君のこと 久保田毒虫 著 (original) (raw)

2024-10-15

君のこと 久保田毒虫 著

最近の世の中、何かがおかしい。暗い話題ばかりだ。
SNSを見ても、大抵誰かの悪口か揚げ足取り。嫌でも性悪説を信じてしまう。
おまけに仕事も恋愛もうまくいかないときている。特に君のこと……。
皆疲弊している。僕も疲弊している。
疲れると、僕は気分転換によく星空を見に行く。僕が住む新潟を囲む星空は、世界で一番だと思う。
仕事が終わり、明日は休み。僕は車で村上市にある天文台へと向かった。
天文台の中にある、口径三十五センチメートルの望遠鏡を覗いて、星空を見上げる。お星様が沢山輝いている。
その時、一際大きな彗星さんが望遠鏡を通り抜けようとした。僕は思わず声をかけた。
「ねえ。大きな彗星さん。なんだか人生うまくいかないんだ。僕はどうしたらいいと思う?」
「君は私に手が届くと思うかい?」
「そんなの高いし速いし無理だよ」
「そう。誰しもできることとできないことがあるんだよ。世の中全てが揃うことはないんだ。手に入らないものばかり数えてないかい?」
僕は君を諦めるべきだろうか。