碓氷峠の急勾配をトロッコ列車で実体験した (original) (raw)
信越本線の横川〜軽井沢区間は碓氷峠越えの難所で、最大66.7‰という斜度はJR線の中では日本一の急勾配でした。長野行の新幹線の開通により1997年9月30日をもって廃止されましたが、碓氷峠鉄道文化むらではこの区間をトロッコ電車で体験できます。
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碓氷峠には以前から興味があった
碓氷峠は群馬県安中市と長野県北佐久郡軽井沢町の間の県境となっている峠で、古くから坂東と信濃国を結ぶ交通の要所でかつ難所であり続けた場所です。
鉄道で言えば信越本線の横川~軽井沢の区間が該当し、急勾配を克服するため専用の機関車を増結させる必要がありました。連結や切り離し作業のため横川駅では全ての列車が約5分間停車することになるため、ホームで手売りしていた「峠の釜めし」が爆発的に売れたという話は少年時代の私の心をときめかせたものです。
そんなすごい場所なら是非一度行ってみたいとは常に思っていましたが、社会人になってバタバタしている間にこの区間は廃止になっていました。
碓氷峠の特殊な山容
日本の鉄道史は1869年(明治2年)11月に明治政府が鉄道建設を廟議決定したことに始まりました。
まず東京と京都を結ぶことを目指し、船との競合がない中山道沿いで着手しましたが碓氷峠を始めとして難工事だらけなので一旦断念して東海道線を開通させます。今度は東京と新潟を結び本州を縦断させることを目指して上野~横川と直江津~軽井沢までは開通させますが、またしても碓氷峠がその前に立ちはだかっていたのです。
碓氷峠の難しさの原因はその特殊な山容にありました
峠の標高が956mで軽井沢の標高は939mでほとんど差がないのに対し、横川の標高は387mです。要するに群馬県側だけ急峻な斜面になっているのです。普通の峠なら麓にトンネルを掘りさえすれば全て解決しますが、碓氷峠の場合は横川と軽井沢の間の552mもの標高差を何とかしなければなりません。
東京と長野を結ぶ際に必ず通らなくてはいけない場所なのに実に厄介な話です。
所要時間短縮の歴史
横川~軽井沢間が結鉄道でばれたのは1893年で、66.7%c/パーミル(1,000m走る間に66.7nm登る)の急勾配を克服するためアプト式を導入しました。線路の中央にノコギリ型のラックレールを置き、蒸気機関車に取り付けた歯車を噛み合わせ、横川から軽井沢まで80分で登ったといいます。
しかしこの区間にトンネルが26ヶ所もあったため蒸気機関車では煙で機関士や乗客が窒息する恐れがあり、1912年にいち早く電化されて所要時間は49分に短縮されました。
時代が進むと速度の遅いアプト式では物資や乗客の増加に対応できず、1963年に信越本線を複線化し、機関車もEF63型電気機関車を投入することで輸送力増大を図ります。これで所要時間は上り17分下り24分と大幅に短縮できました。
EF63型は急坂を登る為の馬力と安全に止まる為の機能を兼ね備えており、碓氷峠を通過する列車は全て東京側に2両連結しなければなりませんでした。しかし特殊すぎて平地ではスピードが出せず、他の線への転用が出来なかったことから展示用を除きそのほとんどが廃車となりました。
日本で唯一の寝台特急の旅
トロッコ列車で急勾配を体験できる
日本の鉄道技術の総力を注ぎ込んだような区間だった「横川~軽井沢」ですが、長野まで新幹線が開通すると1997年9月30日をもってあっけなく廃止となってしまいました。忙しさにかまけて乗りに行かなかったことを後になって大いに後悔したのですが、幸いにも下り線の一部区間が保存されており、トロッコ列車で急勾配を体験できるようになっていました。
横川駅に隣接した碓氷峠鉄道文化むらでは3月下旬から11月までの土日祝日のみ、トロッコ列車シェルパくんを運行しています。
先頭車両のみ展望スペース付きのオープンデッキ型車両で、2両目はエアコンも完備した木目仕様の車両となっています。
かつて使用されていた信越本線下り線の線路をそのまま使っています。YouTubeで何度も見た前面展望の動画そのままの光景です。上り線の跡地は遊歩道になっています。
中間点にある旧丸山変電所までは傾斜は緩やかです。
まるやま駅で5分ほど停車します。
旧丸山変電所は1912年に建てられ、1963年に役割を終えるまで発電所からの電気を機関車に送り続けていました。現在では国の重要文化財に指定されています。
相当な勾配が体感できた
旧丸山変電所から先が本格的な急傾斜区間となっています。矢印の所から勾配が急になっているのがお分かりいただけますでしょうか。
25%cあれば急勾配と言われる鉄道の線路が60%c以上の傾斜で一直線に延びています。
まるやま駅から終点のとうげのゆ駅直前までの動画です。
画面上ではそれほどの傾斜は感じられないと思います。しかし床は明らかに傾いており、また急勾配を登るため機関車が後ろからフルパワーで押していることが感じられました。
カメラの水準器の機能を活用して正確に水平をとって撮影してみました。
やはり相当な勾配なのです。
粘着式鉄道で最も急勾配という箱根登山鉄道の80%cに比べれば随分となだらかに感じますが、特急列車が一日に何本も通る幹線ルートでこれだけの場所があったというのはやはり貴重な存在ではなかったかと思います。
その勾配を皆さんも体感してみてはいかがでしょうか。