5分で学ぼう!「核酸」って結局何なの?現役講師がわかりやすく解説! – ページ 3 – Study-Z (original) (raw)
今回は「核酸」をテーマにみていこう。
高校の生物学では、とてもたくさんの知識を詰め込まなくてはならない。核酸という言葉を聞いたことはあっても、「実は何となくしか説明できない…」というやつも少なくないんじゃないでしょうか?
大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。
この記事の目次
- 核酸とは?
- ヌクレオチド
- ヌクレオチドの糖が違うと…?
- DNAとRNA
- DNAの役割は”遺伝情報の本体”
- 遺伝情報を伝えるRNA
- ”道具”のようにはたらくRNA
- 核酸の発見
- まとめ:核酸=DNA+RNA
ライター/小野塚ユウ
生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。
核酸とは?
細胞の、主に細胞核の中に存在し、水に溶かすと酸性を示す物質をまとめて核酸(nucleic acid)といいます。
核酸にはDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)がありますが、どちらもヌクレオチドという構成単位が集まってできている高分子化合物です。
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ヌクレオチド
ヌクレオチドは糖、リン酸、塩基からなる化合物の総称です。核酸であるDNAやRNAは、このヌクレオチドがたくさんつながってできていますが、DNAを構成するヌクレオチドと、RNAを構成するヌクレオチドには、その構成要素に違いがあります。
【DNAを構成するヌクレオチド】
糖…デオキシリボース
リン酸…1つ
塩基…アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)のいずれか
【RNAを構成するヌクレオチド】
糖…リボース
リン酸…1つ
塩基…アデニン(A)、ウラシル(U)、シトシン(C)、グアニン(G)のいずれか
DNAもRNAも、4種類の塩基のいずれかをもつヌクレオチドがつながってできています。
糖の種類が異なる(デオキシリボースかリボースか)ことと、4種類の塩基のうち1つに違いがある(チミンかウラシルか)ということに注意してください。
ヌクレオチドの糖が違うと…?
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DNAとRNAを構成するヌクレオチドの、糖の違い。じつはこれ、DNAとRNAのある性質に大きく影響するんです。
デオキシリボースはリボースと比べると、酸素が一つ少ない分子になっています。なんと、この酸素一つの違いだけで、リボースをもつRNAのほうが構造が不安定になるんです。反対に、DNAはRNAよりも構造が安定となります。
DNAとRNA
DNAやRNAといった核酸は、生体内でどのようの存在し、どんな役割を果たしているのでしょうか?簡単にまとめてみましょう。
DNAの役割は”遺伝情報の本体”
私たちのからだは、DNAに保持されている遺伝情報をもとにしてつくられています。この情報は、いわば”設計図”のようなもの。DNAを構成するヌクレオチドの塩基配列が遺伝情報をコードし、遺伝子として機能することで、からだの材料となるタンパク質がつくられているのです。
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そもそも、有性生殖をする生物は、元をたどればたった一つの受精卵から始まっています。細胞分裂の時にDNAは複製を行い、量を二倍に増やしたところで新しい細胞に均等に分配されるのです。生きている限り、体のあちこちでDNAの複製→細胞分裂は続きます。DNAが安定であることはとても重要です。
遺伝情報を伝えるRNA
DNAは複製によって増えますが、RNAはDNAの遺伝情報をもとにつくられます。RNAポリメラーゼという酵素のはたらきによって、DNAのなかでも必要となる部分(発現する遺伝子)をRNAに写し取っていくのです。これを転写といいます。
転写でできたRNAの鎖には不要な情報も含まれているため、必要な部分だけになるよう加工(スプライシング)が施されます。これによって完成したRNAをmRNA(メッセンジャーRNA)とよびわけているのです。mRNAは細胞核から出ていき、細胞質でタンパク質の合成作業に使われます。
たしかに、DNAからタンパク質をつくるという過程でRNAはつくられます。ところが、細胞の中にはRNAを材料にしてつくられている”道具”のようなものもあるのです。
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”道具”のようにはたらくRNA
RNAを材料にしてつくられている「道具のようなもの」の代表として紹介したいのがtRNA(トランスファーRNA)とリボソームです。どちらもタンパク質合成の過程で必要不可欠な存在としてしられています。
tRNAは、mRNAの塩基配列に対応するようなアミノ酸を運搬してくる分子です。mRNAの塩基配列と相補的(AとU、GとCというペア)になるような配列のtRNAが順に結合し、もっているアミノ酸がつながっていくことで特定のアミノ酸配列をもったタンパク質がつくられていきます。
mRNAと同じ材料でできているtRNAだからこそ、塩基の相補性を利用して正確なタンパク質を運搬することができるのですね。
この、翻訳という作業が行われる場所こそがリボソームなのですが…なんとこのリボソームはRNAとタンパク質からできているのです。
tRNAやリボソームは細胞核の外(細胞質中)にありますが、細胞核内で合成されるRNAと同じ素材でできているということになります。つまり、細胞核の外にもRNA=核酸があるという話になってしまうんです。なんだか混乱しそうですね。
「RNAはDNAを写し取ったもの」としか覚えていないと、tRNAやリボソームの話を聞いた時にびっくりするかもしれません。ですが、DNAもRNAもヌクレオチドがたくさんつながった、単なる大きな分子の一種と考えてみてください。それを材料とした構造物が細胞の中で別の役割を担っていると考えても、不思議ではないでしょう。
核酸の発見
さいごに、核酸の歴史についても学んでおきましょう。
核酸を発見した人物として知られているのは、ヨハネス・フリードリッヒ・ミーシャー(1844-1865)という人物です。スイスに生まれ、ドイツのテュービンゲン大学で研究をするなかで核酸を発見しました。
ミーシャ―が研究対象としていたのは白血球でした。実験に必要な白血球をたくさん得るためにミーシャ―が目を付けたのが、けが人のつける包帯です。傷口にできる膿は、病原菌と戦って死んだ白血球の集まったもの。これを集めれば、白血球が簡単に得られるというわけです。病院から膿のついた使用済みの包帯をもらい、ミーシャ―は白血球の研究をすすめました。
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1869年、ミーシャ―は白血球の細胞核からリン酸を含む化合物を分離し、ヌクレイン(核酸)と名付けます。ここにふくまれていたのが、DNAやRNAだったのです。
もっとも、当初はこの核酸という化合物にどんな意味があるのかよくわかっていませんでした。その後何十年もたってから、遺伝についての研究が本格的にすすむようになります。DNAが遺伝情報の本体であるということが明確になると、どんどんDNAやRNAについての知見が得られるようになっていきました。
まとめ:核酸=DNA+RNA
今回の話をまとめましょう。
「核酸」はDNAとRNAをひっくるめたもの。DNAは体の設計図となるだけでなく、子孫へと受け継がれていく遺伝情報の本体。RNAはDNAの情報からタンパク質をつくる際に情報を写し取ってできたもの。それに加え、RNAを材料としたいろいろな構造物が細胞内で機能しているということも学びました。
細胞について知るほど「核酸」という名でひとまとめにされるDNAやRNAが、様々な役割を果たしていることに気づきます(とくにRNA)。なかなか奥の深い言葉ですよね。
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そもそも、有性生殖をする生物は、元をたどればたった一つの受精卵から始まっています。細胞分裂の時にDNAは複製を行い、量を二倍に増やしたところで新しい細胞に均等に分配されるのです。生きている限り、体のあちこちでDNAの複製→細胞分裂は続きます。DNAが安定であることはとても重要です。
遺伝情報を伝えるRNA
DNAは複製によって増えますが、RNAはDNAの遺伝情報をもとにつくられます。RNAポリメラーゼという酵素のはたらきによって、DNAのなかでも必要となる部分(発現する遺伝子)をRNAに写し取っていくのです。これを転写といいます。
転写でできたRNAの鎖には不要な情報も含まれているため、必要な部分だけになるよう加工(スプライシング)が施されます。これによって完成したRNAをmRNA(メッセンジャーRNA)とよびわけているのです。mRNAは細胞核から出ていき、細胞質でタンパク質の合成作業に使われます。
たしかに、DNAからタンパク質をつくるという過程でRNAはつくられます。ところが、細胞の中にはRNAを材料にしてつくられている”道具”のようなものもあるのです。
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