2024年7月号 (original) (raw)

・読んだ本

逢坂剛「百舌の叫ぶ夜」(49)
ドラマの原作読みました。なんと1986年の作品。昭和だ。でもそんなにそこまで時代を感じなかったかな。こないだドラマ再見して物語の記憶が新しいので、キャスティングがばっちりハマっててすごいというのが感想なんだけど、ドラマファンなのでゆるしてほしい。美脚そうすけのキャスティングが出色すぎる。不死身の宏美ちゃんやっぱりこわぃょ。映像がすきなドラマだったなあ、いいドラマだった。

千早茜「グリフィスの傷」(50)
さまざまな傷を描いた短編集。どの傷も痛くて跡が残る。刺青をいれたおっちゃんと美少女のエピソードがギリギリのところでセーフだったのが伝わってきて印象的だった。よき余韻。

川上未映子「黄色い家」(51)
このお金はきっと奪われてしまうんだろうなって何回か思ってそのたびにその通りになったのがしんどかった。弱みを見せるとカモにされてしまうから気を付けた方がいい、という彼のアドバイスに背筋が伸びた。相談する相手もちゃんと選ばなくてはいけない。信じたら裏切られる。よくそんな世界で生き延びてきたね、と大人になった彼女の姿を見てホッとしたけど、でも果たしてそれでよかったのか。

万城目学「六月のぶりぶりぎっちょう」(52)
本能寺の因縁は解消されたということでよろしいか...わたしにとって「八月」がよすぎたのでちょっと今作はそこまで満たされなかったんだけど、まきめさんの描く京都の世界はまだまだたのしみにしてるのでどうぞ今後ともよしなに。

貫井徳郎「ひとつの祖国」(53)
第二次世界大戦後にドイツ同様日本が東西に分断され、かつ首都が大阪に置かれて西高東低の格差が生まれる設定に胸が躍ったんだけど、東日本の独立を謀るテロ集団に利用され取り込まれる主人公の青年があまりにもあっさりとその理不尽な状況を受け入れてしまうことに最後まで納得できなかったのがざんねん。わたしはずっと自衛隊の幼馴染のところに逃げたらええねんって手に汗握ってたのに、最後の方に対抗勢力に彼を奪われるくらいなら殺せと言われてイエッサーと即答するところで、ジーザスと天を仰ぎました。しかしながら彼の存在がそこまで重要なのかも最後まで疑問におもってしまったので、主義の違いからくる内ゲバと、そこからの逃走劇にはハラハラドキドキ楽しめたのに~~~という隔靴搔痒のくるしみ。大阪が首都になった日本では当然関西弁が共通語となるんだけど、出てくる関西弁が、ちゃうちゃうちゃう、ちゃうんや~~~~~という関西弁パトローラーとしては許容できないやつで雑音になってしまったのも。

逢坂剛「幻の翼」(54)
ドラマの原作読みましたパートツー。どうしても倉木警部が長谷川博己で脳内再生されてしまうの「アンチ・ヒーロー」のせい。あとドラマに出てきた東が出てこないせい。っていうか東はドラマオリジナルだったのか!ロボトミーという単語に昭和を感じる。あと脳は東野圭吾で育ったので...終盤のオチが前回と全く同じだったの悪い意味でわらったwww百舌兄弟がふたりとも退場してしまって次からはもう出てこないのかとおもうとさびしい。あと、ドラマでのいつでも沈着冷静な出来る公安刑事というイメージがすきだった明星さんが倉木警部に恋してメロメロになって冷静さを失っていくのを見るのはつらかったです。明星さんにはいつでもクールでいてほしかった...ぴえん。

逢坂剛「砕けた鍵」(55)
百舌シリーズではなく公安シリーズと銘打たれてることを否応なしに知らしめてくる続編。もちろん新谷兄弟は出てこない。前作最後で絶命したと思われた津城警視がいきてたことにびっくり。そしてまさかの倉木警視の退場に、倉木ぃぃぃぃぃぃ(CV:長谷川博己)と慟哭しました。っていうかいつになったら東は出てくるんですか。母と子を失った明星さんがますます暴走していく様を見てるしかない読者はつらかったです。そして大杉さんが己の恋心に気づくところではごめんよ、うそやんwwwって大笑いしてしまいました。

逢坂剛「よみがえる百舌」(56)
倉木さんがいなくなってしまったあとの百舌。せっかく甦った津城警視正がまたもや凶刃に斃れたのはショック。っていうか、この何度も繰り返される悲劇にもはや悲劇みを感じなくなってしまってるのこのシリーズの弱点だとおもう...あと美希は何度も襲われすぎだし何度も失神しすぎだし、いくら現場を離れた期間が長いからと言ってあんまりにもポンコツでは!?!?わたしなんて出てきた時から紋屋が怪しいってわかってたよ。っていうか前作の金貸し婦警さんかて出会った時から不審者だったってば。美希、もうちょっとしっかりして...そして大杉さんとハッピーエンドなのなんかちょっと合点がゆかねえええ。

逢坂剛「鵟の巣」(57)
政治権力に狙われる警察機構とそれを阻止しようとする監察官(と元警察官)という構図がまたもや繰り返される。倉木・津城の不在により、誰一人まっとうな監察官がいないんじゃないかと本気で心配する。現場を離れて久しい美希が尾行に気づかないとかかなしすぎたけど、前作までに感じてたポンコツっぷりがちょっとは改善されて、落ち着いた大人の女性警察官としての面目は保たれたんじゃないかなとホッとした。残間に対する含みが気になるところ。作中に携帯電話が登場して、やっと近代化された...!と感動。ハードボイルドな世界をあんなにソリッドでクールなドラマにしたのほんとにすごいな、って読み進めるたびにおもう。ハードボイルド小説としてはおもしろいし楽しんでるけど、わたしのすきなMOZUではないなってずっとおもってる。

・観た映画

「お母さんが一緒」
結婚していない長女次女と、結婚すると報告した三女とその婚約者たちのドタバタホームコメディ。...コメディ?いやいやいやいやいやぜんぜん笑えなかったから。母親の呪いが強すぎて、みんな逃げてとしか思えなかった。特に長女。ずっとお母さんに言われるがままに「いい子」をやってきたのに、差し出したプレゼントよりも孫の顔が見たいわと言われてブチ切れる様はほんとに笑えなかった。あの怒りようは笑っていいやつじゃなかった。怖かった。っていうか母親のモラハラが酷すぎて、え、どこで笑えばいいんですか?地獄の一夜が明けて、何もなかったかのように「お母さんお誕生日おめでとう」って和やかな声を出す三人が一番ホラーでした。あなたたちそれでいいの?え、ほんとうにおめでとうって思えてるの?そもそもお母さんの誕生日に温泉に連れて行ってあげようってなんで思えるの???????長女のキレ方を見たら、もう二度と母親には会わないほうがいいよ絶対ってわたしならアドバイスする。なんだかんだ言っても家族だし姉妹だし、ってハッピーエンドっぽく終わってたけど、いやいやいやいやいやまじで怖かったしホラーだったし地獄だった。唯一の良心と思われる末っ子ちゃんと婚約者の彼にはしあわせになってほしいけど、彼にはこの家族の毒牙にかからないでほしいともおもってしまう。怖かった。