画一的な“黒人映画”を打ち破る3本を特集上映 (original) (raw)

上映企画「アメリカ黒人映画傑作選」が4月18日から5月8日にかけて東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開催される。

映画創成期以来、ハリウッドの中で固定観念やステレオタイプへ反発し、人権の向上のために闘い続けてきたたアフリカ系アメリカ人の映画監督たち。今回は画一的な“黒人映画”を打ち破るような作品として、キャスリーン・コリンズ監督作「ここではないどこかで」、ビリー・ウッドベリー監督作「小さな心に祝福を」、ジュリー・ダッシュ監督作「海から来た娘たち」が上映される。

「ここではないどこかで」は大学で哲学を教えるサラが、画家である夫の創作活動に付き合ってリゾート地で過ごすひと夏の物語。1982年の製作当時はいくつかの特別上映のみで公開された。「小さな心に祝福を」ではロサンゼルスの貧困地帯で暮らす黒人家族の過酷な日常を描出。劇中では10分近く長回しで捉えたキッチンでの壮絶な夫婦喧嘩が捉えられている。なおウッドベリーは、新しい“黒人映画”を模索したインディペンデント映画監督たち、通称「L.A.リベリオン」の1人だ。

「海から来た娘たち」の舞台となるのは奴隷解放後の20世紀初頭、アメリカ大西洋沖シー諸島。故郷を離れて移住を決める者、故郷に残る者など、異なる世代の女性たちが物語る歴史と抵抗の声が映し出される。2016年にリリースされたビヨンセのアルバム「レモネード」に多大な影響を与えた作品として注目を集めた。

企画「アメリカ黒人映画傑作選」はヒューマントラストシネマ渋谷のほか、全国の劇場で順次実施される。提供はマーメイドフィルム、配給はコピアポア・フィルムが行う。明治学院大学教授・斉藤綾子による推薦コメントは以下の通り。

斉藤綾子 コメント

「沈黙が破られるとき」
これは大事件だ! 待ちに待った珠玉の黒人監督のフィルムが公開される。
1980年代から90年代初頭に台頭した黒人インディ映画はスパイク・リーだけではない。
キャスリーン・コリンズ、ビリー・ウッドベリー、ジュリー・ダッシュ。
彼らは、わたしたちが今まで目にしたことのなかった黒人女性たちの現実、愛や戸惑い、怒りや傷、歴史やファンタジーを三者三様の作風による独自の魅力に溢れた映像世界で展開する。
LAリベリオンとして知られるチャールズ・バーネットが脚本とカメラを担当したウッドベリーの映像は、例えばジョン・カサヴェテスに近い。
フランスに留学していたコリンズは自己言及的な語りや演出、またカメラの使い方にヌーヴェル・ヴァーグの影響が見られる。
そして、ダッシュはアフリカ系のルーツを模索し、黒人文化や歴史の美学と詩的な語り映像化を試みる。
1980年代初頭のニューヨーク州、1970年代のLA南部ワッツ地区、1902年のアメリカ南部シー諸島を舞台に、堅物の哲学教授がカメラの前で踊るとき、苦しい暮らしの中で妻が失業中の夫に本音で怒りをぶつけるとき、一族の娘が奴隷制の負の歴史ではなく未来を見てと叫ぶとき、沈黙を破る女たちの力強い姿を捉えるカメラのエンパワーメントと映像の真正さにわたしたちは圧倒され、新たな映画に出会えた喜びを味わうのだ。

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