HF120 (エンジン)とは - わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

GE Honda HF120 ターボファンエンジン

HF120は小型のターボファンエンジンで、GE・ホンダ・エアロ・エンジン(以下、GEホンダ)によって軽量ビジネスジェット機市場向けに開発された。

GEホンダは当初200基以上の販売を見込んでいたが、実際には2022年時点で500基を超える販売実績となっている[1]

概要

日本の自動車メーカーである本田技研工業(ホンダ)は航空機事業への参入を目指して、当初1999年(平成11年)より小型クラスに属するターボファンエンジン「HF118」の自社開発に着手していた。しかしホンダは航空機エンジン分野には初参入であり、HF118は実績不足のため機体メーカーには採用されなかった。また、米国連邦航空局(FAA)の型式証明をホンダ単独で取得することは難しいという課題を抱えていた。しかし、大型ジェットエンジンの技術とFAA形式認証取得のノウハウを持ち、かつ小型ジェット事業に関心を持っていたゼネラル・エレクトリックがHF118に興味を示し、その結果ホンダとの共同事業化が成功、合弁会社としてGEホンダが設立された。その後、ホンダとGEが共同で作り上げた最初のジェットエンジンが、HF120 ターボファンエンジンである。

実際のエンジンの製造作業やオーバーホールはホンダ子会社のホンダ エアロが行っており、GEホンダは販売及びサポートを担当するという関係になる[1]

歴史

設計

幅の広い後退角のあるファンを備え、低圧圧縮機は二段軸流式圧縮機、高圧圧縮機は遠心式圧縮機を採用している。燃焼室は反転式、タービンは低圧2段、高圧1段である。高圧タービンには単結晶耐熱合金が使用される[13]。同水準の推力を発生する他社のエンジンに比べて環境に配慮した設計で、小型軽量、低燃費、高耐久性、低騒音、低エミッションである[10][14]。定格推力は2,095 lbf (9.32 kN)、開発開始の2006年時点では離陸推力2,050 lbf (9.12 kN)の計画で、HondaJetにおいては2,050 lbf (9.12 kN)に調整されている[15][16]。原型機のHF118はほぼ同じサイズであったが推力は1,670 lbsと小さかった。HF118から重量低減・燃費改善・推力向上を図ったことから完成は2009年までずれ込んだ[10]。推力については、2015年の時点で2,400 lbf (10.7 kN)まで強化する研究が行われている[17]

2016年の時点で、GEホンダの社長であるスティーブン・シャクナイティス(Steven Shaknaitis)は、次世代エンジンの開発について、「開発のスイートスポットは3 ,000から4,000pound thrustエンジンにある」と答え、「エンブラエル フェノム 300」を筆頭とするLight級が「次の市場である」と語った[18]

サポート

HF120の修理・オーバーホール拠点(MRO拠点)としては米国ノースカロライナ州バーリントンにあるホンダ エアロが選定されている。またGEホンダはメーカー保証期間・保証範囲を超えた定期点検・定期交換や故障時の修理・交換を保証する「エンジンメンテナンスケア」(EMC)プログラムをGEホンダ認定サービス拠点を通して提供している。プログラムには、顧客に包括的な保守内容を提供する「EMC2」と、主に部品を提供する「EMC」の2つのコースが設定されている[19]

搭載機

2017年現在HondaJetに搭載されている。他にはスペクトラム S-40 フリーダムに搭載する計画があったが、開発は中断している。

2014年10月21日にはシエラ・インダストリーズと共同でサイテーション525の中古機体のエンジンをHF120に載せ換えて機体の性能改善と価値向上を図る「サファイア・プログラム」を発表したが[19]、当のシエラが2015年11月にイノーバ・エアロスペースに買収された影響で[20]、この話は白紙となった[21]

仕様

ホンダジェットに搭載されたHF120

一般的特性

構成要素

性能

関連項目

脚注

  1. ^ a b GE Honda Aero Engines Marks 500th Production Engine - GE Honda・2022年6月2日
  2. ^ a b c dホンダ航空機エンジン開発基地を初公開!”. webcartop.jp (2014年12月23日). 2017年2月12日閲覧。
  3. ^ a b cホンダ、Honda Jet用エンジン「HF120」試験設備など公開”. webcartop.jp (2014年12月26日). 2017年2月12日閲覧。
  4. ^ a b c「宗一郎の夢」 ホンダジェットの開発現場に密着” (2015年4月24日). 2017年2月12日閲覧。
  5. ^ “GE Honda、ターボファンエンジンHF120の型式認定を取得”. ホンダ. http://www.honda.co.jp/news/2013/c131216.html
  6. ^ “ホンダ、米GEとの折半出資子会社がターボファンエンジン「HF120」の型式認定を取得”. 日本経済新聞. (2013年12月16日). オリジナルの2013年12月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131219034748/http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=351529&lindID=4 2013年12月19日閲覧。
  7. ^ “ホンダジェットのエンジン、FAAから型式証明取得”. Aviation Wire. (2013年12月16日). http://www.aviationwire.jp/archives/29953 2013年12月19日閲覧。
  8. ^ “GE Honda、小型ターボファンエンジンHF120の出荷開始とメンテナンスサービス施設の選定を発表”. ホンダ. http://www.honda.co.jp/news/2013/c131216.html
  9. ^ a b “ホンダジェットのエンジンが型式証明を取得!いよいよ引き渡し近づく”. 日刊工業新聞. (2015年5月21日). https://newswitch.jp/p/699 2015年10月15日閲覧。
  10. ^ a b c d “ホンダジェットのエンジン、EASAの型式認定取得へ”. http://www.aviationwire.jp/archives/61546
  11. ^ “GE Honda、小型ジェットエンジン「HF120」の欧州における型式認定を取得”. http://www.honda.co.jp/news/2016/c160524a.html
  12. ^ “「平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 開発部門」を受賞”. ホンダ. http://www.honda.co.jp/news/2017/c170411b.html
  13. ^ ホンダジェット、[HF120エンジンの型式証明を取得]
  14. ^ GE Honda Aero Engines Company Profile Flight International
  15. ^ HF120 Environmental Performance GE Honda website (Web Archive)
  16. ^ HondaJet スペック
  17. ^ “EBACE: GE Honda studies single-engine, more thrust for HF120”. FLIGHTGLOBAL. (2015年5月18日). http://www.flightglobal.com/news/articles/ebace-ge-honda-studies-single-engine-more-thrust-for-412467/
  18. ^ “GE Honda Aero Engines Poised to Add to Turbofan Family”. ainonline. (2016年10月29日). https://www.ainonline.com/aviation-news/business-aviation/2016-10-29/ge-honda-aero-engines-poised-add-turbofan-family/
  19. ^ a b “GEホンダ、航空機用ターボファンエンジン「HF120」のサービス体制を米国などで構築”. http://response.jp/article/2014/10/21/235508.html
  20. ^ “INNOVA AEROSPACE BUYS SIERRA INDUSTRIES AND SABRELINER”. AOPA. (2015年11月19日). https://www.aopa.org/news-and-media/all-news/2015/november/19/innova-aerospace-buys-sierra-industries-and-sabreliner
  21. ^ “深層断面/ホンダジェット正念場、生産計画遅れ・エンジン受注白紙”. 日刊工業新聞. (2016年11月16日). https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00406867

参考文献

外部リンク

本田技研工業
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