万葉歌碑を訪ねて(その1854~1856)―松山市御幸町 護国神社・万葉苑(19,20,21)―万葉集 巻八 一四一八、巻十四 三五七二、巻二 九〇 (original) (raw)
―その1854―
●歌は、「石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも」である。
松山市御幸町 護国神社・万葉苑(19)万葉歌碑<プレート>(志貴皇子)
●歌碑(プレート)は、松山市御幸町 護国神社・万葉苑(19)にある。
●歌をみていこう。
題詞は、「志貴皇子懽御歌一首」<志貴皇子(しきのみこ)の懽(よろこび)の御歌一首>である。
◆石激 垂見之上野 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨
(志貴皇子 巻八 一四一八)
≪書き下し≫石走(いはばし)る垂水(たるみ)の上(うえ)のさわらびの萌(も)え出(い)づる春になりにけるかも
(訳)岩にぶつかって水しぶきをあげる滝のほとりのさわらびが、むくむくと芽を出す春になった、ああ(「万葉集 二」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)
この歌については、志貴皇子の歌六首とともにブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1216)」で紹介している。
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この歌は巻八の巻頭歌である。全巻の巻頭歌についてはブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1822~1826)」で紹介している。
巻一~巻四の巻頭歌
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巻五~巻八の巻頭歌
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巻九~巻十二の巻頭歌
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巻十三~巻十六の巻頭歌
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巻十七~巻二十
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―その1855―
●歌は、「あど思へか阿自久麻山の弓弦葉のふふまる時に風吹かずかも」である。
松山市御幸町 護国神社・万葉苑(20)万葉歌碑<プレート>(作者未詳)
●歌碑(プレート)は、松山市御幸町 護国神社・万葉苑(20)にある。
●歌をみていこう。
◆安杼毛敝可 阿自久麻夜末乃 由豆流波乃 布敷麻留等伎尓 可是布可受可母
(作者未詳 巻十四 三五七二)
≪書き下し≫あど思(も)へか阿自久麻山(あじくまやま)の弓絃葉(ゆずるは)のふふまる時に風吹かずかも
(訳)いったいどういう気でじっとしているんだ。阿自久麻山(あじくまやま)の弓絃葉がまだ蕾(つぼみ)の時に、風が吹かないなんていうことがあるものかよ。(「万葉集 三」 伊藤 博 著 角川ソフィア文庫より)
(注)あど思へか:どんなに思ってじっとしているんだ。ここで切れる。(伊藤脚注)
(注)弓弦葉のふふまる時に:ゆずりはが蕾のままである時に。女が一人前だない間は、の意。(伊藤脚注)
(注の注)ふふむ【含む】自動詞:花や葉がふくらんで、まだ開ききらないでいる。つぼみのままである。(学研)
(注)風吹かずかも:風が吹かないとでも思っているのか。他の男が言い寄るぞ、の意。第三者が、ためらう男をけしかけたもの。(伊藤脚注)
―その1856―
●歌は、「君が行き日長くなりぬ山たづの迎へを行かむ待つには待たじ」である。
松山市御幸町 護国神社・万葉苑(20)万葉歌碑<プレート>(軽太郎女)
●歌碑(プレート)は、松山市御幸町 護国神社・万葉苑(21)にある。
●歌をみていこう。
題詞は、「古事記曰 軽太子奸軽太郎女 故其太子流於伊豫湯也 此時衣通王不堪戀慕而追徃時謌曰」<古事記に曰はく 軽太子(かるのひつぎのみこ)、軽太郎女(かるのおほいらつめ)に奸(たは)く。この故(ゆゑ)にその太子を伊予の湯に流す。この時に、衣通王(そとほりのおほきみ)、恋慕(しの)ひ堪(あ)へずして追ひ徃(ゆ)く時に、歌ひて曰はく>である。
◆君之行 氣長久成奴 山多豆乃 迎乎将徃 待尓者不待 此云山多豆者是今造木者也
(衣通王 巻二 九〇)
≪書き下し≫君が行き日(け)長くなりぬ山たづの迎へを行かむ待つにはまたじ ここに山たづといふは、今の造木をいふ
(訳)あの方のお出ましは随分日数が経ったのにまだお帰りにならない。にわとこの神迎えではないが、お迎えに行こう。このままお待ちするにはとても堪えられない。(伊藤 博 著 「万葉集 一」 角川ソフィア文庫より)
(注)やまたづの【山たづの】分類枕詞:「やまたづ」は、にわとこの古名。にわとこの枝や葉が向き合っているところから「むかふ」にかかる。(学研)
(注)みやつこぎ【造木】: ニワトコの古名。(weblio辞書 三省堂大辞林第三版)
(注)軽太子:十九代允恭天皇の子、木梨軽太子。(伊藤脚注)
(注)軽太郎女:軽太子の同母妹。当時、同母兄妹の結婚は固く禁じられていた。(伊藤脚注)
(注)たはく【戯く】自動詞①ふしだらな行いをする。出典古事記 「軽大郎女(かるのおほいらつめ)にたはけて」②ふざける。(学研)
(注)伊予の湯:今の道後温泉
(注)衣通王:軽太郎女の別名。身の光が衣を通して現れたという。(伊藤脚注)
この歌については、直近では、松山市姫原 軽之神社・比翼塚の歌碑とともにブログ拙稿「万葉歌碑を訪ねて(その1834)」で紹介している。
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前稿で全国万葉公園のリストをあげ、その中で行ったことのある公園を紹介している。
本稿ではその第2弾を紹介している。
■万葉植物園、広島大学附属福山中学校・高等学校 - 福山市春日町
■三滝自然公園万葉の道
■呉市万葉植物公園(追記)
■奈良市神功 万葉の小径(追記)
(参考文献)
★「萬葉集」 鶴 久・森山 隆 編 (桜楓社)
★「weblio古語辞典 学研全訳古語辞典」