HI-NRGとは - わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

ハイエナジーHi-NRG
様式的起源 ディスコポスト・ディスコ ポップ・ミュージックシンセポップエレクトロニカ
文化的起源 1970年代イギリスおよびアメリカ合衆国
使用楽器 ドラムセットシンセサイザー鍵盤楽器ミュージックシーケンサー
派生ジャンル ユーロビートテクノ
地域的なスタイル
東京ニューヨークロンドンロサンゼルスパリローマイビザ島
テンプレートを表示

Hi-NRGHigh Energyハイエナジー)は、1980年代半ばに登場したディスコクラブで人気の高かったダンス・ミュージックである。ディスコ音楽電子楽器を導入したユーロ・ディスコから派生した音楽とされる。

歴史

近代的なダンス・ミュージックの起源はディスコ音楽であり、主に生楽器電気楽器で作られる。そのディスコ音楽から派生した、電子楽器によるダンス・ミュージック(Hi-NRG、ユーロビートハウステクノ等)の中でも最初に登場したジャンルである。1970年代のまだ高額だったシンセサイザーを購入出来る程に裕福な電子音楽家の活動の一環として始まった。全面的に電子楽器を導入しているが、1970年代初頭から続く伝統的なディスコ音楽が持つ華美さを色濃く残している。日本や一部のヨーロッパの国ではユーロビートという用語が使用されるようになったが、アメリカではその後も「ハイ・エナジー」という用語が使用され続けた。

ユーロ・ディスコ音楽は、1975年にジョルジオ・モロダーとピート・ベロッテのコンビによるプロデュースで、全ての楽器を「電子楽器」に置き換えて実験的に制作された、ドナ・サマーの「I Feel Love」[1]が発売され好評を博すと状況は変化し始めた。「I Feel Love」の発売以降、電子楽器によるディスコ音楽の可能性が認知されるようになった。ブライアン・イーノも「I Feel Love」の発売当初に「このシングルはこの先15年のクラブ・ミュージックのサウンドを変えることになるだろう」とコメントしており、当時「I Feel Love」が非常に画期的な楽曲であったことが窺える。従って、Hi-NRGはディスコ音楽と電子音楽の融合により誕生したジャンルであると言える。1979年頃、定型化したディスコ音楽に対してのリスナーの興味が薄れると共に、ポストディスコと言う電子化の試みが本格化し、Hi-NRGも表舞台に現れることになった。

「Hi-NRG」という名称は、イギリスの音楽週刊誌『レコードミラー』でゲイ・ディスコ・ミュージック・チャートの名称がそれまでの「BOYS TOWN DISCO」チャートから1984年2月4日付けで「Hi-NRG DISCO」チャートに変更されたことに由来するとされる一方で、イアン・レヴァイン(Ian Levine)によってプロデュースされたエヴリン・トーマスのディスコ・ヒット「ハイエナジー (High Energy)」(1984年) に由来するという説もある。ちなみに同曲は1984年3月17日付けチャートに初登場し、4月7日付けで1位を獲得後11週に渡り首位を維持した[2][3]。Hi-NRGの代表的なミュージシャンには、シルヴェスター、クラウディア・バリー、ミケール・ブラウン、フランス・ジョリ、エイミー・スチュワート、ウェザー・ガールズらがいた。

典型的な「Hi-NRG」の特徴のひとつに、シンセベースのオクターブ奏法(低音と1オクターブ上の高音が交互に並び、ドラムのハイハット的な役割を担う)を用いる事がある。これは1980年代半ばにHi-NRGがユーロビートに進化した際にもそのまま引き継がれた。またシーケンサーで組まれたエネルギッシュでスタッカートの効いたシンセサイザー音が使用され、ドラムマシンのクラップ音も頻繁に使用される。1982年にThe EndUp(英語版)(※訳注:サンフランシスコナイトクラブ)で、DJパトリック・カウリーが最初にHi-NRG音楽の人気を高めた。1984年には主にレコードレーベルのレコード・シャック(Record Shack)が、イギリスやアメリカのディスコ・チャートで成功を収めた。

レコード・シャックは、ブレイク・マシーンとミケール・ブラウンによるトラックと、1984年に奇跡的にカムバック・シングルをヒットさせた大ベテランの女性歌手、アーサー・キットによって、ダンス・チャートでの成功を収めた。

ストック・エイトキン・ウォーターマンも、その時期のHi-NRGプロデューサーである。彼はディヴァインとヘイゼル・ディーン(英語版)を世を送り出し、プロデュースした音楽として最も成功したHi-NRGトラックであるデッド・オア・アライヴの「You Spin Me Round (Like a Record)」は、全英ナンバーワンとなった。その後のHi-NRGは、主にハウス・ミュージックに取って代わられたが、それHi-NRGはアンダーグラウンド・シーンで残っている。

現代のHi-NRGサウンドは、1990年代に出現したクリスティン・W(英語版)とアビゲイル(英語版)という、2人の主要なHi-NRGアーティストの功績によってクラブ/ダンスミュージックシーンのメジャー勢力となっているが、かつてと基本的なスタイルは同じであるものの、時代の流行が取り込まれたリズムとシンセへと変化している。

この時期にヨーロッパで作成されたHi-NRGトラックの例としては、イタロ・ディスコ(すなわち、タフィー、マガジン60など)と、ディスコフォックス(すなわち、リアン・ロスモダン・トーキング、ファンシー)を挙げることができる。

主なミュージシャン

主なレコード

1980年代にHi-NRGチャートにチャートインしたもの。

ナンバー1レコード

これらのレコードは、レコードミラーでジェームズ・ハミルトンとアラン・ジョーンズによって作成されたHi-NRGチャートにおいて、ナンバー1となっている。

Hi-NRG形式のカヴァー

主なレコード・レーベル

比較的多くレコードミラーのHi-NRGチャートに入ったレコード・レーベル。

日本版コンピレーション

1985年、ALFA INTERNATIONALより、アルバム『That's Hi-NRG ザッツ・ハイエナジー』がリリースされる。レコードでは楽曲のイントロからアウトロまでをフルに収録したノーマルなコンピレーションが、カセットテープではM.I.D.によるノンストップなメガミックスがそれぞれ発売された。発売当時は、音源を編集して繋ぎ合わせる方法がアナログテープの切り貼りや、数秒の音しか扱えない低音質のサンプラーしかなかったため、ノンストップメガミックスのリリースとしてはほとんど日本初となった。このコンピレーション商品は、『**That's EURO BEAT**』として以降シリーズ化されていくことになる。

日本での流行

1980年代に東京都新宿区歌舞伎町東亜会館にあった4つのディスコ「BIBA」、「グリース(ギリシャ館)」、「GBラビッツ」、「B&B」や、同じく歌舞伎町のディスコ「ゼノン」で、通っていた中高生中心に流行し、芋掘りやバンプといった独特のダンスで踊られていた。

洋書

関連項目

脚注

[脚注の使い方]

  1. ^ https://www.discogs.com/Donna-Summer-I-Feel-Love-Siento-Amor/master/85840
  2. ^Hazell Dean - Full Official Chart History”. Official Charts Company. Official Charts Company. 01 September 2021閲覧。
  3. ^Evelyn Thomas - Full Official Chart History”. Official Charts Company. Official Charts Company. 01 September 2021閲覧。
  4. ^ https://www.discogs.com/Green-Olives-Jive-Into-The-Night/release/431256

外部リンク

音楽
西洋音楽史 古代 古代ギリシア 古代西洋 中世西洋 ルネサンス バロック 古典派 ロマン派 近代音楽 現代音楽 地域別の動向 西洋音楽年表
作曲 作曲家 編曲家 楽式 記譜法 楽譜 歌詞 作詞 音楽理論 リズム 拍子 シンコペーション メロディ 音名・階名表記 音程 音階 音律 旋法 対位法 和声 非和声音 テンション セクションの書法 ポピュラー和声 調 関係調 限界 無調
演奏 音楽家 演奏者 歌手 指揮者 オーケストラ 吹奏楽 バンド 調律 ソルフェージュ 絶対音感 固定ド 相対音感 移動ド 即興演奏 演奏会 ライブハウス カラオケ PA 音響機器 舞台芸術
楽器 発声 古楽器 弦楽器 擦弦楽器 撥弦楽器 管楽器 金管楽器 木管楽器 打楽器 鍵盤楽器 電気楽器 電子楽器 楽器分類学 楽器分類別一覧 MIDI 教育楽器
主なジャンル クラシック音楽 賛美歌 ポピュラー音楽 ニューエイジ・ミュージック ルーツ・ミュージック ブラックミュージック ダンス・ミュージック ラウンジ・ミュージック ゴスペル ブルース ミュジーク・コンクレート ジャズ サイケデリック・ミュージック ロックンロール ウィッチハウス フォーク ニューミュージック シティ・ポップ カントリー・ミュージック タンゴ リズム・アンド・ブルース ロック ポップス ソウルミュージック メント カリプソ スカ ロックステディ ナイヤビンギ レゲエ ダブ ヒップホップ フュージョン クロスオーバー イージーリスニング ボサノヴァ ファンク ディスコ ニュー・ウェイヴ テクノポップ Hi-NRG ユーロビート ハウス 実験音楽 電子音楽 環境音楽 ゼンハーモニック音楽 ハードロック グラムロック ヘヴィメタル パンク・ロック ハードコア・パンク オルタナティヴ・ロック ノイズミュージック グランジ インダストリアル テクノ トランス ジャングル ドラムンベース トリップ・ホップ エレクトロニック・ダンス・ミュージック ヴェイパーウェイヴ ゲームミュージック アニメソング BGM 映画音楽 演歌 軍歌 寮歌 歌謡曲 童謡 J-POP
民族音楽 アイヌ音楽 アイルランド音楽 アメリカ合衆国の音楽 アラブ音楽 アンゴラの音楽 イギリスの音楽 イヌイットの音楽 インドネシアの音楽 インドの伝統音楽 ウルグアイの音楽 沖縄音楽 カーボベルデの音楽 北アフリカの音楽 グリーンランドの音楽 ケルト音楽 コンゴ共和国の音楽 スコットランド音楽 西洋音楽 赤道ギニアの音楽 セルビアの音楽 チェコの音楽 朝鮮の伝統音楽 トルコ音楽 西サハラの音楽 パラグアイの音楽 バルカン半島の音楽 ハワイの音楽 東ティモールの音楽 ブラジル音楽 ブルガリアの音楽 邦楽 民謡 モザンビークの音楽 ラテン音楽 ルーマニアの音楽 ロマ音楽 ワールドミュージック
録音 レコード会社 レコードレーベル プロデューサー レコーディング・エンジニア マスタリング・エンジニア サウンドデザイナー シングル EP盤 A面/B面 アルバム スタジオ ライブ コンピレーション カバー リミックス サンプリング 音楽出版
メディア 鑑賞 蓄音機 レコード CD DVD-Audio SACD コンポーネントステレオ MP3 音声ファイルフォーマット 音楽配信 デジタルオーディオプレーヤー ミュージカル映画 ミュージック・ビデオ 音楽番組 音楽ゲーム 音楽雑誌 音楽漫画 音楽評論家 ヘヴィー・ローテーション
一覧 音楽家 レコード会社 欧文西洋音楽用語 邦楽のジャンル クリスマスの音楽
音楽学 音楽教育 音楽心理学 音楽社会学 音楽療法 音楽美学 音楽民族学 音響学 電気音響工学 音響心理学 音楽学者 RILM
聴覚 内耳神経 一次聴覚野 難聴 イヤーワーム 音波 音高 周波数 基本周波数 倍音 差音 超音波 低周波音 騒音 楽音 音色 純音 正弦波 音圧 デシベル 音速 振動 波動 現象 無音
関連項目 音楽の定義 音楽の哲学 音楽性 音楽産業 ムーサ 時間 空間 芸能 芸術
ポータル プロジェクト カテゴリ一覧
ディスコ
サブジャンル アフロ・コズミック・ミュージック (en) ダンス・パンク ニューレイヴ ユーロ・ディスコ (en) Hi-NRG イタロ・ディスコ スペース・ディスコ マニラ・サウンド (en) ニュー・ディスコ
派生ジャンル ニュー・ウェイヴ ハウス ガラージュ ヒップホップ ポスト・ディスコ
関連項目 ディスコ(ディスコテーク) ディスコダンス ナイトクラブ ハッスル (ダンス) (en) ローラー・ディスコ (en)
一覧 ディスコ・アーティストの一覧(A–E) (F–K) (L–R) (S–Z) 4つ打ち リミックス
音楽のジャンル一覧 ポピュラー音楽のジャンル一覧 Category:音楽のジャンル
Hi-NRG
ジャンル Hard NRG (en) アシッド・ハウス イタロ・ディスコ スペース・ディスコ テクノ ユーロダンス ユーロ・ディスコ (en) ユーロビート
関連項目 Hi-NRGのアーティストと曲の一覧 (en) イアン・レヴィン (en) SUPER EUROBEAT ストック・エイトキン・ウォーターマン パラパラ レイブ
音楽のジャンル一覧 ポピュラー音楽のジャンル一覧 Category:音楽のジャンル
エレクトロニカ電子音楽系ジャンル (en)
年代別ジャンル 1960年代 アンビエント(環境音楽) エレクトロニック・ロック クラウトロック サンプルデリア (en) ダブ ドローン 1970年代 インダストリアル インダストリアル・ロック エレクトロ・パンク (en) シンセポップ エレクトロ・ポップ テクノポップ スペース・ミュージック (en) チップチューン ニュー・ウェイヴ Hi-NRG ブギー ミニマル・ウェイヴ (en) ユーロディスコ (en) 1980年代 イタロ・ディスコ インダストリアル・ヒップホップ (en) インダストリアル・メタル エレクトロ ラテン・フリースタイル (en) エレクトロ・インダストリアル エレクトロニック・ダンス・ミュージック エレクトロニック・ボディ・ミュージック オルタナティブ・ダンス (en) シンセ・メタル (en) ダーク・アンビエント ダブトロニカ (en) テクノ ニュー・ビート (en) ハードコアテクノ ハウス シカゴ・ハウス ラテン・ハウス (en) ファンキー・ハウス (en) ブレイクビーツ ブレイクビート・ハードコア (en) ユーロダンス ユーロビート 1990年代 アンビエント・テクノ イルビエント インダストリアル・テクノ インテリジェント・ダンス・ミュージック エスニック・エレクトロニカ (en) エレクトロニカ エレクトロクラッシュ エレクトロ・ハウス エレクトロ・ホップ (en) グリッチ (en) ゴアトランス ジャングル ダウンテンポ ダブステップ デジタル・ハードコア (en) ドラムンベース ドリルンベース トランス トリップ・ホップ ニュージャズ エレクトロ・スウィング ニュースクール・ブレイクス (en) ハードスタイル パワー・ノイズ (en) ファンクトロニカ (en) フォークトロニカ ブレイクコア プログレッシブ・エレクトロニカ (en) マキナ マング・ビット (en) UKガラージ 2ステップ ブレイクステップ フューチャー・ガラージ (en) スピードガラージ ライブトロニカ 2000年代 ウィッチハウス エレクトロ・ハウス グライム クランク クリスチャン・エレクトロニック・ダンス・ミュージック (en) ジャンプスタイル (en) シンセウェイヴ ソヴィエトウェイヴ (en) チルウェイヴ ハウントロジー (en) ヒプナゴジック・ポップ (en) ファンコット ブードッツ (en) ベースライン (音楽ジャンル) (en) UKファンキー (en) UKベース(ベース・ミュージック) ローアーケース 2010年代 ヴェイパーウェイヴ ハードヴェイパー (en) ファッシュウェイヴ (en) フューチャーファンク (en) モールソフト (en) シーパンク (en) スライムパンク (en) トラップ デコンストラクテッド・クラブ (en) パウワウ・ステップ (en) ビッグ・ルーム・ハウス (en) フューチャー・ベース (en)
その他 インダストリアル 楽器としてのレコーディングスタジオ (en) ゲームミュージック コンテンポラリー・R&B コンピュータ音楽 ターンテーブリズム (en) チルアウト ディスコ ポスト・ディスコ ガラージュ (en) ヒップホップ ヒップホップのジャンル一覧 (en) プランダーフォニック (en) ロックにおける電子楽器 (en)
音楽のジャンル一覧 ポピュラー音楽のジャンル一覧 Category:音楽のジャンル