JR北海道キハ150形気動車とは - わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

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JR北海道キハ150形気動車
0番台 苗穂運転所所属車(2006年11月 函館本線 小樽駅
基本情報
運用者 北海道旅客鉄道
製造所 富士重工業
製造年 1993年 - 1995年
製造数 27両
運用開始 1993年4月1日[1]
主要諸元
軌間 1,067 mm
最高速度 110 km/h[2][3]
車両定員 49(席)+68(立)=117名(0番台)[2]49(席)+66(立)=115名(100番台)[3]
自重 33.3 t(0番台)[2]33.1 t(100番台)[3]
全長 20,000 mm[2][3]
全幅 2,925.4 mm[2][3]
全高 3,940 mm[2][3]
車体 普通鋼[2][3]
台車 ボルスタレス台車[2][3]N-DT150形(2軸駆動)・N-TR150形[2][3]
動力伝達方式 液体式[2][3]
機関 N-KDMF15HZ[2][3]
機関出力 450ps/2,000rpm(連続定格)[2][3]
変速機 N-DW14C形[2][3]
変速段 変速1段・直結2段[2][3]
制動装置 CLE応荷重装置付電磁自動空気ブレーキ[2][3]機関ブレーキコンバータブレーキ[2][3]
保安装置 ATS-SNATS-DN直通予備ブレーキ
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キハ150形気動車(キハ150がたきどうしゃ)は、北海道旅客鉄道(JR北海道)が1993年平成5年)から運用する一般形気動車である。

概要

積雪急勾配線区における単行(1両)運転を考慮して開発された、高出力機関装備の両運転台式気動車である[1]

JR北海道が国鉄分割民営化の際に継承した、地方ローカル線用の車両のうち、キハ22形キハ56系などは経年30年を超えていた。また、キハ22形キハ40形は単行運転可能なものの出力不足のため、冬季積雪時の排雪運転では閑散線区においても2両編成が必須となるなどの問題があった。

これらを解決するために開発された一般形気動車が本形式である。高出力機関を搭載して動力性能を向上し、北海道の一般形気動車で初めて冷房装置を搭載する(0番台のみ)など接客設備の改善もなされたほか、ワンマン運転設備の搭載、JR東日本キハ110系をベースとした車体構造、バス用汎用部品の採用など製造コスト削減も考慮された。

本形式は1995年までに27両が富士重工業で製造された。製造当初は旭川運転所苫小牧運転所苗穂運転所の各所に配置され、主に富良野線室蘭本線苫小牧駅 - 長万部駅間・函館本線小樽駅 - 長万部駅間の地域輸送に使用された。2020年代からはH100形の導入に伴い、他の線区に活躍の場を移している。

構造

N-DT150形台車

キハ40形との混結運用
(2009年9月 小樽駅)

車体は普通鋼製で、全長は20m級、客用扉は片開き式のものを片側2か所に設ける[2]。車体の前後に運転台をもつ両運転台式で、1両単位での運用が可能である[2]前部標識灯は正面上部の左右および正面中位の左右に4灯を装備する。これは冬季の降雪時に視界を確保するためで、後部標識灯は正面上位、貫通扉の真上に配置する。警笛は電子式と空気式を併用する。外部塗色はJR北海道の一般形気動車標準の配色で、白色の車体全周にスカイブルーと萌黄色の帯を配するが、一部の車両は配色が異なる。

座席は客用扉の隣接部をロングシートとしたセミクロスシートで、クロスシート部は1+2列の配置である[2]

0番台では冷房装置を搭載する[2]。冷房装置は走行機関直結式のN-AU150 (20,600kcal/h)で、室内機が屋根上に取り付けられている。また強制換気装置としてクロスフローファンが屋根上に4台設置されている。

循環式汚物処理装置付のトイレを出入口付近に設け、隣接して車椅子スペースを備えるが、トイレはバリアフリー非対応の和式トイレである[2]運賃箱など、ワンマン運転用の各種設備も製造当初より装備する[2]。2015年ごろにキハ150-17の側面の行き先表示が試験的に幕式からLED式になっていた。

従来の北海道向け車両では客室と出入台との間に仕切り扉を設けていたが、本形式ではこれに代わる寒冷対策として、座席の客用扉隣接部に樹脂製の袖仕切りを設け、客用扉は押ボタン式の半自動ドア[注 1][2]として、開放時間を最小限にできるようにしている。他の酷寒地対応として、機関始動および暖房用の機関予熱器(容量30000kcal/h)を装備するほか、燃料タンクは500Lを2個装備として大容量化している。

駆動機関はコマツ製の過給器吸気冷却器付の直噴式ディーゼル機関N-KDMF15HZ形(SA6D140-H・定格出力450ps/2000rpm・最大トルク173kgm/1400rpm 水平直列6気筒・総排気量15240cc)を1基装備する[2]。450psの定格出力はキハ40形 (DMF15HSA・220ps) の2倍強、2台機関搭載のキハ56形(DMH17H・180ps×2)をも上回る。液体変速機は湿式多板クラッチによる変速1段・直結2段式のN-DW14C形で、コンバータブレーキの機能をもち、下り勾配での抑速装置として機関本体の機関ブレーキと併用できる[2]

台車は空気ばね付のボルスタレス台車 N-DT150形(動台車)/N-TR150形(付随台車)で、牽引力確保のため2軸駆動としている[2]。軸箱支持機構は積層ゴム[注 2]を用い、車輪踏面片押し式基礎ブレーキ装置を備える[2][4]空気ブレーキはキハ40形などと共通の3圧式制御弁をもつCLE方式(応荷重装置付電磁自動空気ブレーキ)である。

これらの駆動系改良により、最高速度110km/hでの走行が可能である[2]。一方で、放熱器・燃料タンクなどの補機類にはバス用などの自動車用部品・汎用部品を用い、製造コスト削減を図っている[2]

本形式はキハ40形などの従来形式とブレーキシステムの互換性があり、混結しての運用も可能である。車両間を電気的に接続するジャンパ栓[2]は正面の片側にのみ設けられ(片渡り)、本形式同士を連結する際は、必ず各車の向きを同一方向に揃える必要がある。

形態区分

1993年(平成5年)に10両、1995年(平成7年)に7両が製造された。

客室窓は大型の固定窓で、冷房装置を搭載する[2]。定員は117名で、自重は33.3tである[2]

側面帯と客用扉の配色は配置箇所によって異なり、旭川運転所・函館運輸所の車両はラベンダーをイメージしたライトパープル[2]、元苗穂運転所の車両はスカイブルー+萌黄色である。

100番台

100番台の車内(キハ150-109)

1993年(平成5年)に10両が製造された。定員は115名、自重は33.1tである[3]

冷房装置は装備せず、客室天井にはクールファンを設ける[3]。客室窓は小窓に変更され、上半分を内傾式で開閉可能な機構とした[3]。このため車体構造の設計を変更し、外壁厚さを増したため定員が減少している[3]

運用・現況

2024年3月16日時点で、基本番台は旭川運転所函館運輸所に配置。100番台は全車が苫小牧運転所に配置。それぞれ以下の区間で使用されている。

基本番台

旭川運転所

現行の定期運用(2024年3月16日時点)

以下の他、宗谷本線では旭川 - 北旭川(旭川運転所)間の回送列車のみ運転される。

過去の使用線区

函館運輸所

現行の定期運用(2025年3月15日時点)

H100形に置き換えられた旭川運転所所属車が転属したことにより、2024年3月16日ダイヤ改正から徐々に函館地区で運用されるようになり、2025年3月15日ダイヤ改正で全便がキハ150形での運用に統一された。

苗穂運転所

2021年4月1日までに0番台の全車両が旭川運転所へ転属し、配置がなくなった。

過去の定期運用

100番台

苫小牧運転所所属車

現行の定期運用(2025年3月15日時点)

いずれも2019年3月16日ダイヤ改正から定期運用されている。

過去の定期運用

その他

キハ201系気動車への空気ばねを用いた強制車体傾斜装置採用に際し、試験車として本形式が使用された[9]

トラブル

2024年(令和6年)7月13日、大沼駅停車中の普通列車にて、ホームと反対側の扉が部分的に開くトラブルが発生した。本形式のうち16両が緊急点検を行うこととなり、トラブル当日と翌日に充当予定であった普通列車17本が運休した[10]

車歴表

0番台

車歴表(キハ150形0番台)

キハ150 製造 落成配置 落成日 現行配置 転属歴 備考
1 富士重 旭川 1993年02月26日[11] 函館 [転属 1]
2 [転属 2]
3 [転属 3]
4 [転属 4]
5 [転属 5]
6 [転属 6]
7 [転属 7]
8 1993年05月14日[13] 旭川
9
10
11 苗穂所 1995年01月31日[14] [転属 8]
12 [転属 9]
13 1995年02月01日[14] 函館 [転属 10]
14 [転属 11]
15 1995年02月02日[14] [転属 12]
16 旭川 [転属 13]
17 [転属 14]

※キハ150 - 1~10,13~15 はラベンダー塗装(それ以外の車両は標準塗装)

100番台

車歴表(キハ150形100番台)

キハ150 製造 落成配置 落成日 現行配置 転属歴 備考
101 富士重 苫小牧 1993年05月14日[13] 苫小牧
102
103
104 1993年05月21日[13]
105
106
107
108
109
110

改造歴

0番台

ワンマン放送装置ICカード化改造工事

車番 改造日 改造所
キハ150-1 1997年10月21日[17] 旭川
キハ150-2 1997年11月11日[17]
キハ150-3 1997年12月17日[17]
キハ150-4 1997年11月29日[17]
キハ150-5 1997年09月19日[17]
キハ150-6 1997年08月26日[17]
キハ150-7 1997年09月12日[18]
キハ150-8 1997年09月06日[18]
キハ150-9 1998年03月30日[18]
キハ150-10 1997年09月01日[18]

ワンマンドア改修工事

車番 改造日 改造所
キハ150-6 2017年11月02日[19] 苗穂工
キハ150-7 2018年02月07日[19]
キハ150-10 2017年04月17日[19]
キハ150-12 2017年07月18日[19]
キハ150-16 2017年05月19日[19]
キハ150-17 2017年10月03日[19]

気動車減速機支え装置構造変更

車番 改造日 改造所
キハ150-6 2017年11月02日[19] 苗穂工
キハ150-7 2018年02月07日[19]
キハ150-10 2017年04月17日[19]
キハ150-12 2017年07月18日[19]
キハ150-16 2017年05月19日[19]
キハ150-17 2017年10月03日[19]

気動車制御用PLC装置取替

車番 改造日 改造所
キハ150-6 2017年11月02日[19] 苗穂工
キハ150-7 2018年02月07日[19]
キハ150-10 2017年04月17日[19]
キハ150-16 2017年05月19日[19]
キハ150-17 2017年10月03日[19]

ATS未投入防止対策「入」定位化工事

車番 改造日 改造所
キハ150-1 2020年06月01日[16] 苗穂工
キハ150-2 2020年04月17日[16]
キハ150-3 2021年03月16日[16]
キハ150-4 2020年09月07日[16]
キハ150-5 2021年06月11日[20]
キハ150-8 2021年07月21日[20]
キハ150-9 2021年10月14日[20]
キハ150-10 2021年10月13日[20]
キハ150-11 2021年03月02日[16]
キハ150-12 2021年12月02日[20]
キハ150-13 2019年10月31日[21]
キハ150-14 2020年11月16日[16] 釧路
キハ150-15 2020年07月06日[16] 苗穂工
キハ150-16 2021年10月27日[20]
キハ150-17 2021年12月11日[20]

100番台

ワンマンドア改修工事

車番 改造日 改造所
キハ150-101 2019年04月02日[21] 苗穂工
キハ150-102 2018年06月22日[22]
キハ150-104 2018年10月02日[22]
キハ150-105 2018年11月22日[22]
キハ150-106 2019年01月22日[22]
キハ150-108 2018年05月31日[22]
キハ150-109 2019年05月16日[21]
キハ150-110 2017年08月17日[19]

気動車減速機支え装置構造変更

車番 改造日 改造所
キハ150-104 2018年10月02日[22] 苗穂工
キハ150-105 2018年05月31日[22]
キハ150-106 2019年01月22日[22]
キハ150-108 2018年05月31日[22]
キハ150-110 2017年08月17日[19]

気動車制御用PLC装置取替

車番 改造日 改造所
キハ150-101 2017年08月23日[19] 苫小牧
キハ150-103 2017年06月21日[19]
キハ150-107 2017年05月02日[19] 苗穂工
キハ150-108 2017年07月26日[19] 苫小牧
キハ150-110 2017年08月17日[19] 苗穂工

ATS未投入防止対策「入」定位化工事

車番 改造日 改造所
キハ150-101 2019年04月02日[21] 苗穂工
キハ150-102 2019年07月01日[21]
キハ150-103 2019年08月21日[21]
キハ150-107 2019年09月09日[21]
キハ150-109 2019年05月16日[21]
キハ150-110 2021年09月29日[20]

脚注

注釈

  1. ^ 半自動機能は現在使用されていない。
  2. ^ 211系電車のDT50形台車、721系電車のN-DT721形台車と同一の方式である。

転属

  1. ^ 旭川→函館:2024年01月20日[12]
  2. ^ 旭川→函館:2023年010月21日[12]
  3. ^ 旭川→函館:2024年03月31日[12]
  4. ^ 旭川→函館:2024年01月20日[12]
  5. ^ 旭川→函館:2024年06月25日[12]
  6. ^ 旭川→函館:2023年07月10日[12]
  7. ^ 旭川→函館:2023年08月28日[12]
  8. ^ 苗穂所→旭川:2020年03月17日[15]
  9. ^ 苗穂所→旭川:2020年03月19日[15]
  10. ^ 苗穂所→旭川:2020年03月20日
    旭川→函館:2024年01月20日[15]
  11. ^ 苗穂所→旭川:2020年11月22日
    旭川→函館:2024年09月17日[16]
  12. ^ 苗穂所→旭川:2020年07月13日
    旭川→函館:2024年07月6日[16]
  13. ^ 苗穂所→旭川:2020年03月21日[15]
  14. ^ 苗穂所→旭川:2020年03月22日[15]

出典

  1. ^ a b “ローカル線用新型DC完成 JR北海道 来月から営業運転”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1993年3月24日)
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag 『鉄道ファン』通巻385号 pp.76-78
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『鉄道ファン』通巻388号 pp.112-113
  4. ^ N-DT150 N-TR150 / JR北海道キハ150形100番代(鉄道ホビダス台車近影・インターネットアーカイブ)。
  5. ^留萌本線でキハ150-1が運用される”. 鉄道ファン・railf.jp. 2017年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月26日閲覧。
  6. ^ a b キハ150形が特別快速“きたみ”に使用される - 交友社「鉄道ファン」railf.jp 鉄道ニュース 2020年3月25日
  7. ^ “富良野線の定期列車,キハ150形などによる運用を終了”. railf.jp (交友社). (2023年3月18日). オリジナルの2023年3月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230318222055/https://railf.jp/news/2023/03/18/202500.html
  8. ^ a bキハ150形3両が返却回送される”. 鉄道ファン・railf.jp. 2020年3月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月26日閲覧。
  9. ^ 後藤明祐「JR北海道キハ201系通勤形気動車」『鉄道ファン』第37巻第5号(通巻433号)、交友社、1997年5月1日、pp.74-77。
  10. ^ドア「開閉」スイッチ不具合か…"ホームと反対側"約20センチ開く 『同形車両を緊急点検』し計9本運休 乗客は大沼駅で後続列車に乗り換える JR北海道」『北海道文化放送』2024年7月14日。オリジナルの2024年7月14日時点におけるアーカイブ。2024年9月8日閲覧。
  11. ^ 『鉄道ファン』通巻388号 p.80
  12. ^ a b c d e f g RF(754) (2024), p. 157.
  13. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻401号 p.80
  14. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻411号 p.80
  15. ^ a b c d e 『鉄道ファン』通巻711号 別冊付録 p.33
  16. ^ a b c d e f g h i 『鉄道ファン』通巻723号 別冊付録 p.32
  17. ^ a b c d e f 『鉄道ファン』通巻447号 p.71
  18. ^ a b c d 『鉄道ファン』通巻447号 p.72
  19. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 『鉄道ファン』通巻687号 別冊付録 p.33
  20. ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』通巻735号 別冊付録 p.32
  21. ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』通巻711号 別冊付録 p.32
  22. ^ a b c d e f g h i 『鉄道ファン』通巻699号 別冊付録 p.33

JR北海道

  1. ^2024年3月ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2023年12月15日。オリジナルの2023年12月15日時点におけるアーカイブ。https://web.archive.org/web/20231215050147/https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20231215_KO_kaisei.pdf。2024年3月16日閲覧。
  2. ^2023年3月ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2022年12月16日。オリジナルの2022年12月16日時点におけるアーカイブ。https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/221216_KO_kaisei.pdf。2022年12月17日閲覧。

参考文献

関連項目