天沼矛を賜る (original) (raw)

イザナミの自伝 3

「国を造れ・・と言われましても・・・どのようにすればよろしいのでしょうか・・・」

わたしの隣にいたイザナギが口を開いた・・・おずおずと・・・やっと喉の奥から絞り出したような声だった

すると、アメノミナカヌシの大神は一本の矛を取り出した。

その矛は勾玉で飾り立てられて不思議な光を放っていた

「ここに天沼矛(アメノヌボコ)がある。これをもって降りてゆくがよい」

厳かに仰せになる

しかし、わたしは動けなかった・・・イザナギも同じだったろう。身体がすくんで、身動き一つできなかった。

すると、続けてアメノミナカヌシの大神が仰せになられる

「そんなに緊張せずともよい。この矛を手に取ってみなさい」

その声・・・今さっきまでの威厳ある声とは違って、優しい口調だった。それでも、わたしは動けずにいた・・・

すると、わたしの耳元でイザナギがささやいた

イザナミ・・」

その声にイザナギの方を見ると、彼はやさしい目でわたしを見ている・・その目はある行動をしようと訴えかけていた・・

わたしは手を伸ばした、矛を受け取るために。イザナギも同時に手を伸ばしていた。

わたしたちは同時に、アメノミナカヌシの大神の手から天沼矛を受け取った。

その矛、ずっしりと重かった・・・しかし、手に取った瞬間、なんとも言えない感覚に陥った。

それは未知なる気が体中にあふれていくような・・・全身に気が満ち溢れていくのを感じた

矛を受け取った私たちは、祭壇に居並ぶ神々に一礼して、神殿から下がっていった。

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イザナミの自伝 目次

☆天沼矛

古事記では「天沼矛」、日本書紀では「天之瓊矛」と表記されています

日本書紀には「瓊とは玉の意味であり、これをヌと読む」と注釈がついており、勾玉で飾られた矛だということがわかります

矛とは幅広の刃を持つ武具で、古代の志那においては戦闘に用いる実用的なものでした。しかし日本に伝わると大型化して実用性を失い、主に祭祀に使われるようになりました

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