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比叡山延暦寺の謎 「延暦寺」というお寺があると思っている人もいるかもしれませんが、実はそのような名前のお寺はありません。約500ヘクタールの広大な境内地には「東塔（とうどう）」「西塔（さいとう）」「横川（よかわ）」という3つの区域があり、そこに点在する約150の堂塔の総称が「比叡山延暦寺」なのです。 ① 比叡山延暦寺はなぜ多数の僧兵を抱えていたか守護大名が群雄割拠した戦国時代、寺社勢力も軍事・行政・経済分野に大きな力を持つていたといいます。特に比叡山延暦寺のような大寺院は、広大な寺領による経済力を背景に、政治権力に物申す場面が数多くありました。多数の僧兵を抱え、自分たちの要求を押し通すためには、神輿を担いで強訴（ごうそ：集団で朝廷・幕府などに対して行なった訴えや要求）に打って出ることもたびたびでした。寺領荘園や財産を守るための自衛手段としてどうかと登場しました。僧兵とは、「法燈護持」と称し武装して戦う法師のことです。なお僧兵は近代の造語と考えられます。当時はその横暴な行為から「悪僧」と呼ばれており、「学僧」に対して「衆徒」、多数をたのんで行動して「大衆」ともいわれました。平安時代に入って律令制の崩壊によって増大した寺領荘園を有する寺院は、盗賊のみならず様々な勢力によって狙われる危険性があったため、各寺院は寺領荘園を自衛する必要が生じました。そういうことから寺院護衛の眼目があって僧兵集団が養成されるに至った訳です。本来なら仏法の修行に励むべき僧侶たちが、財産に現を抜かすのはどうかと思われますが、激しい派閥抗争や寺院同士の勢力争いまで勃発していますので（南都北嶺の争い）、多数の僧兵を擁する必要があったのでしょう。 ② なぜ信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしたか1571年「比叡山延暦寺の焼き討ち」の歴史的大事件は、起こったことは確かですが、なぜ信長は焼き討ちを命じたのかその理由は定かではありません。【比叡山延暦寺の焼き討ちの経緯】9月12日、琵琶湖西岸の南に位置する比叡山延暦寺(現大津市)へ織田軍3万が攻め入り、焼き討ちが決行されます。麓の坂本の町への放火から始まり、15日まで続けられ延暦寺東塔や根本中堂・日吉大社(ひえたいしゃ)など山王二十一社、仏像・経巻に至るまで徹底的に焼き払われます。比叡山下の多くの人たちは日吉大社の奥院がある八王寺山(比叡山の東)に逃げ込みました。この八王寺山へ織田軍は四方から攻め入りこの時、1200～4000人といわれる僧や子供も含めた多く老若男女が殺されます。信長比叡山を焼く絵本太閤記 「麒麟がくる・比叡山延暦寺の焼き討ち」の１シーン 大儀名分の定説として、主に以下のような内容が言われておりました。● 比叡山の僧侶たちの敵対する浅井家への加担への報復。● キリスト教の擁護。● 僧侶たちの堕落した暮らしぶりが気に食わなかった。当時の比叡山は仏教の聖地だったというより、むしろ女人禁制の山に美女が多数存在し、肉や魚も食していたと言う記述あり、世俗化が激しく「腐敗」していたことが伺えます。仏様の権威を笠に着て、一つの武装集団でした。比叡山は、腐敗堕落した僧兵・僧達が多数存在していて、 堂塔も坊舎も荒れ果て、修行もせずに現世にうつつを抜かし、それでいて 傍若無人であったので、天皇でさえ、仏罰を恐れて一歩退く…といった 状態であり、僧兵たちが少々エラそうな態度に出ても、誰も正面から立ち 向かえない状況だったとも言われています。僧侶たちは宗教教義をほとんど忘れ、人民を農奴として扱いつつ、自らは贅沢三昧に明け暮れていたのです。延暦寺の僧侶たちは、朝廷の求めに応じて、年貢を払わない、あるいは滞納する農民に対して呪詛を施しています。つまり、権力者の徴税を円滑に行うための農民や商人の脅しを積極的に行い、朝廷貴族と連携した人民に対する強圧政治を実行していたのです。● 寺社の商業利権を得るため。信長は比叡山が朝倉に加担する前から比叡山の荘園を没収するなどしてきた。なぜ信長は比叡山に対して初めから挑発的な態度を取ってきたのか？その最大の理由は、延暦寺の経済力にあったと思われる。あまり語られることはないが、延暦寺は戦国時代、日本で最大級の財閥だったのである。以上のように、比叡山延暦寺や本願寺などの寺社は財力、経済圏（商工業や物流）、交易、武力、武器製造、要塞と強大な権力を保持しており、その強大な権力を弱めるのが信長の目的であった。● 上洛する際に通過する逢坂峠での襲撃を防ぐため。※ ここで比叡山延暦寺が日本で最大級の財閥になった、主な4つの事業を説明しましょう。１. 大規模農園、荘園、の経営。貴族たちから寄進された農地で、人民を農奴として扱い、農産物を得ました。そしてその売却益は資本のさらなる蓄積に貢献しています。延暦寺の所有する農地は、京周辺のみならず、北陸、山陰、九州など全国に分散して285か所にありました。２. 高利貸し。生活に困窮する貴族のみならず、来年の耕作のための種籾を購入する金に不自由する農民、あるいは資本が不足する商人に対して高利で金貸しをしています。 月利4から6パーセント、つまり年利48から72パーセントという、現代のサラ金顔負けの利率です。もちろん返済することのできない者も続出したのですが、そういう者の家には僧兵が押し掛けて無理やりの集金に及んでいます。それで返せなければ、土地や家屋敷が取り上げられました。※ 当時の京都には金融業者の土倉が約３００軒ありましたが、そのうち比叡山延暦寺に関係するのは、なんと３００軒のうちの８０％・２４０軒が比叡山に属し、「山門気風の土倉」と呼ばれたそうです。土倉は別名「土蔵」と言うとおり、耐火性に優れた土蔵造りの蔵を持ちます。教科書などでは「高利貸し」的側面が強調されますが、実は貸し付けるだけでなく預金も引き受けていて、現在の銀行のような働きをしていました。と言うことは、土倉＝銀行ですから、強盗団に狙われる存在です。比叡山延暦寺は「盗賊よけ」のために武力組織をちゃんと用意しています。３. 貴重な消費財の独占販売。 絹、酒、麹、油などについての市場で高い占有率をもっていました。当時の京の重要な交通機関であった馬借（運送業者）は、延暦寺の支配下にありましたし、琵琶湖上を含む多くのところに関所を設けて通行税の徴収も行っていました。４. 独占的な流通業の経営。当時の京の重要な交通機関であった馬借（運送業者）は、延暦寺の支配下にありましたし、琵琶湖上を含む多くのところに関所を設けて通行税の徴収も行っていました。 18 by kfujiken2 | 2021-01-11 08:43 |
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Comments(1)  Commented bykyotoshiryo at 2023-05-11 21:11x 0 名前 URL 非公開コメント 公開コメント 削除用パスワード << 明智光秀という男 日本の二大開祖「空海と最澄」 >> |
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① 比叡山延暦寺はなぜ多数の僧兵を抱えていたか守護大名が群雄割拠した戦国時代、寺社勢力も軍事・行政・経済分野に大きな力を持つていたといいます。特に比叡山延暦寺のような大寺院は、広大な寺領による経済力を背景に、政治権力に物申す場面が数多くありました。多数の僧兵を抱え、自分たちの要求を押し通すためには、神輿を担いで強訴（ごうそ：集団で朝廷・幕府などに対して行なった訴えや要求）に打って出ることもたびたびでした。寺領荘園や財産を守るための自衛手段としてどうかと登場しました。僧兵とは、「法燈護持」と称し武装して戦う法師のことです。なお僧兵は近代の造語と考えられます。当時はその横暴な行為から「悪僧」と呼ばれており、「学僧」に対して「衆徒」、多数をたのんで行動して「大衆」ともいわれました。平安時代に入って律令制の崩壊によって増大した寺領荘園を有する寺院は、盗賊のみならず様々な勢力によって狙われる危険性があったため、各寺院は寺領荘園を自衛する必要が生じました。そういうことから寺院護衛の眼目があって僧兵集団が養成されるに至った訳です。本来なら仏法の修行に励むべき僧侶たちが、財産に現を抜かすのはどうかと思われますが、激しい派閥抗争や寺院同士の勢力争いまで勃発していますので（南都北嶺の争い）、多数の僧兵を擁する必要があったのでしょう。
② なぜ信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしたか1571年「比叡山延暦寺の焼き討ち」の歴史的大事件は、起こったことは確かですが、なぜ信長は焼き討ちを命じたのかその理由は定かではありません。【比叡山延暦寺の焼き討ちの経緯】9月12日、琵琶湖西岸の南に位置する比叡山延暦寺(現大津市)へ織田軍3万が攻め入り、焼き討ちが決行されます。麓の坂本の町への放火から始まり、15日まで続けられ延暦寺東塔や根本中堂・日吉大社(ひえたいしゃ)など山王二十一社、仏像・経巻に至るまで徹底的に焼き払われます。比叡山下の多くの人たちは日吉大社の奥院がある八王寺山(比叡山の東)に逃げ込みました。この八王寺山へ織田軍は四方から攻め入りこの時、1200～4000人といわれる僧や子供も含めた多く老若男女が殺されます。信長比叡山を焼く絵本太閤記
「麒麟がくる・比叡山延暦寺の焼き討ち」の１シーン
大儀名分の定説として、主に以下のような内容が言われておりました。● 比叡山の僧侶たちの敵対する浅井家への加担への報復。● キリスト教の擁護。● 僧侶たちの堕落した暮らしぶりが気に食わなかった。当時の比叡山は仏教の聖地だったというより、むしろ女人禁制の山に美女が多数存在し、肉や魚も食していたと言う記述あり、世俗化が激しく「腐敗」していたことが伺えます。仏様の権威を笠に着て、一つの武装集団でした。比叡山は、腐敗堕落した僧兵・僧達が多数存在していて、 堂塔も坊舎も荒れ果て、修行もせずに現世にうつつを抜かし、それでいて 傍若無人であったので、天皇でさえ、仏罰を恐れて一歩退く…といった 状態であり、僧兵たちが少々エラそうな態度に出ても、誰も正面から立ち 向かえない状況だったとも言われています。僧侶たちは宗教教義をほとんど忘れ、人民を農奴として扱いつつ、自らは贅沢三昧に明け暮れていたのです。延暦寺の僧侶たちは、朝廷の求めに応じて、年貢を払わない、あるいは滞納する農民に対して呪詛を施しています。つまり、権力者の徴税を円滑に行うための農民や商人の脅しを積極的に行い、朝廷貴族と連携した人民に対する強圧政治を実行していたのです。● 寺社の商業利権を得るため。信長は比叡山が朝倉に加担する前から比叡山の荘園を没収するなどしてきた。なぜ信長は比叡山に対して初めから挑発的な態度を取ってきたのか？その最大の理由は、延暦寺の経済力にあったと思われる。あまり語られることはないが、延暦寺は戦国時代、日本で最大級の財閥だったのである。以上のように、比叡山延暦寺や本願寺などの寺社は財力、経済圏（商工業や物流）、交易、武力、武器製造、要塞と強大な権力を保持しており、その強大な権力を弱めるのが信長の目的であった。● 上洛する際に通過する逢坂峠での襲撃を防ぐため。※ ここで比叡山延暦寺が日本で最大級の財閥になった、主な4つの事業を説明しましょう。１. 大規模農園、荘園、の経営。貴族たちから寄進された農地で、人民を農奴として扱い、農産物を得ました。そしてその売却益は資本のさらなる蓄積に貢献しています。延暦寺の所有する農地は、京周辺のみならず、北陸、山陰、九州など全国に分散して285か所にありました。２. 高利貸し。生活に困窮する貴族のみならず、来年の耕作のための種籾を購入する金に不自由する農民、あるいは資本が不足する商人に対して高利で金貸しをしています。 月利4から6パーセント、つまり年利48から72パーセントという、現代のサラ金顔負けの利率です。もちろん返済することのできない者も続出したのですが、そういう者の家には僧兵が押し掛けて無理やりの集金に及んでいます。それで返せなければ、土地や家屋敷が取り上げられました。※ 当時の京都には金融業者の土倉が約３００軒ありましたが、そのうち比叡山延暦寺に関係するのは、なんと３００軒のうちの８０％・２４０軒が比叡山に属し、「山門気風の土倉」と呼ばれたそうです。土倉は別名「土蔵」と言うとおり、耐火性に優れた土蔵造りの蔵を持ちます。教科書などでは「高利貸し」的側面が強調されますが、実は貸し付けるだけでなく預金も引き受けていて、現在の銀行のような働きをしていました。と言うことは、土倉＝銀行ですから、強盗団に狙われる存在です。比叡山延暦寺は「盗賊よけ」のために武力組織をちゃんと用意しています。３. 貴重な消費財の独占販売。 絹、酒、麹、油などについての市場で高い占有率をもっていました。当時の京の重要な交通機関であった馬借（運送業者）は、延暦寺の支配下にありましたし、琵琶湖上を含む多くのところに関所を設けて通行税の徴収も行っていました。４. 独占的な流通業の経営。当時の京の重要な交通機関であった馬借（運送業者）は、延暦寺の支配下にありましたし、琵琶湖上を含む多くのところに関所を設けて通行税の徴収も行っていました。 18 by kfujiken2 | 2021-01-11 08:43