Mr.Q(ラッパ我リヤ)、いとうせいこう、DJ DRAGON、武田真治による「ヤバスギル大人の座談会」 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

ラッパ我リヤのMr.Qが約12年ぶりとなるソロアルバム「Let's Get !」をリリースした。これを記念して、音楽ナタリーではアルバムに参加したいとうせいこう、BLACK JAXX(DJ DRAGON&武田真治)を迎えて座談会を企画。この座談会ではアルバムの意外な制作秘話に加え、3人から見たMr.Q像、さらには超レアな昔話も聞くことができた。ヤバスギル大人たちの軽やかなトークを楽しんでもらいたい。

また特集の後半では、アルバム「Let's Get !」に秘められた企みを明かすMr.Qのソロインタビューも公開。さらに最終ページでは、アルバムに参加したゲストアーティストから寄せられたコメントを紹介する。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 草場雄介

ブレる暇を作るからブレる

──今回はMr.Qさんのアルバム「Let's Get !」に参加したいとうせいこうさんと、BLACK JAXXのお二人にお越しいただきました。

Mr.Q

Mr.Q 本当にありがたいですね。まずせいこうさんに参加していただいた経緯を話すと、俺が開催しているトークイベント「おとなアカデミー」に出演してもらったことがきっかけです。そのときのトークの中でせいこうさんが「ブレる暇を作るからブレるんだよ。こっちはブレてる暇なんかねえんだよ」とおっしゃってて。

いとうせいこう そんな偉そうなことを言ったということは、たぶん酒が入ってたんだろうね。

Mr.Q あははは(笑)。でも俺はそのカッコよすぎる1行に反応してしまって、反射的に「曲作りましょう!」とオファーしたんです。そしたらその場で快諾してくれて。しかも数日後に「曲の件、どうするの?」という連絡と共に、せいこうさんから歌詞が送られてきたんですよ。

せいこう 書いちゃったんだよ、いい歳こいて。たぶん酒でも飲んでたんだろうな(笑)。それにイベントのときに曲の内容についてちょっと話していたし。

Mr.Q 俺はこの曲で今まで一番カッコいいいとうせいこうを聴きたかったんです。大先輩のせいこうさんにこんなことを言うのは恐縮だけど、新しい角度のカッコよさを見たかった。そしたらこんなすごい歌詞が送られきちゃって。すでに俺も制作に入っていたんですが、せいこうさんに歌詞をいただいたことで一気に具体的なイメージが出てきました。

いとうせいこう

せいこう 俺は□□□加入以降、いつも先にリリックを書いちゃうのね。それでそのままレコーディングに行って、ビートを聴いてフロウを作る。今回もQが乗せたラップに影響されて、その場であのラップを作ったよ。でさ、レコーディングするとQの声がすごいデカいんだよ(笑)。俺は喉の調子があまりよくなくて何回もレコーディングできないから、Qの声のレベルに合わせるのが本当に大変だった。でも今回のようなラップはあまりしないから、俺としても新しい表現ができたと思う。こういうのは1人でやっても出てこない。

Mr.Q せいこうさんは80年代後半にヤン富田さんとやってた曲とかめちゃめちゃ攻めてますけど、俺は「ブレてる暇なんか無ぇ」がせいこうさんのラップで一番好きですね。DJ MISTA SHARのビートもクソカッコいいです。

せいこう よっしゃ。

Mr.Q 最近若いラッパーたちがたくさん出てきてることは素晴らしいけど、大人が夢を見られないのはつまらないと思う。せいこうさんのラップは大人に夢を与えてくれる気がします。

酒の席の「一緒に何かやろう」は社交辞令なのに……

──BLACK JAXXはどのように参加が決まったんですか?

DJ DRAGON

DJ DRAGON(BLACK JAXX) 最初に僕とQちゃんが和歌山の新宮という町で出会ったんだよね。

Mr.Q そこで2年くらい前に開催されたパーティで、初めてDRAGONさんとお会いしました。もちろん昔から知ってましたけどね。ちゃんとしゃべるのは初めてで。で、そこでお会いしたあとで俺、熱中症で倒れて救急車に乗ってるんですよ(笑)。

DJ DRAGON 暑かったもんね(笑)。そこからちょいちょい飲みに行くようになって、酒の席で「一緒に何かやれたらいいね」って話になったんです。でもそういうのって社交辞令っていうか、大抵は実現しないんですよ(笑)。

Mr.Q 俺としては「一緒にやろう」って言ってもらえるとそれだけでうれしいんです。だからなんとか実現させたい。それで俺のほうから何個か曲の雰囲気を提案したんですよ。

DJ DRAGON 提案されたとき、僕は「あっ、これはマジなやつなんだ」って(笑)。わりとグイグイ来ていただいたので、僕らも気合い入れなきゃってなったんです。でも作ってみたらかなりポップな感じになっちゃって。速いテンポの曲に真治のサックスが入るという基本構造は同じだったんだけど、提案されたものとはだいぶ違う感じになったから、正直Qちゃん的にはどうなのかなって思いました。しかも送ってからしばらく反応がなかったんですよ!

武田真治

武田真治(BLACK JAXX) そう! 僕もすごい急かされたんですよ。DRAGONが「ソロパートだけじゃなくて、オケのバッキングにもサックスが入った状態でトラックを渡したい」と言うから。それでがんばって入れて送ったのに、全然リアクションがないという。「やっぱりラップの人はこういう感じなのか……」って、この手のジャンルの方への偏見を強めましたね(笑)。

DJ DRAGON そこは俺が悪いかも……Qちゃんからはちょこちょこ連絡もらってたんだよ。それを俺が真治に伝えてなかった(笑)。

Mr.Q 今回BLACK JAXXが送ってくれた曲がすごくモテそうだったので、うれしくてすぐにリリックを書き始めてたんです。俺はそもそもモテたくて音楽を始めた人だから。1番は30分くらいでできて、2番をちょっと考えて。で、できたらすぐにDRAGONさんに連絡して速攻で録りました。

DJ DRAGON レコーディングもすぐ終わったよね。全体的にすごいスピード感で完成しました。

Mr.Q あの曲はミックスも素晴らしくて、マスタリングに持って行ったらエンジニアの東京録音の塩田(浩)が「これはやることないね」って言ってたんですよ。普通そんなのあり得ない。本当に素晴らしい仕事をしていただきました。

DJ DRAGON 間に誰かが入ったりせず、ミュージシャン同士でササって進んだので僕らも面白かったですね。