広告と販促とデジタル広告の「ゆるやかでオーガニックなリンク」 (original) (raw)

ホリスティック・コミュニケーション

『ホリスティック・コミュニケーション』秋山隆平 杉山恒太郎 著を読む。

アクティブ・コンシューマーというのは、トフラーが説いていた「プロシューマー(prosumer)」<生産者(producer)と消費者(consumer)の両面を持つ消費者>のほぼ焼き直しといってもいいだろう。しかし、デジタル武装したアクティブ・コンシューマーの方が、数段影響力が大きいことはいうまでもないことである。

「情報を自ら積極的に検索していくだけではなく、自分で情報をどんどん配信していく人たち」そんな消費者に対して企業は「『ピア・トゥ・ピア』の関係がつくらなければならない」と。

「アクティブ・コンシューマーの購買行動をパターン化すると、アテンション→インタレスト→サーチ(検索)→アクション→シェア(意見共有)」。さらに「シェアとはある意味で口コミの電子化であり、これからは広告と同じくらいの影響力を持ってくることが予想される」。これは、もうかなり、そうなりつつあるのではないだろうか。

ついでに「ホリスティック」とは、たぶん、ニューサイエンスファンなら懐かしのアーサー・ケストラーの「ホロン」から派生したワードだと思うが、「パーツがそれぞれの多様性を主張しながら、全体として調和している、あるいは調和の中でパーツが活かされている状態」をいうそうだ。

「インテグレード」(統合)というと、なんかうむをいわせず力ずくで1つのパワーにするイメージがあるけれども、「ホリスティック」は、ゆるやかでオーガニックなリンクをイメージさせる。いままでのインタラクティブモデルがB(企業)とC(消費者)の関係のみだったが、ホリスティックモデルは「BtoCtoCモデル」で、アクティブ・コンシューマー間のやりとりがあるというのが大きな違いである。

てなことをバックグラウンドにして、さて、広告会社はどうあるべきか。クリエイティブはどうすべきか。「メディアのためのクリエイティブから、クリエイティブがメディアを作ることへの移行」であると。

だから紙(印刷媒体)とラテ(電波媒体)とデジタル(Web)とセクショナリズムを貫くのではなく、横断的に、この広告や販促にはどのメディアが適しているか。「メディアをつくる意識がないとだめ」だと。

そのキーとなる言葉として「ホスピタリティ」を挙げている。お・も・て・な・しの心。引きのサービス産業のコアとなる言葉だが、確かにそうだ。特に日本のWeb広告には、欠けていると。カタログ代わりじゃあ、クリックしなくなるよな。

それと、もう時代は「一行の力」ではないということ。うすうすは感じてきていた。どうもキャッチフレーズがそぐわないのだ。杉山は携帯電話のメールの普及がその理由の一端にあると述べている。長くても別に構わないし、なくったっていい。それよか大事なのは、仕掛け・企画の部分であり、ホスピタリティの具現化にある。評判や話題となっている広告・販促・デジタル制作物に共通していえると思うのだが。

大概この手の本は、机上や二次情報でまとめられるものが多いが、大手広告代理店のインタラクティブコミュニケーションセクションにおられる作者同士による対談本だけに、本音というのか現場の実感が出ていて教わる部分が多々ある。プランナー、コピーライターなどクリエイターやクリエイター志す人は一読すべき一冊。おっと企業の宣伝部の人にも、だ。

もやもやしていた視界に、一筋の光が当てられたような気分。