川崎重工業 (original) (raw)

川崎重工業株式会社(かわさきじゅうこうぎょう、: Kawasaki Heavy Industries, Ltd.、略称:KHI)は、東京都港区および兵庫県神戸市中央区に本社(登記上の本店は神戸市中央区)を置く重工業メーカー。通称は「川崎重工」。

概要 種類, 機関設計 ...

川崎重工業株式会社Kawasaki Heavy Industries, Ltd.

川崎重工業神戸本社が入居する神戸クリスタルタワー
種類 株式会社
機関設計 監査等委員会設置会社
市場情報 東証プライム 70121949年5月16日上場名証プレミア 70121949年5月16日上場
略称 川崎重工・川重・Kawasaki・KHI・カワサキ[注釈 1]
本社所在地 日本の旗 日本東京本社 〒105-8315東京都港区海岸一丁目14番5号神戸本社 〒650-8680神戸市中央区東川崎町三丁目1番1号神戸クリスタルタワー
本店所在地 650-8670神戸市中央区東川崎町三丁目1番1号神戸クリスタルタワー
設立 1896年(明治29年)10月9日(株式会社川崎造船所)
業種 輸送用機器
法人番号 1140001005719 ウィキデータを編集
事業内容 オートバイ鉄道車両航空機ガスタービンエンジン環境装置船舶特殊小型船舶油圧機器等の製造・販売
代表者 橋本康彦代表取締役社長執行役員CEO)山本克也(代表取締役副社長執行役員)中谷浩(代表取締役副社長執行役員)
資本金 1,044億8,400万円(2024年3月末現在)
発行済株式総数 1億6,792万1,800株(2022年3月末時点)
売上高 連結:1兆8,492億円(2024年3月期)
営業利益 連結:852億円(2023年3月期)
純利益 連結:550億円(2023年3月期)
純資産 連結:5,926億円(2023年3月末現在)
総資産 連結:2兆4,597億円(2023年3月末現在)
従業員数 39,689人 (2024年3月末現在)
決算期 3月31日
会計監査人 有限責任あずさ監査法人
主要株主 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.70%日本カストディ銀行 8.44%日本生命保険 3.42%川崎重工業従業員持株会 2.93%みずほ銀行 2.48%(2022年3月末現在)
主要子会社 カワサキモータース 100%川崎車両 100%日本飛行機 100%川重冷熱工業 100%川重商事 70% 他国内/43社 海外/56社(2021年10月現在)
関係する人物 川崎正蔵(創業者)松方幸次郎(初代社長)村山滋(元会長)石川主典(元代表取締役副社長執行役員)
外部リンク global.kawasaki.com ウィキデータを編集
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オートバイ航空機鉄道車両船舶・軍事ヘリコプターなどの輸送機器、その他機械装置を製造している。

三菱重工業(MHI)・IHI(旧:石川島播磨重工業)と共に三大重工企業の一角を成す。日経平均株価の構成銘柄の一つ[1]

会社の歴史は19世紀の明治時代より始まっており、東京・築地の川崎築地造船所に端を発している。社名の「川崎」は創業者の川崎正蔵の姓が由来であり、川崎造船所時代から拠点を置いている神戸工場の所在地が東川崎町であるのは全くの偶然である。大正時代第一次世界大戦による造船活況、そして世界大恐慌昭和時代第二次世界大戦、戦後の高度成長期と日本の近代史・産業史とともに存続してきた総合重機械企業である。

自衛隊潜水艦航空機ミサイルの製造もおこなう国内有数の防衛産業でもあり、防衛装備受注金額では2015年度の防衛中央調達額で三菱重工業を抜いて日本第1位、世界第28位に位置した。神戸を拠点とする有数の関西系企業でもある。かつては神戸川崎財閥(松方コンツェルン)の主要企業であった経緯から、川崎製鉄(現・JFEスチール)・川崎汽船とも関係がある。本社は神戸市中央区神戸クリスタルタワーであり、東京都港区海岸に東京本社も設置している(登記上の本店は神戸市中央区)。

社是に相当するミッションステートメントには「テクノロジーの頂点へ」と記されており、超高度な技術力の錬磨を推奨する社風を展開する。過去の歴史をさかのぼれば、日本で初めて蒸気機関車高速鉄道の製造を行うとともに、ライト兄弟の初飛行からわずか15年で航空機工場を設立、戦後はオートバイなどに代表されるコンシューマープロダクツへの進出を成功させている。近年では、航空機の機体・エンジンの両方と、宇宙機器の開発・製造を担う航空宇宙産業としてその名を轟かせている。武器輸出三原則に代わり閣議決定された防衛装備移転三原則に従い、潜水艦や航空機の売り込みを図るなど防衛装備品の海外輸出検討も積極的に行っている。

一方、1969年に世界初の産業用ロボット会社を設立したジョセフ・エンゲルバーガーとの協力でロボットの国産化に成功して以来[2]、重工業では珍しく、日本国内でファナックに次ぐ第2位、世界で第4位のロボット産業として存在感を確立している。この成長著しいロボット産業分野で、日本のロボット生産金額は2018年度に1兆円を超えたが、それら日本のロボットメーカーで構成する日本ロボット工業会会長職を2018年5月にファナックから引き継いでいる。また、IoTAIに至る第四次産業革命の一端を担う業容の重点化、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)を行っており自社の製造業としての高度知識集約産業化を強力に進めている。さらに、DXのさらに先に位置する産業革命と目されるグリーントランスフォーメーション(GX)の中核的活動である水素社会の確立を見越した水素チェーンのインフラ・輸送機器技術確立にいち早く取り組んでおり特筆に値する。これらの歴史は従来製品の延長だけで満足せず、新たなる分野での「テクノロジーの頂点」を目指す社風の成果とされる。

日立製作所内において設立されている日立返仁会(日立博士会)や日立技術士会と同じく、理工系国家最高資格の技術士、国家最高称号・学位である博士号取得を社内で積極的に推進し、技術士資格取得者から構成する川重技術士会(約140名)や博士号取得者で構成される川重博士会(約120名)を設立している。さらに自社内の社報で技術士博士号取得者を定期的に公開しており「テクノロジーの頂点へ」という気風を強力に後押ししている。

なお、同社の会長・社長経験者は、神戸商工会議所の会頭職と同時に、日本商工会議所の副会頭職を務める場合が多い。さらに、その社業が陸海空のインフラ全般に及び社会経済の発展に貢献していることから、日本航空宇宙工業会日本造船工業会、鉄道システム輸出組合などの会長・理事長を務める場合が多い。また、経営指標において特筆すべき成果が認められる場合に関西経済連合会の副会長職を務めている。

現在は「Kawasaki」の「K」を図案化した「フライングKカワサキ」を川重グループで使用している。

かつて、川崎の川を図案化した「リバーマーク」を制定し、川崎造船所時代から長年、社章・社旗・オートバイを除く製品等で用いていた(川崎製鉄も独自マーク制定迄はリバーマークを使用していた)。二輪車部門は1960年代からフライングKカワサキを使用していた(それ以前はリバーマーク。一部車種はメグロを使用)。

川重製オートバイの海外認知度向上により、日本国内でもフライングKカワサキが鉄道車両等オートバイ以外の製品・サービスにもよく使われるようになり、2007年にフライングKカワサキを川重グループの新たなコーポレートマークに制定した。ただし、リバーマークが全く使われなくなったわけではなく、2015年発売のNinja H2Rなど一部の製品では、エンブレムとしてリバーマークが使われている[3]

2016年1月7日、創立120周年を記念しリバーマークを基にした「120周年ロゴマーク」を発表[4]。1年間限定であるがリバーマークが復活した。広報活動等で使用される。

2021年10月1日に設立された、二輪車部門の分社化による新会社「カワサキモータース」のコーポレートマークとして当初はリバーマークを採用していたが、2023年7月より採用されなくなった。ただし2024年現在、リバーマークはごく一部の二輪車のエンブレムとしての採用に留まっている。

リバーマーク

製造する商品は多岐にわたる。同社は製造製品の分野ごとのカンパニー制度をとっており、2011年(平成23年)現在では以下のカンパニーで構成されていた。グループ連結での売上構成は、船舶海洋事業9.6%、車両製造事業10.9%、航空宇宙事業16.0%、ガスタービン・機械事業16.5%、プラント環境事業7.2%、モーターサイクル&エンジン事業19.1%、精密機械事業11.4%、その他事業9.2%となっていた(2011年3月期)。

2018年4月1日、社内カンパニーを7から6に改編した[5]

2021年4月1日、社内カンパニーを6から5に改編した。

2021年10月1日、社内カンパニーを5から3に改編した。

船舶・海洋

鉄道車輌

航空・宇宙システム部門 、川崎航空機時代の製品

エネルギー・環境プラント設備部門

二輪車・汎用エンジン・水上オートバイ

精密機械・ロボットカンパニー

精密機械ビジネスセンターとロボットビジネスセンターからなる。川崎重工業のロボットビジネスセンターでは東京大学情報システム工学研究室(JSK)共同で人型ロボット(後述)を開発中[6]

RHP(Robust Humanoid Platform)

『2017国際ロボット展(iREX 2017)』(東京ビッグサイトにて2017年11月29日から2017年12月2日まで開催された国際ロボット展)にて人間型二足歩行ロボットのバージョン4「RHP(Robust Humanoid Platform)」を展示[7]。身長174cm、重量83kg、全32自由度の成人男性サイズの人型ロボット[8]

Kaleido(カレイド)

翌年の『World Robot Summit 2018(WRS 2018)』(東京ビッグサイトにて2018年10月17日から2018年10月21日まで開催されたロボット展)にてバージョン5「Kaleido(カレイド)」を公開。軸構成を見直して軽量化・スリム化、バージョン4と同サイズで10kgほどの軽量化に成功、全30自由度(2軸削減)[9]

「Kaleido(カレイド)」は万華鏡(kaleidoscope)に由来し、「用途にあわせて姿を変え、無限の可能性を持つ」ことを意味する。一般公募にて名称を募集した[10]

Kaleido(漢字表記:華麗人)

『2019 国際ロボット展 INTERNATIONAL ROBOT EXHIBITION 2019(iREX2019)』(東京ビッグサイトにて2019年12月18日から2019年12月21日まで開催されたロボット展)にて新型「Ver.6」を公開。身長178cm、体重85kg。全32自由度(Ver.5より2軸増加)。Ver.6では、バッテリーの内蔵化により電源が不要、力覚センサーにより二足歩行が可能、ビジョンセンサーによる対象物が認識可能となる等の大幅な性能向上が実現された[11][12]

建設機械

2009年分社化により、株式会社KCMになった。川崎重工業の子会社であったが、2015年に株式譲渡により日立建機の子会社となった[13]。旧KCMは2019年4月に日立建機本体へ吸収合併され、同社の播州工場になっている。

現在扱っている製品

かつて扱っていた製品

川崎オルビット型12インチ卓上扇風機(川崎型電気扇)

拠点所在地のうち「川崎町」の地名は、当社の社名に由来する。

生産拠点

播磨工場

明石工場

川崎重工グループは国内外で100社ほどの企業グループで構成されている。以下の一覧は、川崎重工業の平成28年度有価証券報告書に記載された内容に基づく。有価証券報告書に記載された関係会社は、報告書中の連結財務諸表の作成において連結対象とした関係会社である。 関係会社の事業内容は有価証券報告書に記載されたセグメントの名称と一致させた[23]

アメリカ進出

川崎重工業は日本企業の中でも最も早期に米国に進出している。ネブラスカ州リンカーン工場は、日本式のジャスト・イン・タイム型の生産体制のモデルケースとして広く取り上げられた。また1981年にリンカーン市にかけあって工場員のレイオフを防ぐなど、終身雇用型の労働管理の象徴とも考えられた[24]

中国への技術移転

2011年6月30日に開業した中国の北京 - 上海を結ぶ中国版新幹線「和諧号」には日本とドイツなどの技術が使われており、日本からは川崎重工業、日立製作所三菱電機などの企業連合が技術供与した。だがその後、中国側が「独自開発」を主張し、米国や日本などで技術特許を申請する方針を打ち出した(川崎重工業は中国で特許を取得していない)。川崎重工業の幹部は同年7月4日 「“特許”の中身が分からないので今は対応のしようがないが、もし契約に違反する内容であれば、法的手段をとる必要がある」と述べた。さらに同幹部は「供与した技術は中国国内での使用に限ることになっている。きちんと契約を守る大人の国になってほしいと思うが、(中国側の動きを)もう少し見守りたい」と述べた[25]

中国への技術供与には終始慎重だったJR東海葛西敬之会長は、2011年6月29日の会見で、「新幹線技術は国内のメーカーと国鉄の技術陣の長い期間にわたる汗と涙の結晶」と述べた上で、技術供与した川崎重工業に対して「技術立国に恥じない対応をしてもらいたい」と語り、特許侵害には断固対処するよう求めた[26][27]

サイゾーが運営するウェブメディア「ビジネスジャーナル」は、「問題の発端は、大庭浩会長及び大橋忠晴社長当時、ビジネスチャンスを求めて中国へ新幹線売り込みをかけた時にあった。この時、売り込みのグランドデザインを描いたのが長谷川聰(後の社長)だったとされている。しかし、川重がJR東日本松田昌士会長)等と組んで新幹線車輌技術(新幹線E2系電車)を提供した際、川重側の契約が「技術を盗んで下さい」といわんばかりに杜撰だったと指摘されている。そのため中国側に国家ぐるみで新幹線車輌技術を盗まれ米国やアジア諸国への売り込みを許しているばかりでなく、契約の拡大解釈ないし詭弁の類いで米国などへ国際特許出願までをも許してしまったとされている。」と報じた[28][29][_信頼性要検証_](大橋忠晴の社長就任時点で大庭浩はすでに故人であり、報道内容の信憑性は低い[_独自研究?_])。

その他、海外初の産業用ロボット生産拠点も川崎重工は中国に設置している[30]

ブラジルの造船事業

2015年第3四半期に221億円の損失を計上。2012年ブラジル政府の協力要請を受け、超大深水プレサル層から相次いで発見された油田開発に向けて現地の建設大手3社が設立したエンセアーダに3割出資して合弁事業に参画したことに伴い、ペトロブラスからドリルシップ船2隻と推進プロペラ装置の製作にあたった[31]。翌年にペトロブラスや建設会社などが絡む大規模な賄賂汚職スキャンダルが発覚。この余波でエンセアーダへのドリルシップ建造工事への入金および川崎重工への支払いも止まったが、2015年11月まで工事中断に合意せず損失処理を行わなかった。急速な原油安による掘削事業の悪化もあり、エンセアーダへの出資金、貸付金の評価損28億円とドリルシップ関連の売掛金仕掛品の評価損192億円を計上した[32]

労働災害

1971年に入社(一旦退職し、のち1997年に再入社)し、2000年鬱病と診断された神戸工場のグループ長(当時55歳)が2002年、首吊り自殺した。同社は、1件も受注できない中で450億円の大きな商談を任せ、この男性が失敗したとして、男性を社内で「金食い虫」と糾弾し続けてきた。神戸東労働基準監督署が自殺と職務との関連性を認めず、労働災害不認定としたことを受けて、遺族の妻は遺族補償給付金などの不支給処分取り消しを求め神戸地裁に提訴。2010年9月3日、同地裁(裁判長・矢尾和子)は、男性が仕事で大きな重圧を受けていたとして労災を認め、神戸東労働基準監督署の処分を取り消した。判決は「残業時間からは、直ちに業務が過重だったと認められない」、「業務による心理的負荷が強かった。自殺は、業務に内在する危険が現実化した」と言及を行った[33]

子会社での賭博問題

同社子会社の川重明石エンジニアリングで、2009年頃から、社内のゴルフコンペにおいて、参加者らが賭けを行っていたことが明らかになった。同社の社長ら幹部が関与していた疑いが指摘されている[34]

陸上自衛隊ヘリ開発を巡る談合

陸上自衛隊の観測用ヘリコプターOH-1)をベースにした次期多用途ヘリコプターの開発計画(UH-X)を巡る談合疑惑が2012年に浮上。受注に当たって同社とその関連企業、及び防衛省技術研究本部富士重工を排除しようとしたとして、東京地方検察庁特別捜査部の家宅捜索を受けた[35](当時の川重担当者は起訴猶予になった)。

この談合問題については、川崎重工業の株主らが2014年6月に同社の村山滋社長ら経営陣を相手取り、談合当時の取締役だった村山社長らが同社に談合による損失を賠償するよう、総額46億2600万円の支払いを求める株主代表訴訟神戸地方裁判所に起こした[36]2019年9月17日、同地裁(裁判長・阿多麻子)は「男性は判決を受けられる資格『原告適格』を喪失した」として訴えを却下した[37]

新幹線N700系電車の台車トラブル

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注釈

  1. 二輪車では川崎重工としては名乗らず、むしろこちらを使用している。
  2. 川崎車輛・川崎航空機工業の両社も合併まで川崎重工業とともに東証一部に上場していた。

出典

  1. 「川重会長 中国版新幹線和諧号に法的手段を示唆」msn産経ニュース、2011年7月4日[_リンク切れ_]

参考文献