つぎはコレ読みたい ~積ん読は積ん徳なり~ (original) (raw)
先月、かなり久しぶりに読書会に参加しました。日ごろから読書メーターで読んだ本の記録とちょこっと感想を書いたりはしてるけど、他の人の感想にナイスすることはあってもコメントをつけたりして交流するまでにはならないことがほとんどです。なので、同じ本の感想とかそこからの連想とかについて人と話すことの面白さを再確認してきました。はじめましての人がいる読書会だとなんとなく遠慮してしまうというか、自分がしゃべるより人の話を聞きたいモードになってしまうのだけど、同門の先輩訳者のみなさんとご一緒だとつい甘えてしゃべりすぎちゃう傾向があるかも。
さて、ではコージーミステリから。
『A Killer Clue』 by Victoria Gilbert
シリーズ:Hunter and Clewe #2
カテゴリ:コージーミステリ
_大学図書館_の司書を引退したジェーン・ハンターは専門知識を活かしつつ少ない年金をおぎなう収入を得るため、若き稀覯本収集家キャメロン(キャム)・クルーのコレクションのアーカイブを作成するという仕事についた。
古書店オーナーのエロイーズが彼らのもとを訪ねてきたとき、ふたりはてっきり本に関する調査を頼まれるのだと思った。だがエロイーズが依頼したのは、母親にかけられた殺人の容疑を晴らしてほしいというものだった。母は夫を殺したとして長いあいだ服役していたが、出所して間もなく亡くなった。遺産を整理していて新たな証拠となりうる情報を見つけたエロイーズは、すでに時効を過ぎているとはいえ真犯人を探し出すことを決意した。
ジェーンが当時捜査に当たった刑事をつきとめたが、彼はエロイーズの古書店で刺殺されてしまう。ジェーンとキャムはふたつの事件は同一犯人によるものだと確信するが、警察はあろうことかジェーンを容疑者とみなした。
自身も元図書館司書だった著者は、このほかにも図書館や本好きが集まるB&Bを舞台にしたシリーズがあるベテラン。本シリーズで面白そうなのは、まだまだ元気なおばあちゃんと(おそらく)相続した資産で暮らしているらしいちょっと変わり者の青年とのコンビ探偵だというところ。雇い主はキャムのほうなのにジェーンがぐいぐい引っ張る予感しかしないw。
その他には〈木曜殺人クラブ〉のリチャード・オスマンの新シリーズ『We Solve Murders』も。こちらは引退した(はずの?)捜査官スティーヴとその義理の娘で警備会社に勤めるエイミーのコンビだとか。
つづいてスリラーミステリ。
『Their Little Lies』 by Quinn Avery
シリーズ:non
カテゴリ:スリラー
複雑怪奇な殺人事件の解決をしくじったジョゼフィン・ケリー刑事は故郷に帰って病床にある父親の世話をすることにした。ところが到着早々から、ここで幸せに過ごしていたと思っていた子供時代がじつは想像を絶する暴力にまみれていて、しかも誰かがそれをなかったことにしようとしているらしいとわかった。
懐かしい人の顔を見て、古い記憶をたどるうち、少女の目に見えていたのとはちがう背景が浮かび上がってくる。いまの彼女をかたちづくったのが殺人や暴力だったとは理解に苦しむが、ジョゼフィンはかつて思いを寄せていた男性にすべてを打ち明け、信頼していた人たちが埋もれさせた秘密を彼とともに掘り起こしていく。
子供のころの記憶なんて年をとるほど美化されたりすっかり忘れたりするものだけど、なんらかの事情があって当時身の回りにいた大人たちに意図的に見ないようにされてたとかミスリードされてたとかを大人になって知る、ってなかなかの衝撃には違いない。アイデンティティの崩壊にもつながりかねない事情でも、知らないよりは知ったほうがいいのか、知らないままのほうが幸せなのか。
ほかには〈フロリダ・シニア探偵クラブ〉の続編の翻訳も待ちどおしい(いま3巻まで出てる)ステフ・ブロードリブと『どっちが殺す?』のM・J・アーリッジの共著『The Reunion』も気になります。またオットー・ペンズラーが編纂する短編の年間ベストを集めた〈Best Mystery Stories〉、今年はアンソニー・ホロヴィッツがゲストエディターに加わり、序文を寄せているのも注目。
最後はSFを。
『Failsafe』 by Jeff Sylvester
シリーズ:non
カテゴリ:SF
世界はコードにしたがって動いているが、すべてのコードが安全とは限らない。おかげでアナ・フリンの仕事がとぎれることもない。
物質改変装置(マター・マニピュレーション・デバイス、MMD)の登場で、物質的な意味で世界は激変した。まさに夢が現実になったのだ。だがすべての夢がバラ色なわけではない。街には改造されたMMDがあふれ、不法かつ危険な改変がなされている。
ベテランのMMD取締官として、アナはこの装置の不正な使用や売買と日々闘っているのだが、あるとき世界でもっとも尊敬を集める政治的リーダーの暗殺計画に割りこんでしまい、それで上司をかんかんに怒らせてしまった。やがて彼女は自分が当局の捜査対象になっていることに気づく。しだいに孤立させられ、誰を信用できるのかわからなくなっていくなかで、アナは最悪の物質改変テクノロジーを解き放ってしまいかねない陰謀を暴こうとする。
物理法則をいじるとなるとSFというよりファンタジーな気もするけど、画期的なテクノロジーが登場すればそれを悪用して世界征服を目論むヤカラがでてくるのは世の常。たったひとりで巨悪に立ち向かう構図は映画的かも。
読書会のあと、ちょっと足を延ばして都庁まで行き、例の“プロジェクションマッピング”を見てきました。正直、これで東京のイメージアップとか集客につながるとは思えなかった😞 賛否あるようだけど、私には無駄遣いに見えちゃったな・・・
先月と同じようなこと書いちゃいますけど。なんかちょっと自分的に感動してるのでw
去年おととしとタイミングを逃していた市民健診、今年こそはと受けてきたのが6月末。7月に入って結果を聞きに行き、見事にメタボ予備軍認定されてしまいました。
ええ、ええ、食べ過ぎ&運動不足の自覚はずっと前からあったんですけどね。
世間では中年以降は食が細くなるとか脂っぽいっものがツラくなるとか聞きますが、もう十分アラカンと言える歳になってもまだ食欲は若いころと変わらず。ほんの気持ちだけでもセーブしようとは思いつつ、真剣とはほど遠かったのはそのとおりなので。
そして運動も子供のころから筋金入りの(?)運動ギライだし、仕事も趣味も座りっぱなし。
そんなところへ、家から徒歩5分という立地にコンビニジムとやらがオープンしました。同じくメタボ予備軍認定された夫といっしょに入会してからはや2ヶ月。
なんと週2ペースでのウォーキング/スロージョギングが続いています。まさかこの私が運動習慣を続けられるだなんて、だまされてるみたいw
生まれて初めて大きな病気をして、思っていたより老い先短いなら食べたいもの食べなくちゃ、というところから、術後の経過がどうやら順調らしいと気づいてやっぱり長生きできるならしたいよね、の境地に至ったおかげか「嫌いな野菜も栄養バランスのためにがんばって食べる」のと同じように運動も「我慢してできないことはない」ものになったようです。好きになるとはまったく思わないけど。
今月のミステリ作品は絞り切れなくて2つ紹介!
『Silent Evidence』 by Clea Koff
シリーズ:Jayne and Steelie #1
カテゴリ:スリラー
ジェインとスティーリーが〈エージェンシー32/1〉を設立したのは自らの法医学スキルを警察の犯罪捜査に役立ててもらうためだ。
ロサンゼルスの幹線道路を走っていたバンの荷台から転がり落ちた包みのなかからいくつもの冷凍された人体の一部が見つかったが、FBI捜査官のスコットはその検死解剖を秘密裏に行う必要に迫られてエージェンシーに依頼した。すると、ばらばらにされた人体パーツはひとりではなく複数人のものであることがわかり、連続殺人の可能性が見えてきた。
ロサンゼルスなんていう都会で死体が見つかればまず警察が“いつもの”法医学者のところへ持ちこむものだと思うのだけど、それを水面下でやる必要という事情がよくわからないが、きっと説明があると信じたい。そして民間人としての法医学者の出番がどれほどあるのか(商売になるのか)気になる(だってシリーズものらしいし)。
『My Mother’s Lies』 by Diane Saxon
シリーズ:non
カテゴリ:サイコスリラー
母が骨折して緊急入院するだけでも相当なショックなのに、術後のせん妄で混乱した母からわたしは実の娘ではないと告げられるとは・・・。
怪我の手術後にはこのような混乱はよくあることだと看護師は言うけれど、母のことならわたしがいちばんよく知っている。あの発言に一抹の真実があることはまちがいない。だとしたら、わたしは誰なのか? どこから来たのか?
調べていくうちにぼろぼろとあふれでてきた秘密や嘘、そしてあったかもしれない犯罪――。何十年もまえ、母はいったい何をしたのか? 秘密を掘り起こしたせいで母もわたしも命の危険にさらされてしまうのか?
ロマンス作家からミステリ作家に転身した著者で、複雑な家族関係をあつかった作品が続いてます。カバーの雰囲気もわりと好みなので他の作品も読んでみたいと思いました。
今月は**ジェフリー・ディーヴァーの短編集「Dead Ends」**も出ました。リンカーン・ライムとコルター・ショウの詰め合わせ。これは翻訳されるんじゃないかなぁ。されてほしいなぁ。
翻訳されてる〈コルター・ショウ〉シリーズはこちら
コージーには欠かせないおばあちゃん探偵がまたひとり誕生です。
『Something Dead the Cat Dragged In』 by Ella Duke
シリーズ:Dixie French Mystery #1
カテゴリ:コージーミステリ
夫に先立たれ教員の仕事も引退したばかりのディクシーは、かねてからの夢だったミステリ小説を執筆するべく、のんびりした田舎町にやってきた。本を書いたりお茶を飲んだり、ゆったり平和な毎日を過ごすはずだったのに、初日から人が亡くなる瞬間を目撃してしまった。それが自然死ではなく殺されたのだとわかったとたん、町中に憶測が飛び交った。
被害者の妻が、ディクシーの家の大家ミリアムが主催する読書クラブのメンバーだったことから、なにか証拠が見つかるたびにゴシップの嵐に翻弄されながらふたりは真相を探っていく。
ミステリ小説を書きたいと思うくらいだから、きっと素人探偵のお作法なんかをふりまわして笑わせてくれそう。ページ数も少なく、10月には次作も出るというテンポのよさ。重厚な作品の息抜きにぴったりですね。
ローラ・チャイルズ〈お茶と探偵〉シリーズ#28「Peach Tea Smash」も出ました。このシリーズ、着実に翻訳が出ているわりにはとちゅうで出版社が変わったりしたせいか、Kindle版がなかったりでシリーズまとめて追いかけたい人には不便なんですが、翻訳が続いているのは人気の証し、ハズレなしのお墨付きみたいなものなので、なんとか状況がよくなることを祈っています。
ヤマナカって聞くとさぁ。。。
『The Yamanaka Factors』 by Jed Henson
シリーズ:non
カテゴリ:SFスリラー
2028年秋。ホームレス老人のミッキーはイカサマ製薬企業からにわかには信じがたい提案を受ける。「内密で新薬の被験者になりませんか? この先一生遊んで暮らせる額の報酬をお支払いいたします。治療が成功すれば、2か月後には23歳の体に若返っているはずです」
だが治療は想定以上に困難だったうえに産業スパイの目論見も失敗すると、ミッキーは内外の敵にはさまれたかっこうになる。人民の高齢化に苦慮する中国の工作員や、人類の文明を根底から覆しかねないテクノロジーを恐れるあまりなりふりかまわないアメリカ政府関係者らにつけ狙われながらも、生来のニヒリストでもあるミッキーは人生の意味を見失うまいとあがく。
ヤマナカファクターというからどうしてもiPS細胞関連の医療技術を思い出さずにはいられないけど関連はあるのかな? なにかヤバいことを試そうとするのにホームレスみたいな社会的弱者を利用するのは想定内とはいえ胸糞悪いもの、ミッキーじいさんに勝ち目がありますように。
運動のおともにAudibleで聴く読書をしてるんですが、さすがに英語でストーリーを追えるほどのリスニング力はないので日本語のを聴いていて、翻訳もののほかに国内作家もの、それもなぜか時代物にハマってます。最初はファンタジー味のある〈しゃばけ〉シリーズから入って、数年前に歌舞伎役者の中村隼人さんが主役でドラマ化された〈大富豪同心〉シリーズにも手をのばし・・・聴きたい本があるかぎりは運動も続けられそうかな。
Audible版〈大富豪同心〉シリーズはこちら
まだまだ暑い日が続きますね。文字どおり24時間エアコンのお世話になってます。でも今年はリビングのエアコンを買い替えたので、去年までより省エネ性能がアップしてる分、電気代に腰を抜かしたりしないといいのだけど。
まずはスリラーからご紹介。
『The Woman in the Garden』 by Jill Johnson
シリーズ:Professor Eustacia Rose #1
カテゴリ:スリラー
有毒植物を友とする植物毒の専門家ユースタシア・ローズは平穏で変わりばえしない毎日を送っている。植物の世話のほかに唯一の趣味と言えるのが、望遠鏡で近所の住人たちを観察し、その動向を“研究”と称してノートに書き連ねることだ。
ある晩、悲鳴を聞きつけたユースタシアは詳細を知りたくて居ても立っても居られなくなった。最近隣人となった絶世の美女シモーネの姿を目にしたとたん、彼女とその暮らしから目が離せなくなってしまった。シモーネの周囲をうろつく4人の男たちはいったい誰なのか? 彼らからシモーネを守らなければいけない気持ちになるのはどうしてなのか?
ある日、帰宅したユースタシアは我が子のように大切にしている庭が荒らされていることに気づいた。さらにはシモーネの身近な人物が珍しい植物毒によって殺されたことを知り、ユースタシアの引きこもり生活は崩壊しはじめる。どうやら世間には植物毒よりよほど有毒な人間たちであふれているらしい……。
コミックやグラフィックノベルの出版社の経営と子育ての傍らで園芸学の学位を取得したという著者らしい、植物の蘊蓄が存分に味わえそうなのが目新しくて楽しみ。隣人たちのようすを望遠鏡を使ってまでのぞき見したがるなんて、いかにも田舎のひきこもり、と思うのは偏見かしら? いちおう好意的に受け止めてるつもりだけどww。
分類的にはスリラーになるけどコージーな雰囲気もなくはない?
定番設定なコージーがまたひとつ。
『Murder on Devil’s Pond』 by Ayla Rose
シリーズ:Hummingbird Hollow B&B #1
カテゴリ:コージーミステリ
ビクトリアンスタイルの古いホテルを改築して新装オープンすることにしたハナとレジーの姉妹は、集客の目玉となるようにホテルを囲む庭にさまざまな花と果樹を植える計画を立てた。だがレジーはあれやこれやと邪魔をするし、出入りの業者はなんだか頼りないし、ぎりぎりの予算しかないし、町の人たちも15年ぶりに帰郷したハナになにかとちょっかいを出してくる。近所づきあいしていると言えるのは隠居暮らしのエズラくらいだが、彼と雲行きの怪しい会話をしたあと、ハナはホテルの敷地内で彼の死体を発見する。
エズラはしょっちゅう誰かの不満を漏らしていたが、なかでも彼の住む一等地から彼を追い出そうとする連中に対しては辛辣だった。町中に憶測が飛び交う中、ハナは自分も容疑者リストに入っていることを知り、疑いを晴らすべく生まれ育った土地の秘密を掘り起こしにかかった。
コーヒーショップや書店と並んでコージーの定番中の定番設定のひとつ、B&B。またかと言わずに読んでいればそのうちこれぞという一冊に出会えると信じてはいるんですよ。さて今回はどうかしら?
バーチャルリアリティの使い方はこれでいいのか?
『The Family Experiment』 by John Marrs
シリーズ:non
カテゴリ:SFスリラー
世界的な人口増加はにぶる様子もなく、人が都市部に集中し、経済も危機的状況が続くなか、イギリスはついに臨界点に達した。もはやほとんどの人が家族になることも、子どもを育てることもかなわなくなった。
それでもなんとしても親になりたいと望むものに代案があらわれた。月ごとの定額料金を払えば、仮想空間で一から子育てを体験できるというものだ。この〈バーチャルチルドレン〉を提供する企業はまず、『ザ・サブスティテュート(代用品)』と名づけたリアリティ番組を放送しはじめた。番組では10組のカップルが9か月のあいだに誕生から18歳になるまで仮想の子供を育てるようすを追いかける。育て上げた子供を“賞品”として手元に残すこともできるが、その子を捨てて本物の赤ちゃんを手に入れるチャンスに賭けるという選択肢も……。
謳い文句ではこの〈バーチャルベビー〉のことを「究極のたまごっち」なんて言ってますが、実際には仮想子供を欲しがる人がそんなにいるんだろうか? そうならもっと養子縁組とか多くてよさそうに思うけど。同性(とくに男性同士)カップルが代理出産を利用してでも「血のつながった」子供を欲しがるのが問題視されるほどだし、赤の他人でもいいから育てたいと思う人ばかりではないからねぇ。番組の賞品として本物の赤ちゃんを持てるチャンスがあれば参加したい人はいるとしても、それとは別に「子育てしたいからバーチャルチャイルドを定期購入しよう」とはならないんじゃないかしら。
作品としてはシリーズものではない単体ですが、同じ作者の既作品『The One』『The Marriage Act』と同じ世界線でのストーリーだそうで、連作になってるみたい。
健康診断でメタボ予備軍がバレた夫が、近所にできたコンビニジムに通いはじめたと思ったらさっそく効果を実感したらしく、わたしにも盛んに勧めてくるように。夫婦そろって運動嫌いを自認してきたのに、ここへ来て楽しくなるなんてことある?と思いつつも、意識的になにかしていかないと老後が楽しくなくなっちゃうお年頃でもあるので、半信半疑で入会してみました。
まだ始めて1ヶ月くらいだし、わたしのほうはぎりぎり標準値内でもあるのでそれほどがんばって減量しようとは思ってないけど、恐れていたほどの嫌悪感なく通えてるのは我ながらすごい。
で、ウォーキングやスロージョギングのおともに、Audibleで聴く読書をしています。本を買ってまで読みたいかどうかわからないな~と思っていた作品でも、聴き放題なら手が伸びるww。どうせ運動中は普通に読書はできないから、読書時間を削ってる感覚にもならず、しばらくはセットで続けていけそう。残念なことがあるとすれば、リスニング力不足で英語のままの原書を聴いても集中力が続かないこと。原書読みがはかどったらこんなにいいことないのにな~
すっかりお待たせしております<(_ _)>
6月中旬あたりから腱鞘炎が出てしまいまして、しばらく手を休めなさいとのお達しが……しばらくパソコンを開くこともなく過ごしておりました。
ということで6月発売分の新刊紹介はお休みといたします。
その間約1か月、ドクターストップを言いわけにしてグダグダと――いやいや、読書に励んでおりました。あと少しで昨年中に発売された翻訳作品が読み切れそうです。
ミステリの原書も数冊はかどりましたが、あいにくレジュメを書いてみようと思えるほど夢中になれず。とはいえ積んである原書はまだまだあるので、地道に開拓していくこととしましょう。
塗り薬とテーピングのおかげでようやく復活してきたところ。7月分からまたご紹介できると思いますので、楽しみにお待ちくださいませ。
台風1号が発生して早々に日本列島に影響がでるなんて初めて聞いた気がするんですけど、記録としてはどうなんでしょう? 幸いこのあたりはたいしたことにならないうちに温帯低気圧になったようでほっとしましたが、そろそろ風水害への備えを見直しておかなきゃですね。
さて今月も食指が動く3冊をご紹介しますよ。
まずはコージーミステリ。表紙がアレに似てる……
『The Art of Murder』 by Fiona Walker
シリーズ:The Village Detectives #1
カテゴリ:コージーミステリ
スタンドアップコメディアンなのにユーモアのセンスが枯渇してスランプのどん底にいるジュノが直面しているのはキャリアの危機だけではなかった。「妻殺し」とささやかれるろくでもない男と再婚しようとする母のそばについていてやろうと、故郷のインクベリー村に引っ越すことになったのだ。
かつてリチャード・カーティス監督が映画のロケ地に使ったほど風光明媚な川岸の景色くらいしか自慢できるものがないのどかな村で、ジャーナリストから作家に転身した友人フィービーの助けを借りて、3人の妻に先立たれた男の過去を調べ上げようとした矢先、地元のアートディーラーの死体が見つかる。
彼の恋人に容疑がかけられるが、もっと深い事情がありそうだと思ったジュノとフィービーが探り出したのは、フィービーの過去とジュノの現在にもかかわってくる秘密だった。
これまた表紙の雰囲気が『木曜殺人クラブ』にそっくり!と思ったら、案の定「リチャード・オスマンのファンにもおすすめ!」と紹介されてます。主役ふたりがコメディアンと元ジャーナリストだけに、ウィットに富んだ言葉遊びのやりとりなんかも楽しめるのではないかと期待しちゃいます。
今月はスーザン・イーリア・マクニールの〈マギー・ホープ〉シリーズ第11作『The Last Hope』も。8巻まで翻訳ずみで、最新刊が出たのが2020年。続きが出るのか微妙? 紹介文にfinaleとあるのでシリーズ完了なんじゃないかと思うと、あと3作、完走してほしい!
つづいてサスペンススリラー。これも有名作品へのオマージュのような……
『She Left』 by Stacie Grey
シリーズ:non
カテゴリ:サスペンススリラー
ある夜、仲間外れにされた気分で友人宅でのパーティを早々に抜け出したエイミーには、それから1時間のうちに5人の友人たち全員が殺されてしまうとは知る由もなかった。
のちに「記念日の大虐殺」と呼ばれるようになったその事件は小さな町を揺るがし、エイミーは「危ういところで立ち去った少女」としてメディアから追いかけ回されるようになった。
それから20年。事件に何らかのかかわりのある10人が人里離れた崖の上に立つ家に招かれた。招待したのは改めて事件を調べて記事にしようと意気込むジャーナリストだったが、招かれた関係者たちはすぐにそれがただの建て前でしかないことに気づく。
嵐が近づくなか、招待客が次々に死んでいくのを見たエイミーは、このなかに事件について自ら認めているよりも多くのことを知っている人物がいることを悟る。秘密を守るためならなりふり構わない人物が。
まるで『そして誰もいなくなった』みたいなシチュエーションで興味をそそられます。主人公へのメディアスクラムがその後どのように薄れていったのか(いかなかったのか)あたりの描かれ方もちょっと気になったり。
今月はハーラン・コーベンの〈マイロン・ボライター〉シリーズ第12作『Think Wwice』も出ました。7巻までは翻訳出たようですが文庫しかなく、現在は入手困難そう。相棒のウィンを主役にしたスピンオフ『WIN』も出たことだし、再販(電子書籍化)&つづきの翻訳とかならないかなぁ。
Amazon.co.jp: WIN (小学館文庫) eBook : ハーラン・コーベン, 田口俊樹: 本
(あら……リンクがこんな型式しか出ないわ)
最後は近未来SF。このバーガーはおいしそう……には見えないわね。
『Murder Burger』 by Brian Hartman
シリーズ:The Perseus Eco Terror #1
新進気鋭の遺伝子工学研究者クロエ・ネルソン博士はついに遺伝子を修正することに成功した。ただし、そのことを誰にも言うわけにはいかない。なかでも研究室に莫大な資金を提供している主任研究員に伝わろうものなら、なんとしても阻止しようとするだろう。
遺伝子を操作して生命体を生み出すのはすごいことだが、どんなネガティブな影響があるかもわからない。その負の影響が意図的に仕込まれたものだとしたら……?
クロエは身寄りのない学部学生を選び、本人にも知らせないまま実験を行って成功した。彼女はそこから富と栄誉を手に入れる代わりに、国際的な環境テロリストのグループへの足掛かりにした。ペルセウスと名乗る謎の男が率いるこのグループの潤沢なリソースがあれば、この発見のインパクトを強めることができるし、彼女の計画をやり遂げるにあたって隠れ蓑になってくれる。
遺伝的疾患などの治療につながりうる遺伝子操作の研究に期待を寄せてはいるけど、思わぬ副作用の恐れがあるのも当然で、そこの検証がたいへんすぎてなかなか治療法が確立できないもどかしさもあるわけで。天才的な研究者が「効果」を前面に出しつつこっそり「副作用」を仕込むとか怖すぎる。でも天才ほど全能感に酔ってやらかすことがあるのも想定内。さてこの主人公クロエはいったい何をもくろんでいるのか……。
先日はちょっと期待してたことのあてがはずれて残念だったのですが、一区切りついたものもあるので、また営業がんばろうと思ったのでした。それはつまり、どんどん本を読まなくちゃ!てことなので。ガシガシ読んでくぞ~。
noteのほうにも同じ記事を載せています。あちらは「マガジン」にまとめてるので購読しやすいほうでどうぞ。
桜が散ったと思ったらいきなりの夏ですね。エアコンの試運転もそこそこに、まずは扇風機を出しましたよ。
コージーにしては恐ろしげ(?)なカバーのこちらから。
『Molten Death』 by Leslie Karst
シリーズ:Orchid Isle Mystery #1
カテゴリ:コージーミステリ
ケータリング業を引退したヴァレリー・コービンは妻のクリステンとともにハワイ島での休暇を楽しんでいた。仕事に邁進してきた日々へのご褒美でもあるが、つい最近、弟を亡くしたばかりで気分転換もしたかった。
ある朝、いままさに流れ出ている溶岩流を見物に出かけたふたりは自然の驚異に圧倒されるが、そんななかでヴァレリーは視界のすみにブーツを見つける。どうしてこんなところに、と思いつつ近づいていくと、なんとブーツにはまだ足が入っている……というか、その足はいまにも灼熱の溶岩に呑み込まれようとしているではないか!
殺人事件にちがいないと信じたヴァレリーだが、目撃者は自分ひとり、被害者はすでに溶岩に埋もれているとあっては警察にも届けようがない。ここはひと肌脱ぐしかない?
引退したとはいえ元ケータラーなら美味しいものには目がないのが当然、ハワイアングルメも存分に楽しめそう。ただしハワイへは休暇で来た設定なので、次作以降は本土が舞台の可能性も。いずれにしてもコージーのお約束、レシピも楽しみのひとつですね。レズビアンカップルが主人公なのもよい。
そしてなんとまだ続いてたんだ……と思わず目を見張ったのがリタ・メイ・ブラウン〈トラ猫ミセス・マーフィ〉シリーズ32巻『Feline Fatale』。邦訳は何巻まで出たんだっけ? 早川のはKindleにもなってますが、なぜかシリーズが切れてますね。シリーズでまとまってるのは3巻までですが、入手可能なのは9冊あるようです。
主人公が故郷に戻って過去の事件を掘り起こす、というのはシリーズの始まりにもってこいなんですね。
『Daughter of Mine』 by Megan Miranda
シリーズ:non
カテゴリ:心理スリラー
思いがけず子供のころ住んでいた家を相続することになって、10年近く前に捨てたつもりの故郷ミラー・レイクへ帰ってきたヘイゼル。その地域はちょうどひどい干ばつに襲われていて、湖の水位もぐっと下がってきていた。その湖底から姿を現したのは……
長年隠されてきた秘密が明らかになり、ついにヘイゼルの母が失踪した事情にも説明がつくのか。
本の紹介文には「地元警官の娘」としか書かれていないけれど、ヘイゼル自身もなんらかの捜査官経験者なのかな? 『ミッシング・ガール』(二見文庫)が邦訳で出てますが、評判はどうだったかしら? 他の作品も本国では高い評価を得ているようだし、日本でももっと紹介されてほしい作家さん。
今月はアンソニー・ホロヴィッツに〈ホーソーン〉シリーズ新刊『Close to Death』、そしてサラ・パレツキー〈V.I.ウォーショースキー〉シリーズ『Pay Dirt』も発売です。ウォーショースキー作品はここまでの21作すべて翻訳されてるんですね! 16巻まではKindle Unlimitedに入っているので、「知らなかった!」という方もこの機会にいかがでしょう?
あの大ヒット作の二番煎じ……にはならないはず。
『Extinction』 by Douglas Preston
シリーズ:non
カテゴリ:SFミステリ
ロッキー山脈のふもと、コロラド州の広大な谷間に作られた〈エレバス・リゾート〉には、マンモスやアイリッシュエルク、オオナマケモノなど、いまは絶滅した動物たちが観光客の目を楽しませている。彼らは遺伝子操作によってよみがえらされたのだ。
そのエレバスの辺境で、とある億万長者の息子夫婦が殺された。環境テロリストの犯行と思われ、コロラド州捜査局(CBI)の捜査官フランシス・キャッシュは郡保安官ジェイムズ・コルコードとともに捜査を開始する。
だがエレバスに住まう古代の賢い生き物がもくろむのは甦生ではなく、絶滅だった(人類の?)。
すでに絶滅した生き物をその遺伝子から復活させる(クローンを作る)というと思い出すのは『ジュラシックパーク』ですよね。いかにも映画向きなアクションとスリルが大衆受けしたわけですが、こちらはどうやら肉弾戦というよりは知能戦? 絵面は地味かもしれないけど、緊迫感は負けてなさそう。
ダグラス・プレストン作品の邦訳には『殺人者の陳列棚』(二見文庫)がありますが、あいにくKindle版がなく、文庫も在庫がなさそう……。
たまたまですが、二見文庫さんから邦訳作品のある作家さんお二人を紹介する回となりました。「あの作家は売れなかった……」があるのはしかたないですが、時間がたてば作家さんも成長する(はず)だろうし、作風が変わったりもあるだろうから、面白そうな新刊が出れば邦訳出版もどんどん検討してくれるとうれしいですね。
いろいろ思うところあって、新刊紹介の記事をnoteのマガジンにもまとめています。どちらでもフォローしやすいほうでチェックしてくださいね。なにしろ「毎月〇日更新!」と言えないので……
つぎはコレ読みたい! ~積ん読は積ん徳なり~|瀬尾具実子(PN)|note
毎年のこととはいえ、今年はことさら寒暖差が激しいような・・・体調はいかがでしょう。私は……何の影響もありません。丈夫に生まれるってほんとにありがたい。みなさまどうぞご自愛くださいませ。
今月最初に紹介するコージーはどこかで見覚えがあるような・・・?
『Caught Dead-Handed』 by Jennifer Wright-Berryman
シリーズ:Hospice Heroes #2 (The Dying Five)
カテゴリ:コージーミステリ
ホスピスに暮らす〈ダイイング・ファイブ(死にかけ5人衆?)〉の経歴はさまざま。かつてホームレスだったこともあるメアリーは、ホームレスのシェルターにボランティアできていた若者が殺されたことに大きなショックを受け、仲間たちとともに歩行器や車いすで犯人探しに奔走する。彼らは入居者のひとり、シルヴィアを仲間に引きこんだ。彼女は製薬業界にいたときの人脈を活かしてホームレスや困窮する人々に必要な医薬品を秘密裏に届ける活動をしているのだが、その供給担当者が殺されたことから、この活動組織の解体をもくろむ者がいることを知って〈ダイイング・ファイブ〉に協力を求めた。
組織のなかの誰が信用でき、誰が信用できないのかもわからず、調べるほどに誰にも動機がありそうに思えてくる。手がかりという手がかりに振り回され、真相に近づいたかと思えばひっくり返り、メンバーそれぞれに災難がふりかかるが、彼らの勢いは誰にも止められない!
いまどきの高齢者は年齢を重ねているとはいえ実に元気だ。老人ホームや高齢者向けコミュニティに暮らす人々が現役時代の知見を駆使して殺人事件の解決にあたるタイプのミステリも高評価なものが多く、本作もその部類に入ります。表紙からして『木曜殺人クラブ』を意識しているのがまるわかり。でもあちらが比較的健康なご老人たちであるのに対して、こちらはなにしろ「ホスピス」の住人、すなわち治療の手立てがもはやなくなって苦痛を紛らわしつつ最期のときを待つばかりのはずの人たち。そんな彼らが謎ときに夢中になって生き生きと活躍するなんて、これ以上励まされることはありません。
「強く生きる」って生易しくないよね、と主人公を励ましたくなるサスペンス。
『The Killer’s Daughter』 by Kate Wiley
シリーズ:Detective Margot Phalen #1
カテゴリ:スリラー
後部座席で赤ん坊が泣きだした。彼はラジオの音量を下げて彼女をなだめた。「静かにするんだよ、ベイビー。パパはすぐに戻ってくるからね」そして彼はそのまま森の奥に姿を消した……。
20年前にベイエリアを恐怖に陥れた連続殺人鬼エド・フィンチの娘マーゴットは、長じてサンフランシスコ警察殺人課の刑事になった。自分の生い立ちを忘れようとしてもわすれることのできない彼女のもとに、父の弁護士から連絡があった。ついに死刑囚監房に移送されることが決まったのだ。その父が、ずっと隠しつづけてきた秘密を明かしたいと言ってきた。ただし、彼女自身が会いに行くことを条件に。
サン・クエンティン刑務所のゲートのまえで、マーゴットは引きかえしたい気持ちにあらがっていた。かつて父と呼んだ、怪物になりはてた男の人となりを少しでも知ることができるかもしれない。彼女を車の後部座席に残していった彼が何をしたのか、ついに本当のことを話してくれるかもしれない。
犯罪者の身内が被害者とはべつの苦しみを背負うことになるのは想像に難くない。親ならどこで育て方を間違えたかと悔みつづけるだろうし、世間もそういう目で見てくるからひっそりと暮らしていこうとするだろう。だが子供は? まったく責任がないのに偏見を持たれながら、どうやって自分の人生を歩んでいけばいいのか。正義を追及する側に立つことを選択したマーゴットの覚悟と心意気に注目したい。
SFというよりは特殊設定ミステリかな。
『The Memory Bank』 by Brian Shea, Raquel Byrnes
シリーズ:Memory Bank #1
カテゴリ:SFスリラー
テクノロジー分野において頂点を極めたジェラルド・プライス博士は、長年研究してきた記憶力拡張法に関して世界を揺るがす発見を成しとげた。だが彼の人生をかけた偉業は、みすぼらしいモーテルでの過剰摂取によりとつぜんの終わりを告げた。
あらゆる証拠から自殺とされて捜査は打ち切られたが、よく似た状況の連続不審死を捜査するモーガン・リード刑事はナタリー・デラクルーズ刑事とともに事件を深堀していく。数々の嘘や企業による背信行為をあばいていった彼らによって、多くの人命を危険にさらしかねない衝撃的な陰謀が露わになる。
最新テクノロジーに絡んで不正に金が動く世界で、ふたりは無辜の人々を救うためにその闇のネットワークに切りこんでいく。
最新のテクノロジーが登場してあっという間に世界のしくみや人々の生活スタイルが一変するスピードは、IT産業の発展にともなってますます加速している。それだけに「当たれば大きい」影響が出るし、とりわけ経済に与える影響の大きさを考えれば利権をめぐる争いが起きないわけがない。スゴイ発見をするようなものすごく頭のいい人間が倫理的にも善人であるとは限らず、かといって最新テクノロジーの構造や展望を見通すほどの能力を持たない人間には何を規制すればよいのかすらわからないゆえに後手に回らざるを得ないのがもどかしい。その時差を悪用するたかり屋をどうすればよいのか。
3部作なのか、すでに3巻まで発売予定があるようです。
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