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2023年10月8日(土)第二日目。

暗いうちから荷物をパッキングし、小屋前でラーメンを作る。 生野菜たっぷり入りのラーメンだ。

AM5:45、出発する。

最終日にお世話になった鳳凰小屋

まだ薄暗いが、ヘッデンまでは必要ない。

今日は小屋から鳳凰三山を縦走し、南御室小屋、辻山、杖立峠、夜叉神峠をへて夜叉神ヒュッテ前バス停まで降りる。

第二日目地図

周知のとおり鳳凰山という山は無く、地蔵岳観音岳薬師岳の三山を総称してそう呼ぶ。 なかでも最初の地蔵岳には、三山を象徴するオベリスクが羽根を広げて天高く聳え立っている。 そのオベリスクを目指し、風化花崗岩由来の真砂土色の砂の急斜面を300M以上登る。

最初からこんな感じ

真っ白い砂斜面に入って行く

砂の300M

ううっ、足が取られる・・・

振り返れば白い岩と紅葉と。美しいぞ。

遅いぞ、お前ら

見えてるけど、まだまだ遠い

傾斜に踏みとどまる大岩。平行四辺形・・・

振り返れば薄日もさしている

近づいて来たぞ

AM6:43、尾根上に到着。賽の河原(さいのかわら)と呼ばれる場所だ。足をとられて苦労した砂斜面は終わる。

正面にオベリスク

鳳凰は天に向かって何を叫ぶのか

歓喜か慟哭か。

羽根を広げるがごとく

今日は午後から天気は崩れるという。

だが今のところ快晴ではないものの、南アルプス北部は大体見渡せる。

尾根に出て、まず正面にドーンと見えてくるのが甲斐駒ヶ岳

三年前登った甲斐駒ヶ岳

観音岳

恐れ多いことだが、これからオベリスクに登ってみる。

どこまで登れるのか

オベリスク

元の意味は、単一の岩石から削り出された四角柱の石塔」と言うことだそうだが、 はたして鳳凰山のそれは、地蔵岳山頂から約18Mもの高さで聳える岩峰である。

その奇観は古くから人々の信仰と伝説の対象となってきた。

岩峰に取り付く

途中まで登れば・・・

すぐ隣の赤抜沢ノ頭

早川尾根とアサヨ峰_山頂部に雲がかかる

日差しさす甲府盆地方面

再び観音岳

そして奥に富士山

ついにオベリスクの根元まで来た。

もう一人、さらに上を目指す者も

本当にあの18M上の岩のてっぺんまで登る者もいる。 ロープが一本たれているらしいが、それに手が届くまでも、またその先もかなり危険で難易度が高いという。 薬師小屋の関係者によれば、毎年血だらけになって降りてくるものが数名いるらしい。 血だらけで済めばよいが、ヘタをすれば命を落としかねない。 ここは神々の山なのだ。 だからピエールさんはここでやめておく。だいいち痛いだろ、そんなもの。

それより景色を堪能しよう。

北岳(右)と間ノ岳

白峰三山(しらねさんざん)に朝日が。

北岳

東面に見える大岩壁がいわゆる北岳バットレスだ。

オベリスクを後にする

オベリスクは少し離れてみた方がスマートだ。

このように

下をみおろせばこの通り。

賽の河原が真下に見える

落ちればひとたまりもない

これから進む観音岳

岩の間から甲斐駒

下りる途中には盆栽のような造形の松と地蔵様

タルベまで戻ってきた

賽の河原の地蔵群と甲斐駒ヶ岳

賽ノ河原は一面花崗岩の白い砂地で、多くの地蔵が安置されている。

「地蔵を一体背負って下山し祈念をすると子を授かり、お礼に二体の地蔵を山にお返しすれば子が健やかに育つ」ということのようだ。 今のように山小屋や装備のない時代に石の御地蔵様を二体も背負って、どうやってここまで登ってきたというのだろうか。

賽の河原から5、6分登り返すと赤抜沢ノ頭に着く(AM7:31)。

赤抜沢ノ頭

ここは早川尾根の起点でもある。

このような奇岩も

北岳

観音岳方面

連休とあって登山者も多い

赤抜沢ノ頭を後にする

これからも人々の営みを見守っていてもらいたい。

さらば、オベリスク

ここから鳳凰三山の縦走となる。 右前方に白峰三山を望みつつ進むコースだ。

右から北岳間ノ岳農鳥岳・奥に聖岳

北岳(3,193M)は富士山に次ぐ日本第二位の高峰。間ノ岳(3,190M)は奥穂高岳と共に第三位。農鳥岳は3,053M、明石岳は3,121M、聖岳は3,013M。 いずれも3000M峰だ。

白峰三山は登ったので、ニ、三年のうちには南アルプス南部を縦走したいと思う。 私自身の体力が衰えないうちに。

振り返ると

白い崖。そして奥に甲斐駒が見える。 3年前に黒戸尾根を登ったが、あれはきつかった。。。

赤抜沢ノ頭越しに甲斐駒ヶ岳を望む

再び北岳

再びオベリスク

後ろ髪引かれつつ観音岳へ。

まだ天気はもっている

右は切れ落ちていて高度感ある

白い崖を振り返る

観音岳とのタルベが見えてくる

白い崖を下る

振り返るとちらとオベリスクが。

今度は見上げる角度に

白い縦走路と北岳

登り返してゆくと、鳳凰小屋からのトラバース道と合流する。

分岐を通過

AM8:37、観音岳到着。

観音岳

大展望が広がる。

白峰三山

甲斐駒ヶ岳

甲斐駒とオベリスク

八ヶ岳

西側はとにかく真っ逆さまに切れ落ちている

薬師岳方面

薬師岳と富士

富士にかかる傘雲

得意満面のピエールさんだ

山頂のモニュメント

まだ9時前だが、休憩がてら昼食用にもってきたパンを食べる。 そこそこの人数が山頂で景色を楽しんでいる。

中央線に乗っていると韮崎近辺からこの鳳凰三山はよく見える。オベリスクが目印だ。 それだけ甲斐地方の人々に広く親しまれている山ということだろう。

甲斐駒ヶ岳は何度見ても美しい。さらに後方には北アルプスまで見えていた。 8月に歩いた穂高連峰と大キレット槍ヶ岳までもがはるか遠くに確認することができる。

白く輝く甲斐駒ヶ岳

賽の河原までの白砂の急斜面が見える。花崗岩の風化が進みオレンジがかった白砂の斜面だ。

オベリスクと登ってきた白い斜面

はるか下方、約1000M下には早川が流れる。

深い谷を刻む

AM8:55観音岳を後にする。

薬師岳へ向かう

観音岳薬師岳の縦走路

白峰三山と縦走路西面の白い砂の斜面。きれいだ。

白い縦走路は続く

AM9:27、薬師岳山頂到着。

薬師岳山頂標識

山頂は白くて広い頂だ

こちらもまた大展望だ。

北岳方面

下写真右は先程までいた観音岳、中央にアサヨ峰、左奥は仙丈ケ岳(3,033M)。

振り返り方向の展望

薬師岳には複数のピークがあるようだ

すぐ東側のこれも山頂?

薬師岳山頂南側には特徴的な岩峰群が。オベリスクかと思うような大岩のオブジェもある。

オベリスク・・・ではなくて

アプローチしてみる。

オベリスクに肉薄す

オベリスクの先に薬師小屋の赤屋根が見えた。 小屋の左前方のピークが地形図にある「砂払」か。

薬師小屋

やはり3年前に歩いた仙丈ケ岳。こちらから見える東面カールの裏側に千丈小屋もあるはずだ。

仙丈ケ岳遠望

この薬師岳からも青木鉱泉側へ降りられる。

分岐ルートを行く登山者

AM9:37、山頂を後にする

オベリスク横を進む。

花崗岩の特徴的な岩峰群と

白く美しい斜面を行く。

ザッザッと楽しい気分で、この優美な斜面を下り下る。

降りてきた斜面を振り返る

薬師小屋を抜け、砂払へ向かう。

砂払へ

小屋脇には真っ赤な実が。ナナカマドだろうか。

赤い実

穴をくぐる?

砂払から観音岳薬師岳山頂方向

北岳間ノ岳

なんという険しさであろう。

バットレス

砂払を抜ける。

樹林帯に入る。

シラビソの森だ。

AM10:40頃、南御室小屋到着。

南御室小屋

コーヒーがあるというのでごちそうになる。 カレーライスやベーグルサンドなどのオシャレ系ランチも出されていたようだが頼まなかった。 ここは水が出ることがわかっていたので、鳳凰小屋を出るときはタンクを満水にしなかった。

給水させていただき、トイレも借りて、AM11:05、夜叉神峠に向け出発する。

夜叉神峠の文字

途中に「辻山」への分岐がある。

辻山への案内標識。

どうするか迷ったが、<山と高原地図>には「山頂西から好展望」とあったので寄っていくことに。

80M程度登る。

AM11:36、辻山到着。標高2,585Mだ。

辻山山頂標識

確かに好展望だ。だがだいぶ雲も出てきた。

辻山を後にする。 来た道ではなく、途中から南へ分けて進めばまもなく本道と合流する。ここを「苺平」という。

苺平の標識

PM0:00に苺平を後にする。

あとはひたすら下るだけだ。

PM12:47、杖立峠道標到着。

杖立峠道標

飛ばしてきたので、少し休憩。

樹林帯の中をひたすら下る。

傾斜が緩い分飛ばせるが、だんだん飽きてくる。

PM13:32、やっとのことで夜叉神峠到着。あとはバス停まで下るだけだ。

ここで雨が降ってくるという。 バス停まで雨具を出さずに済ませようとした目論見ははずれ、結構な降雨となった。

PM14:13、雨の中、登山口到着。

夜叉神峠登山口

無事バス停に到着することができた。

バス停待合

14:41発のバスに無事間に合った。夜叉神から甲府駅へ。甲府から東京へ。

こうして3年越しの鳳凰三山縦走は完了した。 最後の雨を除けば天候には恵まれた。初日はしこたまきつい急登。2日目はひたすら長い縦走路。 しかしだ。 初日の連続する名瀑や美しい小渓。 二日目の白い縦走路と岩峰群。南アルプスの大展望。 それぞれ特徴的な山岳景観を味わうことができた。 今回もまた、実に充実した山行じゃあなかったかね。

鳳凰山の稿、了。

南アルプス前衛峰である鳳凰三山を縦走する。

10月の土・日2日間で青木鉱泉から三山縦走して夜叉神峠までを歩く。まずまずの強行軍だ。

行動予定は下記の通り。

<第一日目> 2023年10月7日(土)

東京⇒韮崎⇒青木鉱泉⇒ドンドコ沢⇒鳳凰小屋

<第二日目> 2023年10月8日(日)

鳳凰小屋⇒地蔵ヶ岳⇒観音ヶ岳⇒薬師ヶ岳⇒夜叉神峠登山口⇒甲府⇒東京

<予 備 日> 2023年10月9日(月)

初日の見どころは連続する滝を見ながら登るドンドコ沢で、かなりの急登だ。

2日目は南アルプスを右手に見ながらの鳳凰三山縦走だが、長距離を歩く。

鳳凰三山縦走は本来は2019年の秋に実施予定だったが天候悪く予定が立たなかった。 翌年からはコロナ禍でやっと今年になり実施の運びとなる。鳳凰小屋は2023年度の営業をこの10月9日(祝日の月曜日)にて終了し、 その後建替え工事を行うため、1年以上使用できなくなる。テン場も資材置き場となるため同様に使用できない。 その前にと思い予約を入れたのだが、すでにテン場は予約で一杯に。 小屋泊(素泊)をお願いする。滑り込みの予約となった。

今度は登山道で居眠りしないように、前日会社を早引けしてパッキングを早めに行い できるだけ早く寝た。こうして出発の日を迎える。

好天を期待しよう。

<第一日目> 2023年10月7日(土)

自宅をAM4:20に出発。国立駅まで北ノ政所に車で送ってもらう(これがすこぶる評判が悪い)。 途中のコンビニで当日の食糧や飲み物を購入してから行く。 乗り換え時間に余裕なく、韮崎からバスに乗ってしまえばコンビニなどはもう無いからだ。

国立4:54発中央線(始発の次の電車) ⇒ 5:14高尾着 高尾5:15発大月行 ⇒ 5:51大月着 大月5:54発甲府行 ⇒ 6:41甲府甲府6:46発松本行 ⇒ 6:59韮崎着

韮崎駅前7:10発(鳳凰三山登山バス) ⇒ 8:05青木鉱泉

各乗り換え時間は数分だが、予定どおり登山バスにも無事乗車でき(座席も確保)青木鉱泉に到着。

青木鉱泉

本日のルートを地理院地形図で確認する。

第一日目ルート

標高差1100Mをコースタイム約7時間で登るルートだ。 かなりの急登だが、先月これ以上の標高差を登っているのだし(合戦尾根)、何とかなるだろう!

トイレをお借りし、朝食のおにぎりを食べたりして準備を整える。

AM8:35、出発する。

秋晴れのいい天気だ

森に朝日が差し、空気は澄んでいる。

しばらくは川沿いの道を緩やかに登ってゆく

今日はとにかくドンドコ沢の長い急登をひたすら登らなければならない。 青木鉱泉の標高がちょうど1100M、本日のゴールの鳳凰小屋の標高が約2380Mだから 標高差約1300Mを一気に上がる。砂防堰堤までは比較的なだらかだが、 下写真の白い堰堤上に見える、壁のように立ちはだかる急斜面を登るわけだ。気合を入れていく。

砂防堰堤が見えてくる

初日の楽しみはなんといってもこの山域を代表する数々の名瀑だ。 初めて出会う滝を楽しみに急登に挑むこととしよう。

斜面に穴が

上写真のように、急な箇所にはトラロープを張ってくれている。 できるだけこういうものには掴まらずに登る。

しばらくは、ふうふう言いながら登っていくと、

最初の滝が見えてくる

所々に標識_休憩適所だ

美しい枝沢の脇をよじ登る

さらに登っていく。

赤いマーキングが岩にベタベタと

岩場を登り切って見下ろす。

女子たちも登ってくる

このような美しい枝沢を何カ所も越えてゆく。

これも滝といえば滝のような

やがて標識が現れる(AM10:10)。最初の滝見ポイントか。

南精進ヶ滝展望台へ

滝の下流方向

大岩の上に樹木が育つ

すぐにまた標識が見えてくる

見えた。

南精進ヶ滝

おおお・・・!

これは絶景かな

滝の下段部分

滝上段部

中段の滝壺

滝上から登山道に復帰(休憩適所)

滝上のゴロ石の河床を渡ると・・・

ここで道迷い

写真上のピンクテープまで這い上がると右上方へなんとなく誘われるように踏み跡がある。 これをたどって登って行くがやがて行き詰まる。 仕方がないからテープまで戻り、さらにゴロ石河床も引き返したりしたが、どうもわからない。 改めてテープまで上がってあたりを見渡すと、間違って辿った踏み後の、さらに向こう側へどうやら登山道は続いているようだった。 登攀再開する。

AM11:07、鳳凰ノ滝分岐到着。

鳳凰ノ滝分岐標識登場

見えた

滝下

これもいい。

鳳凰ノ滝

この下も滝だろうか・・・

下は覗きこめない

写真撮影のあとはしばし休憩することに。

登り始める。

急登り

12時22分、木々の間に見え隠れする滝は、白糸ノ滝か。

白糸の滝

コンクリート擁壁かと思いきや

厚壁のような大岩だった

滝の側方は当然急登になる。

急登り再び

美しい渓現れる

この渓を越えていく

見上げれば秋晴れ

道は溪の向こう側へ続いている。

溪に降りる

水面越しに河床の白砂が美しい。

しばし佇み、この幸福な時間をかみしめる。

緑が輝いている

13時01分、ついに最後の滝が見えてくる。

山々は五色に輝く

輝く木々の向こうに

五色ノ滝が姿を現す

青空を切り取る渓谷を越えて

滝へアプローチする。

秋晴れの五色ノ滝

滝壺にて。天然のシャワーを一杯に浴びる。

見上げれば、

滝をぐるりと取り囲むギャラリー・・・

迫力の大岩壁。

ああ、秋だ・・・

滝を後にする

五色ノ滝左岸の急登に取り付く。

登山道脇の苔がみずみずしい

14時05分。

P2401地点下を過ぎれば傾斜は一気に緩くなり、水と岩と緑の織り成す箱庭のような風景空間となる。

斜面は白い岩と砂だ。花崗岩の山であることがわかる。

白砂と緑と秋晴れの青空と。コントラストが美しい。

花崗岩の白砂の層は水をよく通す。少な目とはいえこれまでの滝の水量はこの白砂の下を流れる伏流水によっているのだろう。

水辺に降り立ち思わず手を浸してみる

しばらくここで過ごす。

ここまでくると鳳凰山の象徴であるオベリスクが見えてくる。

明日はあれに登る

しばらく白い河床を進む

癒しに満ちた風景を堪能する

着いた

PM14:30 鳳凰小屋到着

青木鉱泉から6時間ジャスト。コースタイムより1時間近く早くこの急登を登ってきた。まずまずだ。 受付を済ませ、寝床を確保して荷物を下ろす。小屋泊りだがテント装備を担いできたのはトレーニングを兼ねてのものだ。 少し休んでから外に出てみることにした。

鳳凰小屋はドンドコ沢コースのほか、御座石鉱泉へ降りるルートと観音ヶ岳へのショートカットコースの分岐点にもなっている。

分岐標識

鳳凰小屋の標高は2,382M。今日は天気も良くこの時期としては気温も高かったが、さすがに10月の高山は紅葉も進んでいる。

あざやかに色づく木々

さて食事だ。 今日はキャベツや玉ねぎ・ミニトマトなどの野菜をしっかり持って上がってきた。 まずはシャウエッセンをこれら野菜と炒めて食す。紅鮭のおにぎりはマグカップにそのまま入れお湯を注いでおじやにする。 そのあとは缶ツマベーコンを残りの野菜と煮込む。パスタも入れて豪華なパスタスープのできあがり。 山での食事がお湯を入れるだけのアルファ化食品ばかりだと、食欲が湧かずにエネルギー不足になってしまう。 生野菜があると無いとでは、雲泥の違いがあるのだ。

生野菜をふんだんに使った食事

こうして第一日目は暮れる。 明日は夜叉神峠までのロングトレイルだ。早く寝よう。

2024年4月13日(土曜日)晴れ

山菜日記と銘打ちながら、採ってるのはクレソンだの菜の花だのそこら辺の草ばっかりじゃあないか、という批判がある。

そのような批判に対し真っ向から立ち向かうためにも、ここらで山菜の王様「タラの芽」だの、 山菜の女王「シドケ」だの、「ヤマウド」だのを採っておかなければならない。

そこで今回は登山を兼ねて山に入り、山菜を探してみることにする。 4月となり、そろそろ「タラの芽」や「コシアブラ」の季節だ。「ウルイ」や「コゴミ」もあればなおよい。

埼玉県某所へ向かい車を走らせる。今日は某谷を詰めることにした。地元の人間しか入らないマイナーな谷だ。 林道のゲートで車を停め、朝日差し込む美しい渓に沿って林道を2時間ほど登ってゆく。

某所の某谷を遡行する

途中林道をはずれて河原に降りられるところもある。草をかき分け渓に降りる途中に、 きれいな「ゼンマイ」を見つけた。 ちょうど食べ頃ではあったが一株しかない。 二、三本採って帰ったところで扱いに困るので手を付けずに進む。

流れは細いが美しい渓流だ。 途中一人二人、山菜取りと釣行の人を見かけた。

川を少し進むが、落ち込みが出てきたので林道に復帰する。

渓には大小の落ち込みも

林道を進むのも楽しいものだ。あちこちに春がちりばめられている。

鮮やかな黄緑色の若葉を輝かせているのは「リョウブ」だろうか。

リョウブだろうか

「リョウブ」も「コシアブラ」のように先端の若芽を摘んで食するそうだが、これが本当に「リョウブ」かどうか自信が持てない。

林道は渓流の左岸を通っている。登りながらあちらこちらと見ていると、 右手の岩壁に山水が滲み、一面に小さい植物が生えている。

岩に密生するのは・・

これって、「ウルイ」でないかい?どうやらウルイのようだが、ずいぶん小ぶりだなあ。 帰りも同じルートだから、場所を記憶しておいて帰りに採って帰ろう。

しばらく行くと、ありましたよ、「タラの芽」が。

やっと見つけたタラの芽だが・・・

ところが手が届かない。 大木になってしまっている。ちょっと採取は無理だ。 それにもう3日くらい経ってからがちょうどいい採り頃という微妙な大きさだったので、涙を呑んでスルーすることに。

道中のヤシオツツジが美しい。

ムラサキヤシオ

尾根上まで登ってきた。ここら辺は林道開発が進んだのだろう。地理院地図にない林道が多数ある。

尾根上で遠望が可能となる

尾根を回り込んで林道はまだ続いている。舗装こそされてはいないが。

もう少し進んでみる。 すると斜面に地層の露頭が・・・これは!

地層の露頭が

風化が進み、全体が黄褐色を帯びているが、見事なまでの地層褶曲の露頭が見られる。

顕著な褶曲が観察できる

大陸プレート同士の衝突で地層は波打ち、さらに断層の働きなどで複雑な縞模様となる。 そのようなプレートレベルの大きな力が作用した地層断面が、 幅10M程ではあるが、このような秩父の山の林道脇にも現れる。

どのような岩質なのか。落ちているものを拾い上げ観察してみる。 断面は青みがかった暗灰色で、石英なのか白い斑が入る。そして非常に硬い感じだ。

巨大な圧力でこのような固い岩石に

チャートだろうか・・・それとも石灰岩か。 残念ながら同定できないが、どちらにしても海底に堆積した数億年前の生物たちの痕跡がここにあるわけだ。 それらは太平洋の海底火山のヘリなどに数百~数千Mも堆積したまま、 海側プレートに乗って移動し、大陸プレートに衝突する。 その際海側プレートは地殻の下に沈み込むが、海底堆積物の一部は陸側プレートの上に乗り上げ、 付加体として山地を形成する。 現代の土木・建築構造物の多くは、これら付加体としての石灰岩によって成り立っている。

タラの芽もちらほら出てきたが、あと数日後が食べごろといった感じだし、みな背が高く手が届かない。

林道沿いにもタラの芽もあるにはあるが・・・

AM10:50、そろそろ帰ろう・・・ 空は薄曇りだが気温は高くなってきた。

春が山々へ駆けあがってゆく

林道の中で尾根に這い上がると、登山道が通っていた。 ムラサキヤシオもあるが、なんと「アケボノツツジ」が咲いている。

アケボノツツジ

アケボノツツジの花弁はやや大きめの薄いピンク色だ

私はこのアケボノツツジが大好きなのである。 最も印象に残るのは、九州の大崩山山系に分け入った時の事。 渓流沿いや険しい岩場などにも咲くのだが、ソメイヨシノと同様、葉も付けぬうちに花が咲く。 早春の空のもと、ほんのりとしたピンク色の大きな花が灰色の岩場を背に、フワフワと咲き誇る。 夢のような、桃源郷のような風景を忘れることはできない。

それが、今ここに。

今は盛りと咲き誇る

ヤシオツツジも美しく咲き誇っているが、

山を彩る

やはりこの時期のアケボノツツジは、唯一無二のものと思う。 木は案外高木となる。このため見上げることに。青空に浮遊する花弁がなんとも美しい。

青空を背に咲くアケボノツツジ

林道を下ってゆく。

山桜も満開だ。

山桜

針葉樹の緑に桜が映える

斜面にはこのような大岩も。

水のしみ出すこの岩の脇を登れば何か採れるだろうか

岩の脇を登れそうなので少し登攀を試みるが断念。 ここら辺の山はみな、これでもかというほど急斜面だ。

このような花も。 釣鐘状の紫の花を咲かせているが、確か毒草であったと思う。

美しい花には毒がある

斜面が崩れ、土と砂礫が堆積したような場所に「ノアザミ」が数株あったので、いただいていくことに。 砂礫に埋まっている茎の下の方がおいしいので丁寧に掘り上げる。

ノアザミ

さて下山するぞ。

山桜咲き誇る山々を後にする

林道を下り渓流沿いを歩くようになる。 朝と別な場所で渓に降りてみる。 少し川幅があって小さな中州のような場所で、持ってきたパンでも食べようかとしていると、

コゴミを見つける

「コゴミ」じゃないの?これ。

株元の部分に採り頃のものがある

群落というほど株数は多くないが、いただいていくことに。 サッと茹でてマヨネーズが最高で、ナッツのような香ばしい味がする。

下流へと進む

川の中を静かに進んでゆくと、森に光が差し込み、幻想的な風景に。 しばしたたずむ。

両手を水に入れ、冷たさの感触を楽しむ。

しばし座り込んでこの景色を堪能する

途中岩壁に生える「ウルイ」も忘れず採取し、車に戻ってきた。

美しい渓であった。 この谷筋は本流から枝分かれしたものだったので、 本流を少しだけ上流側にドライブしてみる。

途中何カ所かで車を停め河原に降りてみたが、あまり何もなかった。

上流の河原

湧水が流れ込むところで「葉ワサビ」を見つけたので何枚か摘んで帰る。 アザミだのと一緒に天ぷらにしよう。

自宅方面に車を走らせる。

帰路の公園の桜も満開だ

本日のミッションの締めくくりは、2週間前の宿題の「セリ」の収穫。

セリ

はたして時間をおいたので、出来はとてもよく生育していた。

よく成長していて採り頃だ

どうせこれ以上伸びれば固くなるし、草刈り機でまとめて刈られてしまう。 大き目のビニール袋2袋分、どっさり頂くこととした。 経験上、セリ鍋にするにはこのくらいでもあっという間に食べられることが分かっている。

セリ以外にも・・・

アカハコベ??_いくつか摘んで帰る

アカハコベなのかそうでない雑草なのかわからないが、持ち帰って食ってしまえ。これは死なないだろう。

これは食べない

これも食べない

帰路での里の風景①

帰路での里の風景②

以上で2024年度の山菜行は終了となった。

天ぷらはまずまず。セリ鍋は最高すぎるほどおいしかった。 セリ鍋には、セリ以外の野菜は一切入れない。エノキとシイタケ少々に、 鳥モモ肉と豚バラで水炊きにし、ポン酢で食す(ポン酢はアサヒポン酢と決まっている)。 極太の長さ40cmのセリをぶつ切りにして入れるのだが、太い茎部分もとても柔らかい。 香り高くとてもヘルシーで、様々な滋養に満ちている。 こんな贅沢も無いものと思う。

2024年3月31日(日)晴れ

この日も天気が良い。セリ場の様子が気になるので朝から川へ。

まずはいつもの川で、セリの前にクレソンの伸び具合を確認に行く。 2月に根だけ残して刈り取られた無残な様子を見せていた川だ。

川面のクレソン

はたしてそれらは、水深の浅いところに太陽光線を一杯に浴びて葉を伸ばしかけていたが、生い茂るほどにはなっていなかった。

少し頂いていく

まあ今日の朝食のサラダにできる分くらいは収穫できそうだ。

セリも数株あるが、まだ十分成長していないしここは量も少ない。これではセリ鍋にならないな・・・。

セリ数株

もう少し進んで小さな青い橋をくぐる。

青い橋

その先にはいろいろありそうだ。

春の河原だ

黄色い大ぶりの花が咲き、葉はつややかで広く・・・これは何だったかな。 確か食べられるはずだけれど・・・

名称不詳

いやいや、止めておこう、あやふやなものは。

これはギシギシという雑草。これも外来種だが、中心部分の若い芽を食べることができる。 独特のぬめり成分があり、葉の根元部分を包んでいる。

ギシギシ

ニラも生えているからいただいていく。 よく、猛毒のスイセンをニラと間違えて採取し食中毒を起こすケースがあるが、ちぎって匂いを嗅げばすぐにニラ独特のにおいがする。

ニラ

これでニラ玉を作る。

ハナダイコンもたくさん自生している。

ハナダイコン_紫の花を咲かせるどこにでもある植物

これもアブラナ科なので、菜の花同様先端をちぎって持ち帰り御浸しにすることに。 菜の花の御浸しをピエールさんはこよなく愛するのである。

これは春菊に似てるけど違うよなあ・・・なんだっけ。 でも採取はしないでおく。

春菊に似ているキク科と思われる植物

キク科のヒメジオンなども食べられるんだけど。

ニリンソウ

ニリンソウ

食べられるが、有名な毒草のトリカブトに酷似しており事故も起きている。 花が咲けば区別はつくが、若葉だけのうちはよほど自信がない限りやめておいた方がよい。 場所によりいくらでも混生している。

トリカブトは葉や花だけでなく茎や根など全草にわたり毒がある。 この毒は煮たり揚げたりしてもなくなることはない。

カンゾウはすっかり伸びてしまっている。

ヤブカンゾウ

斜面の下の方にユキノシタのきれいな葉があるのでもらっていく。

ユキノシタが下の方に見える

今日はてんぷらパーティだ。

さて、この川はこれでおしまい。

本命のセリ場を見に行くことに。

セリ場の手前にアザミがある。

アザミ

このアザミはあんまり見ないなあ・・・ まあアザミには違いなさそうだし、例の棘が強いアメリカアザミでもなさそうだ。 天ぷらにするか。

さてセリ場についた。

セリ場

量はあるにはあるがもう少し、もう1週間以上は成長させて、大きくしてから頂こう。

天ぷらはギシギシ以外は、まあまあおいしくいただいた。