「育休世代」のジレンマ/中野円佳 (original) (raw)

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

先日、『教育大国シンガポール』を紹介した中野円佳さんが修士論文として執筆されたモノを加筆修正された内容だということですが、修論が新書になるほどのクオリティってスゴいなぁ…

新聞社勤務を経て、大学院での研究に入られたということのようですが、ご自身も研究者としてのキャリアを追求する中で、子育てとの両立にジレンマを感じられたことをそれとなくこの本の中でもほのめかしておられますが、出版が10年前で、修論として執筆されたのがそれよりも何年か前で、10数年経って多少状況は改善されているとは言うモノの、女性がキャリアとプライベートでの充実した生活を両立させるということが、かなり奇跡的なモノだということを痛感させられます。

修論を執筆された時点で、雇用機会均等法が施行されてそれなりの時間が経ち、制度としては女性がキャリアを追求するための条件は、曲がりなりにも整備されている状況にはあったモノの、会社での制度だったり、上司の理解が追い付かなかったり、ダンナ様が仮に協力的であっても、単身赴任させられたり、両親が近くに住んでいなかったりなどなど、相当条件が整っていなければ、なかなか子育てをしながらキャリアを追求するのは難しそうです。

特に、せっかく本人がキャリアの追求に熱心で、かつ支援の状況も整っていても、会社側が、ミョーに気を遣ってユルめの仕事をアサインしたり、逆にガンバり過ぎてバーンアウトしたり、カラダを壊したりということで、そういうバリキャリ志向の人の方が途中で挫折してしまいがちだというのが、本人も会社としても残念なところでしょう。

少なくとも、本人と会社との綿密な意識合わせが必須だということは最低限なのですが、それ以前に、ダンナ様だったり、ご両親のバックアップが前提だということで、そういう蜘蛛の糸を渡る必要があるような状況を何とかして、フツーにスロープを渡るくらいの難易度にしないと、なかなか女性の能力を十全に活用することや、少子化の克服も難しそうです…