映画「虹色デイズ」特集|記憶を呼び覚ます青春映画 みずみずしい世界を監督&アーティストの言葉で紐解く - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
映画「虹色デイズ」が7月6日に全国公開される。
「虹色デイズ」は性格も趣味もまったく違うなっちゃん(羽柴夏樹)、まっつん(松永智也)、つよぽん(直江剛)、恵ちゃん(片倉恵一)という高校生男子4人組の友情や恋愛を描く青春物語。実写版のメガホンは「荒川アンダー ザ ブリッジ」「大人ドロップ」「笑う招き猫」の監督を務めた飯塚健が取り、主要キャストには佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、中川大志、高杉真宙、横浜流星というフレッシュで勢いのある若手たちが名を連ねる。また劇中ではフジファブリックの「虹」「バウムクーヘン」、阿部真央の「17歳の唄」、Leolaの「群青」、SUPER BEAVERの「your song」が効果的に使用され、ストーリーに彩りを添えている。
今回、音楽ナタリーでは飯塚監督のインタビューと、本作のためにエンディングテーマ「ワンダーラスト」を書き下ろした降谷建志や挿入歌を提供したアーティストたちのコメントからなる特集を企画。映画「虹色デイズ」の魅力を多角的に紹介する。
取材・文 / 中野明子 インタビュー撮影 / 三浦一喜
飯塚健監督インタビュー
17歳のリアリティを追求する手法
──「虹色デイズ」の実写映画化のプロジェクトはいつ頃に始動したんですか?
原作のコミックの8巻が出た頃です。マンガはつい先日16巻で完結しましたが、映画化の話が出た頃はストーリーがまだ半分くらいだったんです。映画化はなっちゃん、まっつん、つよぽん、恵ちゃんの4人をメインにするというのが発端だったので、そこはブレないようにしました。
──ちなみに恵ちゃんのキャラクターは原作より少しマイルドですよね。マンガではSキャラでムチを出すような場面もあるけど、実写版ではそういうシーンはない。
もちろんSの部分は残してるんですが、実生活でムチを持ってる高校生はいないから。早い段階で、プロデューサーと話してムチを出すのはやめようとなりました。
──そうではなくリアリティのある17歳の姿を表現しようと。
そうですね。
──「虹色デイズ」では高校生が体験するであろういろんなエピソードが描かれていますよね。恋愛が中心だけど、それだけではない。
はい。高校生活って先生との戦いとか、校則との戦いとか。親との関わりなんかもあるし。もちろん親との関わりも描こうと思えば描けるんですけど、そこまで手を広げると2時間の枠には収まらないのでそこは一切描かず。恋と進路に絞って描くことにしたんです。進路について悩まない高校生はいないと思うので。
──確かに。高校生が中心のストーリーですが、滝藤賢一さんが演じる田渕先生が印象的でした。一見ぶっきらぼうに見えて、実は生徒思いな先生で。
でも、田渕先生が生徒思いだってことは説明的にはしたくなくて。例えば、劇中で小テストのシーンがあって、テスト用紙の紙が画面に映るんですけど、あれ全部手書きなんですよ。先生が自分で作ったんであろうということがわかる人にはわかるけど、わざわざ説明はしない。でも、田渕先生がいい先生であるってことは最初からわかるようにしたんです。生徒に対して愛情があると同時に、同時に脅威でもあるような。僕、中高生のときに1人だけ信用できる先生がいたんですよ。そういう先生の存在を描きたいと思っていました。
──監督がほかにこだわったシーンは?
冒頭に出てくるプールに飛び込むシーンもそうですし、お互いを異性として意識し出したまっつんとまりが10分休みのときにベランダで何気なく合流するシーンとか。あとはまっつんと恵ちゃんが、つよぽんの家で勉強したあとに歩道橋で2人だけで話す場面ですね。僕の中であの2人は小学校くらいから一緒にいるっていう設定で。だから大志と流星のあのシーンからリハーサルを始めました。人間って不思議なもので、何人かのコミュニティがあったとき、「この人とこの人が一番古くて、この人があとに入ってきたんだな」ってわかると思うんです。4人のキャラクターを並べたときに、全員がそろって同じ時間を過ごしているわけではないし、“年輪の差”を映像で出せないとストーリーにリアリティがない。
──ええ。
歩道橋のシーンではそんな空気が出るように心がけました。あと2人がそこで話しているのが女の子の話題なんですよね。少女マンガを原作とした映画なので、おおっぴらに性についての話はできない。でも男子高校生4人がそろって、例えば1人童貞がいたら絶対にいじるし、性について話さないわけがない。それを抜きにしてしまうとすごく嘘くさいので、空気感や2人が話す言葉の端々に匂わせるようにして、リアリティを出しました。
佐野玲於、中川大志、高杉真宙、横浜流星について
──メインキャストの4人についてもお話を聞かせてください。なっちゃん役の佐野さんとはドラマ「GTO」以来だと思いますが、4年ぶりに一緒にお仕事されていかがでしたか?
確か「GTO」のときが、玲於にとってほとんど初めてのお芝居だったと思うんですけど、当時から芝居勘がいいとは思ってて。ただ、そのときは発達障害を抱えているという役だったので、役に寄っかかれる部分もあったと思います。今回は普通の17歳の役なので、いろいろ話し合いながら役を作っていきました。あと、現場での居方がよくなったなって思いました。映画の俳優部の一員として大事なことって、カメラの前に立つことだけじゃなくて、それ以外の時間の過ごし方も大切で。それが現場力と呼ばれるものなんです。
──そうなんですね。
4人メインキャラクターがいるとは言え、扱いとしては玲於が座長なんです。ただほかの3人は別の作品でお互いに関わっていたり、高校が一緒だったりする中で玲於だけが初対面。なのに4人の中では一番歳上だし、一番芝居の経験値がないことを自覚してたから、最初は「自信がない」と言ってたんです。でも、撮影していく中で、どんどん変わって、座長としてムードメーカーになっていった。そういうところがすごく頼もしかったです。
──まっつんを演じた中川さんはいかがでしたか?
大志を撮るのは3作目なんですけど、今まで長編を一緒に作ったことがなかったんです。前から長編映画を一緒に作りたいねとは話していて、今回のキャスティングで最初に決まったのが大志でした。今回の撮影では、僕が上の世代から教わってきたことを彼に教えるような感じでした。例えば長い廊下が出てくるシーンがあるんだけど、そこは長玉(望遠レンズ)を使って撮ってて、レンズと被写体の距離感がとても遠いんです。長玉で撮ると、役者がまっすぐ立ってるつもりでも重心がちょっとずれるだけで斜めに見えちゃう現象がある。そうならないよう、カメラの前でまっすぐ立つという感覚を伝えたり。今ってオートズームがあるんで多少は調整できるんですけど、漫然と立ってるのか、自分の見え方を意識して立ってるのかは全然違う。大志とはそういう試行錯誤を現場でやってました。
──中川さんに新しいことを伝える現場だったと。また監督が流星さんを撮られるのはひさしぶりですよね。Sっ気のある恵ちゃんを演じています。
流星と仕事するのは、彼が15、16歳のとき以来ですね。だからかだいぶ気合いを入れてきてくれたみたいで。初めて会ったときは、本当にただの空手家だったんですよ(笑)。「烈車戦隊トッキュウジャー」に出る前で「まだ俳優としてやっていくかどうかわかりません」みたいな感じだった。でも、当時からすごく勘はよかったし、運動神経もいいので、もしかしたら俳優としていけるかもねとは周りと話してて。「少しでも成長した姿を見せたいと思っています」って今作の制作発表時に言ってたんですけど、実際にちゃんと俳優然としてました。
──オタクキャラのつよぽんを演じられた高杉さんはどうでしたか?
彼は一番原作を意識してくれてましたね。髪を伸ばして、片目を隠す形にしてくれたり。実際にマンガオタクなんですよね。ゲームも好きだし。そこがすごくシンクロしたって言ってました。だから役にすごくハマってた印象があります。