読み方:ひだりきき 右手よりも左手のほうがよくきくこと。Weblio国語辞典では「左利き」の意味や使い方、用例、類似表現などを解説しています。">

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レフティー」はこの項目へ転送されています。アート・ガーファンクルのアルバムについては「レフティー (アルバム)」をご覧ください。

左手で文字を書く人

左利き(ひだりきき、left-hander[1])とは、一般的に人間利き手であること、またはそのような人を指す。社会では多数派である右利き向けに道具や施設がつくられていることが多いが、左利き向けの文具や調理用具、工具などを製造・販売する企業もある[2]。8月13日は「左利きの日」とされている。イギリスの左利きの団体「Left-Handers Club」が提唱者の誕生日にちなんで、1992年同日より始めた[1]

広義には手・だけでなく、のいずれかが左優位の場合にも用いられる。

概要

左利きの人は一般的に右手に比べて左手がより器用で、多くの動作に左手を使うことを好む。例えば、文字を書く、料理をする、を使うなどである。

「箸を持つのは左手だが、字を書くのは右手」などがあり、広義の意味で言えば「クロスドミナンス」の人が多い。これは、左利きの割合が世界的に見ても低く、基本的に「右利き」のために作られている物が世の中に多く不便なことや、親から躾られて右利きに直されることが多いためである。そのため現在では右利き左利きといった二つの明確な区分ではなくスペクトラム状に分布するものと考え、(完全な)右利きではないと表現することもある。

左利きの人(レフティー)を指す言葉として「(左)ぎっちょ」(語源は毬杖から)「サウスポー[注 1]」「グーフィー[注 2]」などがある。地域によっては「ぎっちょ」は差別用語にあたるため放送禁止用語になっている[注 3]が、日本の東北地方では普通に方言として使われており、差別や相手を馬鹿にしているわけではない。英語のグーフィー(goofy)も同様に本来「まぬけな」「とんまな」という意味である。グーフィーという用語も国際的なサーフィンの試合では単にレフトと呼ばれ避けられているが、2020年オリンピックでの公式映像ではスケートボードやサーフィンの左スタンスをグーフィーとしていた。

なぜ左利きは少数なのか

1977年の統計では成人人口の8%から15%が左利きである[3]。また、わずかながら女性よりも男性の方が左利きが多いという統計結果もある[4]。この割合は古今東西を問わずほぼ一定である。古代の壁画や石像を見ても右利きの方が圧倒的に多かった。そのため矯正の影響で国によって左利きの割合は多少異なるが[5]、左利きが少数なのは文化教育食事など後天的要因によるものではないことが分かっている。しかし、なぜ左利きが少数なのか、なぜ10%前後で変動がないのかについてははっきりとした理由が分かっていない。遺伝の影響があることは分かっており、子供が左利きとなる確率は一般集団で約10%だが、片親が左利きの場合は約20%、両親が左利きの場合は26%に上がる[6]。双子研究によって、利き手が決まる原因を遺伝要因と環境要因に分けることができ、利き手の分散の25%を遺伝要因によって説明できる(遺伝率25%)[7]。残りの75%が環境要因で、この環境には胎内環境や偶然による影響も含まれる。ただし利き手を決めるメカニズムは不明である。なお双子は一卵性/二卵性にかかわらず単生児よりも左利きになる確率がやや高い[8]

以下に左利きが発生する要因とされている説を列挙する。

脳の半球説

言語と手仕事の両面において、高度な運動神経を必要とする場合、ヒトの脳の片側の半球で判断をした方が、左右両方のを使うよりも効率的であるという理論である。脳の左側は言語を制御しているので、左脳が制御する右半身の方が発達して右利きとなる。一方で左利きの人は脳の働きが左右で逆になっていると予測できる。この理論にも問題はあり、右利きの人の90%以上は左脳に言語野があるが、左利きの人も70%近くが左脳に言語野をもつ。ただし残りの30%は予測通りに言語野が右脳にあるか、左右の脳に分散している(「脳機能局在論」も参照)。

左利きの人の脳は、右利きの人よりも脳の各所に機能を分散する度合いが高い。左利きの人が脳卒中の発作に見舞われた場合、右利きの脳卒中患者よりも復帰が早い。

遺伝

1970年代以降に単一遺伝子によって利き手が決定されるという理論が提唱された[5]。マリアン・アネットの理論がその代表で、右利き遺伝子が優性、左利き遺伝子が劣性と仮定された。ただし両親からともに左利き遺伝子を受け継いだ場合は、右利きか左利きかが環境によって偶然に決定され、それが完全にランダムなら左利きの割合は12.5%になる[9]。しかしゲノムワイド関連解析の結果から、利き手の決定は単一遺伝子では説明がつかず、40以上の遺伝子座が関与していると推定されている[10]

脳の損傷

胎児期や出産時になんらかの理由で左脳を損傷すると、左脳による右手のコントロールに問題が生じ、左利きになりやすくなるという説が1970年代に提唱された。正確にいえば、右利きと左利きの比率は基本的には遺伝によって決定されるが、一部の人の左利きは脳損傷によって生じるという理論である[5]。脳損傷は具体例には酸素欠乏や脳性まひ、細菌性髄膜炎などで起きる。この理論の傍証として、脳性まひ患者や側頭葉てんかん患者の左利き率が高いこと、出産時に酸素欠乏になりやすい双子に左利きが多いことが挙げられる[5]。またこの説は、脳に損傷が起きても多くの場合は軽微であり、脳の発達可塑性により神経学的な問題がほとんど起きないことを前提としている[5]

胎内の性ホルモン

ゲシュヴィンドらは、テストステロンなどの性ホルモンが、胎児の左脳の発達を遅らせ、右脳の発達を促進することで、左利きが生じるという説を1980年代から発表している[5]

胎内での姿勢

プレヴィックは、胎内での胎児の姿勢が、聴覚系の発達に影響を及ぼし、それが小脳を通じて利き手に影響するという説を提出している[5]。この理論では多数の人間が右利きとなるが、妊娠後期の胎児の前庭器官になんらかの損傷が発じると、聴覚系のシステムが変容され、左利きが生まれる[5]

利き手の決定時期

メカニズムは不明だが、利き手は出生前に胎内で決まっているという研究がある。 2004年、英ベルファストのクイーンズ大学博士・ピーター・ホッパーによって行われた研究によると、人間が右利きになるか左利きになるかは妊娠10週間目の頃に決定しているという新発見がなされた。

この研究にあたって、妊娠中の女性1000人に超音波走査を実施した結果、例えば10週間目から12週間目の頃に胎児が左手の親指よりも右手の親指を頻繁に吸っていた場合、子供はほぼ確実に右利きとして生まれてくるという関係性が得られた。

またホッパーらはそれ以外にも10週間目の頃の胎内での手の動きと利き手の関連性についてのいくつかの発見があったとしているが、胎内において脳が手に対してそれらの命令を出しているという証拠はなく、また脳の命令よりは脊髄反射によるものである可能性が高いと話している[11]

その他

左利きの戦士は左手にを持ち、右手にを持って戦うため、左半身にある心臓を危険にさらし致命傷を負う確率が高くなり、従って右利きの人間が多く生き残るという説があった。これは非常によく言われる説であるが、否定されている。まず、心臓の位置は左半身ではなく身体のほぼ中央にある。さらに盾を使ったとされる年代や地域は限定され、盾がまだない石器時代から左利きが少数であることも説明できない。

利き手の「矯正」とマナー

個人差は多く見られるが、大人になるほど利き手の変更は困難である。そのため、幼少時に周囲の人物が、箸や鉛筆、ペンなどを使う「利き手の変更」を行なわせようとすることが洋の東西を問わず行われてきた。かつては左利きを身体障害者と考える人・地域は多く、さらには知的障害の一種のように扱う人もいた。そのため利き手の矯正はかなり高い比率で、時には厳しい体罰を伴ってでも矯正されていた。

しかしこの「矯正」は本人が望んだものではないため、うまく腕を動かせないストレスに加え、「矯正」の指導をする親が激しく叱ることが多く、ジョージ6世の例など悪影響、後遺症が少なくない[注 4]

科学の発達で左利きは障害ではないことが広く知れ渡ると同時に、個性の一つとして考えられるようになった。1920年代には既に左利き矯正が有害であることが指摘されている[12]

矯正する親の割合は減ってきたが、後述の文字筆記上の不便さから学校受験などで不利になると考え、また生活上の不便(後述)を考えて矯正する親も多い[注 5]

幼少時はまだ利き手が定まっていないと考えがちであるが、変更しようとする=既に左を多用しているわけで、この段階で利き手は明確に定まっている。利き手は箸や筆の持ち方とは全く異なることを理解しなければならない。幼少期の変更が多いのは適切な時期だからではなく、親の影響力が強い時期であるからと考えられる。

しかしながら、「右」と「左」とにそれぞれ意味をもつ文化では、右手左手を使い分けが定められている場面もある。例えば、インドや中東では左手は一般的に排便の処理をする「不浄の手」であり、左手で食べ物を食したり、他人に物を渡したりするのは多くの場合マナー違反である。また、日本の多くの芸道武道や文化(書道茶道華道弓道等や日本料理等)では、利き手に関わらず、右優位のしきたりが決まっている事がある。

一部には我が子をクリエイティブな能力のある子供に育てようと、右利きの子供を左利きにしようとする親もいるが同様の悪影響があるため全く薦められない[注 6]

左利きの不便

左利き用の刃物類

谷口楽器の左利き用ギター専門売り場。左利き用は、形状も弦の張り方も、さらに胴体が共鳴構造になっている場合にはブレイシングの配置といった内部構造に至るまで、右利き用(写真右端の1丁)と左右が逆である。

グロック17で射撃を行う左利き射手。欧米では人間工学に基づいた設計により、左利きでも違和感の無い拳銃が近年では一般的となってきている。

CQB訓練中の米海軍シールズ隊員。左構えでCQBR(英語版)を取り扱っている。CQBでは状況により左構えに変更して移動や突入を行うことが望ましい局面もあることから[13]、結果として近年の軍用銃は左利きでも問題が無い設計がされることが多くなっている。

道具や機械、楽器など、世の中の製品は右利き用に設計されているものが多い。これは左利きにとって不便なだけでなく、危険性が高い場合がある。右利き用と別に左利き用の製品が供給されている場合でも、右利き用に比べ割高なことが多く、経済的負担を強いられる。こうした不便からくるストレスや、操作ミスによる事故を起こしやすいなどの理由から、左利きは右利きに比べて平均寿命が9年短いという説(スタンレー・コレンの報告)がある。しかし、今のところ科学的な精密調査による検証は行なわれていない。

筆記

道具

右利きを前提に作られたものが多い。左利きの人は多くの場面で右手用製品を使わざるを得ず、右手用製品に慣れた結果としてかえって逆に左利き用の物が使いにくくなることも多い。また両利きクロスドミナンスになる人が殆どである。

刃物・工具

電子機器

楽器

武器

その他

開閉動作

右利き向けの慣習

単品では利き手に依存しない設計であるが作法、伝統、多数派の意見などで配置が右利きに都合が良くなっているもの。

左利きの便

なかには、歴史的経緯から多数派である右利きにとって不便で少数派である左利きにとって便利になっているものもある。

左利きの寿命

統計によれば、高年齢層ほど左利きの割合が減少する。1991年に発表された論文[19]は、この統計は左利きの人は右利きの人に比べて9年も短命であることを示すものであると主張し、その原因は左利きの人は右利き中心の世界に適しておらず、この世界で遭遇する「苦難」のために事故で死亡することが多いためであろうと示唆している。しかしその後の多くの研究により、右利きの人に比べて左利きの人が短命であるという証拠は全くないことが明らかになっている[20][21][22][23][24]

左利きに対するバリアフリー

ユニバーサルデザインの視点から、右利き左利きどちらでも快適に暮らせる社会にしようとの動きもある。

例えば、大手私鉄JRが導入しているバーレススタイルの自動改札機は、左手で使う場面も考え、券投入口が左に5度向いている。他にも左右両開きの冷蔵庫など家電製品にも対応品がある。

また左利き専用の商品もあり、そうした文具や調理器具、家具などの開発をめざす企業の集まりである「レフティ21プロジェクト」が2017年2月に発足している[25]。左利き用のはさみは多くの文具店にみられる。菊屋浦上商事のような左利き用品の専門店もある。京セラが発売していたカメラ「サムライ」は右利き用と左利き用の両方を用意していた。アーミーナイフの一部にも左利き用モデルがある。百ます計算でも、左にあった数字が、右に来ている場合がある。これにより、左手に隠れてしまう数字が見えるようになり、やりやすくなる。

楽器については、左利きだと弾きにくいものもある。小学校の生徒が授業で扱う教育楽器のうち、鍵盤ハーモニカは左利きだとかなり弾きにくくなってしまうが、楽器メーカーは製造費用の関係もあって左利き用の鍵盤ハーモニカを製造していない[26]。一方、ギターやベースについては、楽器の単価が教育楽器にくらべて高く設定できるうえ一定の需要が見込めることもあり、左利き用モデルも発売されており、谷口楽器のような左利き専門の楽器店で購入することもできる。

マウスにも左利き専用のものがある。サンワサプライは2011年から左利き専用マウス「MA-ERG2LH」を製造販売している[27]。かつて2006年にロジテックが左利き専用マウス「MX-610L」を製造販売していた[28][29]。なお、ロジテック社CEOのゲリーノ・デルーカは左利きである。マイクロソフトビル・ゲイツも左利きであるが、マイクロソフトは左利き専用のマウスはない。ただし左右対称のマウスを基本形としているため、どちらの手でも同じように使える。

スポーツ

左利きのテニス選手(ラファエル・ナダル

スポーツにおいては、時として左利きであることが有利に働く場合がある。また、競技上の優位性確保のため、あえて利き手でない腕を用いる場合がある。

特に野球ボクシング相撲柔道卓球など直接人と勝負するスポーツや一対一で必ず対戦するようなスポーツにおいては左利きであることが有利に作用する。右利きと左利きの人口比から左利きが右利きと対戦する機会が多いのに対して右利きは左利きと対戦する機会が少ないからである。右利きにとっては慣れないフォームの相手と戦う不利に加え、左利きが逆方向・逆回転の攻撃をしてくる。このため、多くのスポーツで左利きを利点として戦う選手がトップクラスにいる(ボクシングで世界王座13度防衛、うち6連続KO勝ちの記録を持つ具志堅用高も左利き)。一般的にサッカーアイスホッケーなど、相手側と対称のコートで行う球技の場合、右側には右利きの選手、左側には左利きの選手を配置するのが有利であるとされる。

野球の左打ちは、上記の理由以外にも

等の理由から有利とされている。

左利き打者の場合は大半が左打ちだが、左手(利き手)をスイングの引き手にすることでバットが振り抜きやすくなるという理由などで、左利き打者が右打ちに矯正することも極稀にある。一方、左投げでは守備位置の制限が大きく、基本的には投手一塁手外野手に限られる。これは捕球を右手、送球を左手で行うと一塁方向への送球の際右投げよりタイムラグが発生してしまうことが理由である(逆に進塁方向への送球は右投げより早く行うことができるが、こちらの守備機会は少ない)。ただ投手の場合左投げ投手の人口が少ないため対戦経験を積むことが難しく、アマチュアでは一般的には投手有利とされ、プロでも左で速球を投げる投手は右より速く感じられるという。さらにセットポジションでマウンドに立つとそのまま一塁を見ることができるので、一塁ランナーの牽制もしやすい。また、この優位性が広く認識されているので、リトルリーグ中学校の野球部などでは、左利きという理由だけで投手にされてしまうことも珍しくなく、場合によっては左利きであることを理由に生徒などに対して勧誘を行う指導者も見られる。逆に、右バッターが多いので、左利きの捕手は送球に不利であり特に少なく、左利き用のキャッチャーミットは都市部でも取り寄せでなければ入手困難である。

逆に左利きであっても左腕で投げず、右腕で投げる選手もいる。主な例として鳥谷敬由規坂本勇人(兄のグラブを使った影響によるもの)[30]岩隈久志則本昂大(箸は左手で持つ)、畠世周[30]などが左利きの右投げとして知られている。野球選手以外の有名人ではももいろクローバーZ百田夏菜子[31][32]などが彼らと同様である。

相撲では、古くは江戸時代に無敵を誇った大関雷電大正後期の土俵を支配した横綱栃木山、昭和の大横綱として知られる双葉山、柏鵬時代を作った大鵬柏戸、「黄金の左」の輪島、平成に入っても朝青龍などの横綱、現役力士の琴奨菊鶴竜阿炎など左利きの力士が知られる。ただし四つ身との関係では、利き腕を上手にする方が一般的(右利き:左四つ、左利き:右四つ)ではあるものの、利き腕をあえて下手にする場合もあり、右四つと左四つを使い分けるいわゆる「なまくら四つ」の力士も少なくないため、一概には言えない[注 7]

アイスホッケーにおいては、リンクがフェンスで囲まれていて左ポジションはフェンス際でのプレイにおいて、右利きではスティックが内向きとなり、フェンスに沿わせたパックの処理が難しく、シュートを打つ体勢にも不利だが、左利きは外向きとなり前述の点で有利であるため、ゴールキーパー以外は半数近くを左利きの選手で占めるチームも存在する。アイスホッケーではスティックの根元を右手で持つ場合「左打ち」(右打ちはその逆)とする。強豪国代表レベルになると左打ちが半数を超えることも多い(真ん中の選手が左打ちの場合が多い)。右利き左打ちの有利点はショットの威力は落ちるものの、小回りが利きパックを奪いやすい。またゴールキーパーは右利きが多く、ゴールキーパーとの相性も良いという説もある。NHLの通算ポイントの上位ランキング選手は中央のポジションにもかかわらず、左打ち選手は多い(アイスホッケーの神様と言われるウェイン・グレツキー)、現役最高のセンターとも言われるも多いシドニー・クロスビーなど優秀な選手に左打ちが非常に多い。

ハンドボールにおいて、右45度、右サイドに左利きを置くことによって、プレーの幅が広がる。稀にセンターに左利きを置くこともある。

テニスや卓球のダブルスでは、ラケットを握る手が共に外側または中央に来るように2人が立つことによって、利き手が同じペアよりもカバーできる範囲が広がり有利である。

競馬では、馬を真っ直ぐに走らせる必要があるため、利き手ではない方を日常生活でも積極的に使うことなどにより、左右の腕の差を極力減らす努力をしている。また左にササる(ヨレる)癖がある馬などで、左手でムチが巧みに扱えその癖を抑えられるのではないかという期待から、左利きの騎手が起用されることがある。実例としては、1954年の第21回東京優駿(日本ダービー)で、左回りの東京競馬場では内(左側)にササる癖が出るゴールデンウエーブが、左利きの岩下密政を鞍上に迎えて、見事に優勝したことが知られている。またばんえい競馬においては、普段と異なるムチの入れ方で馬を発奮させることを期待して左利きの騎手に騎乗を依頼するケースがある[33]

バレーボールでは、左利きの選手はセッター対角のポジションに置かれ、主にライトプレーヤーとして起用されることが多い。大林素子が得意としたコート右端から左端までのブロード(移動)攻撃は、右利きのプレイヤーが行う場合よりもさらに外側(体一つ分、若しくはアンテナぎりぎりの位置)からスパイクを打つことができ、「モトコスペシャル」と呼ばれた。また、セッターが左利きの場合、右利きには難しいとされるツーアタックを比較的容易にこなせるため、攻撃の幅が広がるといった利点がある。中田久美、ジェフ・ストークなどが得意としていた。

短距離走では、トラックが左に向かっているため、走る際に体重がかけにくい(右半身で体重をかけなければならない)ため一般には不利といえる。

サーフィンスケートボードの左利きのスタンスのことを「グーフィー」と呼ぶ。右利きは「レギュラー」と呼ばれる。試合のパンフレットなど公式の案内では、「スタンス L」などグーフィーという言葉を避けている。

アメリカンフットボールではクオーターバックが左利きの場合、普通は攻撃のプレーブックをそれに合わせて修正する必要性があり、また、レシーバーもパスキャッチ時に回転が逆のボールを受けるのに慣れる必要がある[34]

腕以外の左利き

単に左利きと言えば利き腕を指すことが多いが足、眼球、耳なども左右片方を重点的に使っている。サッカーなどでは左のポジションで左利きが非常に有利である。なお利き腕と利き足は必ずしも一致するわけではなく、利き腕は右手で利き足は左足の人(例ではサッカーの中村俊輔、野球の岩村明憲など)左手利きで右足利き(サッカーのカレッカクラレンス・セードルフ、野球のジェフ・ウィリアムスなど)も多数いる。利き目と利き腕が異なる者が銃を構える際、利き目でない目で照準を行うか、利き腕でない手で銃を持つこととなるため、そうでない者より難しくなる。拳銃ではこのような状態でも柔軟に対応可能だが、ブルース・ウィリスのように独特の構え方となる。

腕以外の左利きの不便も多々ある。

「左利き」という言葉の表現の転用

酒飲みの人を「左利き」「左が利く」という。これは、石工や大工では右手でを振るい、左手にのみを持つため「のみを使う手」=「呑み手」という言葉遊びからである。「左党(さとう)」とも呼ばれるようになった。また、建築家の左甚五郎が左利きであったことから命名されたという説もある。

スペインでは「左利きの人」と言うと、悪意から罪を犯した人や泥棒を示すことがある。

脚注

注釈

  1. ^ 1892年にシカゴヘラルド紙の記者の作った造語である。野球の本塁が北西にあるのが原則であるため、左投げ投手の手(ポー:paw)は南(サウス:South)からくり出されることから名づけられた。『広辞苑』では「アメリカ南部出身の大リーグ所属投手に左利きが多かったことから」としている(これらの説には異論もある)。
  2. ^ ただし、常に左利きのことを指すとは限らない。スノーボードでは利き足が右のことをグーフィーと呼ぶ。
  3. ^ ウルトラマンA 第10話『決戦!エース対郷秀樹』 において「いつからぎっちょになったんだ?」と発言している場面がある。
  4. ^ イギリス国王ジョージ6世は幼少期から少年時代に、父ジョージ5世により左手に長いひもを結び付けられ、左手を使った時には父から乱暴に引っ張られ、この虐待によりジョージ6世は重度の吃音になってしまった。また水森亜土王貞治ルイス・キャロルネルソン・ロックフェラーウィンストン・チャーチルも左利きであったが、同様もしくは類似の虐待を受け、水森とキャロルに至っては前述のジョージ6世と同様、吃音に悩まされることとなってしまい、チャーチルも生涯後遺症に苦しめられた。
  5. ^ また「矯正」しようとするのは親や祖父母だけではなく、教育関係者の中にも「利き手矯正ができる」ことが教育者としての自身の実績や高評価につながると考える者もおり、幼稚園や小学校の教諭などが保護者の意向を無視して矯正を行おうとすることも見られる。
  6. ^ 実例として江夏豊は幼少期の折に兄から左利き用のグラブを買い与えられ、右利きであったにもかかわらず強制的に左利きへと矯正された。岡田彰布との共著『なぜ阪神は勝てないのか? ~タイガース再建への提言』(角川書店角川ONEテーマ21、2009年)p.109。
  7. ^ 桑森真介『大相撲の見かた』(平凡社新書)80頁には「平成25年3月場所の幕内力士42名中、右四つは20名、左四つは6名、どちらともいえない力士は16名である。稽古で押しの練習をする場合でも、受け側は右胸を前に出し、押す側はその右胸を押すことが一般的だ。これは右四つで、右胸が前に出る体勢と合致している。つまり右四つがベースとなった稽古が行われているのである。」「一般的には、左四つは力士の中でも比較的少なく、左四つの体勢を押すことには不慣れなために、左四つが有利になるのであろう。」という主張が記述されている。

出典

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文献

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  7. Grouios, G.; Sakadami, N.; Poderi, A.; & Alevriadou, A. (1999). "Excess of non-right handedness among individuals with intellectual disability: Experimental evidence and possible explanations," Journal of Intellectual Disability Research

関連項目

外部リンク

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