米国史料調査記録(2024年9月/Rockefeller Archive Center) (original) (raw)

前回記したNARA II編に引き続き、今回訪れたもう一つのアーカイブであるRockefeller Archive Center(以下RAC)についてまとめていきたい。ただ、NARA IIとは違ってRACの方はさほど複雑な手続きはなく、難易度は高くなかったように思われる。

RAC外観。外観もいい感じだが内装も素晴らしい。

1. RAC概要

同センターは、ロックフェラー一族およびロックフェラー財団の慈善活動に関する記録を一堂に集めることを目的に、1974年に設立された。元々はロックフェラー大学の文書館であったが、次第にコレクションが増え、現在ではロックフェラー財団のみならずフォード財団やナイト財団、ヒューレット財団など他の機関の文書も所蔵されている。

RACは、ニューヨーク(マンハッタン)からハドソン川沿いに北へ列車で1時間の位置にあるTarrytownという村に所在する。特にこの地はSleepy Hollowという地名で、その名のとおりスリーピー・ホロウ伝説の舞台として知られている。また、『アルハンブラ物語』などの作品で知られる作家ワシントン・アーヴィングが暮らした場所としても知られ、彼が暮らした家(サニーサイド)も現存している。Tarrytown自体もどことなく文化的な香りが漂う雰囲気で、駅から急坂を上って15分ほどのところにある中心部はこじんまりとした飲食店や雑貨屋が並んでおり、落ち着いた雰囲気であった(筆者はとても気に入った)。

2. 訪問前

(1) アーキビストへの連絡

前回のNARA IIと同様、こちらにも専門のアーキビストが何名か控えている。RACのHPのメールアドレス宛に自分の研究テーマや見たい史料(先行研究を参考にする)を送ると詳細な情報を返信してくれる。NARA IIほ閲覧者がごった返しているわけではないためか、その日のうちにレスポンスがあった。NARA II同様に関連史料なども案内してくれるため、事前連絡は必ず行った方がよい。また、後述するようにTarrytownの駅から送迎の車を出してくれるのだが、その車の予約も併せて事前にメールで行った方がよい。

なお、RACの所蔵史料は同館のシステム(DIMES)で検索が可能である(なぜか自動で日本語バージョンになってくれる)。DIMESのアカウントを事前に作り、閲覧予約・出庫予約をする必要があるが、アーキビストからの返信メールにその旨の案内も含まれている。

(2) ホテル

一つ目の選択肢はTarrytown周辺である。しかし、「村」だけあって選択肢はとても少ない。筆者が見た限りでは駅から徒歩30分、バスだと20分の「Sleepy Hollow Hotel」しかなく、筆者もここに宿泊した。結果としてこのホテルは個人的にとても良く(2024年9月当時は費用もさほど高くなく、設備がきれいで、スーパーにも歩いて10分ほどで行けた)、次回もここにステイしたいと思っている。

二つ目の選択肢はニューヨーク市内である。その場合、Grand Central Terminalからメトロノース鉄道(ハドソンライン)で片道1時間かけて通う必要がある。ただ、ニューヨーク市内のホテル代がすさまじいことになっており(ユースホステルでも3万円ほどだった)、鉄道代も片道15ドル程度(ラッシュアワー)はかかる。アフターファイブをニューヨークで楽しめるというメリットはあるものの、あまりおすすめできない。

三つ目の選択肢はハドソンライン沿いのどこかである。宿泊サイトで見た感じだと比較的安価なホテルやAirbnbも候補に出てくる。ただ、場所によっては治安が良くなさそうな雰囲気のところもあるため、駅からホテルまでの道をGoogleストリートビューで確認するなどしたほうがよいだろう。

3. RACへのアクセス

上述のとおりTarrytownにはメトロノースのハドソンラインで向かうことになる。マンハッタンのGrand Centralから乗るのが一番簡単だろう。メトロノース鉄道の券売機で乗りたい列車の切符を買い、乗車口から列車に乗り込む形である。なお、Amtrakもそうだったが、いわゆる「改札」は存在せず、切符を買ったらそのまま列車に乗り込む。車内で係員が回ってきて、切符を回収(ハサミでパチンと、まさに中国語で言う「剪票」)される形である。

RACのHPに記載があるが、Tarrytown駅9:15発で、アーカイブ行の無料送迎サービスがある。ただ、HPでは何もせずとも来るような書きぶりであるが、予約しないと来てくれないとのことだった(現に初日、何もせずに行ったら車が一向に来ず、仕方がなくUberで現地へ行ってスタッフに訊くと、「予約要るよ」と言われた)。事前にメールで送迎がほしい旨を申し添えておくとよい。なお、筆者は何となく送迎バスを想像していたが、普通に乗用車である(見た目には「送迎車」と気づかないが、助手席のところに「Rockefeller Archive Center」と書かれたA4の紙が貼ってある)。

RACに到着すると、送迎の車であれば問題ないが、もし自力でUberなどで行く場合、門の前で降りることになる。門の前にインターホンがあるので、researchの予約をしている旨告げて開けてもらう。

冒頭の写真に掲げた洋館に入る。閲覧室は2階。閲覧室手前にロッカーがあるので、荷物はそこに預ける(NARA IIと違って硬貨は必要ない)。

1階には休憩室があり、そこに冷蔵庫、電子レンジ、給水機、コーヒーマシンがある。RAC周辺にはお店が何一つないため、昼食は持参する必要がある。筆者はTarrytown駅にあるパン屋でパンとサラダを購入して持参した(余談だがそのパン屋のビーフ・エンパナーダが絶品だった)。

なお、Tarrytownは川沿いであるためか、さらにRACは山の上にあるためか、ニューヨークよりも気温が低く、9月でも肌寒かった。気温を事前調べて必要な防寒具を持参した方がよいだろう。

4. 史料調査

事前にDIMEで指定したファイルが閲覧席に用意されている。NARA IIのようなdeclassificationの手続きも特段必要なく、史料の撮影も可能。特に難しいことはなかったように思う。

敢えて上げるとすれば、まず第一に、史料の整理体系をつかむのが若干難しい(筆者もまだ整理中である)。DIMESでは系統図が示されず、またRecord Group、Series、Subseriesといった番号が若干入り組んでいるため、今自分が見ている史料が全体のどこに位置づけられるのかを注意しながら見ていく必要がある。

第二に、ロックフェラー一家の史料とロックフェラー財団の史料があり、その両方に見たい史料が点在している場合がある。例えば、筆者は今回ジョン・D・ロックフェラー3世関連の史料を多く閲覧したが、彼がロックフェラーの個人として行った活動と、財団として行った活動とでRecord Groupがわかれており、一見同じ類の史料であってもそれぞれに分かれて別々に保存されているケースがあった。DIMESで検索する際に、ロックフェラーファミリーの方でヒットしてもそれだけで安心せず、財団の方にも類似のFolderがないか確認することが重要ではないかと思われる。

第三に、DIMESで検索して出てくるのはあくまでもFolderレベルの情報であり、通常、複数のFolderが一つのBoxに入っている。そのため、Folderの分厚さ次第ではあるが、Folder20個とかを申請しても実際に見るBoxは3つ、などということもある。要するに、申請し過ぎではと躊躇わずにガンガン申請しても意外に量としては少ない場合もあるので、積極的に出庫した方がよいと思われる。なお、事前にDIMESで申請していなくても、現地で追加オーダー(DIMESを介して)することも可能であるが、例えば午前中に申請すると午後一での出庫になるなど、若干時間を要する。

閉館時間は17時。17:15にTarrytown駅に戻る車が出るので、それに乗って帰る形である。