yurikohasmell’s blog (original) (raw)
本日はTOHOシネマ付中にて日本映画「でっちあげ」鑑賞。綾野剛が小学校の教諭役で、2003年に福岡で実際にあった教師による児童への虐待事件の真相を描く。この映画を見て、日本のマスコミは未だに変わっていないことをつくづく実感。
小学4年生のクラス担任になった主人公の教諭は、児童の母親から電話連絡を受け、家庭訪問に児童宅に夜9時に訪問。児童宅での最初の場面は、母親の証言通りの、虐待教諭的な振る舞いが表現される。しかし、これは全て母親の嘘の証言からの虚構場面。実際は後に出てくる場面で、その母親から長時間の嘘の話を聞かされ、母親の祖父がアメリカ人で、な彼女自身は通訳や翻訳の仕事をしているとの話を延々と聞かされる。数週間後に突然夫婦で学校に抗議に来てから大騒動となる。身に覚えのない虐待・いじめの話がなされ、ことを大きくしたくない校長・教頭はしきりに謝罪せよと迫り、やむなく謝罪。この事件が新聞や週刊誌に載って大騒ぎとなり、教諭は教育委員会から6カ月の停職処分を受ける羽目になる。朝日新聞が最初に報じ、新聞各社も後追いし、ついには週刊文春があることないこと、真相を調査もしないででかでかと報じて、それに乗っかって550人もの弁護団が結成され、教諭が糾弾されることに。最初は弁護士も見つからなかったが、ようやく見つかり喘鳴否定の裁判闘争が始まる。
これは最近あった兵庫県知事によるパワハラ等の告発を受けて新聞・テレビ・雑誌が大騒ぎした事件と相似。2003年当時とは比べ物にならないほど発達したSNSをも加わって、ある事ないこと何でもありで報道されたことを思うと、20年前と何ら変わっていないことがわかる。
裁判では一部虐待が認められてしまうが、10年後にようやく停職処分の取り消しがなされ、虐待がなかったことになるのであるが、この教諭にとっては地獄のような日々だったはず。モンスターペアレントという言葉が流行りだした時期だったが、被害者側の言い分を一方的に報道したメディアの罪も思いが、550人もの弁護士が相乗りするという法曹の在り方も問題視すべき事件だった。
綾野剛の熱演も光るが、それ以上に柴咲コウの怖い顔の演技もすごみがありました。
本作は、この事件の真相を追った福田ますみ氏の「でっちあげ 福岡『殺人教師』事件の真相」というルポルタージュを映画化したもので、こうしたジャーナリストがいたことは救いでもあった。
今日はこの辺で。
長い4泊5日の旅で読んだのが、大門剛明氏の「死刑評決」
本作は冤罪事件を扱っているわけではないが、タイトルの通り「死刑の評決」が果たして正しかったのかどうかを問う作品。
19歳の少年が起こしたコンサート会場爆破事件。一人の子供の命が奪われ、多数の重軽傷者を出した重大事件で、栽培員裁判の出した結論は死刑。熱血漢の女性弁護士が、犯人の少年を兄と慕う同じ施設で育った高校生から助けてほしいと頼まれ、一度面会に行き、再審を考えているところで、死刑が執行されてしまう。裁判員裁判の評決は5:4の僅差で決まった経緯があり、かつ少年が控訴しなかったことから死刑が確定した事件。実は少年が犯行時に取っていた行動がビデオにとられており、亡くなった子供を助けようとしていたことが分かったのだが、そのビデオは当時公開されず、少年も証言しなかったことから死刑になったことがわかる。そしてその時裁判長だったのが女性判事。女性判事と犯人の少年には、実は大きな関係があったことが最後の最後に明かされる。それを突き止めたのが若い熱血漢の女性弁護士。女性判事はある事情からビデオを撮っていた男から脅迫され、その行いに命を懸けて立ち向かったこともわかるのだった。
今日はこの辺で。
6月29日(日)~7月3日(木)の4泊5日の東北・信州旅行へ。東京駅7:56発はやぶさにて一ノ関経由猊鼻渓鮒下りへ。東北も蒸し暑い気候のなか、穏やかな川の流れを1.5時間、船頭さんの案内で楽しいひと時。再び一ノ関に戻り新花巻へ。駅前からのシャトルバスで鉛温泉別邸十三月着。随分前になりますが、藤三旅館に宿泊したことがありますが、それ以来の鉛温泉。ハイクラスの宿だけあって、部屋は申し分なくゆったりスペース。半露天の風呂付で食事もまずまずでした。
翌日は同じくシャトルバスに乗って新花巻着。新幹線で盛岡乗換で秋田へ。3年前に来たことがある千秋公園脇にあるケーキ屋さんで昼食をとった後、久保田城跡の千秋公園を望む秋田キャッスルホテルにチェックイン。その後市内観光としてホテル隣にある県立美術館で藤田嗣治の巨大絵巻を鑑賞。千秋公園を一回りして夕食は別のホテルの中華レストランで上品な中華料理・飲茶を堪能。
翌日は秋田から在来線特急いなほ号で鶴岡へ。今回の旅行の大きな目的である山岳信仰の聖地、出羽三山の一つ、羽黒山へバスで向かう。羽黒山の頂上まで2446段の階段を上るか迷いましたが、今回はバスで頂上まで行き三山の神社に参拝し、下りだけ階段を降りることに。この階段は蹴上は低いのですが、急斜面の階段が多く、下りも苦労しながら下山。途中の国宝・五重塔は一見の価値あり建造物。昔の人の山岳信仰への思いを知ることができました。この日のお宿は東京第一ホテル鶴岡というシティホテル。夕食はホテルのすぐ近くにあるフランス料理屋さん。これがまた絶品の料理ぞろいでその美味しさに魅了されました。
4日目は新潟の妙高市に住む私の姉を訪問して、その後は妻は帰京。私はもう一泊を長野市のホテル信濃路で。地味なホテルですがシングルとはいえ広くゆったりとしており、夕食付付きの格安料金。最後とあってビールと日本酒を飲みいい気分。
最終日は松本経由駒ヶ根市でピアノカフェをやっている旧知の方を訪ね。長い旅を松本からあずさ号に乗って終了しました。
今日はこの辺で。
下高井戸シネマにてドイツ・フランス・イラン合作の「聖なるイチジクの種」鑑賞。
イスラエルがイランに2週間前突然空爆を行い、2週間のイラン・イスラエル戦争が勃発。米国トランプ大統領がイラン核施設の破壊を目的とした空爆を行い、トランプに言わせると、広島・長崎と同じ効果で戦争が停戦したと、自分の手柄を強調。そのタイミングで開かれたNATO首脳会議では、トランプに気を使い、あっさりNATO加盟国の軍事費を10年後を目途にGTPの5%にするという決定がなされた。トランプを持ち上げるための首脳会議となってしまった。結局平和は力で引き寄せ、維持するものであることを世界に知らしめてしまった。イランは圧倒的なアメリカ・イスラエルの軍事力の前に実質的にはひれ伏した格好。今回の戦争で語られたのが、イランの体制転換。イスラエルは本気でイスラム原理主義を貫くイランの体制を破壊したかったようであるが、アメリカがそれを踏みとどめさせたのかはわかりませんが、イランにとっては体制維持のための停戦の選択だったとの意見が圧倒的。
そのイランの体制を真っ向から否定的に描いたのが本作である。
テヘランの裁判所の予審判事となったイマンは妻と二人の娘の4人暮らし。昇進して反政府デモ参加者などを裁くことになったイマンは、護身用に拳銃が支給されるが、その拳銃が家庭内で紛失。これが知られたら、自分の将来はなく、投獄されるかもしれないというピンチに陥る。盗んだのは妻と二人の娘に絞られ、イマンはあらゆる手を使って白状させようとするが、3人は否定。妻と娘二人は、現体制に縛られる夫であり父親を嫌い、父親こそが体制そのものであり、我慢ならない存在に化していく。
この家族の分断から見れば、夫は当然体制維持、妻と娘は体制転換を希望しているのは明らか。その意味では、イスラエル・アメリカからの攻撃が国の団結を強めた面はあるものの、これを機に体制転換を期待した国民も少なからずいたのではないかと推測。映画内では実際の反体制デモの様子も映し出され、それに容赦なく立ち向かう警察組織も映し出され、生々しさがありました。
今日はこの辺で。
窪美澄さんが、家族や夫婦生活の中で、それぞれの主人公が抱える心の悩みを描く短編「水やりはいつも深夜だけど」読了。
- ちらめくポーチュラカ:私は20代で結婚して寿退社。今はいいマンションに夫と娘の3人暮らしで、何不自由のない生活。私には世間的に見れば羨ましい悩みがあった。容姿に恵まれたがために、学校で女子生徒からいじめの対象になったこと。今もママ友たちの中で浮いた存在で悩む。
- サボテンの咆哮:俺はキャリアウーマンだった早紀と結婚したが、妻は産後うつになり退職。妻からは何もしてくれないと思われているが、自分ではできるだけ育児や家事を手伝っていると思っている。妻はしばらく実家で暮らすことになるが、関係は修復できるのか。
- ゲンノショウコウ:私は夫と幼稚園児の風化との3人暮らし。風化には塾や習い事をさせているが、他の子に比べて劣っているのではないかと思ってしまう。実は私には発達障害の妹がいて、親や私がとても苦労したりした経験があり、それがトラウマになっていたのだった。
- 砂のないテラリウム:日曜日の夜は、僕が料理をする。いつの間にか決まっていたルールだ。他にも、いつの間にか決まっていたルールがたくさんある。そして、いつの間にか、妻との会話が減った。ちょっとしたスキンシップも減った。妻の視線は、常に子どもに向けられている。僕の方に向けられる視線が、懐かしかった。それを求めていた。僕はそれを、家庭の外に求めてしまった。
- かそけきサンカヨウ:エミおばさんが色んなことを教えてくれたお陰で、父との二人暮らしは不自由がなかった。料理も掃除も洗濯も、コーヒーを淹れるのだって、なんでも自分で出来た。仕事で忙しい父はあまり家にいなかったから、大体一人だった。それが嫌だと思ったことはない。父が再婚して、「母親」と「妹」が出来てから、色んなことが、大分変わった。
いずれの作品も、どの家庭や夫婦にも少しはその要素がある家族感の葛藤を描き、この作家らしい味がありました。
今日はこの辺で。
喜多川さんの人生訓の代表作である手紙屋シリーズ。前作は就職に悩む学生への人生訓でしたが、本作「手紙屋 蛍雪編」は、進学か就職課を悩む女子高校生が主人公が、手紙屋さんとの10通の手紙のやり取りで、自分の考えをすっかり正しい方向にセットして「勉強」をして、成績を伸ばし、希望の大学に入学が決まる話。
内田和花さんは高校2年生で、最近勉強に身が入らない生徒。父親にバイトをしたいと言うと、許してもらいたければ、なぜ父親がやってはいけないと言うかを考えろなさいと言われる。それがわからない和花さんは、兄の喜太朗さんに相談し、手紙屋さんを紹介される。早速手紙屋さんとの手紙のやり取りが始まるという、同じパターン。手紙で手紙屋さんは「勉強」は先人が考え、想像した知恵や知識を学び、それに基づいて自分で想像してかつ創造して、次の世代に引き継ぐためにするものとまず言われ、10通の手紙の中でいくつかの人生訓を教えてもらい、和花さんはそれを十分に理解して、最終的には「勉強は自分の為だけではなくて、世のため人のためにするものだということを悟り、受験までの1年半を充実した機関として勉強に励み、大学に入学して自分の夢を実現沿て行く術を身に着けるのでした。
今日Hこの辺で。
塩出しの作品は、代表作の「罪の声」以来で本作「歪んだ波紋」が二冊目。新聞社の記者又は記者OBを主人公とした連作短編で、記者の正義感や挫折、過去への悔悟などが描かれる力作。
- 黒い依頼:地方紙、近畿日報の記者、沢村は宿直時にひき逃げ事件の一報を受け現場へ。そのまま目撃情報を集め、ワンボックスカーが逃げたという情報を得る。被害者宅に黒のワンボックスカーがあったことから、妻が犯人ではないかと推理するが確証はない。桐野という上司は妻に当ってみろと言われ率直に話を聞き、ひき逃げ犯は黒のワンボックスカーを言う記事を書く。しかし、実際はシルバーの車だ犯人であり、とんでもない誤報を出会った。桐野と中島の二人は調査報道を受け持ち、過去にもきわどい機序を書いていたことがわかり、近畿日報は大きな非難を受けることになる。
- 共犯者:大手新聞社、大日新聞のOBである相賀は後輩の能見からOBの垣田が亡くなったという知らせを受ける。垣田の家を訪問すると、妻が出てきて、今は離婚し、遺品の整理を頼まれる。相賀は垣田の住まいに行き、かつて一緒にやったサラ金問題の資料を見ているうちに、赤西峰子という名前を発見。つい最近火事で亡くなった彼女は、かつて兄が闇金に勤務していて、その闇金がペットショップ放火事件に関係していたという記事を書き、その記事で赤西一家の人生を狂わせたことを知る。その記事も誤報であり、死んだ垣田は償いのつもりで自分が高利から多額の金を借りて赤西峰子に渡していたことを知るのだった。その誤報記事には、相賀も少なからず関係しており、彼は赤西峰子の過去を追うことになる。
- ゼロの影:野村美沙はかつては大日新聞社会部の記者だったが、自分がとってきた特ダネを、男性優位な社内体制から配置換えに会い、結局会社を辞め、今は韓国語の講師を務めている。夫は職場結婚していた。その語学学校で盗撮事件の犯人が現行犯で捕まるが、逮捕されたという記事はなく、その犯人が美沙の娘の通う保育園に送迎に来たところを目撃する。美沙は大日のかつての同僚に調べてもらうと、その犯人は有名な弁護士の息子だった。正義感の強く、娘が心配な美沙はその弁護士に会いに行き、警察と新聞社の懇親会で飲酒運転があり、それを知った弁護士が取引で息子の罪が帳消しになっていたことがわかるが、その車には夫の信一が同乗していたことがわかり驚愕する。半人の子供は転園していた。
- Dの微笑:吾妻祐樹は近畿日報の編集主任。東京支社長をやっていた安田から、自分の親戚でもある安天成というバブル期に詐欺事件を起こした韓国人実業家を探しほしいと頼まれ、調べる中で、テレビ局がやらせ番組を作っていたことを突き止める。その主役が香山という男で、安田と親しくしていたことを知り、不信感を募らせる。
- 歪んだ波紋:本作は全てこの最終章に帰結する内容で、現代のNETメディアの台頭、従来のマスメディアの衰退を象徴する話となっている。
三反園邦男は元大日新聞記者でm今はファクトジャーナルというNETメディアで新聞・テレビの誤報・フェイクを追いかけている。そんな彼がかつて誤報を作り出し、近畿日報を聞きに導いた桐野がメディアに戻って来て、安天成をインタビューする計画を安田から聞き、ファクトジャーナルでそれを掲載しないかと誘われ、有頂天になりそれを掲載。ところが、第2章で出てきた相賀が三反園を訪れ、自分が騙されたことを知る。安田や桐野たちは、マスメディアの評判を貶める策謀集団ということを聞き驚愕する。