災難対治抄 ⑥ 全81頁 新453頁 (original) (raw)

第七章 仏弟子が謗法を犯す証拠を示す

<本文>

問うていう。その証拠はどうなんだ。
答えていう。法華経(勧持品十三)には「仏が方便として、衆生の機根に随って説かれた法とも知らずに、(法華経を弘める者に)悪口して顰蹙(ひんしゅく=顔をしかめて非難))し、しばしば擯出(ひんずい=所を追うこと)するであろう」。涅槃経には「我(釈尊)が涅槃して後、当に数多くのはかり知れないほどの衆生が、誹謗してこの大涅槃経を信じないであろう○三乗の人もまた同じように、最高の大涅槃経を憎悪するであろう」と説かれている。
勝意比丘が喜根菩薩を謗って三悪道に堕ち、尼思仏(にしぶつ)等が不軽菩薩を打って阿鼻の炎を招いたのも(阿鼻地獄の炎に焼かれて大苦悩を受けたのも)、皆、大小・権実を弁えなかったことにより、これらのことが起こったのである。十悪業や五逆罪は、愚者も皆罪であることを知っているために、たやすく破国・破仏法の因縁を成すことはない。

故に、仁王経には「その王は弁えずに、この言葉を信じ聴き」と説かれ、涅槃経には「もし四重禁戒を犯し五逆罪を作り、自らはっきりとこのような重罪を犯したことを知っていて、しかも、心に初めから怖れや懺悔が無く、あえて言い表そうともしない」と説かれている。

これらの文によれば、謗法の者は、自他共に子細を知らないために、重罪を成して国を破り仏法を破るのである。