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(講演記録)天皇を仰ぐ ―み光かくす雲をはらはん (2)
皇統は日本の命
もっとも、皇室に関しまして私たちは、ただ単純に喜んでばかりもいられません。心ある国民は、心のどこかに、今何とも言いようのない心配を抱えているのではないでしょうか。 それは言うまでもなく、皇位継承の問題です。昨年11月、高円宮親王殿下が御年47歳というお若さで薨去されました。一年を経た今も、私どもの心に深い悲しみを残す、まことに無念きわまりない出来事でありましたが、これによって、皇位継承者が、また一方、確実に失われたということになります。高円宮家は、否応なく廃絶の運命にあります。 しかし、ご承知の通り、ほかの宮家も、その前途、極めて不安です。現在、宮家が六つありますが、高円宮家、常陸宮家、秋篠宮家、三笠宮家は皇子なし、高松宮家は妃殿下のみ、桂宮家の親王殿下は独身ということでして、要するに、昭和40年に秋篠宮親王殿下の御誕生より今日にいたるまで、皇族男子のご誕生はないわけです。 これは実に深刻な事態と言うほかない。皇統あればこその日本です。 二千年の歴史を通じて、国民が命をかけて、日本の最後の一線として守ってきたのが皇統です。「憲法」も改正しなければならないし、「教育基本法」も改正しなければならない。それらのことは、私も悲願としております。しかし、皇統を守るには、時間の制約があります。 事態は、「一刻を争う」と言っても過言ではない。皇統が今や、これほどの危機に直面している。 それなのに政治家も国民も、あまりにも楽観的すぎるような気がしてなりません。保守派の中にも「女帝を認めれば簡単に解決する」などと言う人がいますが、これは歴史を知らないと言うか…、目先のことだけで考えすぎていると言うか…、そういう意見だと、私は思っています。と…言いますのは、「それでは、そのあとはどうするのか?」という問題があるからです。 二千年の歴史を通じまして、確かに「女帝」は存在しますが、いずれも一代限りです。女帝が婿を取って生まれた子供が皇位を継ぐ、などという例は一件もありません。 女帝はあくまでも、日本の歴史上「中継ぎ役」としてのお役目を果たしてこられました。それが神武天皇以来の、皇位継承の伝統です。 皇室の伝統を崩していいのか…、そのことに対して、もう少し考えるべきでありましょう。そう考えてくると、ことは「女帝にすれば簡単に解決する」というような、そういう問題ではないのです。 そもそも、なぜ宮家が、これほど先細りになったのかと言うと、けっして自然にそうなったわけではありません。その点をご注意いただきたい。 先細りになるよう、すでに60年前にセットされていたのです。仕組んだのは、GHQです。 GHQは当時十四あった宮家、を三つに減らした。「自然消滅を謀った」としか思えません。せめて占領の解除…、つまり主権回復を機会に旧宮家を復活させておけば、こんな問題はなかったわけです。だいたい戦後の政治家は、何をやってきたのか。この点、きわめて無念に思います。 しかし、すでに半世紀の歳月が流れました。残念ながら、すべての旧宮家が、かつての皇族の威厳を保った状態におありになる…というわけではありません。臣籍降下以後、五十年の歳月の中で「好ましからざる環境に置かれた」旧宮家もある、ということです。 けれども、聞くところによりますと「好ましからざる環境に置かれていない」旧宮家も、いくつかある。つまり、なお、かつての皇族の威厳を保った状態である旧宮家も、若干あるらしい。 この点を考慮して、一刻も早く「皇室典範」を改正し、両陛下にご安心いただく。両陛下は皇祖皇宗に対して、その点を一番ご心配されているのではないか、と私は拝察いたします。「宸襟を安んじ奉る」ということですね。 それが国民の責務だと思います。手遅れにならないうちに、旧宮家の皇籍復帰を可能にするための「皇室典範改正」の声を、私どもが上げてくべきではないでしょうか。 (つづく) by matsuura_mn
2007-11-21 10:08
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