20代一般女性、EGO-WRAPPIN'にドハマり。 (original) (raw)

ここ半年ほど、取り憑かれたようにEGO-WRAPPIN'ばかり聴いている。

もともと『くちばしにチェリー』が世界で一番好きな曲だと言い張ってきたが、他の楽曲には疎かった。サブスクを漁っていたら『異邦人』のカバーで雷に打たれたような衝撃を受けた。オタクなので何度か経験済みだが、俗に言う「沼落ち」である。youtu.be昭和の純喫茶と歌謡曲をこよなく愛する平成生まれの私がEGO-WRAPPIN'にハマらないわけなかろう!

大阪のギラギラしたキャバレーで酒を片手にたばこをくゆらせ音楽に身を委ねる世界はもう夢と消えた幻でしょうか?本日7月28日は語呂合わせで「なにわの日」なんですが、私の好きなカルチャーはことごとく大阪にルーツがあるんすわ。暑ささえなければ大阪に移住してた。

ある日酔った勢いでDVDとスピーカーを購入してから、アンニュイな夜に花が咲いている。

Ankerはいいぞ

YouTubeと違ってねぇ~サブスクは歌詞を追いながら曲を聴けるんですよ奥さん(CV:みのもんた)。国語学専攻につき美しい日本語にめっぽう弱い私にとって、それはもう天国なんです。

布教活動は私の生きがいなので、私が好きな曲をいくつか並べてしんぜよう。EGO-WRAPPIN'の曲は詩としても楽しめる。もはや文学ですね。

🌃

Neon Sign Stomp
MVのオダギリジョーがカッコよすぎて頭がオダギリジョーで埋め尽くされるので、自戒のために私はサブスクで歌詞を見ながら聴くことにしています。オダギリジョーは罪深い。
youtu.beドラム代わりに一斗缶使うのいいっすね~個人的には雨が滴る薄汚れた高架下のイメージ。

Ah あなたのいないこの街にも
Ah いつものように夜が訪れる

去りゆく 色街 虜にした
夜を裂いた 刹那のうた
今日も流れるのかな

途中でもどかしいほどスローテンポになるところも含めて味があります。

「日常の裏側とか人生の闇の部分とか、“そういうのも含めて人生やんね”みたいな」――EGO-WRAPPIN’インタビュー - CDJournal CDJ PUSH
↑「過去のインタビュー記事遡るようになったら立派なオタクである」って渋沢栄一が言ってた

同じEPに入っているサニーサイドメロディーやたら聴き馴染みがあって、これは胎教音楽か?と思ったら『BRIGHT TIME』の収録曲まるごとリバースエッジの挿入歌なんですね。うちのおかんが観てたから、もっとマセてたら10代でEGO-WRAPPIN'にハマる世界線もあったってこと?惜しいことしたな。

BRAND NEW DAY

下をむいて 全部流してしまえ 涙
ふと目に飛びこむ
気高く咲く草になぜか嫉妬

凡庸な応援歌なら「涙を拭いて今こそ立ち上がろう」だの「涙は明日の自分を強くする活力」だの定型句と化したセリフを並べがちなところを、「悲しいなら泣いちゃえよ」と弱い自分を肯定してくれるところが好きです。気持ちを切り替えたい朝にうってつけです。

youtu.be MVがあまりにエスニックで夢に出てきそう。
歌詞になぞらえ「人生は茶番だと思って生きてた方が楽」みたいなコメントがあって、少し心が晴れやかになりました。

何でもこいや いけないのかい
あんたはどうだい 茶番じゃないかい
BRAND NEW DAY 笑って

日に日に何度も試そう
でっかい夢がいっぱい 茶の湯いっぱい
BRAND NEW DAY 笑って

「茶番」と「茶の湯」を並べたうえで、「いっぱい」をa lot ofとa cup ofと2つの意味で組み込むワードセンスが好きです。

2曲とも、高尚なEGO-WRAPPIN'にしては万人受けする曲だと思うので皆さん聴いてくださいませ。
この際白状するけどEGO-WRAPPIN'が好きな理由、「EGO-WRAPPIN'の良さが『わかる』自分カッコいい~~~」って思うためだったりします。

🐕

マスターdog
ここ最近、自分のことで精一杯で周囲の人々に優しくできない日々が続いています。
くたくたになって帰る仕事終わりの夜、迷い込んだ光の中に『マスターDog』が営む店があってほしいといつも思っています。youtu.beのれんをくぐると、長いカウンターの奥でベストを着た黒いダックスフントのマスターが、わっしわし皿を洗っているわけですよ。木目のカウンターに青い布がアクセントになってて、壁の一画に調理器具とボトルキープが並んでる感じ。席につくなりカエルとかきつねとかかたつむりとかの常連客が声かけてくれる感じ。メニューは日替わりで「ごめんね今日こんなものしか用意できなくて〜」とか言いながら手の込んだおばんざいが次々運ばれてきて、ちゃんとグラス少なくなってきたら次の飲み物聞いてくれるシゴデキマスターの店で(ここまですべて妄想)

絵本のようなほんわかとした世界観に癒される。夜中に限らず、穏やかな休日のお供にもぴったりな曲です。

忘れてしまいたい 全部
熱めのスープは幸せになる

くたびれたときの温かい飲み物ってなんであんなに沁みるんだろうね。味噌汁とか。湯気と涙で滲んだ視界の奥にさりげなくマスターがいてほしい。
本当に心を満たしてくれるのは酒でもお金でもなくて、できたての料理と人情だなんて、頭ではわかってるんだよなぁ...

女根の月
こういう歌謡曲テイストの曲好きなんですよ~いつもと毛色が違うなと思ったら、作詞が大竹伸朗さんなんですね。お恥ずかしながらこの曲に出逢うまで存じ上げなかった方ですが、作風を見たらこの歌詞も納得ですわ(混沌とした世界にも芯がある感じ)。
自然描写が芸術的すぎて見逃しかけたけどよく考えたらめちゃくちゃエロいじゃん。野外でホモサピエンスとは思えないことしてますよ。そしてこれを「ひえぇ~えっちだな~~~」と分かる程度の教養があって一安心です。「ワヤン」なんてどう生きてたら知るの?youtu.be個人的にこのMV、よっちゃん以外の要素があんまり好きじゃないんだけど、サブスク以外だとフルで聴く手段これしかないので載せておきます。

ツイ消しされちゃったけどちょっと前に「エロい動画を見るくらいなら谷崎潤一郎を読んだ方がいい、なぜなら広告がないから」みたいなツイートを見つけて激しく同意した。映像より漫画より、小説とか音楽は視覚情報がないぶん余白があるわけですよ。広告みたいな横槍もないし。怪しいサイトより谷崎、量産型メンヘラソングより女根の月ですね。私は何を言ってるんですか?
タイトル的に下弦の月と水中の光も合わせて聴きたくなる。こちらはピュアなラブソングなのでご安心ください。

Paranoia
本当にカッコいい。まず聴いてください。
この曲の質感に慣れたくなくて、聴くのは週に一度と決めています。EGO-WRAPPIN'の中でも特にジャジーでスモーキーですね。youtu.be解釈はいろいろあるでしょうが、レコードから流れるピアノを契機に脳内ではカモメとなり空を悠々放浪しているのに、現実では音の渦に囚われ流浪する人間を描いた歌ってこと?歪んだ人間社会、妄想に頼らないとやっていけないときだってありますよ。

女性ボーカルの「がなり」って無理してる印象と紙一重な気がする。次に紹介する曲も然り、中納良恵さんのエモーショナルながなりは細胞が蠢きます。

🍸 MVがカッコいい3選
サイコアナルシス
浴びるほど酒を飲んだ飲み会帰りとか、気づいたら空が明るくなってきた月曜朝4時くらいにこれを聴くと「狂っているのは私じゃなくてこの世界だ」と気づくことができます。

完全にこれ

俺は素面だ 酔ってるのは路面
それは妄想よ 想像よ
いつまで夢見るつもりなのロマンス
秘めたメカニズム くわしく調べたいの

Psychoanalysis 遠のいてく意識
Psychoanalysis 正三角形の挑発 快楽 タブー
ノスタルジア

「路面」と「ロマンス」で韻踏むのさすがにアツいよね。
youtu.beたぶんこの主人公、もとはめちゃくちゃ真面目な人間だったんじゃないかな~。「正しい」ことを正義とする周囲の挑発、「正しい」世界に安住する快楽、「正しい」生き方から逸れることをタブーとする風潮...プレッシャーの蓄積である日突然歯車が狂って、万華鏡みたいに大量の正三角形で視界が埋め尽くされていく感じ...酒浸りになって薬漬けになってよれよれのスーツで夢と現実の狭間をふらふら渡り歩いている情景が想像できます。「ノスタルジア」言うてるしじわじわ現在に引き戻されながら過去がフラッシュバックしてそう。すべての日本人、他人事ではございませんよ。

涙を酒で割って 飲みほしてもナンセンス

これは本当にその通りですね~今このブログを書いてる誰かさんに伝えてあげたい。
ていうか同じアルバムに「パラノイア」と「サイコアナルシス」を混ぜるの強気ですね。椎名林檎の『勝訴ストリップ』を思い出す。

色彩のブルース 酒を飲みながら聴きたい曲第一位。この曲に救われる夜がある。youtu.be大人になるほどこの曲の良さを嚙み締められそう。説明不要の代表曲ですね。

例外はあるでしょうが、EGO-WRAPPIN'の曲ってほとんど地名が出てこないんですよね。その代わり比喩と色彩表現が豊かで、言葉選びにゆとりがある。
エリアを絞らないことで余情を持たせているのか、特定の人だけが風景をイメージできる状況を避けるためか、はたまた何も気にしていないのかわかりませんが。

くちばしにチェリーは殿堂入りなので、除外するならNervous Breakdownが繰り上げランクインです。youtu.be地名が出てこないEGO-WRAPPIN'の歌には珍しく、MVのクラシックカーは大阪ナンバーなんですよね。何も知らずに聴けば危うく洋楽と錯覚しそうなところを、Japanese spiritsを感じてたいそう趣があります。
初期の曲ですがリリースから20年以上経った今でもまあ色褪せない。トムとジェリーに出てくるでっかいジュークボックスで聴きたいね。

🎵

ボーカルの中納良恵さんは、どんな歌でも自分のものにしてしまう。きっと歌うことが大好きで、身体にリズムが流れていて、心から音楽を愛している人なんだと思う。
「EGO-WRAPPIN'のライブに行く」が人生のTo doリストに追加されました。できれば大阪、味園ユニバースでいかがでしょう。youtu.beEGO-WRAPPIN'のYouTubeに上がっている『土曜日の誘惑』シリーズは、贅沢にも作業用BGMとして使っています。森雅樹先生セレクトの洒落たレコードを広告なしで一時間掛け流す太っ腹な企画でたいへんありがたい。私はカントリーヒルビリーが好き。

気持ちが入りすぎて6000字を突破してしまったせいで結局何から聴けばよいのか読者を置き去りにしていますが、セカンドアルバム『満ち汐のロマンス』は入門編にふさわしいかと。Crazy Fruitsはリゾート地のバカでかいショッピングモールにトリップできてお気に入りです。

全曲聴いてるわけじゃないから、まだ見ぬ名曲にこれから出逢えるのが楽しみです。何度聴いても覚えきれない複雑な曲調なので、聴くたびに新鮮味があって面白い。間奏の高揚感が病みつきになる。彼等についていけば、音楽の扉をたくさんノックできるはず。
3分そこらでキーが高くてイントロが短くて大した中身もない似たりよったりの曲ばかりもてはやされる風潮にうんざりしている皆さん、EGO-WRAPPIN'はじめませんか?