キヤノン EOS R5 Mark II / EOS R1発表!その動画性能について (original) (raw)
はじめに
さて、2024年7月17日に正式発表になったキヤノン EOS R5 Mark II / EOS R1について書いてみたいと思います。本当は発表直後に本記事を書きたかったのですが、当日晩に寝落ちするという失態をしでかしてしまい、夜中にゴソゴソと本記事を書いています。
本記事はニコンZ6III/LUMIX GH7の時とは違い発表時に手元に実機が無い状態で書いているので、一部間違った事を書いてしまう可能性があることをご承知の上でご覧いただきたいと思います🙏
EOS R5 Mark II:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
というかですよ、ある程度予想していたとは言え、2機種同時発表となるとこうして記事を書く方としては大混乱。。。
スペック一覧
動画に関わる項目を表にしたものが下記です。
項目 | EOS R5 Mark II | EOS R1 |
---|---|---|
有効画素数 | 約4500万画素 | 約2420万画素 |
水平記録画素数 | 8192 | 6000 |
垂直記録画素数 | 5464 | 4000 |
画素ピッチ | 約4.4um | 約6um |
常用ISO感度@スチルガンマ | ISO100〜51200 | ISO100~102400 |
常用ISO感度@Canon Log2/Log3 | ISO400〜25600 | ISO400~32000 |
メカシャッター | あり | あり |
ボディ内手ブレ補正 | あり | あり |
記録媒体 | カード1: CFexpressカード2:SD(UHSII対応) | カード1: CFexpressカード2:CFexpress |
HDMIポート | TYPE A | TYPE A |
X同調速度@電子シャッター | 1/160sec | 1/320sec |
動画記録コーデック | RAW/HEVC/H.264 | RAW/HEVC/H.264 |
プロキシ記録 | 可能 | 可能 |
最大フレームレート@RAW(最大解像度設定時) | 8K60p@軽量RAW2600Mbps | 6K60p@RAW2600Mbps |
最大フレームレート@圧縮コーデック | 8K30p@HEVC | 6K圧縮コーデック設定なし |
4K60p@HEVC(オーバーサンプリング?) | 4K60p@HEVC(オーバーサンプリング?) | |
4K120p@HEVC(画素混合と推測) | 4K120p@HEVC(画素混合と推測) | |
2K240p@HEVC(画素混合と推測) | 2K240p@HEVC(画素混合と推測) | |
HDMI RAW記録 | 可 8K30p ProResRAW | 可 6K60p ProResRAW |
重量 | 746g(バッテリー・カードを含む) | 1115g(バッテリー・カードを含む) |
価格 | 654,500円(税込) | 1,089,000円(税込) |
幕速(ローリングシャッター速度)
まず目に付くものとして、電子シャッターの幕速です。
EOS R5MarkIIが1/160sec、EOS R1で1/320のX同調速度を実現しています。
8Kクラスで比較した場合SONY α1/ニコンZ9/Z8に比べてやや速度が見劣りしますが、ここで気になる点は、新開発と言われる裏面照射積層CMOSセンサーの中身です。SONY α1/ニコンZ9/Z8の場合は積層チップ側にメモリ(フレームバッファ)を持つことで「スチルは幕速がめちゃめちゃ速い」、「動画の場合はメモリを使わずそこそこ速い」を実現していました。それは以前書いた以下の記事で「I/F側が律速している」点と「発熱を抑える」の二つの観点のためと予想していました。
ここからは私の予想ですが、EOS R5MarkII/EOS R1は速い幕速とI/F帯域の速度差を緩衝するためのメモリ積層タイプではなく、全画素をメモリを使わずに1/160で読み出すタイプのセンサーが搭載されている可能性が高いと考えています。
つまり何を言っているかというと、EOS R5MarkIIの動画撮影の場合(例えば8K60pや30p)は幕速が1/160msecが実現できている(もしくはそれを実現できるポテンシャルを有している)のでは?という予想です。
この予想は外れるかもしれませんが、実機に触れたら真っ先に確認すべき項目と考えています。
特長 EOS R5 Mark II:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
コーデック
EOS R5MarkIIはRAW撮影で8K60p記録を実現しています。これはニコンZ9/Z8のスペックに対抗したと見ることもできます。実際にこの(スチルメインの)カメラで8K60pを常用する様なユーザーは1%もいないという印象ですが、そこはキヤノンの意地とプライドがかかっているとも言えます。実際に使うと「8K解像度やべー!!」と驚くのですが、それを使いこなせるユーザーはかなり希少と言えます。このサイトをご覧の方は使いこなす人が多く、その価値も分かっておられる方がほとんどだと思いますが、一方では「動画のスペックアップなんて要らん!代わりに値段抑えろ!」と言う声が上がると予想されます。
なので、EOS R1もR5MarkIIとも「動画機のスペックを考慮すると安いor高くは無い」「スチルだけで見るとめっちゃ高い」と言えます。
ちなみにEOS R5MarkIIのスペック表をご覧の方はお気付きかもしれませんが、EOS R5MarkIIはRAWコーデック以外では8K60pを撮影することはできない様です。これは8K60pの全画素をエンコードするエンジンリソースが無いためと予想しています。このことはZ8/Z9でも同様ですのでオーバーサンプリングして4Kにダウンコンした後にHEVC圧縮するというアーキテクチャになっていそうです。
RAW記録はスゲーと思われがちですが、ストレージ周りの負荷が大きいもののエンジンの画像処理(空間、時間圧縮、各種収差補正など)の負担が低いため8K60pは2024年段階でのエンジンでも実現できている記録方式だと理解するのが冷静な見方だと思います。
また、動画RAWコーデックの各種NLEの対応状況ですが、おそらくDaVinci Resolveでの使用は可能(もしくは対応する)と思います。
EOS R5 Mark IIの動画フォーマットに関する記述(メーカーページより引用)
動画性能 EOS R5 Mark II:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
HDMI TYPE Aの採用と外部RAW記録
HDMIはTYPE Aが採用されています。さすがにMicor端子だと簡単に破損するので、TYPE Aだと安心です。なお、ATOMOSの外部レコーダーを使用してEOS R5MarkIIでは8K30pまでのProResRAW記録が、EOS R1では6K60pのProResRAW記録が可能になっています。意外とひっそり描かれてたので見落としそうになりました。
熱停止に関して
思えば、EOS R5が出た時に「熱で簡単に止まる!」みたいに騒がれた時がありました。私もこの件に関しては一度記事にしたことがあります。
いいかげん各種メディアでも一部で未だ残っている「熱暴走」という言い方やめません??
EOS R5 MarkIIに関してはカメラ単体では8K60p撮影時では18分と記載されていますのでやはり発熱はかなりのものと思われます。オプションのファンをつけたとしても8K60pの排熱効果はあまり期待できない様です。
EOS R5 Mark IIの温度上昇に伴う撮影時の制限(メーカーページより引用)
動画性能 EOS R5 Mark II:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
一方で、4K60pの場合はCF-R 20EPを使用した場合は熱による制限無しとなっています。ということはEOS R5 MarkIIの4K60pは全画素8K60p読み出しによるオーバーサンプリング4K記録ではないとも予想できます。
一方で、EOS R1の方はさすがに大型ボディだけあって放熱がしっかりされている様です。6K60pでも120分以上が回せる様です。ただし、使用するメディアによってはかなりの高温になるため注意が必要です。
EOS R1の温度上昇に伴う撮影時の制限(メーカーページより引用)
動画性能 EOS R1:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
プロキシ記録
ミラーレス一眼のプロキシ記録はSONY α7SIIIで初めて実装されたと記憶しています。
EOS R5 Mark IIでは8K60pのRAW記録をCFexpress側に、SDにはProxyを記録できるようになっています。
なお、8K60pのRAWは非常に高ビットレートなのでSDカードへのダブル(バックアップ)書き込みはできませんのでご注意ください。
EOS R5 Mark IIのプロキシに関する記述(メーカーページより引用)
動画性能 EOS R5 Mark II:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
ちなみに謎なのがEOS R1のHPの下記記載。メディアスロットはCFexpressのダブルスロットなはずなのにSD UHS-IIの記載。。。知りたかったのは6K60pがバックアップ記録できるのかどうかを知りたかったのですがどのたかご存知??
EOS R1のプロキシに関する記述(メーカーページより引用)
動画性能 EOS R1:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
タリーと赤枠REC表示
ついにEOSにもタリーと赤枠REC表示が搭載されました。双方とも2019年発売のLUMIX S1Hに初めて実装された機能ですが、各社多くのカメラがこの機能を実装してきました。別にLUMIXすげーと言いたいわけではありませんが、LUMIX開発陣の先見性は確かだったようです。誰も褒めないのでせめて私だけでも(笑)
なおEOS R5MarkIIもR1双方でこの機能が備わっています。
DGOセンサーの採用は無し
少し前に噂系サイトで書かれていた新EOSではDGOセンサーが採用されるという噂。私もこれに関しては注目していましたが、どうやらDGOセンサーでは無い様です。
DGO(Dual Gain Output)センサーは異なるゲインでの読み出しを行いピクセルレベルで合成するというものでダイナミックレンジの拡張で大きな効果を示すものです。
現状ではCANONの一部のシネマカメラとミラーレスカメラではLUMIX GH7/G9PROIIで採用されている技術となります。
機能一覧|EOS C300 Mark III|映画製作機器 CINEMA EOS SYSTEM|キヤノン
DGOじゃなかったからダメというわけでは全くなく、フルサイズセンサーなのでダイナミックレンジは広いものと思います。以下には最大16+STOPと記載されていますが、これはあくまでCanon Log2ガンマの仕様の話であり実際のスペックでは無いことに注意です。
動画性能 EOS R5 Mark II:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
経験的には14STOP前後(標準照度を中心に-8〜+6STOP)あたりの範囲になるものと予想します。また、ダーク側のS/NによってCineDなどのサイトでは11〜12STOPあたりと評価されるものと思います。
価格
先にも書きましたが、EOS R5MarkIIで65万円、EOS R1で109万円という値段設定で、「高い」という印象を受けます。というのもスチルの観点で見た場合、画素数はそのままで、向上したものはAF性能と電子シャッターを中心とした連写性能と見られがちだからです。もちろんディープラーニング技術に低ノイズ化やカメラ内アップスケーリングも大きな進化だと思いますが、スチルのノイズ性能、とアップスケールに関してはAIを使用した後処理の方が勝る可能性が高いかもしれませんし、そういう意見が多いと予想されます。もちろん速報性が必要な場面では有効ですが、じっくり写真を仕上げるという人にとってどこまで受け入れられるのかは注目していきたい点です。
少しネガティブな事を書きましたが、動画観点ではこの値段設定は少し違います。
EOE R5MarkIIの65万円は8K60pRAW記録カメラとしては比較的普通の値段と言えます。というか、数年前であればバーゲンセールと言われるレベルでしょう。一方でR1の106万円の場合は動画観点だと6K60pマシンとして捉えるとすると少々高い。R1に関してはフラッグシップスチル機としての意味合いや堅牢製を含めて総合的に判断すべきだと思いますし、そもそも動画撮影目的だけで使うにはちょっと違う気がします。
EOS R5 Mark II:レンズ交換式カメラ・レンズ|個人|キヤノン
一旦のまとめ
多くのユーザーはスチルの性能はもうすでに満足している人が圧倒的多数ですし、写りとしての進化軸として強烈なダイナミックレンジやS/Nを実現しない限り価格アップには納得できないというユーザーが増えてきているのは明白です。(価格アップは為替の問題もあるけど)
一方で動画ユーザーのフレームレートや機能向上の要求は高まる一方です。それらがスチルユーザーとの溝を深める結果となりメーカーも対応に苦慮している、そんな雰囲気がこの数年感じているところです。
スチルユーザーも動画ユーザーも納得できるカメラで値段が安ければみんながハッピーなのでしょうけど、動画の機能アップが目立ち過ぎると「動画の為に価格アップしたなら納得できん」となりかねないでしょうし、一方でスチルの連写速度向上などは動画性能向上と密接な関係にあるため単純にスチルと動画を切り離せる関係には無いでしょう。
アマチュアユーザーが気楽にミドルエンドのカメラが買えない時代に突入したのはスマホに押されているからとか、市場が飽和したからとか、色々な理由がありますが、一眼という分野は、高機能化と複雑化が進み、このままだとより先細りしてしまう事も危惧しています。
今回のEOS 5RMarkIIやR1はすごく魅力的なカメラが出たという印象を持っていますが、その魅力を感じる人はごく一部だけにとどまるようになり、よりニッチになっていく。デジタル一眼レフ黎明期のようにシンプルで簡単に綺麗を訴求できるというものではなくスペックを見ててもよくわからんし、機能の10%も使っていないというユーザーが今後とも増える気がせんでもない。。。
とまたしてもネガティブな事を書いてしまいましたが、EOS R5MarkIIと似たスペックを持つZ8ユーザーとしては気になるぞ。
というわけで、各種メディアさん動画観点でのレビュー記事執筆依頼をお待ちしています(笑)
自己紹介
筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。