ガラパゴスからの船出 (original) (raw)

BABYMETALを初めて聴いたのが、この「Road of Resistance」という曲。

わかる人にはわかる、すさまじいDragonForce(以下ドラフォ)節なんですよね。オマージュにしては恐ろしいクオリティ。「これもしかしてSam TotmanとHerman Liが作曲してるんじゃね?」と少しの間思い込んでいたんだけど、ギターアレンジで参加してるだけで、作っているのは日本人らしい。マジか。「本家が作りました」って言われても信じますよ。「Forever」とか、ドラフォで何回聴いたかわからん単語だもん。

冷静に考えてみると、ドラフォのメンバー呼んできてギター弾かせるのも凄いんだけどね。ギターのピロピロとかリフにしても、ちょっとアジアンテイストのソロとかも、もうドラフォでしか聴けない手癖が満載だもの。この曲は「東の空を~」で始まるんだけど、東アジア風のメロディーが持ち味のドラフォだから、そこをチョイスしたのかなあと勘ぐってます。

ドラフォのメンバーは「自分たちがライブで演奏するわけじゃないから、思い切り難しくしてみよう」と難易度の高いアレンジをしたものの、後にライブに出ることになってしまったので、自分たちの曲の練習を必死でやったっていうエピソード、好き。

官能的なシンボルを自称しているのでしょうか。すごい名前ですよね、オナペッツって。

美大出身でドラァグクイーンの彼女達がデビューしたのは1994年。2枚目のシングルでなぜか浅倉大介プロデュースになり、この「大天使」という曲を発表したわけでして。

いいですねえ、このジャキジャキとしたカッティングギターとJD-800ピアノのコラボの90年代浅倉節。T.M.Revolutionを始める前の、accessっぽさがありつつも、accessにあるワイルドさが薄い感じ。歌声と歌詞の持つ特質なんですかね。

Bメロといいサビといい、JDピアノのバッキングが歌詞と合っているところが、リズミカルで好き。何気に二人の持つ声色は高低差もあって、個性が分かれてるんですよね。基本的に二人の声は揃っているんだけど、エモーショナルなところでちょっとズレもあったりして、そこがいい。サビの「STARDUST KISS」をどれだけ気持ちよく歌うか、という感じがするのも良き。一音ずつ上がっていくのがね、一番いいところで溜め打ちを放つみたい。

歌詞は貴水博之でも井上秋緒でもない、オナペッツのメンバーである宝ルビーによる作詞。ちょっとaccessに寄せてるというか、この二人がなんとなくaccessファンなんだろうな、と思わせるんだけど、隠し切れないセンスが出ちゃってるっていう。だって「愛の使者」というキューピッドのような存在を歌った曲のタイトルが「大天使」なんだもの。しかも宇宙の話まで出てきて、もうスケールが大きすぎるんですよね。このセンスは今までの浅倉曲になかったような気がする。

なので浅倉節全開ながらも、大ちゃんを左右で挟んで独自のセンスをトッピングしたらこうなるんじゃないか、という異色の作品なんだと思う。

2007年の秋に「ご愁傷さま二ノ宮君」というアニメが放送されていました。主人公の下にサキュバスヒロインとツンデレお嬢様が押しかけてドタバタラブコメを繰り広げる…という、今では逆に新鮮なぐらいの王道アニメだったような気がする。たぶんちゃんと見ていなかったのであんまり話は覚えていないのだけれど、確か最終回でツンデレお嬢様をいつもニコニコとたしなめていた執事キャラがガチギレして、真剣な表情で主人公と殴り合いをしていた覚えだけはあるんですよ。なんかそのギャップに「えっ、怖っ…」と思ったような。

しかしですね、このOP曲「ユビキリ」とED曲だけは脳裏に焼き付いているどころか、2024年現在も焼きたてホカホカでリピートしまくっているわけでしてね。

この曲は作詞・作曲家の三浦誠司さんのアニメデビュー提供曲でもあるんですね。冒頭からトランスっぽいシンセの音がタップリと聴こえてきて、弾けるようなスネアもクラップも元気いっぱいなラブコメの本編とすごく相性がいい(編曲はFuntaだけど)。全編通してシンプルなコードで構成されているのも、私好み。Bメロの二長調からト長調へ転調するところ、二人で声を合わせて「願いをかけたら」のあたりでゆったりと歌う所は、うっとりしちゃうよね。

Bメロ~サビは意外にもマイナーコード多めなのに暗くならず、ちょっぴりセンチメンタルな乙女心を表しているかのようで、そこもこそばゆい。

そしてサビの最後の「ああハートがきゅっとなるような」の「きゅっ↑」っていう、ここですよ!月村真由(CV:門脇舞以さん)の歌い方!耳へ快感を与えてくれるのだから、さすがサキュバスですわ。

この曲にハマってから17年。今でもこのサキュバス達は、私の耳から離れてくれそうにないです。

「TOKYO'S FINEST」というアルバムは面白くて、前作でオラついていたジブさんが、「こんな一面もありまっせ」とばかりに、多様なラップをしていたりする。

その中でも脱力的で、それでいてクールな一曲がこの「東京's Finest feat.BIG-O」だ。

Banu GibsonBetty Boop」のサンプリングから始まるINOVADERのビートは、もったりとしたホーンセクションと相まって、ダラっと聴ける仕上がりになっている。

そこに入るZeebraのラップは、Zeebraらしさ満開のセルフボースティング。派手な生活を送る自分をスクープするフライデーに「マジうざいぜ」と言いながら、数秒後には「撮りたきゃ撮りなパパラッツィ」と開き直るジブさんがカッコいい。

しかしこの曲の一番の魅力はBIG-Oこと、SHAKKAZOMBIEのOSUMIのラップだろう。

ウイッス ジブさんひさしぶり

そうそう青山のステーキ屋ぶり

Uh oooh 何そのBling bling

重さからしてグランプリ

「俺の日常はマジハンパないぜ!」と言っているZeebraに対して「久々っス!カッコいいブリンブリンっスねえ!」と、それまでの流れをガン無視して愛嬌ある会話調でラップをするOSUMIのヴァースが面白いよねえ。

そして力の抜き方とパワフルで重量感のあるフロウが、この曲のビートととても相性がいいのだ。ちなみにZeebraとOSUMIが食べに行った「トニーローマ 青山店」というステーキ屋は実在したそうだ。

後半でOSUMIは「まだ足んねぇ 山積みヤリてぇコト まだあるぜオモシれぇコト」とラップしているが、まさかこんなに早く亡くなるとは…。

この曲もたまたま、CSのMV垂れ流し番組を見ていた時に出会ったんです。えらくポップで楽しい音楽をやるバンドがいるなあと。

曲だけでなくMVからも伝わる、享楽的でサイケデリックでセクシーで、だけれどオシャレな世界観。アメリカのバンドなのに、遠い向こうにイギリスのグラムロック的な匂いを、そして割と近くにBee GeesやQUEENの影響を感じるバンドだ。作曲にはElton Johnが参加しているというから、納得がいく。このような要素があるからか、やはりイギリスでの売り上げが凄まじかったらしい。

何が面白いかって、これだけノリノリなのに曲名が「I Don't Feel Like Dancin'(踊りたい気分じゃない)」ってところよね。いやいや、めっちゃ踊ってるじゃないですかと。この曲の肝は「I'd rather be home with the one in the bed 'til dawn with you get down with youという部分にあるだろう。「クラブへ踊りに行くより君と朝までベッドにいたほうがいいよ」という、やはり享楽的な愛を謡っている。なんてわかりやすいんだ。

この曲はボーカルのJakeがスランプに陥ったものの、そこから抜け出した時にできたものだそうだ。だから希望に満ちた明るい生(性?)が描かれているんじゃないかなあと思っている。少なくとも当時受験生だった私のテンションを盛り上げた曲なのだから。

THE TIMERSから忌野清志郎に入った私なんだけど、清志郎の曲で一番好きなのが、この「JUMP」だったりする。

何が凄いってこの曲、晩年の曲なんですよね。亡くなる数年前にこんなパワーのある曲を作ってしまうのが清志郎清志郎が若い頃から持ち続けている反骨心と人間愛が十二分に発揮されており、悲しみを表すであろう夜があって、それでも希望の夜明けに向かって進んでいくポジティブさをテーマにした名曲だ。

歌詞の「ひとつだけ多すぎる朝 うしろをついてくる」は、Bob Dylanの「One Too Many Monings」のオマージュだろうか。歌詞の世界観も似ており、清志郎らしいリスペクトを感じる。

何よりカッコいいのがバンドセクションの編曲!もうイントロのギターから痺れるのよ。The Doobie BrothersやThree Dog Nightを思い出させるような西海岸のロック譲りのフレーズ。そこにホーンアンサンブルが入ってきて一気に豪華になるんだから、もうたまらんですぜ。この曲ではオルガンやピアノまで使われていて、さらに「世界のど真ん中で」のくだりでは、本当にティンパニーを鳴らしている。この部分の歌詞の(清志郎らしい)凶暴性と相まって、インパクト大である。

要するにこの曲は、清志郎が持てる全てのエネルギーをつぎ込んだように思えるのだ。もちろん全ての曲に対して清志郎はエネルギーをぶつけているし、この後も何曲か作品を発表するのだが、「JUMP」からは、今まで歩んできた清志郎としての人生の全てが詰め込まれているような気がしてならない。

ちなみに上に挙げた動画は清志郎が亡くなる1年前、確か2008年にNHKで放送された「SONGS~忌野清志郎~」の最後の曲であったと思う(アンコールは除く)。これを最後に持ってくるんだから、やっぱりカッコいいよなあ。

「母と子のテレビ絵本」(現:てれび絵本)という、NHK教育で放送されている番組がある。物語と歌のコーナーがある15分ぐらいの短い番組で、幼少期の私はこれを見て育っていた。その番組で流れた曲の中で、最も印象的だったのが荻野目洋子の「星のスケート」という曲である。

なんて素敵な世界観なんだろう。星空がスケートリンクであり、流れ星をスケートの跡に喩えたロマンチックで広大なスケールを持つ、まさに「夢のスケート」の歌だ。スケートシューズも「光の靴」と形容しており、星を追いかけていくその姿に心のキラキラ具合が止まらない。2分30秒にも満たない、ただそれだけの歌なのに、あまりにも美しい世界が確立されてしまっている。

そしてこの素敵な世界観を飾り立てる楽曲も素晴らしい。ドラムがない分ベースが低音域を支え、その上でピアノやストリングス、ピチカートのハープっぽいシンセの音が、それこそ夜空を滑るスケートのように広がっていく。サビの気持ちよさは王道進行を使っているからだろう。

そこに乗る荻野目洋子の優しくて温かみのある力強い声が、この曲を満点の出来にしている。この曲は荻野目洋子が1994年にリリースしたアルバム「SCANDAL」の再販売版である、「SCANDAL [+6]」(2010年)に初めて収録された。おおよそ15年の月日を経て音源化したわけだが、それほどファンに待ち望まれ愛されていた曲なのだ。