ずいき日和 (original) (raw)
今年度、西之京瑞饋神輿インターンシップ授業(人文学特別研修)を担当しました立命館大学教員の田中聡です。9月1日の千日紅摘み、2日から20日にかけての夜なべ、ずいき刈り取りやかぼす刳り抜き、神輿の組み立てを経て、10月4日の巡行まで、私とともに授業を担当した教員の渡勇輝、受講生3名(徳田美優・北村奈央実・内堀悠)の5名で参加させて頂きました。
約1か月間の長きにわたり受講生と教員を受け入れて下さった、西之京瑞饋神輿保存会の皆様、本当にお世話になりました。ご多忙の中、皆様には多様な作業の折、一つ一つ丁寧にご教示頂きました。これまで皆様が毎年受け継いでこられた瑞饋神輿の伝統に触れながら、その歴史や神輿の構造・装飾、神輿づくりの技法、保存会の会員の皆様の地域との関わり方等について実地で学び、多くの知見を得ることが出来ました。作業のなかで交される何気ない会話のなかに、あるいは畑での作業の際に、日頃の緊密な住民間の関係を感じとることが出来、また新たな会員として若い世代の方々が加わることで、培われてきた伝統が継承されていくことが実感できました。また、10月4日の巡行に際し、多くの方々が路上に繰り出して歓声を上げて手を振り、合掌して見送られていた様子を神輿の最後尾から目の当たりにし、当地域の人びとにとってのこの祭りの重要な意味を、改めて考えさせられた次第です。
ただ反省点として、今年度は授業の運営体制を変更せざるを得なかったこともあり、充分な事前準備が出来ぬまま実習に臨んだため、受講生が会員の皆様にしっかり取材することが出来ず、受講態度も相俟って荒田会長はじめ皆様に大変ご迷惑をおかけする形となってしまいました。申し訳ありませんでした。貴重な機会を頂いている担当教員として、責任を改めて痛感しております。今後、他に例を見ないこのインターンシップについて、授業のあり方を含めてしっかり立て直す所存です。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
末筆となりましたが、授業への多大なるお力添えに厚く御礼申し上げますとともに、西之京瑞饋神輿保存会ならびに関係者の皆様の益々のご健勝を祈念し、ご挨拶に代えさせて頂きます。有り難うございました。
お久しぶりです。北村です。
10月4日にずいき神輿の巡行が行われたので、その様子をお伝えしたいと思います。
巡行当日の朝は天気が悪く、小雨が降っていました。
鳴鐶
こちらは鳴鐶(なりかん)といい、おみこしを上下に揺らすことによって音を出します。
轅
轅(ながえ)は、おみこしに取り付けられます。
台車にのせて御旅所まで運ぶ様子
集会所から台車に乗せて御旅所まで運んでいきます。
御旅所のずいき神輿
御旅所にはすでにずいき神輿がスタンバイしており、ずいき神輿を見に来られた一般の方も多くいらっしゃいました。
10月1日の昼から神輿は公開されており、毎日会員の方々が交代でずいき神輿の番にあたっておられました。
細工
細工づくりを見学させていただいたときや、写真で見せていただいた桂馬や欄間が完成した状態で神輿に飾られており、とてもきれいでした。
縄を叩いて固定している様子
神輿に轅を固定するときに、木槌で叩いて固定すると強く固定できるそうです。
台車に乗せられた神輿
台車に乗せるまでは人力で神輿を運びます。また、午後からは各大学で募集されていた大学生のアルバイトも交えて巡行していきます。
神輿に雨除けカバーをかける様子
午後からの雨が心配されたため、雨除けカバーをかけることになりました。
巡行開始
昼休憩が終わり、再び御旅所に戻ってくるとすでに多くの人でごった返していました。
そして、12:30に御旅所から出発しました。
円町駅周辺
「ほいっとー、ほいっとー」という掛け声とともに巡行していきます。
私は神輿の後をついていくという形で参加しました。
北野商店街
鳴鐶は、お神酒を奉納した家やお店の前で鳴らすのですが、北野商店街でも多くのお店の前で鳴鐶を鳴らしていました。
神輿は勾配がきついところに来ると、会長の掛け声に合わせて会員の方が力を振り絞って引っ張っていらっしゃいました。
上七軒に入ると、雨がほとんど降っていなかったため、雨除けカバーを取り外しました。上七軒で休憩をとったのですが、その際に地元の方々がお茶を用意してくださっていて、地域の方に愛されているお神輿なのだなと感じました。
上七軒は、たくさんの人であふれており、まさに巡行のクライマックスのようでした。
舞妓さんが、店の軒先まで出てきていて、神輿を少しとめて撮影タイムをしていました。
上七軒を通り過ぎた後は、北野天満宮の東門前で神事があり、17時頃に御旅所に戻ってきました。
御旅所では、最後はやはり最初と同じように人力でお神輿を持ち上げていました。
、少し真剣な雰囲気で神輿殿の中に入れた後は、瓔珞や轅を取り外して、集会所に戻りました。
取り外された瓔珞
瓔珞や轅を取り外したずいき神輿
約一か月間、保存会の方々と作業を行ったのですが、右も左もわからないような受講生を温かく迎え入れてくださいました。夜なべ作業では、貴重な体験をたくさんさせてくださり、特に梅鉢づくりをさせていただいたことが印象に残っています。毎晩のように夜なべ作業に参加していたので、どこか懐かしいような気がするあの集会所にはもう行くことができないと考えると寂しく感じます。
今回の実習では、ずいき神輿を次世代に受け継いでいこうとされている会員の方々の思いを感じることができました。時代の変化に合わせて、環境も少しずつ変わっていくなか、ずいき神輿を作る過程での一つ一つの細かな手作業や、ずいき神輿をつくる保存会の方々の熱い思いが変わっていないことを知りました。
改めて、ずいき神輿保存会の方々には本当にお世話になりました。
一か月間ありがとうございました。
こんにちは。内堀です。
今日はこの1ヶ月準備を進めてきた、ずいき神輿の巡行日です。本日のブログでは、巡行の様子をお伝えします。
本日はあいにくの雨ですが、9時に集会所に集まり、蔵からお神輿と、担ぐための轅(ながえ)を出します。
鳴鐶(なりかん)と呼ばれる音のなる金具を、轅に取り付けます。この鳴鐶は、かなり大きな音がします。
【写真1】轅(ながえ)に鳴鐶(なりかん)を取り付ける作業
轅に鳴鐶を取り付けたら、台車に載せて御旅所に運びます。轅はかなり長く重いので、道を渡る際には気をつけて運びます。とくに勾配のあるところは注意が必要です。
御旅所に着くと、完成したお神輿に轅を付ける作業を行います。轅を入れて縄で固定します。ずいき神輿は、他のお神輿と比べると装飾が多いことなどから重いと聞きました。ですのでとても大変な作業です。
轅に固定するときに固定する縄は叩きながら結びます。そうすることでより強固に、固定することができると教えて頂きました。
【写真2】轅を付ける準備
【写真3】轅を神輿に縄で固定するところ
【写真4】轅を付けたずいき神輿
轅を付けたら、今度は台車へ載せます。この時台車までは人力で運ばなければなりません。運ぶ時はアルバイトの方も交え、全員で協力して運びます。
【写真5】ずいき神輿を運んでいる様子
無事に台車に載せることが出来ると、雨でお神輿が濡れてしまわないように、かっぱを着せます。
【写真6】ずいき神輿にかっぱを着せる
ここまで作業が終わると、一度集会所に戻り昼食を取りました。お昼を食べる頃には雨も止んでいました。
そして全員おなじ法被を着て、ついに12時半頃、巡行を開始しました。
【写真7】巡行開始
13時頃には、丸太町通を巡行しています。大通りを一部封鎖して警察の方の協力の元に進んでいきます。
【写真8】13時頃 丸太町通を巡行中
道中は、適宜休憩を挟みながら巡行します。途中にはとても道が狭いところや、急な坂などもありますが事故もなく「ほいっとほいっとー」の掛け声とともに予定通り進んでいます。
道中、御神酒を多く納めた家の前や特定の場所でお神輿を大きく揺らし、鳴鐶を鳴らします。カシャンカシャンと凛とした音が響き渡ります。
15時半には北野商店街まで巡行しています。
ここまで来ると、観光客の方や地元で買い物をしている方なども増えてきました。途中足を止め、手を合わせる方や写真を撮る方など様々でした。
【写真9】15時半 北野商店街
そして少し進み、16時頃には上七軒に到着しました。ここで休憩をとり、ずいき神輿に着せていたかっぱを外しました。こうしてかっぱを外したずいき神輿を見ると色鮮やかでとても華やかです。
【写真10】16時頃 上七軒
休憩をとったあと、上七軒をさらに進んでいくと観光客の方の数も多くなり、お店の外には舞妓さんが出てきていました。舞妓さんがいるところには特に人が多く、一度神輿を止め多くの方が写真を撮っていました。
【写真11】上七軒
そして上七軒を抜けたあとに、北野天満宮の東門前でお神輿を止めて御祓いが行われます。御祓いが終わると、お神輿は御旅所へと戻ります。
【写真12】17時頃 御旅所
巡行を開始してから5時間程度でした。巡行は終わりましたが、お神輿をまた元の場所に戻す作業を行います。
【写真13】取り外し作業が終わったずいき神輿
轅と瓔珞(ようらく)を取り外し、台車とともに集会所へもどり、巡行は終了です。
今回1ヶ月の間、皆様と共に作業を行いました。千日紅の花を摘むことから始まり、千日紅に糸を通す作業を行いました。このような行事に参加する経験があまりなく、こうして振り返ると皆様にご迷惑をおかけしてしまった部分もあると思います。しかし皆様作業の間に話しかけてくださったり、ずいき神輿に関すること以外にも面白いお話を聞かせて頂きました。とても貴重な経験でした。
今回実習に参加して、伝統行事というものが徐々に失われつつある中こうして、毎年巡行を行うことが出来るということから保存会の皆様の並々ならぬ、熱意を感じることが出来ました。伝統は守りつつも、流行を取り入れるなど時代に合わせ少しずつ変わっていく様子を見ることが出来ました。
あらためて今回の実習では、とても貴重で特別な経験をさせて頂きました。ありがとうございました。
こんにちは。内堀です。今日は朝からの作業です。
今日は、梅鉢の装飾に使うカボスをくり抜く作業を行いました。今年は不作のため、カボスのほかに夏みかんも使用しました。以前はユズを使っていたそうです。
今年の総数は180個ほどで、お神輿につける梅鉢と、返礼品用の梅鉢の装飾に使う分をくり抜いていきます。
まずカボスの底の部分を切り落とし、ヘタの部分も丸く切り取っておきます。そして、底を切り落としたカボスを、グレープフルーツを食べるときに用いるスプーンでくり抜いていきます。この時カボスの薄皮まで綺麗にくり抜かなければ、乾燥させた時に腐ってしまうため注意が必要と教えて頂きました。
カボスをくり抜く作業には意外と力が必要で、ひとつくり抜くのにも時間がかかってしまいました。特に薄皮はなかなか綺麗に剥がすことができず、苦労した部分です。
【写真1】底を切り落としたカボス
【写真2】くり抜いたカボス
くり抜いたカボスはカゴの中に並べ、扇風機で風を当て、乾燥させます。
カボスをくり抜いて行くうちに、手が白くなり、ツルツルになっていました。気になったので調べると、カボスにはビタミンCが含まれているので、シミを防ぎ美肌効果があるとの事でした。柑橘系の良い匂いに包まれたなかでの作業でした。
【写真3】くり抜いたあと乾燥させているカボス
朝の9時から始め、お昼休憩を挟んで14時頃には、全てのカボスをくり抜くことができました。
くり抜いたカボスの汁は、焼酎を飲む時に入れると美味しいとのお話でした。
巡行当日まであと少しです。残りの日で、お神輿の仕上げを行います。巡行当日までよろしくお願いします。
こんばんは。徳田です。
今日は保存会の清水さんのお宅にお邪魔し、細工づくりを見学させていただきました。
まずは2階の応接間に案内していただき、今年の「桂馬(けいま)」や子ども神輿の人形などを拝見しました。完成品はお祭り当日までのお楽しみですが、言葉に表せないほど素晴らしかったです。使われている材料を聞いても、どうしてこの材料を使うという発想になるのか不思議でしたが、清水さんは「その材料が作品に似ているから使うだけだ」とおっしゃっていて、まさに天才の発想だと感じました。
その後、3階の作業部屋にも案内していただき、今年の「欄間(らんま)」を見せていただきました。歴代の作品もアルバムや壁に飾られていたので拝見しましたが、細部まで丁寧に作り込まれており、参考にした作品が一目でわかるほど忠実に再現されていました。
【写真①】歴代の作品
欄間には映画やその時に流行した作品を題材にしているそうです。また、瑞饋神輿の細工では、女性や坊主を作ることは禁じられているとのことでした。(子どもや妖怪などの人外のキャラクターは例外だそうです。)
人形の作り方としては、まず縄を使って土台を作り、そこに針金を付けて自由に動かせるようにするそうです。その後、ずいきの皮を水で湿らせて柔らかくし、土台に貼り付け、さらに様々な材料を使って人形を完成させていくとのことでした。
こうして製作の途中段階を見学させていただき、大変貴重な経験となりました。清水さんも「完成したものを見るより、途中の状態を見てから完成品を見ると、細かい部分が理解しやすい」とおっしゃっていたので、お祭り当日に飾られるのが楽しみです。
清水さんは使う材料をケースに丁寧に分類して保管されていました。
【写真②】 細かく分類された材料1
【写真③】 細かく分類された材料2
種や豆などは小さいタッパーに入れて保管されていました。
蓮の種は使いやすいそうですが、見せていただいたときには虫が湧いていて、腐りやすいとのことでした。ほかにも鞍掛豆(馬の背中に鞍を掛けたような模様をしていることから鞍掛豆といわれるようになったそうです)や黒目豆など、目を作る時に使いやすい豆なども見せてもらいました。
【写真④】 豆など
【写真⑤】 種など
ちなみに今年の桂馬には筍の皮が使われているそうです。お祭りにいらっしゃる方はぜひ注目してみてください。
【写真⑥】 筍の皮
【写真⑦】 他にもたくさんの材料を見せてもらいました!
清水さんは、細工づくりについて「材料の形を変えることはせず、そのままの形を生かして作りたいものに当てはめる」とおっしゃっていました。
細工づくりに関する貴重なお話をたくさん伺い、とても有意義な時間となりました。
その後、私たちは保存会に戻り、夜なべ作業を行いました。
明日と明後日はお休みで、次の夜なべ作業は17日です。引き続きブログを更新していきますので、よろしくお願いいたします。
こんにちは。内堀です。
今日の作業では稲の穂抜き作業を行いました。
穂抜きは、初日に収穫した稲から、穂だけを抜きとる作業です。節の部分で切ると綺麗に分けることが出来ると教えて頂きました。
穂抜き作業をする時の注意点として、雀に食べられている物や、まだ成長していない物は避けるようにと聞きました。
実際に作業をしてみると、雀に食べられている物が結構見つかります。
【写真1】穂抜きをする前の稲
【写真2】雀に食べられている穂
初めは綺麗に分けることができませんでしたが、慣れてくると簡単に作業できるようになりました。
穂抜きが済んだ稲穂は、ひとつにまとめて竿に吊るしておきます。竿を支える柱には、ネズミなどが食べに来るため、ネズミ返しをつけています。
【写真3】吊るした稲穂
この後も作業を進め、ブログの更新を進めていきます。作業もだいぶ後半の方に差し掛かってきました。巡行当日までよろしくお願いします。
授業担当講師の渡です。
インターンシップ授業も中盤にさしかかろうとしています。神輿づくりの忙しい時期でありながら、保存会の皆様には丁寧なご指導をいただき、受講生・教員ともに教室では得られない貴重な学びの機会をいただいております。
1日目から行っていた千日紅作りは、継続して行うことで千日紅の乾燥による質感の変化がわかってきました。
写真1.針糸を通した千日紅
千日紅の芯に針糸を通すのですが、乾燥によって芯が固くなり、より正確さが求められるようになりました。
乾燥した花弁が落ちやすくなるので、丁寧な扱いも必要です。
写真2.新たに摘まれてきた千日紅
数が少なくなってきた千日紅のために、保存会の皆さんから随時新しい千日紅が補充されています。
写真3.摘んだばかりの千日紅(左)と乾燥した千日紅(右)
並べてあるところを見ると、色の違いがよくわかります。摘んだばかりの千日紅は針糸を通すことに適さないので、しばらく乾燥させます。
また、この日は、先日に受講生が体験していた「こすり」を、私もさせていただきました。
「こすり」に使用する縄は、稲を乾燥させ、縄を綯うところから始める完全な手作りです。
藁から縄にする作業には相当な熟練が必要であり、保存会のなかでも荒田会長が保存されている伝統の技です。
写真4.縄を綯う荒田会長
綯ったばかりの縄には、ヒゲと呼ばれる毛羽立ちがあるので、それを取り除く作業が「こすり」です。
縄を柵に結びつけてぴんと張り、半纏を使用して縄をこすり、ヒゲを取り除きます。(タオルでは上手くこすれないそうです)
写真5.「こすり」を行う会員の伊祁さん
写真ではわかりませんが、こすることで縄から余分な毛羽が飛んでいき、それがライトに照らされて幻想的です。
ただ、作業自体は大変なもので、こする側はもちろんのこと、縄を張る側もこする力に負けない握力が必要です。今年の厳しい残暑も相まって汗だくになりました。
作業後には、一緒に「こすり」を行った会員の伊祁さんから、地域について教えていただきました。
ずいき祭にあたって寄附のあった門戸には、「御神酒」と書かれた紙がはられます。
写真6.御神酒
地域全体で祭を支え、巡行に向けて準備が進められていることがわかりました。
引き続き、受講生とともに学んでまいります。