佐久の地質調査物語・第201回 (original) (raw)
第1章 日本列島の成り立ち
日本国土の主要部は、北海道・本州・四国・九州の4つの島だが、周囲のオホーツク海・日本海・東シナ海・太平洋上に浮かぶ島々も含めた広がりは、東西3000km、南北2500kmにもなり、大陸国家と肩を並べるほどである。実際、排他的経済水域面積で見ると、日本は世界第6位になり、国土(陸域)面積の12倍以上にも拡大される。
もっとも、一部の島については、国際紛争に発展しないまでも、外交上の懸念事項として、依然として燻り続けている。ここでは、国土の帰属問題はさておき、日本列島や周辺の島々の壮大な広がりと共に、それらが秩序をもって並んでいる姿に注目して欲しい。
日本海溝や南海トラフの大陸側に島が弧状配列されていること、オホーツク海や日本海などの縁海(えんかい)があること、そして、日本海の中にある大和堆(やまと・たい)の存在も気に掛かる地形的特徴です。
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日本列島付近の島弧の配列は、【上図】の4つのプレートと、その移動(沈み込み)する境に生じた海溝の形によって、みごとに説明される。また、『地質学的には極めて最近の短期間で、日本列島はユーラシア大陸から裂けるように離れて、今の位置に移ってきた。そして、日本海などの縁海が生まれた』という、奇想天外とも思える事実が明らかにされてきた。こんなことが、どうしてわかったのだろうか?
1.「プレート・テクトニクス」と
「プルーム・テクトニクス」
ドイツの気象学者(地球物理学)
アルフレート・ウェーゲナー(Alfred Wegener)が、1912年(明治45年=大正元年)に発表した『大陸移動説』は、その後の実証研究から確実なものとなった。
地理的特徴や生物化石・氷河堆積物などの証拠から、今は離ればなれになっている大陸が、かつては繋がっていたはずだと考え、グリーンランドでの研究調査中の遭難事故で生涯を閉じた。生前は、「大陸を動かすメカニズム」を説明できず、異端視された。その時代の科学認識では無理もない限界だった。しかし今では、彼の先見性とコペルニクス的ひらめきについて、天才性を疑うものは、誰一人としていないと思う。
海底地形や古地磁気データーが集まり、海底が拡大していることや、地理的特徴、火山・地震の発生メカニズムを説明する理論として、プレートテクトニクス(Plate tectonics)は、地球物理学・地質学の教科書になった。
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【図】は、Aウェーゲナーが、仮定した超大陸パンゲア(Pangea)の2.5億年前頃の推定図です。
現代の手法では、地質構造や化石に代表される実証的証拠に加えて、コンピューターによる地球物理的なシュミレーション加工技術も加わり、視覚にも訴えかけ、説明ができます。
パンゲア大陸は、3億年前(石炭紀末)から2億年前(三畳紀末)まで存在し、その後、分裂・移動して、現在の6大陸の位置に分かれたと考えられています。
図は、大陸が集まっていた期間・1億年間の、ちょうど中頃です。
地球内部の構造は、特に、地震が起きた時の地震波(Seismic wave)の伝わり方の分析を通して、A.ウェーゲナーの時代から、「核・マントル・地殻」の層状構造があるらしいことは、わかっていました。しかし、地殻(プレート)が、マントルの対流によって動いているという事実には気付けませんでした。
今日では、プレートを動かしている「マントルの内部」にも科学のメスが入りました。
プルーム(or プリューム)・テクトニクス(Plume tectonics)理論です。
1990年代以降の地球物理学の新しい学説で、マントル内の対流の中でも、大規模な運動をプルーム (plume) と呼び、この動きを検討しています。地殻表面の約100kmの厚さのプレートに加え、この理論では、深さ2900kmまでのマントル全体の動きを含めて検討しています。
地球内部の核は、内核と外核の層状に分かれていて、外核は液体状態だと推定されています。(【上図】参照)
プレートの沈み込んだ先は、さらに周囲より低温となってマントル内部へ落ち込みます。この動きは、コールド・プルーム(Cold plume)と呼ばれます。反対に、外核で暖められ高温となって湧き上がる動きは、ホット・プルーム(Hot plume)です。
沈み込むor湧き上がるプルームも、深さ670km付近に、『圧力・温度条件から物質の相(そう)転換点』があり、動きは、しばらく留まるといいます。ここが、上部マントルと下部マントルの境目です。
ところが、この正常な相の転換ができないほど急激に移動してしまう場合があるようで、この状態をスーパー・プルーム(Super plume)と呼んでいます。過去の地球で大きな変動があった時に活動して、影響を与えた形跡があります。例えば、今から2.51億年前(P-T境界)、シベリアの大規模火山噴火では、スーパー・ホット・プルームの活動があった影響ではないかと考えられています。
ちなみに、現在の地球では、東太平洋とアフリカ大陸の地下に「ホット・プルーム」が、ユーラシア大陸と南アメリカ大陸の地下に「コールド・プルーム」ができているのではないかと、推定されています。
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編集後記
「はじめに」では、自分たちの見聞きした基礎データを後世(後輩に)残す為と言いながら、いきなり、小・中学生の「夏休み一研究」の如く、インターネット情報を集めたような話題で、すみません。
しかし、もうひとつの視点「素人でもわかるように」という観点から、私たちの歩き回り調査している場所(フィールド)が、地球規模や地球の歴史的観点から見た時の背景の理解を深められるのではないかと考えたからです。
※尚、-数字-は、A4版にした時のページを示しています。シリーズ「内山層」では
このページを全て消してブログに載せた所、私自身が見てもどの辺りだかわからなくなったからです。
ちなみに、最初のシリーズ「山中地域白亜系」では、ページだけでなく、第何回という表示もなく、ひとつひとつに「題」を付けたら、私には前後の関係はわかるものの、読者は多分、全体の中のどの辺りの内容かを理解し難くなっていたと思います。
冬晴れの午後、冠雪の浅間山を眺めながら「冬田道」を1時間ほど、散歩してきてから、内容と写真をチェックして載せました。(おとんとろ)