キャス博士の報告書:成人ジェンダー医療サービスへの移行/脱トランス/自費診療 - p.42~ (original) (raw)

成人ジェンダー医療サービスへの移行

145. 現在、かなりの数の若者がGIDSから成人向け医療サービスに移されています。 GIDSで医療を受けている人もいますが、GIDSの初診の予約を待ち続けている間に17歳になってしまい、そのまま成人向けサービスの待機リスト数としてカウントされている人もいます。その結果、成人向けサービスの待機リストが増加し、NHSの支援を求める高齢のグループにしわ寄せがきています。

146. これは、臨床ケアの不連続性とフォローアップの喪失の二つの大きなリスクをもたらしています。また知識基盤の解決に不可欠な、アウトカムのデータが失われていることを意味します。

147. 継続したサービスは、若年層と成人層の双方にプラスになります。長期的視野に立てば、より多くのジェンダー関連医療サービスが作られることもあいまって、成人向けサービス供給力の増加にもつながります。

148. 他の医療サービスでも若年層の一部を0-25歳向けの医療サービスに移行しているものがありますが、そこではケアの継続性に改善が見られます。ジェンダー関連ケアでも同じことがいえるでしょう。

推奨事項23:
NHSイングランドは、ジェンダー関連の各地域サービスをフォローアップする17-25歳向けのサービスを設立します。地域サービスを延長するか、それとリンクした別のサービスを作ります。児童や若者のジェンダーの旅において、ヴァルナブル(脆弱)になる可能性の高い段階をこのような継続的なサービスで支援します。またこれは、臨床及び研究フォローアップデータを収集することにも役立ちます。

149. 本レビュー(報告書)はNHS成人ジェンダークリニックへの紹介者のデータを要求しました。その大多数が25歳未満の生得的女性でした。

150. 成人のジェンダー違和クリニック(GDCs)の医療供給力は、本レビューの調査対象外ですが、過去や現在のGDCスタッフが、本レビューに密かに連絡をとってきて、彼らの懸念を伝えてきました。

151. 本レビューはNHSイングランドに主な懸念事項を個別に伝えています。しかし、GDCの臨床医は、成人患者の構成者の変化や、症状の複雑さを指摘しました。それは児童や若者向けのジェンダー関連医療サービスが抱えている問題と全く同じものです。

152. 児童・青少年向けサービスの育成とともに、成人向けジェンダー関連サービスが、この新たな患者群と明らかになりつつある新たなエビデンスを勘定に入れて、医療サービス体制を整えるための戦略的なアプローチが必要です。

推奨事項24:
児童・青少年サービスで扱う患者群の変化が、成人向けサービスにも反映されること。英国NHSは成人向けサービス使用の計画的更新を前倒しにし、医療モデルや運用手法を見直す必要があります。

脱トランス

153. NHSのジェンダーサービスは、トランス、脱トランス、再トランスのいずれであっても、ジェンダー不合やジェンダー違和の症状を呈するすべての人々を支援する必要があります。脱トランスする人は、特にホルモン治療をやめるときは、支援的な環境で注意深くモニターする必要があります。

154. 本レビューでは、脱トランスなどの後悔している人は、最初の移行期に自分を支えてくれたジェンダー医療サービスを利用することを躊躇する可能性があると聞いています。既存のサービスを修正して脱トランスを支援するのか、この専用の別のサービスを設けるのかを検討する必要があります。この件は、脱トランスを経験した人々と相談して決めるのが良いでしょう。

推奨事項25:
NHSイングランドはデトランスを考える人々への医療提供をするべきです。その際に、彼らが以前使ったサービスを再利用したくないという気持ちも考慮します。

自費診療

155. レビューは、多くの若者がGIDSの待機リストに載っている間、NHS外の私的な医療提供を求めていることを聞いています。また家族も、規制されていない潜在的に危険なホルモン供給をインターネットで入手するリスクと、評価を長時間待つという継続的なトラウマと、どちらが良いかのバランスを取ろうとしていることも聞いています。レビュー内の実体験に焦点をあてたグループからの意見では、これは「好きでそうしているのではなく(NHSの治療にタイムリーにアクセスできないため)強制的な選択」としています。この治療とその後のモニタリングの継続的な費用は、一部の人にとっては法外なものになる可能性があります。

156. 開業医(GP)は、民間の医療提供者によってホルモン剤が投与された後にホルモン剤を処方するよう圧力をかけられることや、モニタリングに関する医師の責任が明確でないことに懸念を表明しています。

157. 本レビューは、英国では規制外の医薬品の使用および、医療提供者に関する懸念を理解し共有しています。若年者が規制外の供給源から薬物を投与されていることを確認した臨床医は、若年者とその家族にそのような治療のリスクを認識させるべきです。

158. 医療の共有化と処方の責任という点で、これは他の医療分野の例に倣うべきです。具体的には、臨床医は自分の権能外で処方すべきではなく、特に民間の医療提供者がNHSの指導の範囲外で行動している場合、開業医は民間の医療提供者と医療共有をするべきではありません。さらに、薬剤師は患者に処方された薬が適切であると確認することにも責任を負います。

159. しかし、そのような状況の若者が害を被らないために、適切な検査をする必要があります(たとえば骨密度のモニターなど)。

160. 二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)の場合、NHSイングランドは、これらは研究プロトコルの下でのみ利用可能になるとしています。臨床試験に参加する際、対象になる青少年はベースラインレベル(開始時の状況)を明確にするための多くのモニタリングのためのテストを受けます (たとえば、骨密度関連)、およびその他の初期評価などです。もしその個人がNHS研究プロトコル外で二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)を服用した場合、その適格性が問題になる可能性があります。

推奨事項26:
英国保険福祉省とNHSイングランドは、自費診療が将来のNHS医療へ与える影響を考慮すべきです。これは追加の医療が必要になったり、経過をモニターする必要があったり、研究結果に影響が出ることです。このことは、患者や民間の医療従事者に明確に伝える必要があります。

推奨事項27:
英国保険福祉省は、一般製薬会議General Pharmaceutical Councilと協議して、個人処方箋の際の薬剤師の調剤責任を明確にし、海外での不適切な処方を防止するためのその他の法的解決策を検討すべきです。

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Cass Review
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