テミストーとは - わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
テミストー(古希: Θεμιστώ, Themistō)は、ギリシア神話の女性である。長母音を省略してテミストとも表記される。ラピテース族の王[1]ヒュプセウスの娘で[2][3][4][5]、アステュアギュイア[6]、キューレーネーと姉妹[7][8]。通常、テミストーはボイオーティア地方の都市オルコメノスの王アタマースの第3の妻で、アタマースとの間にレウコーン、エリュトリオス、スコイネウス、プトーオスを生んだ[2]。あるいはスピンキオス、オルコメノスを生んだ[3]。
神話
アタマースはディオニューソスを育てたためにヘーラーの怒りで狂気し、息子レアルコスを殺し、イーノーはメリケルテースの遺体とともに海に身を投げた[9]。アタマースはその後、ボイオーティア地方から追放され、アタマンティアーに居住し、テミストーと結婚した[2]。
ヒュギーヌスによれば、テミストーはアタマースがイーノーと結婚したため、イーノーが生んだ子供たちを殺そうと考えたが、乳母にだまされて自分の子供たちを殺してしまった。そしてそのことを知ったテミストーは自殺した[3]。
さらに別の話では、アタマースは妻イーノーが行方不明になったとき、死んでしまったと思ってテミストーと結婚した。しかしアタマースはイーノーがディオニューソスの秘儀に参加するためにパルナッソス山にいることを知って、密かに連れ戻した。テミストーはイーノーが戻ってきたことは知ったが、誰がイーノーであるかは分からなかったので、イーノーの子供たちを殺そうと考え、1人の女奴隷に打ち明けて協力させようとした。ところがその女性こそイーノーだったのであり、イーノーはテミストーが自分の子供に白い服を着せ、イーノーの子供に黒い服を着せるよう命じられたのを逆に着せた。このためテミストーは、黒い服を着ている子供たちが実は自分の子供であることに気づかずに殺してしまい、その後で真実を知って自殺した[10][注釈 1]。
系図
ガイア | |||||||||
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ペーネイオス | クレウーサ | ||||||||
ヒュプセウス | クリダノペー | ダプネー | スティルベー | アポローン | |||||
キューレーネー | アポローン | ラピテース | ケンタウロス | アイネウス | |||||
テミストー | アリスタイオス | アステュアギュイア | ペリパース | トリオパース | ポルバース | ||||
レウコーン | スコイネウス | アクタイオーン | アンティオーン | ペリメーレー | アウゲイアース | アクトール | |||
アンドレウス | エウイッペー | アタランテー | アタマース | ネペレー | イクシーオーン | ディアー | ゼウス | アガステネース | モリオネ |
エテオクレース | ケーピソス | プリクソス | ヘレー | ケンタウロス族 | ペイリトオス | ヒッポダメイア | |||
ポリュポイテース |
その他の女性
- 海神ネーレウスとドーリスの50人の娘たちネーレーイスの1人[11]。
- 河神イーナコスの娘で、ゼウスとの間にアルカスを生んだ[12]。木星の第9衛星テミストはこのテミストーにちなんで名づけられた。
- ヒュペルボレイオスの王ザビウスの娘で、アポローンとの間にガレオスを生んだ[13]。
脚注
注釈
脚注
- ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第9歌14行。
- ^ a b c アポロドーロス、1巻9・2。
- ^ a b c ヒュギーヌス、1話。
- ^ ヒュギーヌス、239話。
- ^ ヒュギーヌス、243話。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻69・3。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻81・1。
- ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第9歌13行-18行。
- ^ アポロドーロス、3巻4・3。
- ^ ヒュギーヌス、4話。
- ^ ヘーシオドス、261行。
- ^ “『偽クレメンス文書』10巻21。”. Canadian College of English Language. 2022年4月29日閲覧。
- ^ ビューザンティオンのステパノス(英語版)、Galeōtai の項。
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- ピンダロス『祝勝歌集/断片選』内田次信訳、京都大学学術出版会(2001年)
- ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫(1984年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)