台風9号VSクリエイティブマン――SUMMER SONIC 2024に行ってきた その1 (original) (raw)

あの夏が、ヤツらが今年もやってくる。SUMMER SONIC 2024、そのイベントである。とはいえ今年はその開催自体が揺るがされかねない事態があった。それは台風9号の存在である。さかのぼること2024年8月16日金曜日。日本列島に、嘘かホントかあの"伊勢湾台風"並みの規模の台風が関東に上陸するというニュースが舞い込んだ。間もなくして、首都圏のありとあらゆる興行は軒並み中止のアナウンスがなされ、公共交通機関についても運休の路線がちらほらと現れはじめた。ところが、ヤツらだけは違った。SUMMER SONICの前哨戦であるSONICMANIAはなんと、強硬開催されることになったのだ。以下は*1その記事の抜粋である。

本日のSONICMANIAの開場は予定通り19:00となります。

チケットをお持ちの皆様へ
台風の接近による悪天候のため、電車等交通機関の遅れが出ており、会場最寄りの海浜幕張駅に停車する京葉線は本数を減らしての運行となっております。
ご来場されるお客様は安全に十分配慮して、余裕を持った行動をお願いいたします。

温もりを全く感じない冷徹極まりない文体。死なばもろとも、えい、ままよ。たとえ電車の本数を減らされようが、雨に打たれ風に吹かれようが、這ってでも来い、ということか。クリエイティブマンの社会主義国家張りの強制力は早速ここに発揮された。だが、彼らにも慈悲の心はまだあった。なんと、会場に来られなかった人に対しては払戻対応がなされるとのことだった。アメとムチの運営、これこそが民衆の心を動かす。はい、これからも未来永劫ついてゆきます――。悲しいかな、狂信的な音楽ファンというのはこの類の慈悲に弱かった。結局、台風は幕張に大いなる雨をもたらしたものの、関東近辺を見事にかすめるという曲芸的な進路を披露したため、これといった被害もなく、SONICMANIA無事に終演したのだった。

台風一過の翌17日、SUMMER SONIC 2024初日は、一転して猛暑の中の猛暑。昨年の悪夢の再来がよぎるが、幸いなことに筆者が行くのは2日目であった。今回のヘッドライナーであるMåneskinとBring Me The Horizonを天秤にかけたときに、軍配が上がったのが後者だったのである。まさに苦渋の決断、である。そもそも両者同じ日にして、他の日をHIP HOP系のヘッドライナーにした方が面白いのではないかとも思ったのだが、物事はそこまでうまくはいかないようである。実際、トラヴィス・スコットをブッキングしようとしていたらしいが、最後の最後になって交渉が決裂したのだとか[*2](#f-22675fa4 "

ブッキング裏話と今年の見どころ ―ラインナップの話でいうと、今年はそもそも世界中のフェスがブッキングに苦戦しているという言説もありました。フジとサマソニにもその影響はあったのでしょうか? 佐潟:ヘッドライナーがいなかったですよね、今年。 清水:最終的に決まっていたら「そうでもなかったよ」って言えたと思うんだけどね。自分の中のストーリーとしては、マネスキンとBMTHが1日で、もう1日はヒップホップとポップス系にしたいと思ってたんです。でも、後になってクリスティーナ・アギレラが決まったけど、トラヴィス・スコットは結局決まらなかった。フェスって1アクト抜けるだけですべてが狂うんだよね。今年は結果論でいうとすべてのフェスがそういう目に遭ってるから、相対的に見ると厳しい年だなと。

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そして18日、2日目は昨日と一転して曇り模様であった。気温も幾分低い。スポーツドリンクやらアミノバイタルやらを思う存分持ち込んだが、若干肩透かしを食らう。今年は友人A*3が奇遇にも同じ日に行くと話していたため、待ち合わせすることになっていた。このAなる人物はこれまでも当ブログに登場している。一言で言えばギター野郎、あるいはメタル狂いといったところだろうか。ちなみに本人もそのように呼ばれることに関してはおそらく満更ではないはずである。

11時頃、海浜幕張駅に到着する。Aと合流し、出口からそのままペデストリアンデッキへ行きたいところを我慢して、駅から斜め向かい方向にあるワールド・ビジネス・ガーデン(WBG)に入る。ここは外から見るとそれぞれ独立したビルのように見えるが、実は一本道でつながっており、その道は幕張メッセの目の前まで続く。室内なので空調も効いており、スターバックスコーヒーやコンビニエンスストアもある。おそらくは歴戦のサマソニ勢しかこの道を知らないためか、恐ろしいくらいに空いているのである。芋洗い状態になっている外の通路の様子をガラス越しに眺めながら、颯爽と歩く。WBGと幕張メッセを隔てる広い道路の近くに差し掛かったところで、エスカレーターを上がり、そのままペデストリアンデッキに出る。瞬時に、蒸し暑さが襲ってくる。数分歩いただけでも汗が滲み出てきた。なるほど、本日の敵は湿気ということか。

幕張メッセの入場口に到着し、入場列に並んでいると、必死の形相になってチケットを探す女性を見つけた。どこかで落としたのか、右手に握りしめるセブンイレブンと書かれたチケット入れの中は無慈悲にも空であった。
「チケットを、チケットをどこかで見ませんでしたか」
という悲痛な声が無情にも入場口付近に響きわたる。
「あの、これで何とかできませんかね、確かに入っていたんですよここに!チケットがぁ!」
半狂乱で空のチケット入れをひらひらとさせスタッフに突きつける女性――あの人はあの後どうなったのか気になって仕方がない。今も亡霊のように幕張を彷徨っているのだろうか。音楽イベントにおいてはチケットというのは最も重要なものである。このご時世、財布を忘れても電子決済で何とかなるが、チケットを忘れるとなると、話が始まらない。そんなひと騒動を横目に、例によって適当極まりない荷物検査を通り、無事に入場する。

ちなみに今年のクリエイティブマンの"慈悲ポイント"はもう一つあった。それは、MARINE STAGEのアリーナ内へのスポーツドリンクの持ち込み許可である。昨年までは人工芝を傷める恐れがあるという名目*4の下、禁止されていたが、近年の猛暑による体調不良者が続出したことを受けての規制緩和であった。ただ、一年やそこらで人工芝がスポーツドリンクに耐えうるだけの品質に向上したとは考えにくいし、何が言いたいかというと、この対応はあまりにも遅いということである。何か問題があってから政策を考えるのは政治屋の悪い癖であるが、クリエイティブマンもそうである。ただ、これ以上突っ込んでしまうと当局から何らかの圧力がかけられかねないためこの辺にしておきたい。

今年は前半は幕張メッセ、そして後半にZOZOマリンスタジアムに乗り込もうという算段であった。幕張メッセ内は、外よりも幾分涼しかった。まずは、水曜日のカンパネラを観に行く。朝っぱらから鳴り響くアシッドなテクノミュージックに会場は困惑しながらも徐々に盛り上がりを見せていく。ボーカル詩羽のパフォーマンス以上に、バックダンサーの動きの良さに目が行ってしまう。体幹の強さと女性的な滑らかさを感じるすばらしいものであり、思わずその名前*5を調べてしまう程であった。MCで、
「みんなが好きなものを大切にできる世の中になってほしい。でも今日だけは、普段は聞かないようなアーティストも、身体を動かしながら聴いてみたら、いいかもって思うかもしれない、そういう瞬間を楽しんでほしい」
というようなことを言っていたのがとても良かった。そういうメッセージ、というかMCを一切言わないスタンスのように勝手に思っていたため余計に響いてしまった。次のお目当てである新しい学校のリーダーズまで時間が空いたので、移動がてら、昼食を取りに行くことにした。サマソニが、今年の夏が、始まった。

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