マイコン博物館で古のIT機器に触れた (original) (raw)

青梅のマイコン博物館で、マイコン以前の情報機器や初期IBM PCも含め実物に触れた貴重な体験ができました。8月からX(Twitter)上の話題が増えて急に行きたくなり、8/18(日)の前日にサイト予約しました。

良かった事は、①マイコン以前の貴重な機器も多く、②触って撮影してネット掲示もOK、③館長の吉崎さんから興味深い話を沢山伺えたことでした。

気付いた点は、①予約は必要だが簡単で、②都内の登山エリアだが駅のそば、③多分意図的に説明パネルは最低限なので見過ごし防止には公式X(@Dream_Library_)での予習もお勧めです。

マイコン博物館への道

切っ掛けは公式Xの夏休み中の8/17, 18当日予約受付の案内で深夜にサイト予約したら、翌朝の予約受付メールが長文で驚いたものの、来館で勘違いされそうな事を一通り親切に説明してくれていて、周辺の飲食店マップまで添付されてました。

以下はサイトにも書かれてますが、

建物裏手の何故かフェリックス・ザ・キャットが貼られた通用門のドア中央のボタンを押すと(右側の壁ボタンは押してはいけない)、2階から館長の吉崎さんご本人に迎えていただきました。

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2階で入館料(大人1日 1000円)を払って入館証を受け取り、荷物をロッカーへ(ここで遊び心あるロッカー番号を見忘れる痛恨のミス!)。オプションのマイコン体験(動態展示品の操作体験 3000円)もあり。

なお青梅を選んだ理由は岩盤が硬く災害に強いから、とデータセンターみたいですが、吉崎さんに2000年の豪雨で池袋の地下に保管した技術資料が多数浸水した過去もあるとのこと(館内に置かれた日刊ゲンダイ記事より)。

マイコン以前の情報機器

入るといきなり、ディスプレイ付き端末より昔の、unix系の "tty" の語源でもある、テレタイプ社のテレタイプライター(テレタイプ端末)があり、受信データで印字されるのを動かして見せていただきました。

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建物は銀行の居ぬきとのことで、厚さ十数センチの金属扉を備えた旧金庫室(特別展示室?)には更に貴重な古代のお宝が.....

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金属扉と格子戸の先には何故か予想外のジャンルの拳銃(の模型)が!f:id:rabit_gti:20240819205150j:image

上はレミントンランド社の拳銃と計算機、下はワルサー社のP38と計算機です。また下にはメインフレームで商用初の汎用機(=10進演算+浮動小数点演算)IBM System/360、一番上には商用初の仮想記憶装置(Virtual Storage)搭載のIBM System/370の黒いパネルも。なおIBMも元は時計や量りのメーカーですね。
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上の写真を拡大すると、下段のワルサーの拳銃と計算機に現在とも同じワルサーのロゴが見えます。

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大砲(88mm高射砲?)の模型は、学校の生徒への説明会でコンピューターの用途は弾道計算から始まった事を説明するそうです。f:id:rabit_gti:20240819205110j:image

船の模型と航行計測器は、例えばオランダと長崎の間にも航行計算が必要で、組み合わせで計算結果を掲載した本も置かれていた。また真珠湾攻撃の航空機でも攻撃機は3名乗りで電信員が計算する航法士を兼ねるが、戦闘機は2名乗りで航法士がいないので、もしはぐれたら出撃した空母へ戻れずサヨウナラ、などの話も。f:id:rabit_gti:20240819205120j:image

ロケットやスプートニクの模型は宇宙開発競争でのコンピュータ利用の説明用。
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手動の計算機。桁数の大きい四則演算でも結果が瞬時に表示できる事を実演してもらえた。初期の電卓登場後も、桁数が必要な大蔵省などで使われ続けたそうです。
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左は**高島屋の計算機**でカラーリングも高島屋。どこかに発注して店内で使用したそうです。
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ここからエレクトリック・コンピュータ(電子計算機)関係で、ハードディスクの一種で着脱可能(リムーバブル)なディスクパック。過去に仕事でセンターでマウント・アンマウントしました(笑
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まさかの磁気ドラム?ではなく**リムーバブルディスク用のヘッド**で、ディスクパックを置く装置側にあり、右側のヘッドを、ディスクパックが置かれると左のコイルで右に押し出すそうです。
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何故か8ミリ光学フィルム編集機器のスプライサーや表示装置が!これも広義の情報機器なのだろうか(笑
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CDC社のスーパーコンピュータ用の専用端末ですが、CONTROLキーがスペースバーの左右にあるのは後の101キーボード風で、どちらが先なのだろう。
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unix系で標準的な端末エミュレーター仕様の元となった、DEC社のVT100。名前は超有名ですが実物見るのは初めて。後のインテリジェント端末と比較してダム端末とも呼ばれますが、当然ながらエスケープシーケンスを処理するプロセッサーや画面分のメモリはあり、用語の境界は難しい。いわゆるオープン系(世界では分散系)の元祖な印象もしますが、CTRLキーはAより少し離れたところ(CAPS LOCKの先)にあるのがちょっと意外でした。f:id:rabit_gti:20240819205220j:image

なお、ここで吉崎さんは次の来館者を迎えに行き、以後は一人で回ります。

初期の個人向けコンピュータ

1970年代のマイクロプロセッサの登場によって、世界初の個人向けコンピューターと言われる1974年発売のALTAIR 8800。実物を初めて見ましたが、すみません写真はピンボケなので公式Xの説明をご覧ください。
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これも是非見たかったApple社初のコンピュータの**Apple I**ですが、キットなので外観はパーツですし、展示にはパネルもメモも無く、SNSを見ても気付かずに素通りされたらしき方もいるようでした。
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初期の個人向けコンピュータ(いわゆるマイコンやパソコン)はAppleIBM PC系に隠れがちですが、日本と同様にアメリカでも各社独自のコンピュータがありました。これはTandy社のRadio ShackシリーズのTRS-80。1977年発売、CPUはZ80、BASICなど。
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こちらはCommodore社のPET 2001。本体のカセットテープとレジ端末のようなフラットなキーボードが印象的です。
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後の**Commodore 64**は、しっかりしたキーボード。

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ベストセラーとなった1977年発売の**Apple II**。表計算のVisiCalcがキラーアプリとなりホビーからビジネスへも進出。本体の大きいロゴを見ているとファンが「Ⅱ」(ローマ数字)や「II」(大文字アイが2つ)ではなく、「][」(カッコが2つ)と書きたがる気持ちが伝わってくるような...f:id:rabit_gti:20240819205133j:image

右はApple II Plus。左はApple II互換機のLeser128で、昔秋葉原の少し怪しげな店で買ってフライトシミュレーター的なゲームを動かしたのが懐かしいです。
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IBM PC

いよいよ現在のPCの直系祖先である1981年発売の**初代IBM PC**。CPUは8088で拡張バスは8ビットなのに、本体ケースは結構でかいのはアメリカンなスペース感覚か。日本市場では日本語表示が必要と判断され発売されず。

タイプライターのメーカーでもあるIBMが本格的なキーボードのタッチを持ち込んだ、と良く言われますが、確かに各展示品をタッチした限り他はパコパコ感なのに、このキーボード(83キーボード)は明らかにカシャカシャ感を感じます。f:id:rabit_gti:20240819205209j:image

Compaq社の**Compaq Portable**。初期のIBM PC互換機として初のラップトップで、更にBIOS著作権クリーンルーム方式で合法的にクリアした歴史的なIBM PC互換機でもあります。日本で普及した「PC/AT互換機」より、「IBM PC互換機」(IBM PC Compatibles)の方が歴史を踏まえた世界的用語と再認識します。f:id:rabit_gti:20240819205112j:image

ハードディスクをサポートした**IBM PC XT**。なお右側のキーボードは、IBM PC AT後期からのモデルM(101キーボード)なので、展示はATの隣の方が良い気がしました。
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ここで**IBM PC用のDOSの正式名称問題です。日本では大雑把に「MS-DOSIBM版がPC DOS」とか、より正確に「PC DOSの、非IBM向けOEM版がMS-DOS」と言われますが、更に正確には「PC DOS ではなく、IBM PC用のDOS**」と思います。

IBM PC用の DOS 2.00 や 3.30のバインダー(マニュアルとディスケット)上も、製品名は単に「Disk Operating System」または「DOS」です。なおIBMメインフレームにも同名のOS「Disk Operating System」(DOS、現 z/VSE)がありますが、全く別物です。

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DOS 2.00のバインダー表紙には「Disk Operating System by Microsoft Corp.」。IBMは当初はMicrosoft側の権利関係の問題を避けてIBM製品扱いにはしなかった、と言われています。
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DOS 3.30 のバインダー表紙も「Disk Operating System」ですが、右下には「The IBM Disk Operation System is ...」とIBM製品扱いになりました。しかし「PC DOS」表記はやはり見当たりません。f:id:rabit_gti:20240819205117j:image

その他の展示

PC-8801, PC-9801, JX, PC AT, PS/2, FM-Towns, X68000などは多くの方も書いているので簡単に。

マウスを使ったGUIを持ちNECMacとも呼ばれるものの、部門の違いもありPC-9801の前に消えていった NEC PC-100。実は元祖IBM PCに次いでキーボードタッチにカシャカシャ感があり、色々と理想を追って開発されたのかなと思うのでした。

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ワークステーションNeXT Cube。この展示のみに興味深い説明パネルがあるのは、持ってきてくれた方がいるから、とのことでした。参加者も含めて作っていく博物館?

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奥では当時のマイコン雑誌が飲食可能なソファーで読み放題です。

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またアーケードゲームのガラスにカラーフィルムを付けただけの初期スペースインベーダー(1台)もあり、無料と知らずに100円入れてプレイしたら、ちゃんと返却口に戻ってました(気づかず帰るとこでした!)

ご参考

視点が違ってそれぞれ面白いブログです。

2024/2 とっきー(@hellotocky)さんの6月のリニューアル・オープン前の記事で、場所や建物全体、スペースインベーダー、周辺のランチが特に詳しいです。

2024/6 Prof.Duo(@profduo)さんの各機器の写真が多くて楽しい記事です。

2024/8 あうぇっど (@Awed_Urshy)さんのグループで動態展示の操作体験も楽しまれた記事です。

2024/8 私のブログですが、よろしければこちらもどうぞ。

最後に。クラウドファウンディングも経て青梅に移転したマイコン博物館ですが、上述のように予約が必要で、青梅は都心から少し遠く、館長の意向もあるのか展示と荷物が混在で説明パネルも最低限ですが、マイペースで見て、軽くなら触れて、運が良ければ貴重なお話も色々伺えるので、私は行って良かったです。

以上です。