「alcohol」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
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この項目では、化学物質の総称としてのアルコールについて説明しています。酒(酒類)については「酒」をご覧ください。 酒に含まれるアルコールについては「エタノール」をご覧ください。 |
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化学においてのアルコール(葡: álcool、蘭: alcohol)とは、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基 (-OH) で置き換えた物質の総称である[1]。ただし、芳香環の水素原子を置換したものはフェノール類と呼ばれ、アルコールと区別される[1]。
最初に「アルコール」として認識された物質は酒に含まれるエタノール(酒精)である。この歴史的経緯により、エタノールもしくは酒を指して「アルコール」と言うことも多い。
概要
アルコールの構造。Rは炭化水素。
アルコール類は、生体内での主要代謝物の1つであり、生体内に多種多様なアルコールが広く見いだされる。蝋はセタノールなど高級アルコールであり、脂肪(中性脂肪)は、グリセリンと脂肪酸とのエステルである。そして、糖類もアルコールである。ケトースやアルドースのカルボニル基が還元されたエリトリトールやキシリトール、ソルビトールなどは、糖アルコールと呼ばれる。
構造による分類
アルコールの分類(左から、メタノール、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコール)
ヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭化水素基の数で**第一級アルコール(または第一アルコール)[1]、第二級アルコール(または第二アルコール)[1]、第三級アルコール(または第三アルコール**[2])という区別がある。ヒドロキシ基を酸化すると第一級アルコールはアルデヒドとなり、第二級アルコールはケトンとなる[1]。第三級アルコールは酸化されにくい。なお、メタノールは炭素原子どうしの結合を持たないが、酸化してホルムアルデヒドとなるので、一般に第一級アルコールに含まれる。
それとは別に、炭素数が少ないアルコールを低級アルコール、炭素数が多いアルコールを高級アルコールと呼ぶことがある[1]。低級アルコールは無色の液体であり、高級アルコールは蝋状の固体である。
さらに、結合しているヒドロキシ基の数がn個であるアルコールを、n価アルコール という[1]。二価アルコールは特にグリコールとも呼ばれ[3]、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの例がある。グリコールは一般に粘性や沸点が高い。三価アルコールでは、代表的なものにグリセリンがある[4]。
命名法
一般名では普通、対応するアルキル基の名称に "alcohol" の語を続けて命名する(例: methyl alcohol, ethyl alcohol)。プロパノールの場合、ヒドロキシ基がプロパンの末端(1位)炭素に置換した一級アルコール (CH3CH2CH2OH) は、_n_-プロピル基 (CH3CH2CH2−) にヒドロキシ基が結合した構造から、_n_-propyl alcohol (_n_-プロピルアルコール)と呼ばれる。一方、プロパンの中心(2位)の炭素に置換した第二級アルコール ((CH3)2CHOH) は、イソプロピル基 ((CH3)2CH-) とヒドロキシ基が結びついた構造から、isopropyl alcohol(イソプロパノール)と呼ばれる。また、イソプロパノールは第二級であることから、_sec_-propyl alcohol とも呼ばれる。"_tert_-" の接頭語は第三級アルコールを示す(例: _tert_-butyl alcohol)。2つのヒドロキシ基を持つ二価アルコールの場合は、2価の置換基名(ethylene, propyleneなど)に、"glycol" の語を続ける(例: HOCH2CH2CH2OH, propylene glycol)。
IUPAC命名法によると上記の一般名も維持されるが、IUPACの推奨する組織名では対応するアルカン鎖の名称の末尾の "-e" を "-ol" に変えて命名する(例: methanol, ethanol)。ヒドロキシ基の位置については、結合している炭素が末端から何番目かを表す数字を "-ol" の前につける(例: propan-1-ol, propan-2-ol)。他にも置換基があり、ヒドロキシ基が主基にならない場合 "hydroxy" の語を前につけて表す(例: 2-hydroxypropanoic acid)。また多価アルコールの場合は "-ol" を "-diol"(二価アルコールの場合)、"-triol"(三価アルコールの場合)のように ol の前に数詞をつけて命名する。位置番号のつけ方は同様である。
語源
アルコール (alcohol) の語源については正確な起源が判明しているわけではないものの、"al-" がアラビア語の定冠詞であることから、アラビア語に由来すると考えられている。そもそも、12世紀にイスラム社会の錬金術の発見を大衆向けに翻訳した数々のヨーロッパの翻訳者によって、アルコールは蒸留技法とともにその蒸留物のこととしてヨーロッパに紹介された。
多くの辞書では الكحل( al-kuḥl )から来たとする説を紹介している。al-kuḥl は、アラビア語の原義では殺菌剤と眉墨に利用されたアンチモン硫化物 Sb2S3 の非常に微細な粉体のことである。すなわち「さらさらしている」という意味であり、エタノールが水に比べてさらさらしているところから来ていると考えられる。
『Oxford English Dictionary』によると、1672年以来イギリスで流通している説では、アンチモン硫化物は天然鉱石の輝安鉱を閉じた容器の中で昇華し精製する。このことから他の精製技法も含め、蒸留一般のことを指していうようになり、その後、蒸留物であるエタノールを示す語に転化したものと考えられている。
ただし、この説にも異論があり、コーランにある الغول( al-ghūl )が由来であるという説がある。グールの原義は、精霊 (spirit) や魔人 (demon) で「ワインの性質を与えるもの」という意味である。蛇足になるが天体の "Algol" も起源を الغول に持つ。"spirits" や "spirits of wine" がアルコールの意味として同義なので、西側社会言語では広く受け入れられている。語源「アルコール」=「悪魔」は、1930年代のアメリカ禁酒運動のときに宣伝の目的で使われた。
日本には江戸時代にオランダ語 alcohol [ˈɑlkoˌɦɔl] ( 音声ファイル)が取り入れられ、オランダ語の発音のまま日本語でも「アルコホル」(ローマ字:arukohoru)と表記・発音した[5]。なお、英語における発音 [ˈælkəˌhɔl] (
音声ファイル)は「アルカホル」が近い(ただし、歴史的仮名遣いでは文節のはじめ以外の「ほ」は「お」と発音するので、「アルコオル」(ローマ字:arukooru)と発音する者もいたと考えられる)。昭和初期頃になると "alcohol" に該当する物質は「アルコホル」「酒精」「エチル・アルコール」「エタノール」「木酸化エタン」「メチルカビビノール」などと呼称が多数になっていたので、1931年(昭和6年)4月に資源局が標準用語を決めて発表した際、「アルコール」に表記・発音が統一された[6]。Hの発音のないラテン語系言語のフランス語では「アルコル (alcool [alkɔl])」、イタリア語では「アルコル (alcol [ˈalkol])」と呼ばれる。
利用法
科学や産業の領域で、アルコール類は試薬、化合物の合成原料、洗浄剤、工業用溶剤、有機溶媒、燃料、消毒液などとして広く使用されている。最先端技術の領域では、ガソリン、あるいは有害な排気ガスを発生させる炭化水素の代換品として、よりクリーンに燃焼するエタノールやメタノールを使用する技術が確立された。
またアルコール類の中でもエタノールは、生体にとって毒性が比較的低く、飲用まで可能なことと、水と比べて非極性物質を溶解させやすい性質を持っていることにより、医薬品、香水、バニラのような植物エッセンスの溶媒としてしばしば使用される。酒類の製造工程でもエタノールが醸造されている。
製造
多くのアルコールが、酵母を使って果実や穀物を発酵させて得ることができる。これらのうち、飲用も可能なエタノールだけが発酵法で商業的に生産され、燃料や飲料の用途向けに用いられている。また、燃料用であれば例えばエチレンを原料に工業的に生産する場合もある。
他のアルコールは、天然ガス、石油あるいは石炭の副産物から工業的に生産されている。直鎖で炭素が偶数個の高級アルコールは、油脂を加水分解して得られる脂肪酸を還元することで製造される。最も単純なアルコールであるメタノールは、触媒の存在下に一酸化炭素を水素で還元すると得られる。
CO + 2 H 2 + {\displaystyle {\ce {{CO}+ {2H2}+}}}
芳香族のうち、フェノールはベンゼン環にヒドロキシ基を持つものの、一般的なアルコールとは区別される。芳香族アルコールと言った場合は、ベンジルアルコールのようにベンゼン環に直接結合しないヒドロキシ基を持つアルコールを指す。
脂肪族アルコールとも言い、通常炭素数6以上[1]、あるいは8~22以上のものを指す。炭素数が多いほど親水性が弱まる[1]。主に天然の脂肪や油脂を加水分解して得られる。ここでの高級とは値段が高いとか、品質が良いという意味ではない。