20241115 初心者がゼロからお絵かきを始めて、ノートを1冊埋めるまで。 (original) (raw)
(※参考にしたポーズ↓)
本当に唐突なことを言うがお絵かきを始めた。ノート1冊終わった。8月26日から約2ヶ月半も私が吐き続けた血ヘドを、せっかくなのでちゃんとした記録にしておく。ノートの最初から最後まで1ページずつ振り返りながら、練習がどういう変遷を辿ったのか載せていく。
サムネイルは昨日模写した1枚(※サムネイルになっているのはこのページの上から2枚目)。この模写は全然ダメなんだけど、どうダメなのか後で死ぬほど書くんだけど、とりあえずこれくらい練習したよということでサムネイルにする。
誰かが見るか分からないが、私が参考にしたサイトとかは全部書いておくことにする。私と同じくらいの初心者が見て参考になったらいいな。
あと先に書いておくが、現状の私は顔も描けなければ色も塗れない。マジで白ハゲ成人男性しか描いていないのである。それで楽しいって言うんだから自分のことながら診断済アスペってこわい。
※このページにある3Dモデルは全てPOSEMANIACS様のものを利用させていただいています。
- ノート最後の2枚だけ先に見る
- まずは知識と脳死模写(8/26~9/5)
- そして立体へ……(9/6~9/24)
- だけどいつか気付くでしょうその体にはポーズ歪め狂うための骨がある事(10/02~11/13)
- お絵かきという営みについて思ったこと
ノート最後の2枚だけ先に見る
最初にノートの最後の2枚だけ、ここまでの一端の区切りとして貼っておく。
みんな大好きposemaniacsの30秒ドローイングの模写。とはいえ私にこんなもんを素早く描けるわけないし、もっぱらポーズ集として利用している。1体描くのに2時間~4時間かけている。
最後から2枚目のページ。
いや、ダメなんだよ。胸鎖乳突筋は意味不明な方向に走ってるし、上半身は背中を丸めて傾けないといけなかったし、頭の奥行きが逆向きになってるし、左脚の膝までが短いし、根もとが上手く把握出来なかったし、左足の踵は相変わらず下手くそだし、右腕の肘はもう少し曲げるべきだったし、左手の肘から先は体力切れで適当だし。(しかも撮影する時にページ曲がってるし。)
でも、このページより前の模写と比べると明らかに良いんだよな。頑張ったよ。
いや、もう、本当にダメなんだよ。
まず首どこ?って話になるし、左手の形どうなってんだよってなるし(描きながらどうしようもなかったので泣く泣くこうした)、身体の左半身の線が悪くて元のポーズと違う傾き方しちゃってるし、これ骨盤がどうなってるのか未だに意味わかんねえし、大臀筋の描き方とか知らねえし、右の大胸筋と三角筋の関係怪しいし、左足親指短いし、頭はもうちょい大きくして首(存在しない)を短くした方が前に出てる感じがして良かっただろうし、もう、ダメなとこ挙げたらキリがないんだけどさ、
だけど、まあ、頑張ったよな、うつ病患者が這いずって、動かない身体と頭引きずりながら練習してさ。申し訳程度に最低限の立体感とポージングが、多分出せている、そう思いたい。
それになあ、何よりなあ、これは模写であってオリジナルではないわけだけど、画力もなくて本当に下手くそなわけだけど、それでもこの絵2枚は、他の全ての下手くそな模写と同じように、大事な大事な私の子供です。
この感覚がかけがえないものだから、人間は絵を描くのだと思います。
とはいえこれはあくまで模写だから、本当の意味で自分が創ったわけじゃない。オリジナルの構図でもっと自分の子供だと言い張れるようなイラストを描きたいけれど、色々と技術が不足していてそれは少しまだ先の話だね。ノートを1冊使い切るまでは模写をすると決めていたから、これからはちゃんと自前で描く練習もしていくよ。
じゃあ、私の血ヘド吐いた2ヶ月半を最初から見ていこうか。
まずは知識と脳死模写(8/26~9/5)
「お絵描きって勉強して練習したら才能が無くてもできるんだ! 自分でもお絵描きができるなんて! やばい! 楽しい!」と調子に乗った初心者があっという間に壁に激突する様子をまずは見ていこう。
壁の名を、立体と言う。
8/26深夜
お絵描きを始めるにあたって色々と下調べをしたところ、とりあえず「見たものがそのまま描ける」ことが大事なのだと分かった。
小学校でクラスに1人はいる「お絵描きの上手い子」が他の子供と違うのは何か? それは、見たものがそのまま描けること。
「現実を見たまんま描ける=上手い」と人間は認識するので、上手い子供は周りから褒められてモチベーションを上げてどんどん描いていく。どんどん描いていくから、物を観察する機会が増えて、特徴を正確に捉える目がますます発達していく。(※ここまでのくだりには元ネタがあるのだけど、今ではあまり初心者向きのページとは思わないので、あえて引用にしていない。)
じゃあ、幼い頃からの積み上げがない私達が絵を描くにはどうすれば良いのか? とりあえず手っ取り早いのは、描きたい対象がどう見えるかを知識として習得してしまうことだ。観察眼なんて大層なこと言うのは後からでいい。
というわけで、人間の身体について勉強することにした。
真っ先に参考にしたサイト:
人体の比率を覚えれば人物イラストが上手になる! アタリの取り方講座 | いちあっぷ
丹念に読んで2体描いて、「あれ? 自分でも出来るじゃん!」という感覚を得た(上の写真)。これが本当に大事だった。
勢いで本も買った。8/27から本格的に使うことになる。
8/26昼
上記のページを参考にしながら、正面棒立ち2日目(日付上は1日目)。
ちなみに、各ページの最上部に描かれている「◯」の羅列は手のウォーミングアップ。うつ病生活が長すぎてペンを真剣に持ったことが久しくなかったのでやっていた。
あとこの頃は画材がまだシャーペン。芯は2Bだったと思う。
ノートの文字あまり読まないであげて。この頃はマジで目がバカなので正面向きの脚が横向きに見えてたりするから。
本を読んでアタリ取ってるのが健気だ……。肋骨と骨盤を描いたところでそれのどこに何がくっついているのか把握していないとあまり意味がないというのに……。(※それでも肋骨と骨盤のアタリは絶対に取った方が良い。後で必ず役に立つから。)
8/27(最初に買った教材について)
この日から模写を始めることになる。その前にちょっと教材の話。
買った教材を本格的に使い始める。上に貼ったページの人が描いた本だったので、そのまま勢いで買った。教材の内容について触れておく。
買った教材:
デジタルイラストの「身体」描き方事典 身体パーツの一つひとつをきちんとデッサンするための秘訣39
これは本当にオススメ。
もちろん初心者向けの教材は色々あると思うし、多くに目を通せたわけじゃない。そもそも私自身がまだ人様に何かオススメ出来るほどの画力がない。だけど、多分この本はかなり良い方に入るのだと思う。
まず、勉強すべきパーツが大まかな区分で網羅的に揃っているのが一つ。「何を知らなければならないのか」を初心者は知らないので、人体の知識の概形を知る上で役立つ。
ただ、この本の良いところはそこじゃなかったりする。
今だから分かることだが、この本には徹底的に立体の脳内回転を読者に強いないで全パーツどうにかするという物凄い特徴がある。このため、「本人が絶対こんな描き方してないだろ……」と思ってしまうような指南があったりする(手の描き方とか……)。
だけどこれが本当に初心者には大事で、最初から立体の回転を扱おうとすると100%嫌になってやめるからこの配慮は素晴らしいと思う。この本じゃなかったらお絵描きをすぐにやめてしまっていたかもしれない。
私は実際、しばらく後に立体が全く分からず深い挫折を味わうことになる。そこまでのノートを引き続き見ていこう。
今見るとアレだな……もうなんか、コメントしたくないくらいアレ。だけど、とにかくこれが私が人生で描いた初めての模写だった。でも人様に見えるところに置いたからアレって言ってしまうだけで、私の心の中ではやっぱり私が世界に初めて産み落とした子供として本当に大事な1枚だよ。
ここで一つ大切な注意書きがある。それは、実はこの時点の私は絵を模写してすらいなかったということだ。
どういう意味なのかちゃんと書く。
私はここから暫くの間、模写する対象が立体物ではなく表面的な線の集合にしか見えていない。言い換えれば、線を一本一本丁寧に写しているだけで頭を全く使っていない。この状態でやっている模写を便宜上「脳死模写」と呼ぶ。(「脳死」という言葉はよくないかもしれないけれど、他に良い言葉が本当に思い浮かばない。英語だって似た概念をno-brainerって言うんだから勘弁してくれ。)
それでも、とても大切なことがある。繰り返しになるけど、脳死模写が完成した後、「あれ、向いてないって思い込んでただけで、やってみるとお絵かきってできるじゃん」って思った。大きな勘違いなのだけど、とにかくそう思った。思い込みは本当に大事だ。お絵描きが楽しくなり始めた。
8/28
ページの幅を取りすぎるのでここからは一部画像を縮小する。クリックしたら多分原寸で見れる。
しばらく模写が続く。特筆すべきことはなし。
8/29
パーツごとのお勉強を始めている。
本の内容を直接書いてる部分は一応白く塗っておく。丸写しで練習してるページもあるのでそういうのは原則載せない。参考にしたかったら買ってください。
とはいえ、この描き方に限っては私にすらもう役に立たない。立体を極めて徹底的に排除した結果どうにかひねり出した描き方だと思われるもので、本当の本当に初心者の時しか使わない。そうだとしても、初心者が挫折しないで手が描けるというのは本当に大きい。手が描けるのは最初の大きな嬉しいポイントの一つだと思う。そのうち使わなくなる描き方だとしてもモチベーションになるなら素晴らしいのではないか。
8/30
体調が悪かった日。架空のポーズで復習をしている。上半身の貧弱さに対して下半身が更に貧弱すぎるだろ。でも勉強してねえし資料も見てねえようなもんは描けねえんだ、仕方ないね。
9/2早朝
昨日の謎の逆立ちに思うところがあったのか、肩のお勉強をしている。
三角筋くらいはどのページ見ても同じことが描いてあるから流石に載せて良いだろう。この教材の良いところは、立体を排除しているとはいえ半分以上は永久に使える知識で出来ていること(もちろん初心者向けの解説なので、アップデートはすぐに必要になるけど)。
あと今更だけど私がノートに書いた言葉はだいたい間違ってるから参考にするなよ。
この日はちゃんとアタリを取り直して上から描いて後で消している。偉いね。
9/2夜
教材の内容そのまんま描いてあるので割愛。
9/4
相変わらず胸と肩のお勉強をしている。
これもどこにでも載っていることなので載せて大丈夫だろう。この内容も永久に使えるね。初心者向けに書かれている割にはちゃんとした知識が極めて多いのは優秀な教材だ。
鎖骨と上腕骨を書いてるけど、この段階だとまだ骨を意識する必要性が分かってないから次の日には構造忘れてんだよな。理解していないことは覚えられない。それでも大胸筋の動き一つ覚えただけでもこの段階では十分だ。
自分が模写を楽しみながら少し調子乗ってるなって思ったから戒めで描いた猫。お前がやっているのはただの模写でお絵かきではないという戒め。(※しかもこの時点では脳死模写になっていることに気付いていない。)
同日、パーツ毎のお勉強が続く。モザイクで載せておく。
なんか、めちゃくちゃ頑張ってるなあ、大丈夫? 君病人だよね?
そして更に同日、1体模写。
「なんでこいつアタリ取った後で別のページに本番描いてんの?」とか心無い言葉をかけないであげてほしい。この子はまだ幼いんです。
それよりも、明らかな問題があるだろう。
いや、ちょっと……
流石に……
9月4日のたった1日でこの量って病人の私にしては元気過ぎるんじゃないか……???
だいたいさあ、なんか、模写の精度が初心者にしては不自然に高すぎない???
今の私なら同じ量を1日でやることは絶対にできないし、同じクォリティの模写も出来ない。
じゃあ、なぜこの日の私には出来たのか?
言うまでもない。
この時点での私はただ線を同じ角度・同じ長さ・同じ曲がり方に書き写しているだけで、頭を使っていないからである。
人体パーツのお勉強だって、パーツをきちんと頭に入れているわけではなく、線を引くための補助にしか使われていない。物の捉え方がどこまでも平面なのだ。
そんなわけだから必然、体力や精神力の消耗量だって少ない。
私だって自分のやっていることは何かおかしいんじゃないかとは薄々感じていた。
そして次の日、このままじゃダメだという壁に致命的にぶち当たることになる。
9/5
教材の練習を2ページしたあと、模写。この1枚が私のお絵描きライフを変える。
お分かりいただけただろうか。
大胸筋と外腹斜筋の間で人体が断裂しているのである。前鋸筋?なにそれ
たしかに大胸筋は角度によってはちょっとだけ外腹斜筋より外側に来ないでもないが、これはいくらなんでも完全に断裂を起こしている。
「何時間も描けて真剣に模写をしたはずなのになんでこんなことが起こるのか?」と考えてみれば、何度も繰り返し言ってきた通り、線を見たまま書き写しているだけであって、人体をパーツの集まりとして捉えられていないからである。私がこの時点での自分の行いを「脳死模写」と呼んでいるのはそういうことである。
お絵描きを始めた私は、早くも大きな壁にぶち当たることになった。
実は、他にも悩んでいることがあった。
(脳死)模写だけなら出来るが、いくらなんでも何も見ないで絵が描けなさすぎるということ。
模写は真剣にやっているし、パーツのお勉強も続けているのに、いくら初心者だからってそれにしても、全然自力で描けない……。
色々な面で、今の練習だけをいくら続けていても先が見えない感じがした。
ここから私は練習の方法を根本的に変えることになる。
ようこそ、立体という名の地獄へ。
教材についての補足
新世界に行く前に一つ補足しなければならないことがある。それは、この節で紹介した教材についてである。
この教材は本来、本の前半分がキャラクター風の顔の描き方に割かれている。軽く読んだだけで全く練習していないが、今思い返しても本当に有用な内容が描かれていたと思う。人体よりはそっちがメインかもしれない。
私がこの教材のメインディッシュに一切手をつけていないのは、人体描いてるだけで過集中入って満足するアスペだから「人体がこんなにダメなのに今は顔なんか練習してる場合じゃない」という気持ちがあったからだ。これは今でも変わっていないし、具体的なイラストを製作する前に陰影や色彩の勉強を人体と同じくらいしたいと思っている。(顔の練習くらいはするかもしれないが……。)
イラストを目指して練習する人にっては本当に良い教材なんだよ、私が少し変な使い方してただけでさ、ということをちゃんとここで補足しておく。
そして立体へ……(9/6~9/24)
ここからはひたすら立体の練習が無機質に続く(お前のお絵描きは元から無機質だろとか言わないでほしい。こっちは診断済みアスペなんだ)。
立体の練習を始めてから、それが人体と繋がるまで。
9/10
さりげなく日付が5日飛んでいるが、壁にぶち当たって嫌になったのではなく普通に体調不良である。折しも、今年はこの辺りから急激に体調を崩していた。練習が順調でも平気で1週間飛んだりする。うつ病を甘く見ないでほしい。
今見ると線がマジで汚いなあ!!! 未だに綺麗な線は引けないけどそれにしてもひどい。とはいえ、これが私の最初の立体と遠近法との出会いである。参考ページ下記。
参考にしたページ:
立体的な絵が描けない、を解決する!空間把握・認識能力をガンガン鍛える練習方法とは?!パースについても解説 - マエコのデジタル工房
立体のページは色々探したけど、初心者に必要な立体と遠近法について世界一分かりやすく丁寧に詳しく教えてくれるページだと思うので、穴が空くほど読んだ方が良い。詳しく知りたい人向けの教材情報も充実している。
私がこのページに特に惹かれたのは、9.2に描かれていた内容だった(コピペ出来ない仕様になっているページなのでざっくり書いて直接の引用は控える)。
「模写なら出来るけど自分で絵が描けないという悩みを抱えている人は、想像力や空間把握力を身につけることが解決の端緒になる」「模写は思考力をほぼ必要としない」。
これまで悩んでいた内容ド直球だった。泣きそうになった。
「これだ!!!」と思った私は、ここからしばらくこのページの内容を愚直にやっていくことになる。
9/11
ノートに「ポケモンgoやって疲れ気味」とか書いてある。え、お前がポケモンgoから帰ってきて更に練習したの? 大丈夫か? 倒れない?(実際、倒れる。)
頑張ってひたすら立方体を描いている。初めてやってみると分かるが、頭の中で立体を回転させるのって頭ねじ切れるぞ、本当に。ビックリするくらい全く出来ない。
でも、これは色んな人が言っていることなのだけど、人間の頭には立体や回転と遠近法を扱う能力が生まれつきで備わっていない。ここは才能ではない。遠近感も空間把握能力も練習してはじめて身につくもの。どんな天才でも教育を受けなければ掛け算が出来ないのと同じ。
少しでもいいからとにかく描き続ければ次の日にはもう少しやれるようになっている。本当に地獄じみてはいるのだが……。
こうしてみると最初に買った教材、マジで優しかったんだなぁ……。
9/12
この日参考にしたページがもう1つあったのだけど、今見たらサーバーごと消えてしまっていた。Internet Archiveにも無かったので残念ながらリンクを貼れない。
箱を組み合わせて風景を作ろう、という感じのページだったのは覚えている。上のページの箱人間は少し私にはハードルが高そうだったので、こちらから始めてみることにした。小学生の落書きみたいだが、私達に足りないのはまさに小学生時代の落書きの経験なのだ。
とはいえ真剣にやっているので、線の一本一本を引くのに本当に苦労したのをよく覚えている。
描き終わった頃にはアイラインが完全に崩壊していたしほんとアレなんだけど、でも心を込めて頑張って描いた。それだけはちゃんと言える。
同日、箱人間である。思ってた5億倍難しい。
このページは料亭を描こうとしていたのを覚えている。左の人がモップで床を掃除していて、右の人が配膳。ところが1体ずつの見栄えがアレなのもさることながら、2体並べて置くと空間が崩壊してろくなことにならない。途中で描くのをギブアップしている。「2つ以上のオリジナルの被写体を1つの画面に置くのは自分には早いな」と思った。
9/13
注文していた教材が届く。ウキウキである。この教材は上記のページでオススメされていたものから自分に合いそうなものを選んだ。
買った教材:初めて学ぶ遠近法
例示の豊富な長い解説と、章末に簡単な課題がついている。
ただ、先に言うと、この本、私は最後まで読めていないし、課題もほとんど出来ていない。何故って? うつ病患者には活字が読めないからである。
ただ、読むだけでも効果があるし(物体が回転する角度によっては消失点がアイライン上の別の位置にズレるって誰かどっかに書いておいてくれよ……)、線で表現するいわゆる遠近法以外にも、陰影や着色が出す遠近感などにも話が伸びているので、絵の全般的な知識に対して興味を持つ上でも非常にオススメだと思う。特にイラストを最初から描きたい人とか、興味があればそっちから攻めても良いのでは。
9/15
黙々と練習が続く。なんかHの鉛筆に変えたらしいよ。ちなみにシャーペン→鉛筆になったのは実は9/5から。あとどのタイミングか忘れたけどしばらくするとBの鉛筆に変わってます。
下手だけど、いかにもキルラキルとかプロメアとか好きそうな頭が悪くていい感じのポーズだ。太腿どっか行ったのでバランスが悪すぎるのが悲しいが。(左のアタリっぽいのは何故取ったのかよく覚えていない。)
箱型の人体に僅かながら奥行きが見えるようになっている。練習の成果が出てきているね。
9/16
相も変わらず箱を描いている。
何故次の一枚を描こうと思ったのか、それは分からない。分からないが、「もしかして今なら行けるか?」と思ったのかもしれない。
描けた。描けました。私にも人間が描けました。 遂にです。ようやく、ようやく何も見ないで人間が描けました。
すげえ不格好だし、ポーズ謎だし、どことなく類人猿っぽいし、だけど、とにかくいつの間にか何も見ないで人間が描けるようになっていました。本当の意味で「初めての私の絵」です、これが。快挙です。
ただ……、「今の立体力と人体力ではこれが限界か……」と思って黙々とした練習に戻った。
09/17
なんだこの左手。いかにもサンライズパースが好きそうなバカっぽい感じがしててすごく良いな……。多分だけどバカみたいにデカいグローブつけたキャラも好きだろ? LoLのViみたいな……。
元々はパンチしてる絵が描きたかったんだけど、人体の知識がなさすぎてめちゃくちゃやる気のない人になってしまった。南無。
9/18
昨日の再チャレンジだ、もっとこう手足を曲げて……と思ったんだけど目に見えて上手く行かなかった日。諦めて大人しく再び立方体を描いている。(この時点で足りないのは立体力より人体力なんだけど……。あと、体調が崩れて集中力が失われ始めている。)
9/19
(※ノートの日付の方が間違っていて、9/19です。)
立方体の練習をしているっぽいがなんか集中力が途切れ途切れになってそう。嫌な予感するな……。
9/23
案の定4日飛んだわ。
この後うつ病による体調不良がどんどん加速していきます。
「今日からは、模写に戻ろう」と思った日。2週間以上箱だけ描いていた。
まずは写真右下の通り、お馴染みの脳死模写から始める。(今振り返るとこの時点で以前より見栄えが良くなってる)
これはもちろん言うまでもなく、最低限出来る。なんか膝とかおかしいが、なんでこんな線引いたのか分からないが、まあほんと最低限には出来る。でも、問題はそうではない。
これだ。こっちが大事なのだ。これが出来るようになるために今まで頑張ってきたのだ。
不格好で良い。ちゃんと出来てなくて良い。だけどとにかく私は、立体やパーツの集合として人体を扱うということが生まれて初めて出来た。
一番感動したのは左脚だ。この日初めて、カメラには映っていない裏面をちゃんと想像して描くということが出来たのだった。(※後で振り返り機能を使ったら左脚は太腿から奥に向かって膝から手前に戻って来ていたのだけど、それはそれ。)
立体を練習して本当に良かったと思った。ここからは立体と、本当の意味での模写をひたすら練習していきます。
参考にしたページの補足
リンク再掲:立体的な絵が描けない、を解決する!空間把握・認識能力をガンガン鍛える練習方法とは?!パースについても解説 - マエコのデジタル工房
本当だったらこのページの下の方にある箱人間をもっと描くべきだと思う。ただ、この時期から体調の悪化が激しくなり、練習時間が限られていく中でもどうしても人体を描きたかったこと、そしてモチベーションの維持の点から模写に時間を割かざるを得なかった。体調は今もあまり戻っていない(11/04)。
だけどいつか気付くでしょうその体にはポーズ歪め狂うための骨がある事(10/02~11/13)
ここからはもう説明不要でノートをダーっと全ページ貼っていくけど、その前に参考にしたサイトを全部載せておく。何月何日にどのページを閲覧したのか流石に覚えてない。段階的にこれらの知識が入っていくと思ってほしい(使いこなせてないけど)。ブクマし忘れたページも結構ある。
人体の最低限の知識を持って、立体が少しだけ出来るようになったら、後はひたすら描いて分からないところを徹底的に調べていくのが大事なんだと思う。
網羅的に読みたいサイトがたくさんあるけど病気による集中力の無さと時間がキツいな……。
あと、ここからうつ病が加速するのでパーツ毎の練習に時間があまり割けていない……。
パーツ分けで描ける! 足の描き方講座 | イラスト・マンガ描き方ナビ
構造を意識する!立体的な手と足の描き方講座 | イラスト・マンガ描き方ナビ
腰の描き方解説!腰回りの構造を理解して描くコツを掴もう - イラスト・漫画(マンガ)教室 egaco(エガコ)
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男性の下半身の筋肉の描き方講座 〜上半身に続いて下半身もマスター〜|お絵かき講座パルミー
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骨盤、許せねえ。
10/2
あんなに順調に練習が進んでいたにも関わらず意味もなく8日飛ぶ。うつ病の恐ろしさである。
良い感じだ、腕だけは。なんだその右脚は。
10/3
(※ノートの日付が間違っていてこれは10/3です)
足が上手く回転出来ない。立体力の不足を感じる。これは今度また腰を入れ直して練習したいと思ってる。
10/5
頭が吹き飛びそうになりながら立方体の練習をしている。
ここで導入した道具が一つある。**クリップスタジオペイント。**
クリップスタジオペイントには3Dモデルを読み込む機能があり、パースつきで好きなように回転出来るのだ(パースのキツさも調整可能)。
30日間は無料で使うことができ、それ以降もなんとたったの月300円である(もっと安いコースもあるけど3Dモデルが使えるかどうか不明)。※値段についてとんでもない勘違いをしていました。下記
目の前で実際に立方体がグリグリ回転する様子は本当に勉強になった。また、本物があるおかげで、「頭の中で正面から立方体を思い浮かべ、左右に回転させ、前後に傾けて、想像しながら描く」という作業の後に、「実物と比べる」ことが出来るようになったのは本当に大きい。
想像する→描く→違いを見つける→「なんでダメなのか?」を考えながらグリグリ回す→想像する→描く→違いを見つける→……という作業が延々できる。
それでも本気でパースつきの立方体を描く作業というのは極めて厳しい。このページは3時間弱かかっている。
※クリスタの月額の値段はコース・使用デバイス・使用デバイス数によって変動します。パソコンやタブレットの場合はEXで月480円、PROで月980円。PROが月300円で使えるのは使用デバイスがスマートフォンの場合のみです。おのれクリスタ。
PROは漫画を連ページ管理する商業作家以外不要っぽいので、実際にはEXの月480円が現実的になります。
10/7
同じ練習を続ける。裏面の線を入れるようになってから、一時的には不安定になったけど練習の能率が良くなった。右下に描いてある通り、これだけで2時間半。初心者にとって立体とは本当に過酷である。
10/9
久々に模写。こういうのがいっぱいあったのが昔のノートなんだよな。最近の私は立方体と戯れてばかりだから困る。
とりあえず「自分でもマジで気に入っていない」という一言に尽きるのだけど、以前と違ってきちんと自分で想像した線を引いている。それが本当に偉い。だからこそ参考元とのズレが大きくなってしまう。
ここで一つ意識し始めたことがある。**クロッキー**だ。クロッキーが何か説明できる自信がないのだが、「短時間で素早くモノの特徴だけを捉えるように描写すること」だと理解している。
今回の模写がなんでダメかというと、画力の低さは勿論なのだけど、元のポーズがどうしてキマっているのかを考えられていない。特徴を捉えられていない。ただの四肢と胴体の寄せ集めになってしまっている。だから自分でも気に入らないほど格好が悪い。
結論から言うとクロッキーに宛てる時間は今日までにあまり取れなかったのだけど、ポージングの意識を強く行うようにした。
10/10
クロッキーをやっている。14分で描いたらしい。普通に描いたら最低2時間はかかるので確かにこれは効率がすごい。(言うまでもないことだけど、上手い人はクロッキーでこのポーズを30秒以内に完璧に描ける。)
10/11
「頭の形が描けねー!!!」ということで、頭蓋骨のお勉強。
参考サイトは上掲のこちら。マジで神みたいなページだ。
体調が良かったのだろう、この日は模写もやっている。
「背中って曲がるよ」という当たり前の事実に気づかずに背中を反らせなかったのが心残りだけど、全体として形をまとめられたと思う。
10/14
また立方体。真上近くから見たときがマジで描けない。頭がフットーしそう。
10/16
とりあえず原寸に近い模写と、その後で同じポーズを描き直す。もうちゃんと自力で線が引けるようになっている。
「自分が描くとどうにも芋ったいな……」というのがこの頃の悩み。
10/22
5日飛ぶ。うつ病である。
この日は直方体を練習していたようだ。元は例によってクリップスタジオの3Dモデルから。
軽くやって嫌になったのか、模写が続く。練習はちゃんとやれ私。
これはここまでと比べちゃ悪くなかった。右脚の向きが本当に気に入らないんだけど。
描きながら、どうしても膝の皿を元と同じ向きに出来なかった。仕方ないから分かってて元と向きを変えた。原則として膝の向き=足の向きなので足の向きも修正した。本当に心残り。
そういえば未だに膝と肘を復習していない。やらないと……。
10/29
6日飛ぶ。うつ病である。
脚に説得力のある線を引けないのが悩みだったので、脚の筋肉の知識をドーピングした。太ももは上手く行った。が、脚が長すぎるので全体として見栄えが悪くなってしまった。この日は脚がやりたかっただけなのでまあ仕方ない。だけど、左手がデカ過ぎるし右膝が骨折している。
10/31
これは、細部がダメなんだけど全体が好き。この辺りから自分の模写が自分で好きだなって思える気持ちが強くなってきた。
頭部小さい、胴長い、左太腿細い、それでもポージングが出来てるし遠近感がちょっぴりある。練習してきたことが形になり始めてきたなって思った。
11/3
2日飛ぶし体調が悪かったのかろくなことが出来ていない。
立体感を意識しながら、陰影が扱えるようになりたいという気持ちが強くて少しだけ調べた。
かなり集中的な練習が必要そうだから今は出来ないけど、次にやるならこれだなと思った。
11/4
初の真横人体が爆散する。体調が悪かったのはあるんだけど、それ以上に運が悪かった。
11/5 強敵現る
気を取り直して再挑戦……したつもりがまた物凄いのを引いた。
すげーよく見ると分かるが、なんとこのポーズ、カメラに映らない右半身だけが沈んでいるのである。
逆から見ると実際こう。
この裏側の沈み込みに、カメラひっくり返す前に自力で気付けたのは本当に嬉しかった。描いたものは左半身をちゃんと強調できた。胴が長くなったのは心残り。
しかし問題はそれだけではなかった。
なんか右脚が内側向いてるんですけど……。え、これどういうポーズ? これは結局最後までどうなってるのか分からなかった。
正面から見るとこう。
足の骨は内側に向かって生えているので、筋肉の量が一定以上あると真っ直ぐ立っていても非常に内向きに見えてしまうらしい。
まあどうあれこの難題相手に本当によく戦ったと思う。
11/11
意味もなく5日飛んだね。うつ病だね。
冒頭に貼った、最後から2ページ目。
反省会は冒頭でやった通りなので再放送はしないけれど、こうしてみると以前の模写に比べて本当にバランスが良くなっていますね。
11/13
ふりだしにもどる。私のノートの最後のページ。厳密に言うと3ページ余ってるんだけど、完成した後にこれをこのノートの最後にするって決めた。
反省会は冒頭でやった通り。だけど、ポージング良くなってる、バランス取れてる、遠近感出てる、練習してきたことが全部形になったみたいで本当に嬉しかった。4時間くらいかかったんだけど、本当の本当に嬉しかった。
これからもお絵描きはずっと続けるけど、ここで一旦一区切りです。また進捗とかあったら報告するかもね。コソコソとチマチマやってくよ。
もしここまで読んでくれた人がいたら、本当にありがとう。あなたがお絵描きをする人なら、どうかもっともっと楽しくなりますように。あなたがお絵かきをしない人なら、どうかあなたがお絵かきを始められますように。
お絵描きは、楽しいんだ。
お絵かきという営みについて思ったこと
ここから先は蛇足。
お絵描き初心者のページには具体的な練習より心象を記録することが強く求められていると感じたので、私というn=1についての諸々をgdgdと書いておくことにする。いいんだよ、何かを始めたり続けたりする理由なんてこんなんで。
※6000字あるので読まない方が良いと思う
私が物事を始める時に意識していること
必要最低限の道具だけ使って始めて、もし続いたら専門的な道具を揃える。これは昔から徹底してる。
このご時世にシャーペンと適当なA4ノートという完全なステゴロでお絵かきを始めて、ちゃんとした鉛筆が欲しくなってから鉛筆を買った。足りないくらいの方が人間やる気が出る。教本を買ったのも手が動いてから。
一番上に貼ったページの正面棒立ちをノートに描いてみるのが始めるきっかけとしては良いと思う。あるいはなんでもいいから脳死模写する。脳死模写は本当に良いよ、私達に幸福と、そしてお絵描きを始める勇気をくれる。
お絵かきを始めたいと思った/思っていた理由
絵を描けないまま死にたくなかった。
多分、それが一番大きい理由だと思う。
長年うつ病に冒され、1日に2時間も頭が自由にならないような日々が続くと嫌でも死について考えることになる。しかもうつ病で強制的にネガティブが入っているとき、負の連想ゲームのお題に一番なりやすいのは「私はこのまま◯◯が出来ないまま死ぬのだろうか?(◯◯には自分のやりたいことが無限に入る)」だ。
あまり一般的な理由でないのは理解してる。でも、始めた理由なんてもうどうだっていいだろう。だって今、私はちゃんとお絵描きが好きで、お絵描きを心から楽しんでいるんだから。
何の動機もないあなたでも大丈夫、始めさえすればお絵かきを絶対好きになる。
お絵かきが続いた/現状続いている理由
先に言っておくとこの節は長い。飛ばした方が良い。うつ病の話を延々することになるからだ。
さておき、お絵かきが続いている理由は主に3つあると思ってる。とても長いけれど、始めた理由より続いている理由のほうが大事だからちゃんと書く。
まず、お絵かきは診断済ガチアスペにピッタリの趣味だった。あっという間に過集中入って無限に時間を溶かせる。診断が降りてなくてもある程度の社会不適合を自覚している人は今すぐ始めるべきだと思う。
次に、これが本当に長い話になるのだけど、お絵かきは私の過去にぽっかり空いた穴を大きく埋めてくれた。
私のうつ病が不可逆な病状に一気に陥ったのは約8年前、研究の道を諦めたときのことになる。その傷をお絵かきは今のところ癒やしてくれている。
研究を諦めた人間の予後は一般に言って非常に悪い。どういう末路を辿るかというと、私がぐだぐだ御託を抜かすよりずっと良い記事があるので貼っておく。
「この数年、心から何かに没頭できない。心から求めるものがない」
「気づけば趣味にも興味にも義務感を感じるようになっていた」
『「休みの日は何をしているの?」という質問に「美術館行ったりするのが好き。趣味は〜〜で〜〜」と答えるけれど、そう答えるためにそれらの行動をとっているような気がする』
「漫画でさえも何も考えずに読むことができなくなった。心から楽しめなくなった」
「もう知識を得ることにも何かに興味を持つことにも楽しさが見出せないのだから」
「でも他人にそんな深刻な話題を出しても本気にされないから、これからも何かに興味を持つフリをしながら生きていく」
この記事を読んだとき、8年前の自分を見ているようで本当に悲しくなった。そして今の私が未だに同じラインで足を止めていることが、胸を刺すように辛かった。
8年前のあの頃から、自分の知らない色々な世界を享受しようとした。それで何かを見つけようと思った。ゲームはもちろんだけど、小説、漫画、アニメ、映画、高校の頃から好きだった日本史を補強してくれる本、高校範囲の未習分野のやり直し、最新の科学ニュース、考察の鋭さに思わずうならされるような分析を持つ本、雑多に面白い知識を与えてくれる本、理由なく買ったもの、ボイストレーニング、音楽、色々なことがあったと思う。でも私の病気を本当の意味で癒やしてくれたものは一つもなかった。
一体私の傷がどれほど末期的かというと、これはほぼどこにも書いてないことだけど、今年の3月くらいに本当に意味もなく群論の入門書を買っていた。「1日1行で良いから読むんだ……」と這いつくばって2章7節まで辿り着いた。「うわーーー!!! すごい!!! フェルマーの小定理って群論でラグランジュの定理まで辿り着くと極めて自然で簡単に出てくるんだ!!!」とか感動したりした。でも、それだけだった。
文系で大学数学の素人が一人でここまで証明を全部読んできたのはかなり頑張ったことなのだと思う。得た感動は本当にいっぱいあった。1行1行が感動の塊だ(あと、殺意の塊だ。あちこちで証明の勘所を省きやがって)。明白な誤植を自力で見つけたときは自分がちゃんとこの内容を扱えているのだと分かって本当に嬉しかった(誤植表に載ってないけどp.57の命題2.6.18(1)の証明で右剰余類と言っているものが右剰余類になっていない)。
けれど、やっぱり、それだけだった。感動はした。感動はしたけどそれ以上にはなってくれなかった。読み始めた理由が特になければ、読まなくなった理由も特になかった。単に、自然と、これまでやめてきた無数のことのように、いつの間にか持っていた熱を失っていた。そしてゾンビのようによろよろと次の熱を探し始めて、また意味もなく始めて、意味もなくやめた。そんな生活ばかりもう8年もやっている。何かに興味を持つフリをしながら生きるというのは、こういうことだ。
それでもお絵描きにだけは、今のところ本気で没頭することが出来ている。何にものめりこめなかった私を救ってくれている。理由は自分でも上手く掴めていないけれど、一つには、「研究と同じくらい大変で、研究と同じくらい魅力的なのに、研究と同じ意味での『プロ』が存在しない」ということがあると思う。
色々なものに感動しながらいつも心の底で引っかかるトゲがあった。「どんなに感動したところでお前はどうせこれに一生を捧げたりはできないんだろう?」ああそうだ、私にはもうそれはできない。理系の学部で徹夜で勉強している学生が羨ましかった。理系でなくとも修士や博士にいる人間が羨ましかった。いや、今でさえ羨ましい。にわかにそんな世界を知っているせいで、どんな趣味や勉強をやってもどうしてもこの世の誰かと自分を比べてしまうのだ。「本当の好き」を持っていて、寝食さえも忘れて没頭している名前も知らない誰かと。今この瞬間も寝落ちから目覚めたと思ったら数学書を手に取る誰かと。私は、もうああいう風にはなれない。
「そこそこの好き」にはなれても、「そこまでの好き」にはなれないことを、私はありとあらゆる分野で自分自信に知らしめることになった。そして私は、次第に「そこそこの好き」すら持てなくなった。
それに比べたら絵の世界は本当に素敵なところだ。
もちろん絵の世界にだって神絵師はいるし、商業作家だっている。だけど現代には、ヤン・ファン・エイクもボッティチェリもダヴィンチもミケランジェロもラファエロもティントレットもカラヴァッジョもリュベンスもベラスケスもレンブラントもフェルメールもゴヤもドラクロアもミレーもいない。「誰もが認める世界一」という概念を印象派以降の芸術家が消し去った。昔ながらの美術家には辛い世界かもしれないが、私にはありがたいことだ。
どんなに下手くそでも、お前が描いた絵はお前の絵だ。一生なんて捧げなくても、それは確かにお前が世界に産み落としたものだ。下手くそな論文を産み落とすのに学部4年間や修士2年間を過ごす必要だってない。丹念に資料を調べ、練習を重ね、そしてあとただ数時間ギリギリと歯を噛みしめるだけで、自分の子供のように愛しいこの世でたった一つの存在が確かにページの上に現れる。これだけが私が本当に心から求めていたことだった。あなたがお絵かきを始めて3日しか経っていなくても、あなたがお金をもらって絵を描くような職業人でも、きっとこの愛しさだけは変わることがないのだと思う。たった1日徹夜するだけで、あなたは1日だけでも「そこまでの好き」になれる。とびきり優秀な他の誰かと自分を比べる必要なんてない。人生を捧げなくてもいい。それが私が今まで見てきた他のものと違うところなのだと思う。(ただ単に、絵師やイラストレーター、特に美大生と無縁の世界に生きてきただけなのかもしれないが。)
文章や小説、そしてボイトレが私にとってそうなれなかったのは、何故なのだろう。理由は分からない。ボイトレも最近あまりやっていないし、絵もそのうち同じようにあまりやらなくなるのかもしれない。ただ、とりあえず、今は絵をやっていて幸せだ。
お絵かきが特別な営みにになれた理由として一つだけ思い当たることがあるとしたら、産出物に物理的実体があるかどうか、あるいはデジタルだとしても物理的実体を伴っていると思い込みやすいかどうか、その点だと思う。小説を書く人達が同人誌を出したがる理由が少しだけ分かった気がする。子供には身体がなければならない。
だけど、物理的実体の有無が全部だとは感じていなくて、というのも、私は自分の書いた文章を読むのが病的に好きだからだ。とはいえこのページの文章は多分好きにはなれないと思う、だってこれは事柄の羅列であって情熱を込めたものではないから。だけど情熱を込めたときの自分の文章は、読んでいて本当に愛しさを感じる。そういう意味では、専門的な研鑽を積んでいないだけで、文章を書くことについて私はずっと「続いている」と言えるのかもしれない。
話が長くなった。最後の理由に移ろう。
最後に、未来が無限にあること。
お絵かきが出来たらいいなあ、そう長らく漠然と思っていただけだったが、実際始めてみると、自分には思ったより描きたいものがあることに気付いた。
もちろん人間の素敵なイラストが描けるようになるのが当面の目標ではあるのだけど、それだけじゃなくてやりたいことがいっぱいある。
知っての通り、私はクリーチャーコレクターゲームが大好きだ。小さい頃からポケモンのパチモン後釜を狙って切磋琢磨していた無数のゲームをやってきた。ロボットポンコッツ、携帯電獣テレファング、もんすたあ☆レース、ぐるぐるガラクターズ、スペースネット、おねがいモンスター、モンスターファーム、思い出しきれないけどもうとにかく全部最高だよね!!! 最近出たゲームではTemtemやSiralim UltimateやCoromon、そして名前を出してはいけないあのゲームだって勿論大好きだ。NexomonやDisc CreaturesやCasette Beastもやりたいと思っている。あと言うまでもないことだけど当然ポケモンも死ぬほど好きだよ。
練習を続けていたら、いつかクリーチャーが自分で作れるようになるかもしれないな。そうしたらどんなに素敵なことだろう。
それとは全然関係ないけど架空の風景とかも楽しそうだし、バカみたいなパースが効いたロボットとかも楽しそうだよな。私キルラキルとプロメア好きだし。
でも、どれを描くにしてもメチャクチャ知識と練習が必要で、無限に時間が足りないよな。
そういうことを考えていたら生きていて希望が持てるようになった。
絵は、私の寿命全てを柔らかくその腕で包んでくれる。
「第三者が見たら笑っちゃうくらい具体性がないけど、本人にとっては漠然と未来に新しい世界と希望が見えること」。
それがきっと、私にとって(うつ病にとって)とても大切なことなのだと思う。
だから私は、安心して絵に自分の身を任せられる。
生成AIとの違い
どこかでとある絵師の方が書いていたことを引用したいのだけど、探しても見つからないので申し訳なさを覚えながらうろ覚えで書いておく。
「今話題の生成AIを色々触ってみた。面白かったが、絵を描くときのような感覚はなかった。『世界のこの部分だけは確かに私のものだ』という、あの独特の感覚がなかった」
お絵かきをしていて感じたのは本当にこれだった。自分が成長しているとか、模写が上手く描けたとか、そういう諸々ももちろん嬉しいけれど、一番うれしいのは世界の一部分を自分のものにした感覚、そして魂が充実することだ。とても昔の話だけど、ショートショートを書き終わったときと同じ感覚がする。(もうショートショートって言い方はしないのだろうか。とても短い小説のことね。)
私は生成AIでケーキ化が流行ったときに「ケーキ化出せ、ケーキ化出せ、ケーキ化出せ、ケーキ化出せっつってんだよクソがァ!!!」とプロンプト連打した経験があって、他にもあまり人前に書けないような性癖に似たものを出すようなプロンプトも連打したけど、それをいくらポチポチしたからって今感じてるような充実感を得ることがあったかというと、まあ1ミリも無かったよね。
というかこんな問題はもう何世紀も前から言い尽くされていて、自転車や車の方が走るのが速くたって人間は駅伝に感動するし、10年くらい前からAIが人間より強くなっても将棋観戦の楽しさはますます増していく一方だし、将棋を指す楽しさも変わらない。お絵かきだろうと翻訳だろうと結局そういうことなのだと思う。
あなたが人間に生まれて、人間がやるから物事って楽しいんだよ。見ていて楽しいのも結局人間。この先AIがどれだけ発展してもそれは変わらないし、私はお絵描きをやめないだろう。
(ただこれ、別に生成AIの人類への貢献を否定してるわけじゃないからね。データセットの合法性や集中学習による悪用とか、問題は山積みだけど、私は生成AI自体は素晴らしい道具だと思ってる。)
うつ病の私が人間讃歌に溺れてるなんて珍しいな。とても珍しく幸せなことなので、ここでこのページを閉じようと思う。
バカみたいに長い文章なのに、ここまで読んでくれた人は改めてありがとう。
あなたに良いお絵描きがありますように。