読み方:みつば 葉が3枚あること。Weblio国語辞典では「ミツバ」の意味や使い方、用例、類似表現などを解説しています。">

「ミツバ」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

この項目では、植物について説明しています。その他の用法については「ミツバ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
ミツバ
分類APG III
: 植物界 Plantae 階級なし : 被子植物 angiosperms 階級なし : 真正双子葉類 eudicots 階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots 階級なし : キク類 asterids 階級なし : キキョウ類 campanulids : セリ目 Apiales : セリ科 Apiaceae : ミツバ属 Cryptotaenia [1][2] : C. japonica 亜種 : ミツバ C. japonica subsp. japonica [3]
学名
Cryptotaenia canadensis (L.) DC.subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz. (1933)[3][4]
シノニム
C. japonica Hassk. (1855)[5] C. canadensis auct. non (L.) DC. (1830)[6] C. canadensis (L.) DC. var. japonica (Hassk.) Makino (1907)[7]
和名
ミツバ、ミツバゼリ
英名
Japanese honeywortJapanese parsley[8]Mitsuba[8]honewort[9]wild-chervil[9]

ミツバ(三つ葉[8]、三葉[10]、野蜀葵、学名: Cryptotaenia canadensis subsp. _japonica_)は、セリ科ミツバ属の多年草和名由来が3つに分かれている様子から。さわやかな香りが特徴の香味野菜ハーブ)で、と葉が食用される。別名、ヤマミツバ[10]、ノノミツバ[10]、ノミツバ[10]、ミツバゼリ[10]

特徴

日本原産[8]北海道から沖縄までの日本各地、及び中国朝鮮半島サハリン南千島等の東アジアに広く分布し[11]、平地から高山にかけて、日陰地や湿り気のある野原、谷間、川岸などに群生する[10][12]。日本には古来から自生している野菜で、1本の茎に3枚の葉がついていることから「三つ葉」の名がつく[13]

草丈は30 - 50センチメートル (cm) ほどになる[10]。葉は根の近くから曲がって横に張りだして互生し、長い柄の先に3枚の小葉からなる複葉をつける[10][12]葉身の形状は卵形で先が細くなって尖り、葉縁にはギザギザとした重鋸歯がある[12]。全体にさわやかな香気を有する[9]

花期は夏(6 - 8月ごろ)で、花茎を伸ばして5枚の花弁からなる白い小さなを咲かせる[10]。花後は楕円形の果実をつける[10]

日本では栽培されたものがほぼ一年中店頭に並ぶ、ポピュラーな野菜となっている[10]

種類

市場に流通するミツバは、野生ミツバを栽培方法の違いによって3種類に改良したもので[8]、大別すると、畑などで育つ「根三つ葉」と、水耕栽培される「糸三つ葉」、灰汁が少ない「切り三つ葉」がある。元の品種に違いはなく、栽培方法によって葉や茎の見た目、香りの強さに違いを出している[8]

日本での栽培

江戸時代から栽培され、現在では主にハウス水耕栽培したものが周年出荷されており、山菜としてはから初夏が旬である。野生のものは一般的に、ハウス栽培のものよりも大きく香りも強い[15]が、筋張っているものもある。またアントシアニンを含む赤色のミツバも存在する。

種から育てられるミツバは、1年のうちで2回栽培でき、春まきして夏に収穫(4 - 8月)する方法と、秋まきして晩秋に収穫(9 - 12月)する方法がある[14]。根株は水耕栽培することができ、この場合は通年栽培が可能である[14]。栽培適温は10 - 20度とされ、連作も可能な作物である[14]

種は水に一晩浸し、新聞紙などに広げて生乾きにした後に種をまく[14]。用土は浅い溝をつけて筋まきにし、種まき後は覆土せずに軽く手で押さえて静かに水やりをする[14]。芽が出たら間引きしながら育てていき、株間を4 - 5センチメートル (cm) 間隔になるようにする[14]。追肥は10日に1度の間隔で液肥を施し、夏場は日陰にして管理する[14]。草丈が15 cmほどになったら、根を残して株元から切って、必要な分だけ収穫する[14]。残した根株に追肥を行うことで新たな芽が出て、長期間収穫することができる[14]。家庭では、スーパーなどに売られている根つき三つ葉を、株元から5 cmほど残して切り、少量の液肥を入れた水に差して明るい窓辺に置くと、やがて新しい葉が再生して、周年栽培もできる[14]

生産地

ミツバは、収穫後にすぐに品質が落ち始める軟弱野菜の一つで、消費者のもとにすぐ届くような近郊農業で生産される作物である[16]。日本の主な産地は、茨城県埼玉県千葉県静岡県愛知県などである[17]

2019年度(令和元年度)の日本全体の年間生産量は1万4000トン (t) 、作付面積は891ヘクタール (ha) である[16]。都道府県別の収穫量割合は、千葉県 19%、愛知県 13%、茨城県 12%となっており、この3県で全国シェアの50%以上を占める[16]。市町村別では、大分市(大分県)が最も収穫量・出荷量ともに最多で、これに浜松市(静岡県)、愛西市(愛知県)が続く[18]。日本全体のミツバの生産量は年々減少する傾向にあり、過去14年で約24%の減少、作付面積も約28%減少しているが、単位面積当たりの収量は微増している[17]

利用

切りみつば 葉 生[19]

100 gあたりの栄養価
エネルギー 66 kJ (16 kcal)
炭水化物 4.0 g
食物繊維 2.5 g
脂肪 0.1 g
タンパク質 1.0 g
ビタミン
ビタミンA相当量β-カロテン (8%) 61 µg(7%)730 µg
チアミン (B1) (3%) 0.03 mg
リボフラビン (B2) (8%) 0.09 mg
ナイアシン (B3) (3%) 0.4 mg
パントテン酸 (B5) (6%) 0.29 mg
ビタミンB6 (3%) 0.04 mg
葉酸 (B9) (11%) 44 µg
ビタミンC (10%) 8 mg
ビタミンE (5%) 0.7 mg
ビタミンK (60%) 63 µg
ミネラル
ナトリウム (1%) 8 mg
カリウム (14%) 640 mg
カルシウム (3%) 25 mg
マグネシウム (5%) 17 mg
リン (7%) 50 mg
鉄分 (2%) 0.3 mg
亜鉛 (1%) 0.1 mg
(4%) 0.07 mg
セレン (1%) 1 µg
他の成分
水分 93.8 g
ビオチン(B7) 1.9 µg
軟白栽培品ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した。
単位 µg = マイクログラム (英語版) • mg = ミリグラム IU = 国際単位
%はアメリカ合衆国における成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。

数少ない日本原産の野菜の一つで[12]、葉と茎、が食用にされる[10]。野菜としてのは、糸三つ葉が通年、根三つ葉が3 - 4月、切り三つ葉が12 - 2月といわれ[13]、早春のものが特に香りもよくおいしいとされる[12]。葉の緑色が鮮やかで、茎とともに変色がなく、全体にピンとして瑞々しいものが市場価値の高い良品とされる[13][8]。 昔から野生種を食用にしていたといわれ、現代では見た目のかわいらしさとさわやかな香りを生かして、様々な和風料理に彩りを添えるために重宝されている[13]。野生のものは特に香りが強く、鎮静や食欲増進に効果的といわれる[10]。野生のものを採取する際は、自然保護の観点から根際からナイフで切りとって、根を残すことが推奨されている[10]

刻んで薬味にしたり、茹でておひたし和え物とするほか、煮浸し吸い物、汁の実、鍋物茶わん蒸し雑煮天ぷら丼物の具、卵とじなどにして幅広く用いられる[10][9]。調理の下ごしらえで茹でる際には、火の通りが早く茹ですぎると風味が損なわれる食材のため、短時間で手早く茹でてすぐに水にとって冷ます[14]。冷まし方が足りなかったり、水につけすぎると、緑色が変色したり、栄養素が逃げる原因となる[14]

栄養素

水耕栽培されている糸三つ葉や切り三つ葉に比べて、農地栽培されている根三つ葉は栄養価が高く、特にβ-カロテンカリウムカルシウムを多く含む緑黄色野菜である[13][8]。根三つ葉のビタミンC含有量は、糸三つ葉の1.5倍、鉄は約2倍含まれている[13]。3種のミツバのうち、糸三つ葉、根三つ葉、切り三つ葉の順にカロテン量が多いが、糸三つ葉のカロテンは可食部100グラム (g) 中に3200マイクログラム (μg) 含まれ、これは同じセリ科のセリを大きく凌ぐ量で、切り三つ葉でも730 μgも含まれている[9]。ミツバに含まれるこれら栄養素は、貧血予防、疲労回復、肌荒れ予防に有効といわれている[13]。また、ミツバの香り成分には、神経を鎮める作用や不眠改善、食欲増進作用があるといわれている[13][8]

保存

日持ちしない食材であるため、入手したらできる限り早く食べきるのが望ましい[13][8]。使い残しなどで保存する場合は3 - 4日程度を限度に、糸三つ葉は根を切り離して茎を2 - 3等分にして、濡らしたキッチンペーパーなどを敷いた保存容器に入れて冷蔵する[13]。根三つ葉は、洗わずに濡れたキッチンペーパーで根元を包み、ポリ袋に入れて乾燥防止して冷蔵する[13][8]

薬用

9月ごろに果実がついたものを採取し、陰干ししたものが民間薬として使われる[10]。風邪の初期症状には、1日量15グラム (g) を600 ccほどの水で半量になるまで煎じ、かすをこしてから就寝前に服用する民間療法が知られる[10]。食欲増進には、お浸しを食べるとよいといわれる[10]。腫れものには生の葉をすり潰して、患部に湿布すると消炎効果があるとされる[10]

脚注

  1. ^ 米倉浩司『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2
  2. ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月29日閲覧。
  4. ^ "'Cryptotaenia canadensis subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 1704252. 2012年7月29日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia japonica Hassk. ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis auct. non (L.) DC. ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. var. japonica (Hassk.) Makino ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 170.
  9. ^ a b c d e f 講談社編 2013, p. 22.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 23.
  11. ^ 山岸 喬『北海道 薬草図鑑 野生編』北海道新聞社、1992年。ISBN 4-89363-662-6
  12. ^ a b c d e 金田初代 2010, p. 36.
  13. ^ a b c d e f g h i j k 主婦の友社編 2011, p. 134.
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 主婦の友社編 2011, p. 135.
  15. ^ 栽培および野生ミツバの形態ならびに生態に関する研究 園芸學會雜誌 Vol.33 (1964) No.2 P117-124
  16. ^ a b c三つ葉 産地(都道府県)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  17. ^ a b三つ葉 農業”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  18. ^三つ葉 産地(市町村)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  19. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

参考文献

関連項目

外部リンク

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