西安金橋国際旅行社と陝西友聯国際旅行社のブログ (original) (raw)

陝西省宜川県と山西省吉県の境に位置する黄河壺口瀑布はこのほど、水量が大幅に増加し、数百メートル連なる壮大で美しい瀑布群になった。

新華社記者・鄒競一撮影

● 「餃子宴」に「麺料理」 食の楽しみもいっぱい

西安には「三絶」と呼ばれる地元料理があるそうで、唐風料理「倣唐宴」、中華バーガーとも言える「牛羊肉泡饃」、そしてここでご紹介する「餃子宴」です。創建1936年の老舗「徳発長」でいただく餃子宴は、まずはそれだけでも十分お腹いっぱいになる量の前菜に続いて、蒸籠で蒸した餃子が次から次へと13種類運ばれてきます。

もともと餃子は北京よりさらに北方で好まれる主食で、春節と元宵節と冬至に食べる縁起のよい食べ物でもあります。西安の餃子宴はこの伝統の食べ物に工夫を重ね、独自の食文化へと発展させています。

画像をご覧いただくと、それぞれが独特な色と形で、なかには何かを模している餃子があるのもおわかりいただけるでしょう。概ね、似せて作られたものと包まれている具材は同じですが、カエルの姿を模した餃子(画像2段目右からふたつめ)の中身はカエル肉ではありませんのでご安心を。

餃子宴を最後に締めるのは、かの西太后が好んだと伝えられる「真珠餃子」の「太後火鍋」です。清朝末期に起きた義和団の乱の際、西安まで逃げてきた西太后がなにかちょっとおいしいもの食べさせなさいよ、いい感じに工夫してある珍しいやつ、と逃げてきたわりにいつもの調子でおっしゃるムチャ振りに応じた料理人が考案したそうです。

当時は餃子の餡に使うのは豚、羊、牛の肉と野菜だけだった伝統を覆し、鶏肉の餡を鶏スープで煮るという新機軸を採用したこの餃子は、テーブルに用意された鍋に、小指の先くらいのとても小さな餃子(世界一小さいという触れ込み:画像最下段右からふたつめ)を投入してその場で煮込みます。

これを適当によそっていただくのですが(画像最下段右端)、スープが濁っているので、真珠餃子が均等に分けられているかどうかは気にせずにじゃんじゃんよそいます。

自分のお椀に偶然入った真珠餃子の数はいくつなのかを食べるときに数え、その数によって運勢を占うという、食べるだけではないエンターテインメント性が備わった楽しさも特徴です。数がいくつであっても基本的によい運勢ばかりで、ひとつも入っていないときでさえ前向きな結果を得られるのだとか。

西安の食事には、餃子宴での運試しをぜひご検討ください。

徳発長
所在地:西安市蓮湖区西大街 鐘楼店
時 間:10:00~22:00
小麦食文化の陝西省では麺料理も豊富です。なかでも見た目の独特さと、その怪しい漢字表記に特徴のあるビャンビャン麺は、ここ5年くらいの間に日本でもじわじわと認知度を高めてきている気配なので、ご存知の方もおいででしょう。

小麦粉に水と塩というシンプルな材料でできている幅広で長い手延麺。秦始皇陵博物院の商店街にこの看板を掲げた店が複数ありましたが入る機会を得られず、陝西省の伝統料理を出す店でお目にかかることができました。

この土地の不思議を説く「陝西八大怪」の一番目に挙げられているのがビャンビャン麺で、「(陝西省の)麺はベルトみたい」と紹介されています。

「ビャンビャン」という名前の由来は、筆者は延ばすときの音だと聞きましたが、ほかにもいくつか説があるようです。画数58の「ビャン」は画像のとおりの文字で、一度見たら決して忘れませんが、一度見ただけではおそらく書けないのが特徴です。この機会に覚えておくともしかしたら何かのときに役に立つかもしれません。

画像の鉢は14人分で、サイズ感は抱えている手や後ろに並ぶビールの大瓶からお察しください。

味付けは唐辛子、刻んだネギに花椒、酢と醤油と塩と熱した油。これらを麺とよく混ぜ合わせていただきます。色味からご想像いただけるとおりの辛旨。箸が進みます。取り分けやすいように切ってありましたが、それでも持ち上げるとこの長さ。満足感の高い一品でした。

長安灶 陝菜伝承店
所在地:西安市碑林区南門内永寧里2階
せっかく海外に来ているのですから、地元の人が日常使いしている場所にも行ってみたくなるのが旅人の人情というもの。買い物ならスーパーマーケットや市場などが楽しいですし、飲食ならやっぱり屋台街を見逃せません。

画像の屋台街は、西安城壁より南に広がる高新技術開発区の一角です。集合住宅の立ち並ぶなかに数百メートルに及ぶ露店が並んでいました。泊まった宿で尋ねて教えていただいた場所です。
アルコールの用意がない店では、近くの売っているところで買ってきた飲み物を持ち込んでも叱られません。支払いはほとんどの店でキャッシュレス決済になっています。

昔と違って中国の屋台営業許可は衛生管理基準が厳しくなっていて、みなさんが想像なさるよりずいぶん清潔です。この手の店を苦手にしてらっしゃらない方は、地元密着型グルメにも果敢に挑戦してみてください。

屋台街
所在地:宿泊している宿のレセプションなどに相談して探しましょう
時 間:夕刻からまあまあ遅い時間まで
料 金:10元前後~
※支払いは現金のほかAliPayやWeChatPayなど二次元コード決済可
ここで紹介した見どころ以外にも、華清宮や法門寺、太白山などなど足を運びたい見どころがまだまだたくさん揃っている西安をじっくり楽しみましょう。

※本記事は、2024年7月4日現在のものです。

● 古都・長安の雰囲気に どっぷりと浸かってみよう

中国初の唐代の庶民生活を体験できる没入施設と銘打って2022年にオープンした長安十二時辰。3フロア、2万4000平方メートルを、テレビドラマ『長安十二時辰(日本放映時タイトル:長安二十四時)』の美術スタッフがドラマセットそっくりに再現し、「すべての唐代の文化と生活を体験可能」というコンセプトを実現しています。

施設内の調度品、什器、スタッフの服装、提供される食事、商品やサービス、流れる音楽などなどの雰囲気が統一された空間を、唐代の長安にタイムスリップしたかのような気分で楽しめる大型エンターテインメント施設です。

結構広い敷地内では、そこかしこで「12」をテーマに掲げた唐代のパフォーマンスが行われているので、うまく時間をやりくりしてはしごしましょう。

ドラマに使われたセットが再現されているので、場内で借りられる衣装を着て、登場人物になりきった写真や映像を撮ることが可能。ただの観客としてではなく、パフォーマーのひとりになったような体験を楽しめます。

長安十二時辰
所在地:西安市曲江新区大唐不夜城東側曼蒂広場
時 間:10:00~22:00(チケット販売は20:30まで、入場は21:30まで)
料 金:大人128元、学生と子供68元
※最新情報の取得や予約はWeChatで「長安十二時辰」を検索
大雁塔の正面、三蔵法師の像の立つ大雁塔南広場(玄奘広場)から南の開元広場まで、およそ1km強にわたって商業施設が立ち並ぶ大通りは、大唐不夜城と呼ばれる歩行者天国です。

長安として栄えていた頃の活気ある様子を味わえるよう、色調を合わせたていねいな造りのテーマパークという雰囲気。左右には大劇場、音楽ホール、美術館、映画館といった文化的な施設をはじめ、ショッピングセンターやブランドショップなどの商業施設、そして中央寄りの左右にはこじゃれた造りの屋台が、そして中央には唐代と現代の大きなオブジェが飾られるのに加えて野外ステージなども設営されていて、ただ道を歩くだけでも飽きさせません。ステージではときおり催しが行われています。

ここを訪れた日暮れから夜にかけては美しくライトアップされて幻想的な風情を漂わせており、平日にもかかわらず、国内観光客のみならず地元の若い人たちも集まってきているのが印象的でした。連日30万人が訪れている、という話も。とんでもない数ですが、それもうなずける活況でした。

大唐不夜城
所在地:西安市雁塔区慈恩路
時 間:終日
料 金:無料(演し物によっては席料の設定あり)
※最新情報の取得はWeChatで「大唐不夜城」を検索
ここまでで紹介した見どころでは、中国伝統の衣装「漢服」を着ている人たちを多く見かけることでしょう。城壁にいたような“プロ”以外にも、老若男女が思いおもいの漢服を身にまとい、家族や友達同士で写真を撮り合ったり町を闊歩したりする様子を当たり前のように目にします。

彼らが着ている漢服を貸し出す店は各見どころのそこかしこで営業していて、多くの服を揃えているだけでなく、メイクをばっちり施してくれて、雰囲気を高めるウィッグやうちわなどの小道具も用意してくれています。さらに、唐代を彷彿とさせる古い壁や、ライトアップされた夜の大雁塔を背景にプロカメラマンが撮影までしてくれるコースも(大唐不夜城の画像の下中央が撮影の様子)。借りた衣装は、系列店なら都合のよいところで返却できるのも便利です。

女性向けの衣装が豊富なのは当然ですが、武官や文官など男性のなりきり衣装も潤沢。子供用もあるので、個人でもカップルでもご家族でも、かつての長安をそぞろ歩いているかのような気分を味わえます。

お値段も、メイクと衣装だけなら100元前後、写真撮影ありで200~300元程度(店による)。今ずいぶん弱くなっている日本円換算で2000円から6000円くらいなので、日本の観光地の浴衣や着物を貸し出すサービスと比べてもずいぶんお得な印象です。

せっかくの機会ですから、唐代にタイムスリップしているような体験を試みてはいかがでしょう。店先に掲げられた二次元コードをWeChatで読むと詳しいサービス内容がわかるようになっています。

漢服公社
所在地:大雁塔敷地内
時 間:見どころの開業時間に準じる
※最新情報の取得はWeChatで「漢服公社」を検索
※各見どころの敷地内や出入口そばに同様のサービスあり

● 日本にゆかりのある見どころも

今の香川県にあたる四国讃岐国で生まれた空海弘法大師)は、31歳のとき留学生として唐を目指しました。紆余曲折の末、なんとかたどり着いた唐の都で、2年にわたり仏教を学んだのがこの青龍寺です。香川県善通寺は、青龍寺を模して造られていると言われているそうです。

空海の縁で、1982年には空海記念碑が日本の真言宗各派から贈られました。記念碑の周囲四隅に置かれた丸いオブジェは、四国4県を表しているとか(どれが香川でどれが愛媛、高知、徳島なのかはわかりませんでした)。

1984年には恵果・空海記念堂が建てられ、さらには香川県善通寺法主により、四国八十八ヵ所霊場の零番札所とされています。零番の判子を御朱印帳に押してもらえますので、八十八ヵ所を既に巡礼された方も、これから巡ろうというお遍路さんも、一度足を延ばしてみてはいかがでしょう。

青龍寺
所在地:西安市雁塔区鉄炉廟村
時 間:8:30~18:00(入場は17:00まで)
※桜花園は8:30~17:30(入場は17:00まで)、博物館は9:00~17:00(入場は16:30まで)
料 金:無料
興慶宮公園は、唐代の宮殿跡を転用して造られたという、西安でいちばん広い公園です。敷地の一角に、遣唐使として有名な阿倍仲麻呂を記念する白い碑が立っています。こちらは「祈念碑」と中国語で書かれていますね。

訪れた4月上旬は、遊歩道の周囲に植えられた桜がきれいに咲いていました。「東京桜花」と名づけられた木もありましたが、ほかの木よりも開花が早いらしく、葉桜になったところでした。

陝西省で盛んに栽培されているというチューリップがちょうど咲き誇っていて、この季節にはチューリップ目当ての観光客も多く訪れるそうです。

興慶宮公園
所在地:西安市咸寧西路55号
時 間:6:00~22:00
料 金:無料
大興善寺は、西晋の時代に建立され、1700年以上の歴史を誇る密教寺院。随や唐の時代にこの寺がインドの高僧を迎えて経典の翻訳したり仏法を広めたりする場となったため、中国の密教発祥地とされています。西安に現存する最古の寺のひとつでもあります。

訪れた人々が熱心にお参りしている姿が印象に残るお寺で、特に若い参拝客が多く見受けられました。線香を焚いてお祈りしたあと、本殿の前で膝をついて投地しながら拝む様子を目の当たりにすると、物見遊山でちょっと立ち寄りましたというのが場違いに思えるくらいです。

密教寺院らしくマニ車も備えられていますが、天王殿の周りはすき間がなくて歩けないため、代わりに巨大なマニ車が向かって右側に置かれています。

それほど広くはない敷地内に多くの仏様が祀られており、その一つひとつを解説した赤色のカードが置かれているので、興味のある方は1枚ずつもらっておくとよいでしょう。

なお、先に紹介した青龍寺で2年学んだという空海ですが、唐に着いて最初に密教を学んだのはここ、大興善寺とのこと。日本人の寄進した空海像も祀られています。

大興善寺
所在地:西安市雁塔区興善寺西街55号
時 間:8:00~17:00
料 金:無料 ※最新情報の取得はWeChatで「大興善寺」を検索
小雁塔と並び唐の時代から今に受け継がれる建物のひとつで、世界文化遺産にも登録されているのが大雁塔です。大慈恩寺の境内にそびえ立つこの塔は西安のランドマークであり、古都・長安のシンボルでもあります。

西遊記』でおなじみの三蔵法師が、インドから持ち帰った経典や仏像を納めるために建てられたとされています。経典や仏像は、唐代末期の戦乱で散逸してしまったそうです。

ちなみに三蔵法師の遺骨は現在、中国とインド、台湾、そして日本の全13ヵ所で保存されているとのこと。

もともとは亡くなられたときにここ大慈恩寺で法要が行われ、長安郊外に埋葬された5年後に遺骨を納めるための舎利塔が別の場所に建てられたのですが、これもまた戦乱のどさくさで持ち去られ、長らくの間行方知れずとなったり見つかったりまた失われたりを繰り返した後、日中戦争の最中に旧日本軍が南京で発見、当時の中国政府と折衝の末に一部を南京で供養し、一部を北平へ移し、残りを日本に持ち帰って埼玉県の慈恩寺に納めました。戦後、慈恩寺にあった一部を台湾に譲り、さらに一部を奈良県薬師寺に分骨して今にいたります。

話を戻して、大雁塔まで行ったらぜひとも上まで登ってみましょう。木製の狭くて急な階段をがんばって登ると、各層から東西南北の景色を見渡すことができます。唐の時代にはどんな景色が見えていたのか、想像をふくらませてみるのも楽しいことでしょう。

大雁塔
所在地:西安市雁塔区大慈恩寺内
時 間:8:30~18:00(入場は17:00まで)
料 金:大慈恩寺40元/大雁塔に登るのはプラス30元(塔の下で別途支払う)
※最新情報の取得や予約はWeChatで「大雁塔」を検索

西安を訪れたらはずせない!兵馬俑

案内してくださったガイドさんがおっしゃるには、兵馬俑が現代に姿を現した経緯は次のとおりです。

地下水の豊富な西安で、小麦農家の楊さんらが作物のための井戸を掘ろうと計画、風水師から聞いた場所をわずか3m掘ったところで遺跡を発見しました。いったん埋め戻し、模様の施された欠片を村長に届けると、それを携えた村長は自転車で50km激走して政府に報告。届けられた欠片を見て驚いた学者がすぐに村にやってきて、5m掘っただけで兵馬俑を見つけたのが第一号杭の発端となりました。その後も周囲からどんどん発掘され、現在は第二号杭、第三号杭まで掘り進められています。

こうして偶然に発見された兵馬俑は、「世界7不思議」に次ぐ8番目の不思議、と言われているそうです。

兵馬俑を擁する秦始皇陵博物院には毎日10万人ほどが鑑賞に訪れるとのことで、以前筆者が訪れたときには正面にバスをつけてすっと入れていたのが、今ではちょっと離れた駐車場から商店街を歩き、正面の左横から入るという動線となっていました。

観光客が増えているというのはまったくそのとおりで、前回2019年3月に訪れたときもそれなりに混んでいると思ったのですが、まるで比較にならないくらいの混みっぷりで、第一杭の正面も左右の通路もぎゅうぎゅう詰めの大混雑でした。

今回は第一杭から、第三杭、第二杭の順で鑑賞しました。ガイドさん曰く、混んでいるときはこの順のほうが回りやすいとのこと。

大人気の兵馬俑は、日本の博物館にもしばしば巡回してきているので、ご覧になった方も多くいらっしゃることでしょう。先般、東京上野の博物館に来ていたときに筆者も見に行きました。2019年に現地で見たのと同じ遺物や兵馬俑が飾られていて、懐かしく鑑賞しました。

しかし、金属製の遺物は確かに現地で見たそのものなのですが、兵馬俑はどこか違う感じがするのです。たとえば「跪射俑(跪いて弓を射る前の構えをしている)」をよくよく見てみると、現地では足の裏に施されていたモールド(画像左)が、上野に来ていたものにはありません。鎧にうっすらと残っている顔料もありませんでした。どうやら「よく似た別の人」が世界の博物館を巡業している様子です。

画像は第三号杭の建物内に飾られている兵馬俑です。いずれも細工が精緻で、ほんのりと色も残っていて、いわゆるできのよい一線級の兵馬俑を鑑賞したければここに来なければなりません。
高級軍吏俑の目をアップで見ると、描かれていた瞳がうっすらと残っているのがわかります。

帰りは、来たときに通った商店街を抜けて駐車場へ戻ります。途中に軒を連ねる土産屋では、兵馬俑の大小フィギュアが揃っています。足の裏も微妙ながら再現されているものもありますので、気に入った品が見つかればぜひ。ただし、素材が土のものは衝撃に弱いので、プチプチなどの緩衝材を持参することをおすすめします(紙で包んでくれますが、それだけでは日本までどころか泊まっている西安市内の宿までももたないことがあります)。

秦始皇陵博物院
所在地:西安市臨潼区秦陵北路
時 間:8:30~17:30(閑散期~16:30)
料 金:120元
URL:https://www.bmy.com.cn/

小雁塔とセットで西安博物院を鑑賞

永寧門から南へおよそ1.5km、薦福寺に隣接する敷地に西安博物院があります。

まずは、東西に走る薦福寺呂にある寺の山門から入場しましょう。こちら、うれしい入場無料ですが、山門左の窓口で手続きが必要です。パスポートを忘れずに!

薦福寺は、唐の時代に建立されたときには大献福寺といい、追って武則天則天武后)が大薦福寺と改称したとのこと。山門から入って左に出ると西安博物院ですが、せっかくですので寺の敷地の奥へ足を運んで、西暦707~710年頃に建てられたと記録される小雁塔を見学していきましょう。

唐代の密檐式磚塔(各階の軒が狭く造られたレンガ製の塔)の代表的なもので、オリジナルは15層でしたが、明代の地震で上の2層が失われました。今建っているのは1965年に改修されたもので、塔頂部は失われたままの13層、高さは約43mです。

小雁塔から戻ってくると、右手側が博物院エリアになります。周囲を公園に囲まれ、西安市未来10大ランドマークにも選定されているモダンな建物は、中国工程院の張錦秋氏による設計。張氏はここのほかに陝西歴史博物館や華清池御湯博物館なども手がけているそうです。

地下1階、地上2階の館内には文化財が13万点収蔵され、そのなかに国家三級以上の貴重な文化財が1万4000点以上含まれています。ロビーの床には、この地に都が勃興してから今までの間、どの場所にどの時代の都が築かれていたかひと目でわかる地図が広がっています。

常設展の「古都西安」は、「千年古都」「帝都万象」「府城華章」の三部で構成され、1000点を超える文物や遺物で、古都の歴史を紹介しています。

唐代の長安を精密なジオラマ模型で再現したコーナーは、城壁へ行く前に見ても行ったあとに見ても、それぞれ気づかされることがあるでしょう。3000年にわたる都市の歴史を軸に構成された展示は、陝西省博物館に比べるとこぢんまりしていると評されることもありますが、内容が濃いのに比較的ゆったりと鑑賞できるという点で穴場とも言えます。

展示物のなかで最も有名な唐代の「三彩騰空馬」は、ぜひ現地を訪れてご自身でご覧ください!

時代ごとの都を図面で紹介するコーナーで、興味深いことがありました。ガイドさんが長安の図を指して、都の東西にそれぞれ大きな市場があることを示したうえで、こうおっしゃったのです。

「中国語の『買い物をする』という言い方は、この東や西の市場で買い物をしたことから来ています」

中国語で「買い物をする」は「买东西」と言います。「买」が動詞で「買う」、「东(東)西」は名詞で「物」を意味しています。発音は「マイトンシ(mai3 dong1 xi)」。「東市と西市で物を買う」がいつの頃からか「東西を買う」→「物を買う」に転じたという説で、「東西」が「物」の語源となった経緯を中国人のなかにも初めて知った方がいらっしゃり、長安の図の前にして感嘆と納得の声が上がっていました。

博物館はどこも広くて展示物が多いので、見たいものを見逃さないよう予習しておいたり、専門のガイドさんや展示物に詳しい人と一緒に行ったりするのがおすすめです。

西安博物院/小雁塔
所在地:西安市友誼西路72号
入館料:無料
開館時間:3月15日~10月31日=8:30~18:00(入館は17:00まで) 11月1日~3月14日=9:00~17:30(入館は16:30まで)
URL:https://www.xabwy.com/

西安の城壁に登ろう

さあ、西安市内の中心部を囲む城壁の南門へとやってきました。

西安は、かつて「長安」と呼ばれた古都。古くは紀元前の周の時代から都の萌芽が見られる土地に、前漢の時代に長安として都がおかれ、日本史でも馴染み深い隋や唐の時代を経て、明の時代に「西安」と名を変えて今にいたります。

奈良の平城京や京都の平安京が都を造るにあたって大きな影響を受けたこの街を囲む城壁は、今なお当時の姿を残し、しかも東西南北の全周およそ14kmをきれいに囲んだまま保持されている貴重な建造物です。唐の時代の構造物を基礎にして、明の時代に改築された姿が今に残るとされています。西安を訪れたら、何をさておいてもまず登りたい場所と申せましょう。

城壁には東に長楽門、西に安定門、北に安遠門、南に永寧門という大きな門があり、さらに登城できるいくつかの小さな門があります。正面は南門である永寧門。これは仏教の伝来に関連があるとされ、南に位置するインドから伝わってきたために、南が「正面玄関」になるという考えだとのこと。

永寧門では、向かって左手に切符売り場と登城口があります。ところが、登城口を通る人の数のわりには、切符売り場は混んでいませんでした。

国内の観光客の方々は、WeChatを用いて事前に(その場でも)切符を買うことができます。ここに来る前にすっかり手続きを済ませていて、手元の携帯端末で切符購入済みの二次元コードを表示すると、登城口のスキャンにかざしてどんどん入っていきます。

この方法を試してみたい方のために、購入用の二次元コードと、詳しい手順を示したパネルが切符売り場の横にありました。同様の仕組みが市内各所の観光地に導入されています。個人で訪れた方はぜひ挑戦してみましょう。

ここに限らず、いずれの観光地を訪れるにあたっても重要なことをひとつだけ。それはパスポートの携帯です。

中国の観光地では、国内外からの観光客すべてに対して、入場時の身分証明書提示を課すところがほとんどです。かつての海外旅行では「パスポートはホテルの金庫にしまっておいて、コピーを持ち歩く」という手法が有効だったこともありますが、今の中国では原本が必要です。出かけるときはお忘れなく!

濠に濠に架かる小さな橋を渡って永寧門をくぐると、最初のフォトスポットが。足元に「ここから撮るといいよ」という足形の印が示してありますので、早速試してみましょう。カメラの画角によりますが、おおむね画像右下のような写真になります。

この建物は永寧門瓮城で、公式ウェブサイトには内側から撮った写真は載っていますが、外側になるこのアングルからの写真は載っていません。ご覧のとおり、入場してテンションの上がっているときには張り切って撮るものの、落ち着いてあとから眺めるとこれなんだったっけと思わせる、ふわっとしたフォトスポットです。この先の練習のつもりで押さえておくといいでしょう。

寧門瓮城の内側に回り、内庭を通って石段を登ると、いよいよ高さ12mの眺望が広がる城壁の上へ。城壁は底辺が18m、上辺が15mで、高さより幅のほうが広く造られています。登って歩いているときにはあまり感じませんでしたが、あとから写真(画像左上)を見ると、内側に向かって微妙に傾斜しているようです。

登ってすぐ左にある建物の下には、関中書院という明代の1609年に建てられた建物の模型と説明文があります。突然「プロ」によるコスプレの武者たちが通り過ぎることもあり(画像右)、古の雰囲気を盛り上げてくれます。

一周14kmを徒歩で回ろうとすると、気力体力の充実と潤沢な時間が必要です。そこで便利なのがレンタサイクル。城壁の上だけを走ることのできるサービスがあると聞いて「自行車服務処 BICYCLE SERVICE」を探したのですが、残念ながら永寧門の上で見つけることはできませんでした。西安城墻の公式ウェブサイト「観光サービス」の項には案内がありますが、この日は自転車で走っている観光客をひとりも見かけなかったこともあり、もしかしたら一時的に営業していなかったのかもしれません。次回に期待です。

城壁の内側には古い建物が残り(画像左下)、一部はバーやカフェ、民宿などに転用されています。日程に余裕があればこのあたりに投宿して、レンタサイクルで城壁一周や、夜の城壁なども堪能したいところです。

西安城墻
入場料:大人54元 ※6歳以下または身長120cm以下の児童、65歳以上は無料。子供と大学生は半額
開場時間:8:00~20:00(永寧門、建国門、中山門は~22:00)
URL:https://www.xacitywall.com/ ※日本語ページあり