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「尊皇攘夷」が「世界史の奇跡」を生んだ(6) (インタビュー・『明日への選択』平成20年12月号)復興する朝廷の権威━━━━ 尊皇思想が学問の面でも、民衆の思想として高まっていくと、現実の政治にも反映していくことになるわけですね。
松浦
ええ。外国船が出没する少し前から、内政の面では朝廷が少しずつ重みをましてくることになります。 特に十八世紀末に起きた「天明の飢饉」に際して、何万人もの民衆が“天皇陛下に難儀を救っていただこう”ということで、御所を拝みに行く「御所千度参り」と呼ばれる動きが起きました。 これは、信仰という「かたち」をとってはいますが、人々の本音は、天皇陛下から幕府に何か言って欲しい、ということであった…と思います。そして実際、時の光格天皇は、幕府に対して、「民衆に救済米を出してやってほしい」と、江戸時代では、はじめてのことになりますが、幕府に対して「内政」に注文をつけられるのです。 ちなみに、天明の飢饉があったのと同じころ、フランスでも飢饉が起きました。しかし、フランスでは飢饉によって革命が起こり、王様も、王妃のマリーアントワネットもギロチンで殺されました。こうしてブルボン王朝が潰れたわけです。日本は、まったく逆で、飢饉によって、逆に朝廷の権威が、飛躍的にたかまっていくわけで、ここらへんに「国がら」の大きなちがいが見えます。 じつは朝廷の儀式の復興は、江戸初期の後陽成天皇のころから、すでにはじまっていて、戦国時代に廃れたいろいろな儀式が、江戸時代を通じて、次々に復興していきます。後陽成天皇は、後水尾天皇に位を譲られるとき、醍醐天皇の例にならって、“測位と元服を同時にさせたい”ということで、幕府と対立されているほどです。 また、先にふれた光格天皇の崩御後には、「天皇号」が「復古」しています。そのころ、平安時代以後の天皇は「天皇」ではなく、長く「院」と称されていたのですが、その時から、また「天皇」と言われるようになったのです。 これは古代以来のことだ…というので評判になり、この調子でいくと、いずれ古代のような山陵がつくられるようになるのではないか…という噂が、人々の間に広がったりもしています。 実際、後に孝明天皇は、山陵復活に乗り出されています。それこそ「禁中並公家諸法度体制」からすると、ありえないようなことが、次々に起こっていくのです。 「復古への気運」というのは、単に皇学(国学)などの、学問の世界だけで高まっていったものではありません。以上のように、江戸時代を通じ、じつは朝廷の儀式の復興などを通じて、同時に高まりつづけていったものなのです。(つづく) by matsuura_mn
2016-06-01 13:59
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