伊瀬谷 武著『アマテラスの暗号』を読む - 驚きの仮説。日本人はどこからきたのか? (original) (raw)

どうもShinShaです。今回は、伊瀬谷 武 著『アマテラスの暗号』を紹介する記事です。久々に読んだ日本の古代史に関する、とても面白い本でした。

古くから日本にユダヤ人が渡来していたことを、この本を読んで知りました。さらに本書では、渡来したユダヤ人が日本の神社をつくり、日本文化の形成にも大きく関わってきたという大胆な推理を行なっています。

この本は古代史ファンの僕には、わくわくが止まらない内容でした。これまで古代史を題材にした小説を時々読んできましたが、この本は本当にスリリングでリアリティのある内容でした。さすがamazonのベストセラーだけあります。

本の概要

神道とはなにか?天皇家の正統性とは?日本人はどこからきたのか?
──その鍵は最高神“アマテラス”、そして宮中最大の秘祭 “大嘗祭”に封印されていた……
これはあなたの歴史の常識への挑戦である。

「『ダ・ヴィンチ・コード』を凌ぐ衝撃の名著!!」――茂木誠(作家、著書『超日本史』『ジオヒストリア』他多数)

ニューヨーク在住の賢司は、日本人父との四十数年ぶりの再会の日、父が殺害されたとの連絡を受ける。父は日本で最も長い歴史を誇る神社のひとつ、丹後・籠神社の宗家出身、第八十二代目宮司であった。

籠神社は伊勢神宮の内宮と外宮の両主祭神(アマテラスと豊受)がもともと鎮座していた日本唯一の神社で、境内からは1975年、日本最長の家系図『海部氏系図』が発見され、驚きとともに国宝に指定されていたことで知られていた。

神職に就く父が何故日本から遠く離れた国で殺されたのか? 再会の日、父が自分に伝えたかった事とは?

父の死の謎を探るため、賢司は友人たちと日本へ乗り込むが……
250点以上の写真、図など豊富な資料を用いて、日本の歴史に挑む新感覚の歴史ミステリー!(この小説における神名、神社、祭祀、宝物、文献、伝承、遺物、遺跡に関する記述は、 すべて事実にもとづいています。)
引用:https://www.amazon.co.jp/

伊瀬谷 武著『アマテラスの暗号』

『アマテラスの暗号』を読んだ感想

この本はミステリー仕立てになっており、主人公は殺された父親の残したメッセージの謎を解くために、次々と日本の古い神社を訪れて、そこで行われる神事、伝承に次々とユダヤ教との共通点を発見していく。

さらに、本書では秦氏ユダヤ人説を展開する。「日本書紀」には応神天皇(4世紀後半〜5世紀)のとき、弓月(ゆづき)の国から約二万人の人々が渡ってきたと書かれています。弓月の国は、現在の中央アジアカザフスタン、中国の新疆ウイグル自治区付近にあるといわれています。

弓月国から来た人々は、後に秦氏と名乗り、養蚕、織物、灌漑、土木、建築、冶金、農業の技術により、莫大な富を作り、日本の政治・経済・宗教に多大な影響を及ぼしたといわれている。

また、秦氏の一族は八幡神社松尾大社伏見稲荷大社木嶋坐天照御魂神社、大酒神社、大避神社など、ほとんどの神社の創建に関わったといわれています。

伏見稲荷大社https://discoverjapan-web.com/ から転載

これまで、秦氏は中国系の人々だと考えられてきました。弓月の国の位置は、シルクロードイスラエルを結ぶ場所にあったと考えられており、地理的には十分、ユダヤ系の人々が移住した可能性があります。

本書の後半は古事記に伝わる神話、アマテラスからニニギ〜神武天皇に繋がる天皇の血統の謎解き、古代イスラエルから消えたアーク(聖櫃)にまで触れており、壮大な物語に発展していきます。まさにダビンチコードを超えるストーリーだ。古代イスラエルから消えたアークが日本にある?!

本書に書いてある日本を代表する数々の神社の神事、伝承とユダヤ教旧約聖書などとの共通点を指摘されると、本書の仮説に頷かされてしまうのです。というか、なかなか否定が難しいように思えてきます。

もし、この仮説が本当であるならば、渡来したユダヤ人は、日本の文化の形成に大きく関わっていることなります。八幡神社は日本全体で4万社、稲荷神社は3万社...まさに日本中のほとんどの神様を作ったことになる。

秦氏の代表的な人物といえば秦河勝。この人は聖徳太子の参謀で日本史の教科書にも載っていました。しかも秦氏の一族は平安京、京都の造営にまで関わっているのです(^^;;

秦河勝肖像画wikipediaから転載

消えた十支族はアジアに移動した

ここからは本を離れて、webの情報を調べてみました。

そんな遠い昔に日本にユダヤ人が来ているなんて、絵空事だと思う人も多いと思います。しかし、彼らがシルクロードを通ってアジアまで移動してきた証拠はミャンマー、インド、中国などいろいろな国にあるのです。

旧約聖書によると、紀元前720年代、現在のイスラエルの辺りにあった「イスラエル王国」はアッシリア人の侵攻を受けて滅亡します。この時、この地に住んでいた十の支族の行方が分からなくなってしまったのです。彼らは国を捨てディアスポラ(Diaspora 民族離散)の民となりました。

イスラエルから失われた十支族の調査機関「アミシャブ」は1980年代にミャンマーに住むシルシン族が失われた十支族の中のマナセ族であることを発見しました。そして、マナセ族約800人をイスラエルに帰国させました。彼らは日本人と同じモンゴロイド系の人々です。「アミシャブ」の代表は日本にもたくさんの十支族が日本にも来ている筈だと言及しており、日本国内でも調査を行なっています。

関連の新聞記事のリンクを下記に掲載しました。インドにもマナセ族の一部が住んでいるのですね。イスラエルは最近でも、インドに住むマナセ族の人々を帰国させています。帰国したマナセ族は1300人以上になっている。本書の仮説には十分なリアリティがあるのです。

www.afpbb.com

ブネイ・メナシェ(マナセ族)の子供たち=インド北東部マニプール州チュラチャンドプールで2021年3月、松井聡 撮影、https://mainichi.jp/premier/politics/ から転載

田中秀道氏の著作

ユダヤ人が古代から日本にきていたという説を書いた本がほかにもあります。今回紹介した本が出版されたのが2020年。ほぼ同じ時期の2019年に東北大学名誉教授 田中秀道氏の著作『発見ユダヤ人埴輪の謎を解く』が発表されました。

図書館で2冊借りて読みましたが、田中氏が書いている説も本書の内容に重なっています。下に田中教授の著作、千葉県のweb siteから転載した渡来人埴輪の写真を掲載しました。山高帽、あご髭、高い鼻筋、耳元に垂れ下がる”みずら”と呼ばれるびんの毛、まさしく僕らが知っているユダヤ人の姿です。

殿塚・姫塚古墳の造営時期は6世紀後半頃と推定されていますから、少なくともこの時代の関東地方にユダヤ人が来ていたことは事実であるようです。出土した埴輪は、弓月国から渡来した人々、あるいはその子孫をモデルに作られたものだと推理するのが自然に思えます。

田中秀道氏の著作

芝山古墳群(殿塚・姫塚)出土埴輪、https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/p181-011.html から転載

アマテラスの暗号(上) (宝島社文庫)

アマテラスの暗号(下) (宝島社文庫)

あとがき

ユダヤ民族の中の太陽神を信じる人々が、太陽が昇る所を求めて東へ東へと移動し、たどり着いたところが自然豊かな日本列島。その土地の穏やかな人々に「流浪の民」は受け入れられる。「彼らは”みずら”を落として土地の人々と婚姻し、日本人の血の中に溶け込んでいった」という、本書に書かれたくだりには感動しました。

古代日本にユダヤ人が来ていたというのは、どうやら動かしがたい事実です。いろいろ調べてみると、明治時代から「日ユ同祖論」という説があったのですね。webにもwikipediaにも関連する情報がたくさん掲載されています。この本を読むまで、僕は全く知りませんでした。

この本を読むと、秦氏ユダヤ人説は、とても魅力的な仮説だと思えます。しかし、現状では秦氏ユダヤ人の一族であったという科学的な根拠は薄いです。本書に記載されたDNAに関する情報も今ひとつ明確ではありません。興味深い仮説だけど、まだまだ科学的な検証が必要に思えます。

この本には、インディージョンズばりの失われたアーク(聖櫃)、天皇家の血筋などについても書かれています。失われたアークが、もし本当に日本にあれば、凋落したこの国も復興できるかな。ふと、そんなことを考えました。
とっても面白い本だった。
ShinSha