年話題になった、岸田翔太郎とその親族が組閣もどきや寝そべり写真を撮影した官邸の赤じゅうたん階段で、安倍総理とTOKIOの4人が談笑している写真が、2018年の官邸ホームページに掲載された。
福島県産の物品をプロモートしてくれるTOKIOは、東京オリンピック誘致の際に福島は安全、原発事故による放射能汚染の心配はない、と見えを切った安倍さんにすればありがたい存在だったのだろう。TOKIOとバックのジャニーズ事務所は日本の国策に加担してくれていた。事務所社長の性加害を表に出すなんてとんでもない。
2019年のジャニー喜多川のお別れの会に、現役の総理(当時)として弔電を送り、各種情報源を通じ当然性犯罪者と認識していた人物を称えている。2021年には、日本人を搾取、家族崩壊を招いてきた統一教会の韓鶴子に「敬意を表します」と称えるメッセージを送り、山上徹也を手作り銃の製造へと駆り立てた。なんとも罪作りな政治家だ。
安倍元総理が亡くなって1年もたたない2023年春から、BBCのドキュメンタリー、外国特派員協会でカウアン・オカモト氏らの顔出し会見、そして国連人権理事会の調査団へと立て続けにジャニー喜多川の犯罪が公表されていった。
1989年に昭和天皇が亡くなり、天皇の戦争責任や歴史認識問題が韓国や中国から提起されるようになった。その動きを現役の外交官としてみてきた自分は、昭和天皇という重しが取れ、タブーだったことが噴出し始めたのだ、と思った。
(大日本帝国憲法下で天皇には直接の戦争責任はない、というのが公式見解であったが、戦争を終わらせることをできた天皇が、戦争を始めることはできなかったと主張するのは矛盾している、という反論を突き付けられた。)
同様に、安倍さんという重しがとれ(タガが外れ)、フタをされてきたジャニー喜多川の何十年にもわたる性犯罪についての情報が噴出し始めた、というのはうがった見方過ぎるだろうか?
ジャニー喜多川自身が亡くなったから、隠ぺいに腐心していたメリー喜多川が亡くなったから情報が流れだした、という面はあるかも知れない。が、被害者が数百人もいれば、これまでもどこかから加害情報は漏れていた。それをマスメディアが伝えなかったのは、ジャニーズタレントの人気にあやかって安倍晋三が自身の政権の好感度を高めようとしていることを、政権に近い大手メディアの幹部が認識していたからだと思う。
(2023年9月3日記)
ここ数日、自民党女性局議員が、フランス研修中にSNSにアップした写真が話題になっている。
女性局局長の松川るい議員は外務省出身。全く面識はないが、記憶に残る名前だし、確かこの方が外務省を退官した際、私を含む女性省員のメールリストに載っている人宛てに退官挨拶を送付してきたことを覚えている。安倍チルドレンで立候補する前のご挨拶だったのだろう。
その後、テレビの政治討論番組で弁舌さわやかに安全保障について語り、フォトジェニックな容姿や上品なファッションで頑張っているのだな、と思っていた。そこへ、このニュース。
エッフェル塔を背景に、両手を塔の形のように上げて、はい、ポーズ。「遠足」「修学旅行」と批判されている。これはアウトだな、と思っていたら、もっと決定的なダメージニュースが飛び込んできた。次女を同伴し、松川議員がフランスの関係者との会合に参加していた間、大使館員が次女のお世話をしていたという。
アカン!
大使館員にとって外遊の国会議員のお世話とは
大使館員にとって、夏の国会議員の外遊、海外視察は、一大行事だ。役人が予算や法案を通してもらうには、多くの議員に面識がある方がいい。政治、民主主義は数なのだ。
大使館には外務省出身者だけではなく、色々な省庁からの出向者がいる。親元に戻った時に、自分の省庁の法案、予算その他で「国権の最高機関」を構成する国会議員の理解と支持をえることは必須。議員に密着し、名前と顔を覚えてもらう。
入省して3年目の夏、留学先の大学のあるフランスの地方都市からパリに呼び寄せられ、先生方の「観光」のお世話をした。大使館の幹部は、国会議員のお世話がなぜ大事かという説明などしてくれない。予算、法案等の議会対策は自分で納得させた理由だ。
国会議員の、「ここからあそこまでのグッチのネクタイを全部買う」という消費行動のお手伝いが、自身の仕事とどういう関係があるのか、何とか自分なりの答えを出さないとやってられない。まだまだアジア人、日本人蔑視濃厚だった時代、散財してくれる上客に対する、失礼で横柄な店員の態度にも我慢しなければならなかった。
配偶者(大抵は夫が議員だから夫人)同伴のケースは、なにかと気を使う。選挙区を預かる夫人に夫の頭が全く上がらないケースが多い。当時の社会党幹部議員の夫人は、「私はパリに来るときはいつもエールフランス」と誇らしげに言っていた。多くの先進国では、閣僚、議員、政府職員はナショナル・フラッグ、すなわち自国の航空会社を使うことが義務であった。税金を使っての出張だから。当時外国に飛行機を飛ばしていた日本の航空会社はJALのみ。なにがエールフランスだ、社会党幹部の旦那は夫人の航空会社選択にひとことも口出しできなかったのだろう。
当時も、エッフェル塔、ルーブル美術館、夜のセーヌ川遊覧船バトームーシュ、昼食、夜食ともミシュラン星付きレストランが定番だった。経費支出は同行する衆議院や参議院の事務局の役人が大使館員と協力し行っていた。車代や同席する大使館員の食事代、地方から呼び寄せられた私のような語学研修生の旅費やパリ滞在費はどうなっていたのか。まだ実務についてよく知らなかった。俗にいう機密費だったのだろうか?
確か、鈴木宗男議員が、外務省のラスプーチンと呼ばれた役人を使って、役所の仕事にあれこれ介入して以来、議員と役所は距離を持って接することになったはず。
役人の忖度を想像できない公私混同
今時、大使館員が議員の娘のお世話とは。総理の外国訪問中、観光をしていたと批判された息子の岸田翔太郎氏は、一応総理秘書官という官職についていた(当時)。松川議員の娘は未成年で公職にもついていない。もっとも松川議員の配偶者は現役の外務省幹部らしいので、まあ役所としても世話せざるを得なかったのだろう。
松川議員自身も外務省幹部の配偶者も、役人が忖度せざるを得ない状況にあることを想像力を働かせて、次女を同行させないという決断をできなかったのか不思議だ。
忖度は「私人」安倍昭恵氏の森友学園との関与から有名になった言葉
普通の公務員なら、子どもの面倒をみることができない時は、ベビーシッターを雇うのである。息子がまだ6―7歳のころ、高物価のスイスで、時給3000円のフィリッピン人のベビーシッターを雇って仕事をしていた。昼間ダラダラ仕事をして、夕方の退所時間近くになって決済を求めてくる部下には本当に困った。この人の仕事の段取りの悪さで、ベビーシッターの超過勤務時間が増える。タクシーのメーターみたいなものだ。「もっと早く持って来て欲しい」と言えばパワハラといわれるので我慢していた。
国会議員なら事務所に私設秘書もいるだろう。わざわざベビーシッターを雇わずとも、10歳を超えた娘の夏休みなら、事務所の片隅の机で宿題をこなす、という解決策もある。夜家に戻れば父親がいる。フランス外遊はたしか4日間だ。議員の留守中、次女を同行させずとも乗り切ることができたはず。明らかに公私混同。
私が外務省を辞めた理由は、税金で給料をもらっているのだろ、と言われたくない、事業を起こし、自分の才覚と工夫で稼ぐことができることを自分自身に示したかったから。が、その2-3年前、上司の公私混同が続き、つくづく嫌気がさしたのが退官の背を押す決定打となった。
組織のトップの公私混同を指摘するには、倍返し覚悟で勇気がいる
チュニジア大使館では、大使は知的障害のある25歳の次女の世話をするために大使公邸にこもり、大使館に出勤しない。今ならリモートワークの態勢も整ってきたのかもしれないが、秘密保全が完備した大使館に来てもらわないと、資料、情報が読めない状況だった。必要な情報なしに決済はできない。親の介護で仕事を辞めなければならなくなる普通の人も多いというのに。日本国全権特命大使は世界一高給のベビーシッターである。
普段は配偶者手当を支給されている大使夫人が、娘の世話をしているのだが、宝塚歌劇団所属の長女の公演期間中は、夫人は日本に帰国する。30歳前後の長女(十輝いりす)の私的なステージママ業務のためだ。
これが嫌で帰国したら、今度は学者出身の上司が、外国出張の度に夫人を同伴するのである。「貴女(私)は外務省出身でしょ、妻のために大使館、総領事館の公用車を用意してくれるよね」という無言の圧をかけられ、私はこの学者先生の出張先にある大使館、総領事館に連絡することになった。
松川議員はこれで終わったの?
松川議員は、自身も大使館勤務をしたことがあるはず。なのに、平然と役人(旦那の部下であり、有権者が選んだ国会議員に仕える公僕)に、娘の世話という業務外の仕事を強いる理不尽が想像できなかったのだろうか?エッフェル塔の三角ポーズをとった写真をアップするのはまだ「楽しかったから、つい写真を撮ってアップしたんだね」と目をつぶっても、この無神経な公私混同は、私の基準では許されない。
国会議員の妻が外遊する、娘は夏休みで学校に行かない、夫は官僚。こういう時にフランスのカップルはどういう行動をするのかを研修題材にすればよい。
公私混同についてもフランスから学べることもある
フランスは名だたる公私混同の国。社会全体が、互いに休暇等の個人の都合を仕事より優先することに寛容。それでも、政府高官、国会議員だけ得をする「ズルい」行動は批判される。それを避けるため、ベビーシッターを活用するのは普通のこと。アフリカ大陸、旧東欧諸国からの移民のお陰で、ベビーシッターはかなり気楽に雇える。これはアメリカも同じ。時々、違法移民をメイドに雇ったことを指摘されて、上院の承認が得られず閣僚ポストを棒に振る女性もいる。
子育てを社会全体で支えるための制度とは何かを考え、ベビーシッター、キッズクラブ(フランスのバカンス大手の地中海クラブでは、親が休暇を楽しんでいる間、子どもの世話をしてくれる)を充実する方策を、今回のフランス研修から学び、ひろゆき氏がいうように議員立法にして法制化すれば松川議員らの外遊も意義のあるものとなろう。
自民党岩盤保守層の考え方が日本少子化を悪化させていることに気が付いていない
が、そうはならないと思う。
松川議員は安倍チルドレンである。自民党、日本社会の岩盤保守層が支持基盤だ。ま、美人だから、と投票するおじさんもいるだろうが。
時給1000円を超えるとやっていけないような地方のゾンビ企業のために、海外からの技能実習生=実質的な移民労働者を招く制度を整えても、女性の子育てを支援するベビーシッター、家事手伝いを海外からの労働者に頼る制度に賛成するはずのない人たちだ。女は子育てで楽をしてはいけない、家事労働のすべてを一人で背負い、へとへとになるまで家族に尽くすのが女、と信じて疑わない人たちだ。女性が精子を選べる精子バンクや、同じく女性が人為的に出産時期を選べる卵子凍結にも眉を顰める人たちである。有効な少子化対策なら選択肢を広げよう、とはならない。
松川議員は、今回のデジタルタトゥーを挽回できるのか
家を4軒買った体験を書籍にして「役人のくせに」と批判された私は、確かに想像力が欠如していた。が、その後の現役時代に30億円ほどの日本国民のお金を外国から取り戻した後、役所を辞め、収入の原資を税金としないビジネスを始め、役所に頼らなくとも自立できることを自分に証明した。
デジタルタトゥーは消えない。が、それを挽回する努力は可能だと思う。それには自民党のゴリゴリの保守のくびきから脱しないと無理だろう。
7月12日、タレントのりゅうちぇるさんが自殺した。
今、メディアでは匿名のSNSでの誹謗中傷が原因ではないか、という論評、コメントが沢山出ている。
バライエティ番組にパートナーの女性と出ていた若い頃は、女性っぽい(これも問題のある形容か?)しぐさ、しゃべり方の男の子、ちょっと変わったファッション、化粧の人、その後結婚し、一児の父になり、離婚、そして心は女性を自認するとカミングアウトした、なかなか勇気のあるタレントさん、というイメージの人だった。
りゅうちぇるさんの自死前、政治、司法の場面では、二つの大きな動きがあった。
6月16日、「LGTB理解増進法」成立
7月11日、女性を自認する経済産業省職員の職場のトイレの使い方に関し、役所の対応を違憲とする最高裁判決がでた。
新たな法律についても、最高裁判決にも、体と心が女性と一致していると「自認」する自分は正直、困ったな、という気持ちになった。
一度だけ、クラブツーリズムの女性限定の旅に参加したことがある。これからは、戸籍と自認が一致しない女性も参加することになりそうだ。クラブツーリズムは民間企業だが、他の参加者の心理的抵抗を理由とした営業上の理由で、女性と自認する人を拒否することはできなくなるのだろう。
最高裁判決の後、ひろゆき氏が「トイレだけではなく、これからは残業する人用の職場のシャワー、仮眠室についてもこの判決が適用されることになる」という趣旨のツイートをしていた。なるほど。
深夜残業を終えて自宅に戻るよりも、役所の「仮眠室」(自分が若いころは「霊安室」と呼ばれていた)で仮眠すれば、職員の体力も温存され、職員の時間と役所のタクシー代(すなわち税金)も節約できるということだった。昔は真夏でも夕方6時にはエアコンは切られた。今はもっと職員の勤務環境は改善されているのだろうが、役所側には職員の性的自認と施設の使用の再検討、という新たな課題が突き付けられている。
りゅうちぇるさんは子どもがいる。普通の男女のカップルのように子どもを授かったのだろう。精子バンクを使ったという報道はない。最高裁判決の原告の方同様、肉体的な性適合手術を経ていないようだ。
女子トイレは個室だけど、最近は男女に分かれていないトイレも増えているという。
りゅうちぇるさんのような人、経産省職員のような人が、女性用とされている銭湯、温泉施設に入ってくることを受け入れることはできない自分は差別しているのだろうか?
日本の混浴施設が欧米から野蛮だ、と言われることもあったが、スイスのサウナは、男女に分けられておらず嫌だった。露出狂っぽい男性、女性が嫌がるのを楽しむ男性もいる。
1964年の東京オリンピックでは、女子砲丸投げのソ連のタマラ・プレスという金メダリストが印象に残っている。女子ではなく男子ではないか、ひげも生えているし、という噂も当時あった。今後、スポーツにおける男女の記録の検証が必要になるのだろうか?男子に生まれた人が、女性と自認して女子選手として競技に参加するようになるのだろうか?
自分は男性優位の日本で女性に生まれ、白人優位の世界ではアジア人という少数者、でもアジア唯一の先進国(当時)出身という更に少数者として働いてきた。少数者の声、立場にも耳を傾けてくれる「多様性尊重」は歓迎すべきことだと思ってきた。
が、肉体と心が一致しているという点では多数派なので、この面での少数者の立場は理解できない。
幼児の頃、何の疑問も持たず男の子は乗り物を集め、女の子はままごと遊びをすると思っていた。中学以降の「技術・家庭」の授業では、男子は電気や工作を学び、女子は料理、裁縫を学んだ。
それでも、高校3年の担任教師が卒業の日に、
「約束の場所に、男は顔を洗わなくてもいいから時間に間に合うように行け。女は遅刻してもいいから化粧してから行け」
と言ったことに、「なんや、このセイセ?!」と思った。
大学4年で、99%の民間企業の就職案内は男子学生向けだった。京都大学法学部だから、男子は皆当時の優良企業(のちに潰れる日本長期信用銀行を含め)に就職していった。
自分を含めた少数の女子学生は司法試験や公務員試験を目指すしかなかった。
性別同様、こころと身体の性が一致しないということは、本人の意思で変えることはできない。性同一性障害の男性や女性は、当時の私のような気持ちなのだろうか?そもそも「障害」と呼んでいいものなのだろうか?
それに。りゅうちぇるさんの自死とLGTB理解増進法成立や最高裁判決は関連はないのだろうか?タイミングが合致し過ぎている。
(2023年7月16日記)
どんな美男・美女も歳をとる。
若い頃、人一倍(イヤ10倍も100倍も)輝いていたので、落差が激しい。
女性の俳優(もう「女優」とは呼ばないらしい)は、齢をとると表舞台に出なくなる。原節子は美しさのピークに銀幕から消えたそうだ。女優ではないが、36歳で事故死したダイアナ妃もキレイなまま。
80代の草笛光子、70代の風吹ジュンは例外だ。こうありたい。
男優は自身の劣化に気づかないのか、出演料を稼ぐ必要があるのか、いつまでも老醜をさらす。80過ぎた若林豪はぞっとする。亡くなった加藤剛も高倉健もだ。
山崎努のようなクセのある俳優は、美男が売りではなかったので、変わった爺さん役で出演し続けられるのかも知れない。
そんな中飛び込んできたアラン・ドロンがパートナーの日本人女性からモラハラを受け、ドロンの息子が告発したというニュース。
先日大学時代の友人と食事をしたとき、ジャニー喜多川の若い男性に対する性加害の話になった。彼女は、アラン・ドロンは著名な男性映画監督の寵愛を受けのし上がった、格上の女優ロミー・シュナイダーも、ドロンの強烈な上昇志向の道具に使われたと言う。そういう噂があったことに私も全く疑念を抱かなかった。男女を問わず、美貌が武器になる。男性も力のある男性に対してその武器を使えるのだ。
そんなドロンが90近くになって、さぞや醜くなり、侮蔑していた日本人女性に虐待されているという。私がパリに住んでいた1990年代、ドロンは仏TVF2でのインタビューでこんな人種差別的なことを述べた。
インタビュアーが、「あなたは日本で大変人気がありますが、なぜだと思いますか」と聞いたところ、頬を自分の手で軽くたたき、
C‘est une question de peau. 肌の(色)の問題だよ。 彼らは、白人のすることには何でも憧れている。
と、のたまった。
平然とアラブ人のプライドを叩き潰すフランス人は、ベルギー人や英国人のような近隣の白人も徹底的にバカにし、人種を問わず、相手を分け隔てなく侮蔑する「平等」な人たちだ。
この時のドロンは明らかに肌の色、スキン・カラーを理由に日本人を貶めていた。
あれから30年。2023年のジャパネット・タカタのCMでは、「最高級フランス産ダウン」を使った「ダウンケット」(何というお粗末な命名!)と叫んでいる。今時(いまどき)、ガチョウの肝で作るフォアグラはルーマニア産。ガチョウの羽毛であるダウンもきっとルーマニア等のEU産だろう。フランス=高級という思考停止で「フランス産」を連呼する悲しさ。
折から、中国の外交トップ王毅共産党政治局員が、日本人や韓国人が金髪にして鼻を高くしても西洋人にはなれない、中華文明がアジア人のルーツ、という趣旨の発言をしたとのニュース。
「米国を念頭に『域外の大国』が分断をあおっていると主張した。米国の影響を排除し日中韓の団結を促す意図から、欧米との違いをことさら強調。『欧米人は中日韓の区別が付かない』『「われわれは自分たちのルーツがどこにあるのか知るべきだ」」などと語った。」という。
「髪染めても西洋人なれない」 日韓への発言に「差別」批判 中国外交トップ(時事通信) - Yahoo!ニュース
アジア人、モンゴリアンが何かとコケ―ジアンの白人(この文脈ではフランス人ではなく米国人であるが)に憧れ、崇拝する風潮を戒めたのかも知れない。30年前のドロンの発言をアジア人側から補強している。
年老いたドロンのパートナーとなった日本人女性は66歳とのこと。
思い出すのは「ミザリー」という映画だ。
両足を骨折し、移動の自由のない男性作家に対し、一見献身的な看護師女性アニーが、この作家のミザリーという小説のストーリーを書き換えよと暴力、暴言で迫る1990年の映画。作家と看護師の間に年齢差もある。
ミザリーが公開された1990年頃は、アラン・ドロンが日本人を揶揄した頃でもある。日本はバブルに踊っていたが、まだ岸恵子が一回りも年上のフランス人映画監督と結婚した戦後同様、白人の中高年男性と若い日本人女性との結婚が一般的だった。今では、年上で経済力もある日本人女性が年下の白人男性と結婚するケースが目立つ(例:売れっ子家政婦、料理人のタサン志麻さんとそのフランス人夫)。
日本人同士の夫婦でも、妻が、それまで借金、女遊び、DV、モラハラの限りを尽くしてきた年老いた寝たきり夫をのこぎりで殺害する事件があった。
ドロンを虐待したという日本人女性は、これまでマウンティングしてきた横柄な男が、年老い、醜くなり、体の自由もままならなくなった時、男性というものに対して、積年の恨みを晴らしているようにも思える。そこに「西洋人(男性)」という人種が要素として絡んできたリベンジ事件なのかも知れない。―――知らんけど。
4月23日はいくつかの自治体の長とそれぞれの地元の地方議会議員を選ぶ日だった。
明石市の泉市長は、昨年秋の暴言で任期満了後は立候補しない、と発表していたが、後継指名された明石市議出身の女性が選出されたようだ。院政というか、後見人というか、泉路線を継続するのだろう。それが明石市民の多数意見なんだろうが、新市長は前市長のように市議会と血みどろの戦いをするのだろうか?遠い関西のひとつの自治体だけれど気になる。暴言はともかく、前市長は頑張って結果を出す数少ない政治家のひとりだったからだ。
同じ兵庫県の芦屋市では、全国最年少26歳の市長が誕生した。富裕層の街芦屋市出身で灘中、灘高、東大、ハーバード大とまあ絵に描いたようなエリートコース。泉前市長も東大だけど、たたき上げ、苦労人のオーラがある。明石の子育て支援に対し、芦屋は高齢金持ち老人、あるいは資産家の二代目三代目の要望を吸い上げていくのだろうか?パチンコ屋を市の条例で規制するなんて、それなりに先進的ではあった。東京の港区青山で家庭に恵まれない児童のための施設を建設することに反対する住民のことが話題になったが、高級住宅地(と言っても阪神電鉄やJRが走る浜側は、それほどでもないらしいが)ならではのブランドを維持、向上させ、資産価値を高めることも民意かも知れない。自治体それぞれに個性があって当然だ。
衆参補選では自民党が4勝1敗で勝ったとされる。統一教会を批判し続けてきた有田芳生候補は、安倍元首相の後継と目される候補者相手に力及ばず。世襲も世襲の岸信千世(「のぶちよ」とはまたお公家っぽいお名前だ)候補も引退した父親の地盤を継いで当選。嫌だね。
1敗とされるのが、保守王国和歌山における日本維新の会候補の当選だ。吉村大阪府知事は世襲ではないし、維新の生みの親である松井前大阪市長や橋下徹元大阪府知事もたたき上げだ。日経新聞の滝田洋一(特任?)編集委員は、「維新は小さい政府を掲げる唯一の政党」と評していた。実際、大阪府、大阪市では身を切る改革を実現してきたと言われる。でもなあ、離党させざるを得なかった上西小百合とか丸山穂高とか、訳の分からん軽薄な経験不足の政治家を公認した党で、疑惑のデパート、ムネオハウスの鈴木宗男氏は維新所属の国会議員。その娘鈴木貴子氏は自民党。しっかり家業政治家を経営している。
若者が政治に関心が無くなるのも仕方がないかも知れない。それでも投票に行くのだ。自民党政治が嫌なら、自民党を批判する泡沫政党に一票を投じるという意思表明をする。選挙権がなかった祖母の時代を経て、敗戦後ようやく実現した女性を含めた普通選挙が実施されるこの豊かで平和な日本国に生まれた幸せを噛みしめる瞬間なのだから。
(2023年4月24日記)