「怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち」その2(切通理作) (original) (raw)

怪獣使いと少年ウルトラマンの作家たち 増補新装版

過去、7,000冊以上の本を読んでいると、読み進めているうちに、あれ!?コレ、以前読んだことがあるなー!と気づくことがある。また気づかずに、ブログを書いていると、ありゃ!ムカシ、取り上げたなあ!と後で気づくことが多々ある。(^^) 実はこの本もそれだ!!!

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しかも、著者が、いつもお世話になっているブックカフェネオ書房@ワンダーの**切通理作**さんだったとはダブルでビックリ!!!(笑)

「差別・犯罪・初恋・妄執…四人の作家が怪獣に託した〈孤独〉を〈痛み〉とともに体験し直す渾身の力作!伝説の名著、ここに完全復活!日本特撮番組の金字塔ウルトラマンシリーズを支えた四人の作家たち」そのエッセンスを紹介しよう。

・当時、怪獣や怪人の登場する特撮番組はたくさんあったが、いつしか飽きてしまった。それらの番組に出てくる怪物や姿形こそ違えど、たいていは悪の軍団に操られた一兵士かロボットでしかないので、リーダー格を覗いては個別のキャラクターがなかったのだ。

・でも、初期のウルトラ・シリーズに出てくる怪獣たちは違った。レッドキングピグモン、ウー、ジャミラ……。彼らの名前と姿は二十数年経った今でも忘れることができない。それは、それぞれがそれぞれの物語を背負っていたからだろう。開発という名のもとに壊されていく山や森、そして、海底の断層から現れてきたウルトラ・シリーズの怪獣たち。彼らは「バケモノ」ではなく、場違いな世界にはぐれ出てしまった迷い子にすぎなかった。悪の軍団の一員どころか、怪獣たちはいつもひとりぼっちだった。彼らは、その巨体を人間たちの前にさらしたとたんに攻撃を受け、人間社会から追いやられる。

・やがて十代半ばになると、その頃ちょうど社会人になった怪獣ファンの先輩たちが、子ども向けではない〈怪獣〉の本を出版し始めた。それらをむさぼるように読んで、僕はウルトラマン〉が円谷英二ひとりによって作られているのではなかったことを知った。演出していた監督によって、印象がずいぶん違うこと。特撮監督ともう一人の監督がいること。光学合成という、怪獣や宇宙船から発せられる光線を描く専門の人たちがいること。また、怪獣にはデザイナーやぬいぐるみを作る造形化がいて、彼らは美術界でも独自の活躍をしている芸術家だったこと。

・でも、僕がいちばん興味を持ったのは、怪獣たちに、忘れがたい物語を与えたシナリオ作家たちのことだった。**金城哲夫佐々木守上原正三市川森一**。僕にとって印象的な物語を書いたのはこの四人だった。

・この本に登場する四人の作家たちも「淋しかった」子ども時代の自分から目をそらさなかった。まだ二十代だった彼らは、大人のストーリーテラーに徹して「明るく健やか」子どものための物語を作ることができなかったのだ。

「あの頃は蓄積がなかったから、計算された物語パターンや図式の反復なんかなく、自分の感性で書いてました」上原正三

「脚本家と作風というのは違ってくるものなんです。けれどもウルトラマンを書いていた頃は、僕と作風は同じでした」市川森一

彼らは、あくまで個人的な痛みを掘り下げていった。しかし、その掘り進んだ先は、テレビの前の僕のような少年たちの痛みと通じていたのだ。それが「怪獣使い」

である彼らシナリオ作家と僕との出会いだったといっていい。

・今でも僕はウルトラマンの世界に触れると、子どもの頃、学習雑誌のグラビアや**真鍋博小松崎茂のイラストで見た懐かしい「未来」の記憶に心地よく退行し、抱かれることができる。後のウルトラ・シリーズにはない。あたたかな世界との一体感が、確かに最初の『ウルトラマン』にだけは存在するから**だ。しかもそれは、まるで空気のように自然にたち込めていた。

いいなあ。あらためて初期のウルトラシリーズ観たくなりました。超オススメです。(^^)

怪獣使いと少年ウルトラマンの作家たち 増補新装版