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1. WNTシグナル経路の概要

2. WNT/β-cateninシグナル伝達のメカニズム

  1. _β_-catenin経路:_β_-cateninを介して、転写因子TCF・LEF1の活性化と標的遺伝子の誘導に至る
  1. planar cell polarity経路:細胞骨格や細胞運動を通じて、細胞の平面極性を制御する
  2. Ca2+経路:細胞内のCa2+動員を介して、CAMキナーゼやプロテインキナーゼCを活性化する

Fig. 1: WNT/β-catenin経路, 参考文献1より引用 (a)WNTシグナル経路が活性化していない状態では、細胞質内のβ-cateninは速やかに分解される。(b)WNTが受容体に結合すると、β-cateninの分解が阻害され、細胞質内へ蓄積する。細胞内に蓄積したβ-cateninは核移行し、転写因子(TCF・LEF1)を活性化する。(c)CTNNB1(β-catenin)変異を有する細胞では、β-cateninがリン酸化を受けないため分解されず、恒常的にTCF・LEF1の転写が活性化される。

  1. _β_-cateninはWNTシグナル伝達に重要な役割を果たすタンパク質である
  2. WNT/_β_-catenin経路が活性化していない状態では、APCを含む複合体によってリン酸化、ユビキチン化を受け、プロテアソームによって分解される。
  1. WNTが受容体に結合すると、degradation complexによる_β_-cateninのリン酸化が阻害される
  2. _β_-cateninの分解が阻害されると、_β_-cateninは細胞質内に蓄積される

参考文献

[1]西原広史 [ほか] 編. (2022). がんゲノム医療時代の分子腫瘍学. 病理と臨床, 40(臨時増刊号). 文光堂.

糖尿病とはインスリンの作用不足により、高血糖が慢性的に続く疾患である。

本項では糖尿病の分類や診断~治療までの流れについて記載する。

1. 糖尿病とは

糖尿病とは、血液中のグルコース(血糖)のレベルが正常よりも高い状態を指す一連の代謝性疾患である。この状態は、体がインスリンを十分に生産しないか、または体がインスリンを適切に使用できないために発生する。インスリンは、血液中のグルコースを体の細胞に運び、エネルギーとして使用するためのホルモンである。

糖尿病には主に二つのタイプがある:1型糖尿病2型糖尿病である。1型糖尿病は、体がインスリンを全く作らない状態を指す。これは通常、免疫系が誤ってインスリンを作るための細胞を攻撃する自己免疫疾患として発症する。一方、2型糖尿病は、体がインスリンを適切に使用できない、または十分なインスリンを生産できない状態を指す。これは通常、肥満や運動不足などのライフスタイルの要因によって引き起こされる。

糖尿病は、未治療のままであると、視力低下、腎臓の問題、心臓病、神経損傷など、さまざまな健康問題を引き起こす可能性がある。しかし、適切な治療と管理により、糖尿病患者は健康的で活動的な生活を送ることができる。

2. 糖尿病の分類

糖尿病は以下のように分類される。

3. 診察の流れ

3.1. 糖尿病に関するガイドライン

糖尿病に関する診療については、以下のようなガイドラインが存在している

3.2. 問診

糖尿病患者は、自覚症状なく、健診をきっかけに受診することが多い。糖尿病患者に関する問診では以下の事項を確認する。

患者が女性の場合、以下の事項についても確認する。

糖尿病の状況について確認するため、血液検査等も行う。

4. 成因・病態

糖尿病で特に多い1型糖尿病および2型糖尿病について、成因・病態を以下に記述する。

4.1. 1型糖尿病の成因・病態

4.2. 2型糖尿病の成因・病態

5. 症状

6. 検査・診断

診断基準の主な要素は血糖値である。

糖尿病の診断基準

血糖値について、以下のような指標が用いられる。

血糖値に関する検査結果から、糖尿病患者、糖尿病の疑いがある患者に分けられ、それぞれ以下のように分類される。

糖尿病の検査結果による分類

また、糖尿病は合併症に対する治療がQOL向上に非常に重要であるため、合併症に関する検査も行われる。

7. 治療

7.1. 糖尿病治療の概要と流れ

糖尿病の治療は大きく薬物療法と非薬物療法に分けられる。

糖尿病患者に対する治療の流れについて、下図に示す。

糖尿病の治療アルゴリズム

7.2. 糖尿病治療薬

糖尿病治療薬は下図のようなものが用いられている。

糖尿病治療薬に関するエビデンス

糖尿病治療薬は、食事・運動療法を2~3ヶ月行っても十分な血糖コントロールが得られない患者に対して行われる。

以下に、各糖尿病治療薬の概要と使い分けについて記述する。

メトホルミンの作用機序

OCT1: 有機陽イオン輸送体 1, FBP1: フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ, IRS1: インスリン受容体基質 1, GLUT1: グルコース輸送体タンパク質 1, mGPD: ミトコンドリアのグリセロリン酸デヒドロゲナーゼ, OXPHOS: 酸化的リン酸化, ATP:アデノシン三リン酸, AMP: アデノシン一リン酸, cAMP: 環状アデノシン一リン酸, IR: インスリン受容体, PKA:プロテインキナーゼA, ACC: アセチル コエンザイム A カルボキシラーゼ, mTOR: ラパマイシンの哺乳類標的, AMPK: アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ, CaMKKβ: カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼβ, LKB1: 肝臓キナーゼ B1, AXIN: 軸阻害剤; SIRT1:サーチュイン1; v-ATPase: 液胞 ATP 加水分解酵素.

DPP-4阻害薬の作用機序

老化は徐々に進行する不可逆的な病態生理学的過程である。

加齢により、しわが増え、体が弱り、病気になりやすくなる。

近年、老化のメカニズムを解き明かすため、様々な研究が行われており、一部が明らかになりつつある。

本項では、老化研究の歴史とその研究成果について紹介する。

1. 老化研究の歴史

老化研究における重要な発見を下図に示す。

老化研究の歴史

1.1. 寿命に影響を与える因子の発見

老化研究の始まりは20世紀前半である。

まず、1925年に光強度がショウジョウバエの成長速度と寿命に影響を与えることが明らかにされた。その後、1930年代にカロリー制限によってマウスやラットなどの哺乳類でも寿命が延びることが発見された。その後も様々な因子が検討され、マウスでは若い個体の糞便、血液などを移植することで寿命に影響することが発見されている。

1.2. 老化の原因に関する提唱

1956年、デナム・ハーマンによってフリーラジカル理論が提唱された。

老化に伴う変化は、細胞の代謝によって発生するフリーラジカルの有害な作用によって媒介されると主張した。その後、様々な研究により生物の寿命は遺伝子によって規定されているとする「プログラム説」や免疫細胞に加齢に伴う異常が蓄積することで老化が進むとする「免疫異常説」などの説が提唱されている。

現在では老化の特徴にそれぞれの説が提唱しているフリーラジカルや免疫異常などの老化の原因が含まれているが、老化は複雑に制御された生命活動の結果として生じるものであり、複数の原因によって進行していくものであるとされている。

1.3. 細胞の分裂限界の発見

ヘイフリック限界

1965年、ヒトの培養線維芽細胞を継代培養すると、それ以上分裂を行わない分裂限界があることが発見された。

上記の発見は発見者にちなんで「ヘイフリックの分裂限界」と呼ばれ、生物の寿命が遺伝子によって規定されているとするプログラム説が提唱されるようになった。

寿命に影響する遺伝子の探索により、細胞の分裂回数を規定している「テロメア(telomere)」の存在などが明らかになった。

2. 老化の特徴

老化の特徴は以下の3つの判断基準に当てはまる現象である

  1. 加齢によって増えていく現象である(増えなければ普遍的な現象であると考えられ、老化を起こすことはできないはず)
  2. その特徴が出るスピードが増せば老化が加速する
  3. そのスピードが緩めば老化が遅れる(老化に付随する減少と、実際に老化を促進させているものを区別するため)

老化に関連する分子メカニズム

上記のような判断基準に当てはまる特徴として以下のようなものは明らかになっている

  1. DNAの損傷
  2. テロメアの短縮
  3. タンパク質の問題
    1. オートファジー
    2. アミロイド
    3. 付加体
  4. エピジェネティクスの変化
  5. 老化細胞の蓄積
  6. ミトコンドリアの機能不全
  7. シグナル伝達の失敗
  8. マイクロバイオームの変化
  9. 細胞の消耗
  10. 免疫系の故障

2.1. DNAの損傷

DNA損傷と修復の種類

2.2. テロメアの短縮

テロメアの短縮

2.3. タンパク質の問題

タンパク質の調節不全

2.4. エピジェネティクスの変化

エピジェネティクス

2.5. 老化細胞の蓄積

老化細胞による影響

2.6. ミトコンドリアの機能不全

ミトコンドリアの老化による変化

2.7. シグナル伝達の失敗

老化に関連するシグナル伝達

2.8. マイクロバイオームの変化

加齢に伴う腸内細菌叢の変化

2.9. 細胞の消耗

幹細胞の老化

2.10. 免疫系の故障

免疫系の老化

参考文献

  1. AGELESS(エイジレス):「老いない」科学の最前線
  2. https://www.nature.com/articles/s41392-022-01251-0
  3. https://www.mdpi.com/1422-0067/24/5/4741
  4. https://blog.cellsignal.jp/cell-process-what-role-do-the-telomeres-play-in-senescence
  5. Frontiers | Editorial: Dysregulated Protein Homeostasis in the Aging Organism
  6. http://commonfund.nih.gov/epigenomics/figure.aspx
  7. https://www.cell.com/trends/cell-biology/fulltext/S0962-8924(21)00250-6
  8. https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/perspective_53_2_88.pdf
  9. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1084952121000306
  10. https://www.researchgate.net/figure/Current-understanding-of-aging-signaling-pathways-Oxidative-stress-mitochondrial_fig1_51798799
  11. The gut microbiome as a modulator of healthy ageing | Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology
  12. https://www.cell.com/cell-reports/pdf/S2211-1247(22)01292-X.pdf
  13. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fragi.2022.900028/full

日本における医療戦略は日本医療研究開発機構(AMED)によって統合されている

AMEDが推進する研究開発

6つの統合プロジェクトと主要な7疾患領域がある

参考資料

  1. 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

DNA複製の複製様式(複製フォーク)

DNAは各タンパク質が協働して複製される

リーディング鎖とラギング鎖の複製様式の違い

複製フォークにおける2本のDNA鎖の伸長方法は異なっている

参考文献

  1. Life The Science of Biology (12th edition)

細胞の構造

参考文献

  1. Life The Science of Biology (12th edition)

老化によってみられる10個の特徴

老化の原因には以下のような特徴がある

  1. 加齢によって増えていく現象である(増えなければ普遍的な現象であると考えられ、老化を起こすことはできないはず)
  2. その特徴が出るスピードが増せば老化が加速する
  3. そのスピードが緩めば老化が遅れる(老化に付随する減少と、実際に老化を促進させているものを区別するため)

上記のような判断基準に当てはまる10個の特徴を以下に記載する

  1. DNAの損傷
  2. テロメアの短縮
  3. タンパク質の問題
  4. エピジェネティクスの変化
  5. 老化細胞の蓄積
  6. ミトコンドリアの機能不全
  7. シグナル伝達の失敗
  8. マイクロバイオームの変化
  9. 細胞の消耗
  10. 免疫システムの故障

参考文献

  1. AGELESS(エイジレス):「老いない」科学の最前線
  2. Guo, J., Huang, X., Dou, L. et al. Aging and aging-related diseases: from molecular mechanisms to interventions and treatments. Sig Transduct Target Ther 7, 391 (2022). https://doi.org/10.1038/s41392-022-01251-0