気になるもの目録 中川信夫の東海道四谷怪談と地獄 (original) (raw)

夏なんで納涼に、邦画の古典で怪談・ホラーもの
中川信夫監督の『東海道四谷怪談』『地獄』を。
今現在の目で観ると、または現在のホラー映画に比べると、
そんなには恐くないですが、いい味だしてます。
(※2009年6月中旬に書いた駄文の再録です。
その頃から作品を観直していないのであしからず)

標題:1960年代くらいの怪談映画 中川信夫東海道四谷怪談と地獄

分類:映画>邦画>ホラー / 時代劇

■題名:東海道四谷怪談

監督:中川 信夫

原作:鶴屋 南北 (四代目)

脚本:
大貫 正義
石川 義寛

音楽:渡辺 宙明

撮影:西本 正 (賀 蘭山)

出演:
天知 茂
若杉 嘉津子
北沢 典子
江見 俊太郎
池内 淳子
中村 竜三郎
大友 純
浅野 進治郎
林 寛
花岡 菊子
杉 寛
高村 洋三
芝田 新

発表年:1959年

製作国:日本

評価:保留

■内容・雑記:
四谷怪談』は有名な怪談で、日本人なら誰もが知っている作品ですが、
詳しい物語の内容を知らなかったので、ダイジェストっぽくて
ストーリーがよくわかって、時間も短いのでお勧め。
京極夏彦の『嗤う伊右衛門』は読んでいたんですが、
映像で観ると人物関係がよくわかるっす)
おおまかなストーリーは知っているものとして語りますが、
最初、民谷伊右衛門
お岩さんの父に婚約破棄されたのを翻意させようと詰め寄るんですが、
後の展開とか観ると、
お岩さんの父に下男の直助がなんかウソをチクったんじゃ
「御金蔵破りを手引きしたのは民谷伊右衛門……」
みたいな事を。裏設定とか知らないですけど、
なんか直助と敵(かたき)の御金蔵破りが知り合いっぽい描写があるので。

んで伊右衛門さん、最初あれだけ結婚したがっていたお岩さんのことを、
だんだんうざく思います。
毎日、傘張りで嫌になっているのに、父の仇討ちをしろしろ五月蝿いし。
そんなおり、不良侍達に絡まれている
処女の一人娘を助けたのがきっかけで、逆玉の話が……。
で邪魔になったお岩さんを、
お岩に横恋慕している按摩の宅悦に押し付けようと画策します。
二人がいちゃついている所を押さえて、不義密通で殺そうって算段。
でも確かに愛情は醒めたが、昔は愛した古女房は切れないと悩んでいると
直助が毒薬を用意
「この毒をリンゴにしこんで食べさせれば……」
すんません、どっかで違う話に。
それでまぁ、お岩さんと宅悦を殺して
戸板返しに(裏表)張り付けて沼に沈めて一件落着。
しかし因果応報、それから伊右衛門さんは
男を見れば宅悦に、女を見ればお岩さんに見える病になっちゃったっす。
精神衰弱や良心の呵責ってヤツでしょうが、
精神的におかしくなると、自分では正常な行動だと思うことが、
他人からは異常な行動をしているのが分かるってありますよね。
精神の混乱とか、心の病気、キチガイってどうしてなるんですかねぇ。
夢野久作の小説とか読むと、キチガイ娘とかよく出てきますが。
伊右衛門は、今で言うとこの統合失調症にかかったみたいです。

しかしこの映画、天知茂民谷伊右衛門)が最高にカッコイイ!
私は、天知茂にそんなに興味がなく、
なんかいつもしかめっ面してる人だなぁ。
くらいにしか思っていなかったんですが。
まぁ今観ると、戸板返しとかチープなのかもしれませんが、
異様な迫力を感じますし、レイアウトとか色彩とか派手でいいです。
出世のために、昔の女を捨てるみたいな感じや、
金にたいする欲とか、女にたいする欲とか
人間の業が……とか難しい事を抜かしても楽しめます。

俺んちの裏が食堂でさぁ。
……うらメシ屋。
このカード何かとおもったら、
裏、名刺やっ!
なんちて、うらめしや

東海道四谷怪談 - 中川 信夫』意外に『四谷怪談東海道四谷怪談)』の映画は
四谷怪談 - 三隅 研次』
『怪談 お岩の亡霊 - 加藤 泰』
四谷怪談 - 豊田 四郎』
四谷怪談 お岩の亡霊 - 森 一生』
(『忠臣蔵外伝 四谷怪談 - 深作 欣二』や
『喰女-クイメ- - 三池 崇史』は異色なんで外してます)
などを観たことがあるんすが、
豊田四郎森一生の『四谷怪談』は物語の進行が似ていてオーソドックスだったかな。
もう忘れてるけど……。

分類:映画>邦画>ホラー

■題名:地獄

監督・脚本:中川 信夫

脚本:宮川 一郎

音楽:渡辺 宙明

撮影:森田 守

出演:
天知 茂
三ツ矢 歌子
沼田 曜一
林 寛
大友 純
徳大寺 君枝
中村 虎彦
宮田 文子
山下 明子
大谷 友彦
宮 浩一
新宮寺 寛
泉田 洋司
津路 清子
小野 彰子
石川 冷
石川 朔太郎
嵐 寛寿郎
若山 弦蔵 (※ナレーション)

発表年:1960年

製作国:日本

評価:保留

■内容・雑記:
仏教の八大地獄をリアル(とはいえないかも)に描いている問題作。
前半は、主人公・清水四郎(天地茂)の
周りで起こる人間模様を写しているんですが、
コレがなんというかまぁドロドロしていて……、
こっちは付き合いたくないのに、ストーカー並に付きまとう
悪友の田村(沼田曜一)。
堅物で善人の四郎を、悪の道に落とそうと誘います。
子供料金で電車乗ろうよ。とか
小学生だといって女湯に入ろう。とか(ではありません)
田村は、お前人間か?ってくらい神出鬼没で、
なんか悪魔メフィストっぽく善人を堕落させようと一生懸命。
デビルマン』の飛鳥了を性格悪くした感じ。
そんで、大学教授の一人娘との婚約も決まり人生バラ色の矢先、
田村に車で送ってもらったのが躓きの始まり。
田村が酔っ払いのヤクザを轢き逃げしちゃうんです。
でも轢いた本人田村はへーきのへーざ、
同乗していた四郎の方がビビっちゃって、
婚約者と一緒に警察に向かう途中、今度はタクシー事故で恋人まで失う。
田舎の天上園(養老院みたいなもんかな)に帰れば、
父親は病気の母親の隣の部屋で、2号さんと乳繰り合い。
死んだ婚約者そっくりの娘が出てきて好きになりかけたら実の妹とか。
天上園の50周年記念パーティーでは、産地偽装の腐った魚にあたり
入園者が中毒死。
他の人は毒酒飲んで昇天と
……なんか現世の方が地獄なんですけど。

で四郎の周り総勢何十人様御一行が、地獄へのツアーに旅立ちます。
血の池地獄や針の山などの名所を廻って楽しんでいたら、
先に一人旅で来ていた婚約者と再会。
実はあなたの子供を死ぬときに孕んでいて、こっちに来てから産んだの。
国籍は地獄になるけどいいでしょ。ときたもんだ。
名前は女の子で春美……。ちょっとした隙に子供は行方不明。
子供を捜して、地獄をアッチコッチ。
「夏くんのパパ、いつ始まるの?」状態。
賢明な読者の諸君はもうお解かりでしょうが、ほとんど嘘ストーリーで~す。

閻魔大王が照魔鏡を使って、前世の悪事を人に見せ、
無限の罰を与えるんですが、
その基準でいくと、人類の99.9パーセントは地獄行きなんですが、
地獄は今日も満員電車並の込みようでイモ洗い。
天国はきっと広々と、
オーストラリアとかの田舎の牧場にある家みたいに、
隣の家まで何百キロって感じなんじゃ。
っていうか、キリストとか釈迦とか数人しかいないんじゃ。
孔子は人肉の塩漬け食べていたから、きっと天国行けないだろうし。
まぁ天国に行ける人ってのは、
人(現存在)としてレベルが一段階上がった人なんだろうなぁ。
地獄で蠢いている人たちは、輪廻転生、永遠回帰って感じで、
スカイ・クロラ』じゃないけど、同じようでちょっとづつ変化していくみたいな。
天国は狭き門で殆どの人が地獄行きって感じ、
どーせ私も地獄行きだろうなぁ。

とりあえず、田村とは友達になりたくないっす。
沼田曜一の存在感は凄いです)

いっぺん、死んでみる?

地獄をテーマにした邦画は他に
『地獄 - 神代 辰巳』
『地獄 - 石井 輝男』
とかあるんで観比べてみれば。

地獄ってあるのかないのか(死なないと)わからないし、
地獄って概念がどこからきたのか知らないんですが、
地球の地下マントルには現生人類よりさらに知的な生命が存在している。
とか言われると、そこが地獄なんじゃないかと思う。