緑がちる (original) (raw)

このブログを始めてから、3年とちょっとが経った

元々はFootball Managerというゲームのプレイ日記を細々と書いていて、時折現実のヴェルディのことを書くブログだった。

2021年秋、「俺はシバが嫌いだった」という記事を書いたら、それが最終的に柴崎貴広本人にまで届いてしまった。文章を綴ることの嬉しさと怖さの両方を初めて実感して、それでなんとなく題材の軸足をヴェルディに移した。

最近は欲張ってnoteまで書き始めたけど、基本的にどちらも綴るのはヴェルディ絡みのこと。

自分の記事の収益化はしていない。この先もする気はない。

文章を書いてお金がもらえるなら、それは素晴らしいことだと思う。本当にわずかにぼんやりと、そういった職につきたいなと、夢見たこともある。

でも、少なくとも、趣味で書いている自分の文章にそんな価値はなく、また、お金が介在することで、もはや趣味として成り立たなくなってしまうことが嫌で、それを避けている。

じゃあ、なぜこんなブログやnoteを書いているんだろうね、って話なのだけど。

それを語るうえで、僕の中でずっと憧れの存在である、**まぐまぐまぐろんさん**のことを取り上げたい。

僕がインターネット経由でサッカーの情報を入手し始めたのが、高校生だった2009年頃。

当時は主にfuori-classeというサッカー総合掲示板に入り浸っていたのだけど、そこだけではヴェルディの情報が足りなくて、ヴェルディサポーターのいろいろなブログも巡回していた。

その中でも、まぐさん蹴球七日。さん(カズモトさん)、緑一色さん(りゅーはーさん)のブログは、欠かさずといっていいほど読んでいた。

僕がサッカーにのめりこんだあの時代は、今のように映像が世に溢れてはいなかった。だから、文字でスポーツを記す/読む、という文化が盛んだったと思う。懐かしいですね。

動画投稿サイトやSNSが発達した現在において、なおも文章でサッカーを語るという行為に、どれだけの価値が残っているのかはわからない。

だけど、過去に起きたことを知りたくなったとき、その時々の空気感をさかのぼって味わいたくなったとき、動画や音声と比べて、テキストが一番検索性が高く、そこに意義があるとは思う。

事実、まぐさんのサイトには、2001年からのヴェルディにまつわる諸々が、すべてそのまま刻まれている。もはやヴェルディの歴史辞典といっても過言ではないだろう。

僕の文章にそうした意義があるだなんて、口が裂けてもいえないけど、心を動かされた瞬間を、いつかまた振り返りたくなった時のためにどこかに留めておきたいという思いが、ブログを書く動機のひとつだ。

(この記事だけはそれができたと、ほんの少し自信を持って言える)

でも、それ以上に僕の動機になったのは、まぐさんが綴る文章の魅力、より正しく言えば、“綴る”という行為そのものに対する魅力だった。

彼の記事の中にちりばめられたユーモア。どんなに深刻な負け試合のあとでも、どことなくあっけらかんとした語り口。自軍のみならず、相手チームのよかった選手もしっかりと記していくスタンス。ヴェルディへのそうした向き合い方、文章の綴り方が、とにかく好みだった。

さっき挙げた他の方のブログだってそう。

カズモトさんの蹴球七日。は写真メインのブログだったけど、彼のファインダー越しの選手たちは、どこか柔らかな表情をしていた。おそらく撮り手の人柄がそこに映りこんでいたのでしょうね。

あと、10年くらい前にツイッターを始めてから出逢ったふかばさんの文章には衝撃を受けた。同じピッチ内の事象を見ているはずなのに、こうも深く思索を巡らせることができるのか。すげえ。

彼らのブログがなければ、僕はここまで深くヴェルディにハマることはなかったかもしれないし、彼らのようになにかものを書きたい、という憧れがあった。

これは文章に限らず、写真でも絵でも動画でも音楽でもそうなのだが、

ヴェルディという題材から感じとったものを、なにかしらそれぞれの受け手の中で一ひねりして、エンターテインメントに昇華して、世に出すという行為が、僕は好き

切り口こそ異なれど、それは各々の愛情表現であり、その中にその人自身の個性だったり、その人の生きざまにヴェルディが与えた影響だったり、そんなものが透けて見えるのが、好き。

だから僕も、ブログを書く。

僕自身はなんの魅力もない人間。コアサポの方のように毎試合現地で熱い応援を作れるわけでも、サッカーを戦術的に説明できる素養があるわけでも、人を巻き込むような情熱的な行動ができるわけでも、Youtuberみたいに喋れるわけでもない。

だけど、これまでの人生において、東京ヴェルディがどれだけのことを果たしてくれたのか、それを語る資格くらいはあると思っている。僕にとって、それを表現できる方法は文章だけだから、ここやnoteに思いの丈を記す。

ブログを書くたびに「もっと外部の人間をも巻き込む文を書けないものか」という葛藤もつきまとう。だけど、小学生の頃から既にヴェルディが好きだった人間に、そんなものは到底書けない(だって、ヴェルディに興味がない人間の気持ちを推し量ることができないし)。だから、「こんな僕の文章が、内輪の人間でもいいから誰かに響いてくれたら、なにかしらの意義があるよな」なんて自分に言い聞かせながら、「投稿する」のボタンを押している。

繰り返しになるけれど、僕もブロガーの端くれとして、その大変さを理解しているからこそ、

ヴェルディのことを日々綴っている・・・ここでいう“綴る”は決して文章のみならず、写真や映像や絵やそういったもの・・・人たちのことを、僕は本当に本当に尊敬しています

この文章は、そうした方々に一方的に送りつける、ラブレターのようなもの。

そして、僕だって愛するチームのことをこれからも綴っていくからね、という宣言でもある。

僕をヴェルディ沼に引きずり込んでくれた文化への感謝と、僕もそうした文化の一端を担えたら嬉しい、という気持ちを込めて。

いつまでも書き続けられるわけではなくて、近い将来その時間はなくなるから、いまのうちに、書きたい。

最後に、そんなコンテンツを生み出すヴェルディサポが一人でも増えてくれたら、これほど嬉しいことはない。

ヴェルディ綴るも、十人十色。どんな形でもいいから、皆さんの愛情表現を、もっとたくさん見ていたい。

大好きなヴェルディというクラブが、同じくヴェルディに愛情を注ぐたくさんの人間たちによって、いつまでも華やかに彩られていますように

16年ぶりのJ1でのシーズンがいよいよ佳境を迎える只中に、そんな願いを込めて、この文を締める。

軽めの記事なので、最初はnoteにしようか迷ったけど、結局こちらのブログに書いた。

自分にとって、この文章は、あえて“ブログ”に載せる意味がある、と。

noteのほうは折に触れて更新していたけど、こちらのブログを書くのは久しぶりだ。

あさってに控えた東京ダービーのことでも書こうかと思ったけど、前回書いた記事がダービーに対する僕の気持ちのすべてだし、無理やり檄文をひねりだすのもちょっと違うな、って思った。

ということで、まとまった時間がとれたお盆休み、ふだん追いかけきれていない期限付き移籍中の選手(合計12名)について、映像をチェックしながら記事を書いてみることにした。

ひとつだけ。偉そうに選手評を書いているけれど、あくまで自分が見た範囲内での感想にすぎないので、決して鵜呑みにはしないでほしい。ただ、もしこの記事が、今は別の場所で戦う緑の戦士たちに思いを馳せるきっかけとなってくれたなら、とても嬉しい。

なお、記載したシーズン成績は、ヴェルディ在籍時の数字を除いています。

あと、今後の近場(関東圏)での試合予定も書きましたので、現地に足を運んで彼らを応援したいという方、ぜひ参考にしてください!

GK 飯田 雅浩

【生年月日】2000年10月5日(23歳)

【現所属】ヴァンラーレ八戸J3

【2024シーズン】明治安田生命J3リーグ 1試合出場、天皇杯 1試合出場、ルヴァン杯 1試合出場

現在、ヴェルディの絶対的な守護神として君臨するマテウス・ヴィドット。ブラジルでの報道によると、どうやら彼との契約は2025年末までとのこと。もちろん彼がこの先もずっとヴェルディでプレイしてくれればいいのだが、一寸先は闇のフットボール界、もし彼になにかあったときの後継者の確保、これは今のチームにおけるひとつの懸案だ。俗にいう2025年問題である。

”大学No.1GK”の称号を引っ提げて入団し、ポストヴィド候補最右翼と目された彼は、2年目を迎えた今季、高校生活を送った青森の地で修業中だ(っていっても八戸市青森市はだいぶ距離あるけど)。

ここまでの出場数は、**カップ戦を含めてもわずか3試合**。開幕節の大宮戦でいきなり初出場したものの、4失点とほろ苦デビュー。その後はベテラン大西勝俉の後塵を拝している。大西選手も、ケガがちなキャリアではあるものの、間違いなく実力者。八戸も順位こそ中位に甘んじているが、23試合で21失点と守備面に関しては上々だし、僕が見た数試合でも安定したセービングと好配球を見せていた彼の牙城を崩すのは、なかなか難しいとは思う。さらには、昨シーズン大西の離脱中に代役を務めた谷口裕介との競争もある。

とはいえ、もちろんこのまま控えで終わってほしくはない。天皇杯の鹿島戦では、現地に駆けつけた鹿島サポからの煽りにやり返す一幕もあったらしい。その熱いハートで競争を勝ち抜き、自信を胸に帰還を果たしてほしいと思う。

【今後の近場での試合予定】残念ながら関東圏での八戸の試合はこの先なさそう・・・

DF 山越 康平

【生年月日】1993年5月4日(31歳)

【現所属】ジェフユナイテッド千葉(J2)

【2024シーズン】明治安田生命J2リーグ 2試合出場

個人的な感情にすぎないが、彼がチームを離れるのはとても寂しかった。昨シーズンの昇格に貢献してくれた選手たちはみんな平等に好きだけど、彼はなにより同い年なのでね。1993年度生まれの選手、もう今のチームにはマテウスしかいなくなってしまった。

ヴェルディに来てからの2年間、彼は貴重な守備のマルチロールとして、決して厚いとはいえない選手層を支え続けた。今シーズンは彼にとっても2017年以来のJ1、期するものはあったはずだが、思うように出場機会は巡ってこず、途中出場した東京ダービーでは低調なパフォーマンスも見せてしまった。千田の台頭後は完全に出場機会を失い、6/28にジェフユナイテッド千葉へのレンタルが発表された。

先日の8/3横浜FC戦で移籍後初出場。後半アディショナルタイムに2点を取られ逆転負けという、あまりにも衝撃的な敗戦の場にいきなり居合わせることになったが、彼のプレーは決して悪くなかった。続く岡山戦でも連続フル出場。ちょっとフィードのミスが続いたのでドゥドゥが怒ってたけど、まあコッシーにいろいろやらせすぎても、ね?

若手選手たちの期限付き移籍とは意味合いが異なる。彼がまたヴェルディに戻ってくる可能性は、限りなく低いだろう。それでも、とりわけ思い入れの深い選手として、彼の今後の活躍を、定型文とかではなく、祈る。

【今後の近場での試合予定】ホーム千葉だしね、近いよね。

DF 佐古 真礼

【生年月日】2002年12月2日(21歳)

【現所属】いわてグルージャ盛岡J3

【2024シーズン】明治安田生命J3リーグ 12試合出場、天皇杯 2試合出場、ルヴァン杯 1試合出場

目下J3最下位と不振にあえぐチームの中で、彼もまた、もがいている。

グルージャの状況は苦しい。リーグ戦23試合で総得点15/総失点45は、いずれもリーグワースト。4月の琉球戦では、あまりの守備のひどさにFW都倉賢がベンチに対して苛立ちを露わにするシーンもあり、5月には監督交代があったものの、チームの成績は一向に上向かない。

真礼自身のパフォーマンスも、正直よろしくない。攻守両面での状況判断の悪さ、そしてボールにチャレンジするときの軽いタックルや、裏を取られたときに安易に手で掴みにいこうとする雑さ。空中戦は相変わらず強いし、時折見せる鋭いロングパスには「おっ」となるのだが、まだまだ粗が多すぎる。ぶっちゃけ、パワープレー要員として最前線で使われていたルーキー時代のほうがいいパフォーマンスだったんじゃないかとすら思えてしまう。14節以降ポジションを失ってしまったのも仕方ない。

先日退団してしまった平の魂を引き継ぐのは、同じレフティであり緑の血が色濃く流れる彼であるべきだと、ずっと期待している。彼が見せるヴェルディへの愛は間違いなくこちらにも伝わっているし、その思いを成就させてもらうにも「もう一度ヴェルディに戻って城福さんに鍛えてもらうのがいいのか、それとも実戦で経験を積みながら一人前のCBを目指してもらうのか、どうしたものか・・・」と、頭を抱えてしまう。

— 𝘺𝘶𝘤𝘩𝘢𝘯𓂃𓅯 ⸒⸒ (@yu__kichan) 2024年7月1日

【今後の近場での試合予定】**9/22(日) Y.S.C.C.横浜**との試合があります(ヴェルディのホーム鳥栖戦とかぶってはいるけど・・・)。

DF 宮本 優

【生年月日】1999年5月17日(25歳)

【現所属】ヴェルスパ大分JFL

【2024シーズン】JFL 1試合出場

稲見やカトレン、慶人と同じく、大卒99年組の一員。そうか、現在ヴェルディでやっているのは稲見だけなのか・・・。

ルーキーイヤーの一昨年、開幕前キャンプでの評判は上々だったし、コロナで大量の離脱者が出た影響もあったとはいえ、リーグ戦9試合に出場を果たした。昨年はJFLの高知ユナイテッドに移籍して10試合に出場。ただ、今年は新天地のヴェルスパ大分で、わずか1分のみの出場に留まっている。

今年、彼は個人ラジオを始めた。

SOCCER AND 「 」 radio | stand.fm

彼自身の思考、これまでの/これからのキャリア、ヴェルディの現状に対する嬉しさ、チームメートや同期との差が開いている悔しさ、あくまで穏やかに訥々と彼は語る。直接言及することは少ないけど、彼が今ヴェルスパで置かれている状況も、なんとなくうかがい知ることができる。彼はメタ認知がしっかりできる人間であり、そしてそれはし烈な競争に身を置くアスリートにとって、必ずしもいいことばかりではないのかもな、なんて、このラジオを聴きながらちょっと思う。

おそらく、今年が彼の契約最終年(ヴェルディは大卒選手に3年契約を提示してるはずなので)。来年彼が契約を巻き直してヴェルディに戻る可能性は、低いかもしれない。それでも、彼の中での理想の選手像、

試合に出てる出てない、
ベテランだ、若手だ関係なくどんな状況でも
そういう行動を取れる選手が常に自分にとって
キラキラしてとてもかっこよく見えていた。

それを体現できるようになるまで、サッカー選手としての歩みを止めないでほしいと、彼が語る/綴る言葉のファンのひとりとして僕は思う。

【今後の近場での試合予定】9/7(土)クリアソン新宿との試合があります。

DF 河村 匠

【生年月日】2000年9月13日(23歳)

【現所属】ブラウブリッツ秋田(J2)

【2024シーズン】明治安田生命J2リーグ 1試合出場

いわきFCから引き抜いてわずか半年、ろくに使いもせず同じカテゴリの秋田に放流する。以前の僕であればブチギレ間違いなしの行為だが、いざやる側に回ると「まあでもほら、選手を獲得する側にもいろいろ事情はあるのですよね」と開き直らざるをえない。こうして人は他者のよからぬ行動にも甘く寛容になっていくのだ。

レフティのSB」というのはかねてからの城福監督のリクエストで、それをうけて獲得したのが彼だったわけだけど、結果としてリーグ戦には絡めなかった。J1昇格が決定してから移籍が決まった翁長の存在はともかく、稲見のSB起用や松橋の台頭は、彼にとっても思わぬ逆風だったかもしれない。カップ戦やソシエダとの親善試合でもプレータイムは少なかったので、いまだにどんな選手なのかもよくわかっておらず申し訳ない。それでも、今のチームにおいて、純粋な左利きのDFは袴田しかいないのも事実であり、今後貴重な存在となりうる状況に変わりはない。

まずは秋田で大暴れしてもらって、もう一度J1での挑戦権を!「W河村」の活躍の報せが、北の方角からたくさん聞こえてくることを待ち望んでいる。

【今後の近場での試合予定】あさって8/17(東京ダービーの日)に栃木戦、9/1に群馬戦があるけど、そんなもんかな。ニッパツフクアリの試合も終わっちゃったから、なかなか東京から行きやすい試合は残ってないね・・・

MF 橋本 陸斗

【生年月日】2005年4月2日(19歳)

【現所属】Y.S.C.C.横浜J3

【2024シーズン】明治安田生命J3リーグ 13試合出場、天皇杯 1試合出場、ルヴァン杯 1試合出場

今のヴェルディでも試合に出ている姿がいちばん想像できるのは、もしかしたら彼かもしれない。

永井監督の下、弱冠15歳10か月でプロデビューしたのも、もう3年半前のことになる。デビュー戦でも物怖じせず右サイドから仕掛け、カットインから豪快にシュートを放つ姿には大いに夢を見たものだが、その後はなかなか出場機会に恵まれず、昨年夏にJ3Y.S.C.C.横浜期限付き移籍をした。そして、実質的なプロ1年目の年齢である今季、彼はウイングバックとしてポジションを掴み、リーグ中断前の直近5試合ではフルタイム出場を継続している

奈良戦と鳥取戦はフルで観たが、90分さぼらず左サイドを駆け回り、ひたむきに相手に食らいつく守備をしている姿は、自分の知っている陸斗のイメージとはいい意味で異なっており、感慨深いものがあった。彼のコメントも「まず守備から」という意識がにじみ出ている。

橋本陸斗「上下動できるのが自分の良さでもあるので、守備もやりながら攻撃もやれたら」【J3第23節・vs八戸】[試合前/コメント] : 横浜本牧フットボールマニアックス

もちろん、相手とのマッチアップにおいて、もっともっと自慢のドリブルでぶち抜く姿を見せてほしいところではあるが、変にエゴイスティックにならず、チャンスと見るやすかさずクロスを上げる様を見ていると、これは城福ヴェルディでも十分ポジション争いできるな、と期待してしまう。

日を追ってスケールアップしていく若き才能に、要注目だ。

【今後の近場での試合予定】ホーム横浜だしね、近いよね。

MF 西谷 亮

【生年月日】2004年1月10日(20歳)

【現所属】FC岐阜J3

【2024シーズン】明治安田生命J3リーグ 16試合出場1ゴール

生まれ育ったヴェルディを離れてはや半年、彼はちょっと面白い(?)成長曲線を描きつつある。

ユースから昇格して3年目の今季、彼はFC岐阜へ武者修行に出た。岐阜もJ3暮らし4年目を迎えてしまったわけだけど、メンバーはまだまだ豪華で、彼の本職であるボランチのポジションには元代表青木拓矢や、山口や京都でも活躍したパサー庄司悦大、J3での実績充分な北龍磨らがおり、ポジション奪取はそう簡単じゃないよなあと思っていた。それでも、開幕当初は先発で起用され、庄司とロマンあふれるドイスボランチを組んでいた。3節の讃岐戦ではプロ初ゴールもマーク。

9節の富山戦を最後にしばらくスタメンからは遠ざかっていたが、転機となったのは7/20の沼津戦。彼は後半から**セカンドトップのポジションに移り、相手ライン間でうまくボールを受け、攻撃のリズムを作っていた。続く鳥取戦でも彼は前線で起用され、惜しいシュートを放つなど存在感を見せた。岐阜の2トップは田口と藤岡という得点能力に優れたコンビなのだが、どちらもフィニッシュに特化したタイプであり、にもかかわらずチームは保持志向寄りなのでアンバランスだなあと思っていたところに、彼の万能さがぴったりハマった**感じはある。Twitterを検索したところ「鎌田大地を彷彿とさせる」とつぶやく岐阜サポの方がいたが、長い手足でボールキープする姿、ちょっと似てるよね。

今のポジションを掴み続けるには、得点に直結するプレーがもっともっと必要となりそう。それでも、新天地で新たな可能性を感じさせつつある彼の姿は、見逃すと損かもよ。

【今後の近場での試合予定】残念ながらなさそうです・・・

MF 阿野 真拓

【生年月日】2003年8月30日(20歳)

【現所属】テゲバジャーロ宮崎J3

【2024シーズン】明治安田生命J3リーグ 21試合出場1ゴール、天皇杯 2試合出場2ゴール、ルヴァン杯 1試合出場

テゲバジャーロ宮崎には、緑の戦士が2人いる

まずは阿野真拓から。ヴェルディS.S.小山育ち、ユースから飛び級でトップチームに昇格した彼は、プロではフィジカル面の差に苦しみ、憧れのメッシのようなテクニックを発揮する機会は少なかった。

2022年シーズン途中に福井ユナイテッドに移籍。昨年はその福井のリーグ優勝・地域CL出場の原動力となる活躍を見せ、今年J3の宮崎に移籍した。

宮崎の試合は開幕からDAZNでけっこう観ている。相変わらず彼の背は小さいが、その存在感は抜群だ。卓越したボールさばきには磨きがかかっており、セカンドトップで起用されれば密集した場所で相手を剥がしてチャンスを生み出し、右サイドハーフでは中に入ったり縦に抜けたりと、相手に的を絞らせないプレイをする。リーグ戦初ゴールも鮮やかなシュートだったし、天皇杯でもジュビロ相手に得点を挙げた。球際の強さも身につけつつあり、前線でボールを奪ってショートカウンターの起点になったりしている。ただし、さすが阿野ちゃんうまいなあと思っていたらたまに井上怜だったりするので、皆さんは間違えないよう注意してほしい(どっちも小兵のレフティだ)。初ゴールの試合動画、置いとくね。

適切な表現かはわからないが、16歳にして華々しくプロデビューを果たした彼が、いくら旧知の仲である藤吉信次さんが率いるクラブとはいえ、3つ下のディビジョンである地域リーグにまで身を落としたのだ。どこかで腐ってしまってもおかしくない移籍だったようにも思えてしまうが、彼は福井でファンが選ぶチームMVPの座をつかみ、今年の宮崎でも中心選手として君臨している。

単純なエリート路線では得がたい泥臭い経験を積んでいる彼が、あるいは将来ヴェルディを背負って立つ男になるのかもしれない。

MF 楠 大樹

【生年月日】2000年7月15日(24歳)

【現所属】テゲバジャーロ宮崎J3

【2024シーズン】明治安田生命J3リーグ 19試合出場、天皇杯 2試合出場、ルヴァン杯 1試合出場

桐蔭横浜大出身のスピードスターは、昨年ヴェルディでプロデビュー。秋田戦では幻のゴールを挙げる(微妙な判定で取り消し)シーンもあったが、シーズンを通してヴェルディでのプレイ機会はほとんどなく、今シーズンは阿野と同じ宮崎でプレーしている。

宮崎では開幕戦からサイドハーフのスタメンを確保している。持ち前のスピードは通用しており、裏抜けからチャンスを作ったり、ドリブルで突っかけていくシーンも多いのだが、いかんせんシュートやクロスといったフィニッシュに絡むプレーの精度が足りていない印象。ここまでゴールもアシストも0というのは、やはりサイドアタッカーとしては物足りない。このままだと、夏に加入した永長にポジションを奪われてしまわないかなあ・・・とハラハラしている。1点取れさえすれば吹っ切れそうな気はするんだけどな・・・

テゲバジャーロ宮崎は、天皇杯で磐田を破りガンバ大阪に善戦した戦いぶりが話題となったものの、リーグ戦は6月のYS横浜戦を最後に勝ちなし、直近は5連敗を喫するなど、チーム状態は芳しくない。阿野にも言えることだが、この苦境を跳ね返し、JFL降格圏内からの脱出に貢献することが、レンタルでやってきている”助っ人”として求められる役割になるだろう。繰り返すが、彼のスピードは唯一無二の武器。後半戦の爆発に期待したいし、数字を積み重ねた先に、ヴェルディでの再挑戦も見えてくる。

【今後の近場での試合予定】9/7(土)18:00- ギオンスタジアムテゲバVS相模原の試合があります!この日はヴェルディの試合もないし、阿野&楠コンビを見たい方はぜひ!!

MF 永井 颯太

【生年月日】1999年8月15日(25歳)

【現所属】鹿児島ユナイテッドFC(J2)

【2024シーズン】明治安田生命J2リーグ 0試合出場

本日(執筆時点の8/15)誕生日!おめでとうございます!!

いわきFCから引き抜いてわずか半年、ろくに使いもせず同じカテゴリの鹿児島に放流する。以前の僕であればブチギレ(以下略)

今のヴェルディには珍しい**純然たるドリブラー**タイプの彼は、ルヴァン杯の鹿児島戦でその才能の一端を示したものの、リーグ戦では出番がなく、夏にその鹿児島へレンタル移籍となった。

現在J3降格圏の19位に沈む鹿児島は、永井の他にも町田からMF稲葉修土とFW沼田駿也、山形からFW有田稜(いわきで永井と同僚でしたね)を獲得、精力的な夏の補強を見せている。今年の鹿児島の左サイドには、福田望久斗という売り出し中のアタッカーがいるのだが、彼が全治約3か月のケガで離脱してしまったことにより、同い年のドリブラーである永井にかかる期待は大きい。

移籍時のコメントでも「半年後、ヴェルディに必要な選手と思ってもらえるような成長をしてきたいと思います。」と力強く宣言している。同じくいわき加入から半年でチームをいったん離れることになった河村匠と同様、持っているキャラクター自体は、他のヴェルディの選手となかなか被らない貴重なものだ。あとは一回り二回りデカくなって帰ってきてもらうだけ。期待してるぞ。

【今後の近場での試合予定】10/6(日)ニッパツでの横浜FCがあります!!

FW 佐川 洸介

ゴール時の公式画像がいい顔すぎるんだよな

【生年月日】2000年5月11日(24歳)

【現所属】ザスパ群馬(J2)

【2024シーズン】明治安田生命J2リーグ 25試合出場2得点

2023年8月13日 後半49分 佐川 洸介(試合は1-0で東京ヴェルディが劇的勝利)

2024年3月3日 後半48分 佐川 洸介(試合は1-1で群馬熊本ドロー)

2024年7月13日 後半52分 佐川 洸介(試合は1-1で群馬鹿児島ドロー)

東国大のルカク」なる異名を引っ提げてヴェルディに加入した大型FWは、プロ入り後”絶対AT劇的ゴール決めるマン”になっている。とりわけ、先月決めた鹿児島戦でのミドルはえげつないので、ぜひ見てほしい。

彼は決める時間帯も不思議ならプレースタイルもわりと不思議で「お前はイブラか?」と思うくらい王様然として前線で漂っていることもあれば、気分が乗ったのか急に猛烈なチェイスを見せることもある(あまり長続きはしない)。それこそ鹿児島戦のような目の覚めるようなパワフルショットを放ったかと思えば、こちらまで脱力してしまうようなエンジェルシュートを蹴ったりもしている。まあ早い話が、パフォーマンスにすごくムラがある

187cm/90kgの体躯を活かした空中戦の強さはあるし、足元も結構器用だし、まずまず推進力もあるので、染野や木村勇大とはまた違ったタイプかもしれないが、ヴェルディに戻っても貴重な戦力になりうるポテンシャルは感じる。あとは、継続性運動量の向上がとにかく課題なのかなあ。

現在J2最下位と苦しむ群馬。リーグワーストの得点力が問題であることは間違いない。おそらく彼のポテンシャルと実際の活躍ぶりのギャップに一番もどかしさを覚えているのは群馬サポーターだろう。とにかくシーズン後半戦は大爆発してもらって、チームの救世主になってほしいし、その後にJ1でもその悪魔の左足を披露してもらいたい。こういう個性的なFWというのは、何人いても楽しいものだから。

【今後の近場での試合予定】10/5(土)のジェフ千葉は、ヴェルディの試合ともかぶらないし、行きやすいかも!!山越にも会えそうだし。

FW 河村 慶人

【生年月日】1999年9月11日(24歳)

【現所属】ブラウブリッツ秋田(J2)

【2024シーズン】明治安田生命J2リーグ 3試合出場

2024年2月25日。16年ぶりのJ1の舞台。まだ見慣れない新国立の景色。寒さと緊張で張り詰めたスタンド。反対側で響き渡るマリノスサポーターの歌声。そんな中、いつも通り全力でアップする彼の姿が、いつもより少しだけ大きく見えたのを覚えている。慶人は、いつだってひたむきだった。だけど、それだけですべてがうまくいくほどサッカーは甘くないことも、また事実だった。

今季の出場はわずか2試合、35分のみ。その後は序列を一気に落とし、ルヴァン杯天皇杯ですら、先発に名を連ねることはなかった。J1の厳しさが、そこにあった。

2024/7/2、ブラウブリッツ秋田への期限付き移籍が発表された。移籍に際しての彼のコメントを、改めてすべて引用したい。

このたび、ブラウブリッツ秋田期限付き移籍することを決断しました。

中々試合に出られない状況でもヴェルディの勝利のために何かできることはあるかと考えながら過ごしていましたが、選手として試合に出て成長したいという思いが強く、環境を変えて一から努力していこうと思い、今回の移籍を決断しました。

ヴェルディからは離れてしまいますが、それでもファン・サポーターの方々に応援されるような選手になれるようブラウブリッツ秋田で頑張ってきたいと思います。

最後になりますが、ファン・サポーターの方々と喜怒哀楽を共にした2年半は僕の人生の宝物です。

ヴェルディが大好きです。

本当にありがとうございました。

宮本のところでも書いたが、おそらく大卒選手の契約期間は3年。この期限付き移籍が片道切符になる可能性が高いことも、彼のコメントからうかがえてしまう。

何度でも書くが、2022年、7試合勝ちなしだった町田戦のあと、最後までゴール裏の声を受け止め続けた彼の姿、そしてその3日後の水戸戦で、文字通り最後までピッチを駆けずり回り、チームの勝利を手繰り寄せた彼のプレイぶりは、忘れたくてもそう簡単には忘れられない。とりわけ大切な選手のひとりでしたけどね。

センチメンタルなことばかり書いたが、彼が新天地で水を得た魚のように躍動していることは、とても嬉しい。移籍後さっそく元気に右サイドでボールを追いかけまわし、セットプレーでもターゲットになり、初アシストをマークしたあとゴールを決めた河野貴志より派手に喜び、カメラマンを困惑させていた。誰しもが予想したことだろうが、やはり秋田というチームは、彼の泥臭いプレースタイルに合っている。

彼は、いつだってひたむきだ。そのひたむきさは絶対に報われると、信じるしかないのだ。

【今後の近場での試合予定】匠のところでも書いたけど、東京から行きやすい試合は残ってないかも・・・。

というわけで。

今は離れた場所にいるけれど、ここに挙げた12名はみんなヴェルディの選手。その全ては追いかけられないけれど、応援しています。

またヴェルディのために戦ってくれる機会が来るのか、それともこの先また別のクラブでプレーするのかはわからないけど、ともかく、彼ら緑の戦士たちの未来に、幸あれ

よかったら、他の記事も読んでみてくださいね。

noteはこちら。

なぜ縁もゆかりもない、勝ったからといって自分に何の利得もないこのチームに、どうしても勝って欲しいと思うのか。それはおそらく、ヨシミがこのチームを好きだからなのだけれども、そもそもどうして人間は、サッカーチームなんていうものを好きになるのか。(ディス・イズ・ザ・デイ-津村記久子

サポーター・・・すなわちサッカーチームを応援している人間の、決して少なくない割合が、おそらく自問自答しているであろうこと。

なぜ自分はこのチームを応援し続けているんだ?

選手に興味があるわけじゃないプレー経験ないし戦術もよくわからん、じゃあお前は何が好きでクラブを応援してるんだっていわれるとなんなんだろうと考え込んで数日、俺は何故このチームを応援してるんだ?よくわからん
皆は何故チームを応援してるんだ?

— ずっきー (@kurimitai) 2024年5月28日

ツイッターのタイムラインで改めてこの問いを見つけたから、僕もふと手を止めて、なにかアンサーはないかと考えを巡らせてみた。

あと、ちょっと切り口は違うのだけれど、僕はほぼすべてのチームのサポーターが「ウチのサポに悪い人はいないから」みたいなことを言うのが面白いよなあ、と常々思っていた。わりと温厚なウチのサポならいざ知らず、あんなチームやこんなチームのサポにまでこのセリフを口にされると、ほんとかよ、そんなわけないだろって意地悪な気持ちがどうしても浮かんでしまうのだ。

そんな根源的な疑問に対する回答になりうる資料はこれではないか、と思う。

題して「スポーツファンはなぜ熱狂するか?内集団協力の説明原理」。

psychmuseum.jp

論文のようなかしこまったものではなく、とっても簡潔で読みやすいスライド(たった17ページ!)なので、今回はこちらを主に引用させていただきながら、考察をしていこうと思う。

ああ、まったくその通りだよ

こちらの資料では、まず「内集団」と「外集団」という定義を紹介している。もうちょっと詳しく説明するとこんな感じ。

内集団は、個人が自分はその一員であると認識している社会集団のことです。仲間、家族、地域社会、スポーツチーム、政党、性別、宗教、国家などその例です。

また、内集団は、自民族中心主義(エスノセントリズム)に基づくのが重要な特徴です。

一方、外集団とは、個人が帰属意識を持たない社会集団のことです。

内集団と外集団 | 社会学用語

内集団というのは、決して大それた共通項がなくてもよく、それこそ資料で紹介されているような「好きな色が同じ」程度の理由でも成り立つもの。そう、お察しの通り、同じクラブをともに応援するサポーターってのは、立派な”内集団”なわけである。

そして、大事なことは、人間は自分が所属する内集団の人を優遇する心理傾向を持っていることだ。これを"内集団バイアス"という。

では、この”身内びいき”の心理傾向=内集団バイアスはなぜ生まれるのか。

一つ目の理由として挙げられるのが「**社会的アイデンティティ**」。これは、自分が何らかのグループの一員であることを、自分の個性の一つとみなす考え方のこと。

この考え方によって、そのグループにはある種の「一体感」が生まれる。そして、所属グループ自体の価値、ひいては所属する仲間たちの価値が上がることによって、脳の報酬系が活発化し、自らの価値まで上がったように感じられるのだ。

「なぜ好きなチームが勝つと嬉しいの?」という問いに対する直接的な回答はこれだと思う。

ヴァン・バヴェル:例えば、人間は同じグループの仲間だと感じている人が報酬を獲得する姿を見ると、自分の脳の報酬系まで活発化することがわかっています。

豊かな社会をもたらす健全な「社会的アイデンティティ」とは | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

そして、2つ目として挙げられるのが、「ギブ&テイク」の期待(集団協力ヒューリスティック仮説)である。

これは、グループのためを思った自分の行動が、結果的に自分の利益となることを期待している、というもの。なんかこう書くといやらしく聞こえてしまうけれど、僕たちが声を枯らして熱心に応援すれば、選手たちもそれに応えてくれると信じていることとか、フラッグやグッズをサポ初心者に貸し出すことで、彼らがより深くチームを愛してくれるようになることを期待することとかも、こうした考えに基づくものだと思う。

改めて整理してみよう。

物事の始まりには理由がある。サポーターになったきっかけってのも、人それぞれなにかしらあるはずだ。

地元のチームだからとか、なんか話題になってたから来てみたとか、好きな選手がいたとか、サッカーのスタイルが好みだったりとか、彼氏や彼女の影響とか、おおかたそんなところだろうか。きっかけなんてものはありません、朝、目が覚めたらなぜかスタジアムにいたからです、なんて奇特な人がいたらぜひ教えてほしい。

でも、お目当ての選手はいつかいなくなってしまうし、チームのスタイルなんて監督が代わればガラッと変わるし、まあ彼氏や彼女ともいつか別れるわけで(いや、そんなことはない!)そういったきっかけそのものは決して不変ではないはず。

それでも、応援している間に培った**サポーターとしての帰属意識**は、そう簡単には拭えなくなっているのだと思う。だから、元々の理由がなくなったとて、その帰属意識にとらわれたまま、チームを応援し続ける。

注意しなくてはならないのは、最初はあまり意識せずに、なんとなく集団に属していたはずなのに、ふと気がついてみると、いつの間にか自分の集団に対して強い愛着心が芽生えていることである。バイアスは、知らず知らずのうちに生じてくるのである。

内集団・外集団バイアス-ファンやサポーターは、どうして熱中するのか? |ニッセイ基礎研究所

別に全てのサポーターがそうだ、と断言するつもりはさらさらないが、少なくとも自分なんかはそれに該当するかなあとか思っている。

僕がまだ少年のころに憧れの対象だったサッカー選手たちは、いまや大半が年下になり、とりわけ好きだったGK高木義成はもう15年も前にチームを去っているのだけど、でも僕はずっとヴェルディが好きで、ここにいる。その理由を「惰性」という言葉で片づけるにはあまりにもしっくりこなくて、それはもう帰属意識ゆえとしか言いようがない。僕はヴェルディが好きだし、ヴェルディ愛する人が、やっぱり好きだ。それだけ。

自分がこんな1円たりとも稼げないブログを書いているのも、ヴェルディサポーターが楽しんでもらえるコンテンツが少しでも増えたらいいなあ、なんて奉仕精神だと思ってるし、一方でそれで満たされる承認欲求みたいなのがないっていったらウソになるし。

付け加えると、この資料で挙げられている「一体感」や「ギブ&テイク」に意義や喜びを見出しやすい人もいれば、別にそうでもない人もいると思っている。後者のようなタイプは、もともとのモチベーションが失われた時点で、サポーターをやめたり、別のチームに軸足を移したりするのかもしれない。それは全然悪いことでもなんでもなく、ただその人がそういうキャラクターだっただけのことだ。

とにかく、我々サポーターというのは、この内集団バイアスがこれでもかというくらいかかりまくっている集団である。

だからこそ、臆面もなく「ウチのサポはみんないい人だよ!」なんて言えるわけで、そしてそれはこの心地よいコミュニティに属している我々の中では、おおむね事実なのである

そして、この心理的な魔法が解けない限り、僕たちはこれといった理由も持たないまま、そのチームを応援し続けるのかもしれないね。

ちなみに、内集団バイアスがかかればかかるほど、外に対する攻撃性も増してしまう。ほら、たぶん皆さんもいろいろと思い当たる節があるでしょ。

ああいった姿を醜いと思うのであれば、僕たちも時々、サポーターとしてのバイアスをなるべく振り払って、冷静に自分を見つめ直す機会を設けるべきだと思う。なんでもかんでも「ウチのチームが、ウチのサポが一番〇〇だから」と悦に入るのは自由だが、それが外集団―今回の話でいえば、主に他チームのサポーターや他球技のファンが該当してくるだろう―への偏見につながりかねないことには、注意を払わなければいけないと思っている。

先ほどのニッセイ基礎研究所の記事からも、再度引用。

集団が好ましい効果をもたらすのであれば、集団を形成する意味がある。しかし、集団をつくることによる弊害が見え始めたら、いちど集団から抜け出して、個々に立ち返ってみる。そうした柔軟さが必要といえるだろう。

さて、この話を締めるうえで、3つ大事なことがある。

1つ目は、この話は批判めいたものではまったくなく、むしろ**"サポーター"という内集団に属している我々は、とても幸せなのではないか**ということ。

我々の大半は、会社や学校やそれに準ずる組織という集団に、半ば義務的に所属しているが、それ以外の内集団、とりわけ「一体感」ってやつをリアルタイムに、しかも定期的に味わえるコミュニティを見つけるのって、意外と難しい気がする。

その点、サポーターなんてのは、適当なグッズを買って、Youtubeでハイライトを見る程度でも名乗ることができ、数千円払って現地に足を運べばそれはもう大変立派という、実に敷居の低い存在である。スタジアムに行けば存分に一体感を味わえ、SNS上でもたくさんの味方があなたを待っている。そりゃ、愛するチームが負ければ落ち込むし、外集団であるあんなチームやこんなチームから煽られてストレスがたまる、なんてこともあろうが、だからといって彼らが命や金まで奪っていくわけじゃない。

あるチームを応援するという行為って、なんだかんだ人生に彩りをもたらしてくれるものだというのが、僕の変わらない持論だ。心理学者のバヴェル氏の言葉を借りると、こうね。

ヴァン・バヴェル:私は「アイデンティティは複数もつことができる」という点を強調したいですね。私は親族や家族の一員ですが、同時に大学の教授であり、本の著者でもありますし、休日は自分の好きなチームを応援するスポーツファンになります。補完しあう複数のアイデンティティを使い分けることで、豊かで満たされた人生を送ることができると思うんです

2つ目は、時に「サポーターとは何か」「なぜ自分はこのチームを応援するのか」と問い直すことこそが、この内集団を真の意味で高めるために必要なのだということ。

僕たちはなぜこのチームを愛しているの?地元にある僕らの誇りのチームだから?華やかで強く、常に勝利への渇望を満たしてくれるチームだから?それとも、どんな逆境におかれても歯を食いしばって生き抜いてきたチームだから?

はっきりとした正解はなくとも、僕らの中に大まかな共通認識はあるはずだ。だったら、それを忘れちゃいけない。もしそれが忘れ去られそうになっていたら、誰かがアラートを出さなきゃいけない。それこそが、僕らを僕らたらしめる存在意義であるはずだから。そのためには、単なる馴れ合いに留まらない、意義のあるコミュニケーションを集団内でしていかなくちゃいけない。

バヴェル氏の話の続き。

そしてどの集団においても最も大切なのは、「私たちは何者でありたいか?」を考え、メンバー同士で会話することです。いかなる価値観をもって地域社会や世界に対して関わり、どのように貢献したいのか。誰もが納得して共有できる規範を、社会的アイデンティティとして構築することが大事です。

豊かな社会をもたらす健全な「社会的アイデンティティ」とは | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

そして、最後にいちばん大事なこと。

これは内集団バイアスとはなんの関係もなく、Jリーグを20年見続けてきた僕が言うから間違いないのだが、どう客観的にみても、いい人率がいちばん高いのは、やっぱりヴェルディサポである。断言しよう。だからみんなヴェルディサポになるべきなのだ。これはゆるぎない事実であり、世の真理である。

繰り返すが、僕は決して内集団バイアスにかかってなど、いない。

【参考文献】

スポーツファンはなぜ熱狂するか? | 受賞作品 展示室 社会 | 心理学ミュージアム - 日本心理学会

【内集団バイアス】特徴や具体例、克服法をわかりやすく解説 - ふむふむ心理学

豊かな社会をもたらす健全な「社会的アイデンティティ」とは | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

内集団・外集団バイアス-ファンやサポーターは、どうして熱中するのか? |ニッセイ基礎研究所

あと、冒頭で引用した津村記久子さんの「ディス・イズ・ザ・デイ」は、全てのサポーターの名刺代わりになるような名作だと思います。ぜひ読んでみてくださいね。

この文、noteとどっちに書くか迷ったけど、今回はブログにした。

最近noteでもひとりごとを書きはじめたから、よかったら見てください。

ヴェルディサポの方は、ぜひこちらのカテゴリーの記事も読んでみてくださいね。毎回力入れて書いているので、それなりに面白いと思うんです。