御義口伝 別伝 陀羅尼品 全792頁 新1104頁 (original) (raw)

陀羅尼品

未来に顕る
修行是経者 令得安穏

現在に顕る

この文は、五種の妙行を修すれば、悟りの道に入って嶮路に入らざるなり。これ「安穏」ということなり。
いわゆる、南無妙法蓮華経は即ち「安穏」なり云々。

<通解>

陀羅尼品第二十六に「この経を修業する者、安穏なることを得せしめん」とある。この陀羅尼品においては五番の神咒(じんじゅ)が説かれているが、この文はその最後の十羅刹女のところで、十羅刹女が悪世の中で修行する者を必ず守護すると誓ったところである。

末法濁悪の世において、南無妙法蓮華経を信じ、修行する者は、未来だけでなく、現在の生活においても、幸福境涯を獲得することができるのである。

この文は五種の修行、すなわち御本尊を信じ、唱題に励んでいくならば、そのまま成仏の境涯に入り、三悪道、四悪趣の険路に入ることはない。これを安穏というのである。<講義>

本文の左右に「未来に顕る」、「現在に顕る」と記されているのは、未来すなわち来世に安穏となるであろうという意味ではなく、現世において、すでに安穏の生活を得ることができるとの意である。言い換えれば、現世利益の依文である。現世利益でなければ未来の安穏といっても、なんら証拠のない、カラ約束になってしまう。根本的には一生成仏でなくなってしまうのである。

よく他宗では高尚ぶって、現世利益を軽蔑するものがある。だが、これは自ら人を救う力のないことを告白するものであり、いかに来世の幸福を説こうと、民衆に対する欺瞞にほかならない。

今日があって明日の幸せがあるごとく、現世の安穏があってこそ、来世の幸せも期待できるのである。現世安穏後生善処が真実の仏法の功徳である。