私立大学の世界史の入試問題が若干変わっている件(2024 同志社大学) (original) (raw)

はじめに

文科省がしきりに「学力の3要素」と言う今日この頃、私立大学の世界史入試問題の変化について検証します。今回は同志社大学です。

www.doshisha.ac.jp

私大専願者の憧れかつ難関国立大学の併願先として関西私立大学の生態系の長に君臨する同志社大学ですが、世界史の問題は基本教科書準拠、旧センター試験で8割以上得点できる人はその蓄積に私立的な知識を追加すれば合格点が取れる難易度です。

合格者平均点は以下の表のとおり8割を超える日が続出です。世界史では差をつけられない、ミスすれば即アウトという世界です。( д) ゚ ゚

参考 2年分の受験者平均点と合格者平均点

2月5日 文系全学
2月6日 文・経済
2月7日 政策・文化情報・スポーツ健康科
2月8日 法・グローバルコミュニケーション
2月9日 神・商・心理・グローバル地域文化
2月10日 社会

| | | 2月5日 | 2月6日 | 2月7日 | 2月8日 | 2月9日 | 2月10日 | | | -------- | ---- | ----- | ----- | ----- | ----- | ----- | ----- | | 受験者平均得点率 | 2022 | 68.9% | 70.9% | 73.8% | 76.0% | 73.7% | 74.5% | | 合格者平均得点率 | | 79.1% | 80.8% | 83.9% | 86.9% | 83.2% | 84.5% | | 受験者平均得点率 | 2023 | 64.0% | 76.3% | 70.3% | 77.9% | 74.6% | 75.1% | | 合格者平均得点率 | | 75.9% | 85.9% | 82.1% | 86.7% | 85.9% | 87.0% | | 受験者平均得点率 | 2024 | 65.5% | 72.5% | 72.7% | 67.7% | 76.2% | 67.3% | | 合格者平均得点率 | | 76.7% | 83.0% | 84.5% | 76.1% | 86.8% | 79.0% |

問題構成は、選択肢付き穴埋め問題、空欄または下線部の記述式一問一答、択一式正誤判定および複数文章の正誤判定問題が基本ですが、共通テスト前後から形式上の工夫が見られます。

今回は2024年度の文系全6試験日の解答をした上で、同志社大学の出題方針、新傾向問題入試形式および「合否崖っぷち」ポイントについて解説します。

問題は読売新聞より入手し、解説はぶんぶんのオリジナルです。ぶんぶんの分析が主で問題は従という関係で問題を一部引用します。

東進さん、早く全問題をあげてください。

www.toshin-kakomon.com

字数が多いので忙しい人は3から見てください。

目次

同志社大学 2017~2024の大問

*縦の数字は試験日(すべて2月)

| | | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | | | ----- | ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ | --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | | 2017 | 5 | 儒教 | ヨーロッパ科学史 | 戦後の東南アジア、西アジアの独立 | | 6 | ゲルマン人の世界 | 19世紀のヨーロッパ文化 | 孫文魯迅蒋介石毛沢東 | | | 7 | 遊牧民と中国王朝 | 17,18世紀のヨーロッパ文化 | インドの植民地化と民族運動 | | | 8 | 唐の土地制度と税制 | ヨーロッパ主権国家体制 | アフリカの奴隷貿易、分割、独立 | | | 9 | 古代オリエント | ルネサンス~19世紀の宗教と思想 | サウジアラビア西アジア近現代史 | | | 10 | イベリア半島北アフリカイスラーム王朝 | アメリカ独立戦争~19世紀 | アフリカ戦後史 | | | 2018 | 5 | ギリシアの歴史家 | 東南アジアの大交易時代 | ロシア革命ソヴィエト連邦 | | 6 | イベリア半島古代~16世紀 | トルキスタン10世紀~19世紀 | 大西洋革命 | | | 7 | イスラームの発展 | ルネサンス宗教改革 | 中華民国 | | | 8 | 中国の首都と社会 | ○○体制について | 戦間期のヨーロッパ | | | 9 | インド古代史 | 第二次英仏百年戦争 | ルネサンス~18世紀ヨーロッパ文化史 | | | 10 | 20世紀の中国の戦争 | 社会主義運動の歴史 | 冷戦の時代 | | | 2019 | 5 | 唐末~清の儒教 | 大西洋地域の歴史 | 19世紀~20世紀のヨーロッパ文化 | | 6 | イスラームの拡大 | オーストリアの歴史 | ラテンアメリカ | | | 7 | オリエント | ポルトガル大航海時代 | ブレトン=ウッズ体制 | | | 8 | 地中海世界 | 朝鮮半島 | アメリカ合衆国 | | | 9 | アフリカ北岸の世界 | フランス絶対王政 | 中華人民共和国 | | | 10 | 東アジアの遊牧勢力 | 17,18世紀のヨーロッパ文化 | アジアとアフリカの戦後史 | | | 2020 | 5 | 中世ヨーロッパ | 東南アジア | 人権思想の広がり | | 6 | ギリシア文化史 | 北米大陸 | 李承晩と朝鮮半島 | | | 7 | インド古代史 | ルネサンス宗教改革 | ラテンアメリカ | | | 8 | イラン | ルネサンス | 19世紀のヨーロッパ経済 | | | 9 | アフリカ | 大航海時代 | 中華人民共和国 | | | 10 | 東南アジア | 三十年戦争プロイセンの台頭 | アフリカ分割 | | | 2021 | 5 | マケドニアとヘレニズム | イスラーム世界の奴隷 | ナポレオン~ドイツ統一 | | | 6 | アフリカ北岸の世界 | 中国の儒教・仏教・道教 | ユーゴー二月革命 | | | | 7 | 中央ユーラシア | 17,18世紀のヨーロッパ文化 | 世界恐慌ラテンアメリカ戦後史 | | | | 8 | 西ヨーロッパ中世世界 | 明清 | アメリカ合衆国の独立~南北戦争 | | | | 9 | イングランドノルマン朝~18世紀 | 朝鮮半島 開国~戦後 | ロシア ノルマン人~シベリア鉄道 | | | | 10 | イベリア半島古代~16世紀 | アイルランド | 冷戦と東南アジア | | | 2022 | 5 | 中世の神聖ローマ帝国 | 朝鮮王朝と儒教 | 帝国主義とアジアの抵抗 | | | 6 | ギリシア・ローマ~ヨーロッパ中世の文化 | 唐~明の経済 | ドイツ帝国の成立と滅亡 | | | | 7 | ルネサンス | 東南アジア 港市国家~大交易時代 | イギリスの帝国主義 | | | | 8 | 西ローマと東ローマ | アッバース朝 ティムール朝 ワッハーブ王国 | スペインとオーストリアハプスブルク家 | | | | 9 | キリスト教 | 唐 | ラテンアメリカ | | | | 10 | ロンドンをめぐる歴史 | 清朝アヘン戦争義和団事件 | フランス20世紀 | | | 2023 | 5 | 南京の歴史 | 中世のドイツと周辺地域 | イギリス19世紀~20世紀 | | | 6 | ヘロドトスとオリエント | スンナ派シーア派 | 世界恐慌第二次世界大戦開始 | | | | 7 | イングランドノルマン朝~18世紀 | 帝国主義時代のヨーロッパ | 中華人民共和国 | | | | 8 | ローマカトリック教会の確立 | ベトナムとその周辺海域 | アメリカ合衆国19世紀~20世紀 | | | | 9 | 朝鮮古代史 | ヨーロッパの対外進出 | プロイセンドイツ帝国 | | | | 10 | 古代ローマ | ロシア17~19世紀 | 蒋介石中華民国 | | | 2024 | 5 | 古代ギリシアとローマの都市 | 近世のイスラーム帝国 | 万国博覧会と19世紀の文化 | | | 6 | 塩の中国史 | ヨーロッパ封建社会の解体と都市経済の発達 | 第一次世界大戦戦間期 | | | | 7 | ヨーロッパ中世文化~ルネサンス文化 | 元から清代の王朝と周辺地域 | ヨーロッパ19世紀の文化 | | | | 8 | アフリカ前近代 | 16~17世紀宗教改革主権国家体制 | アメリカ合衆国20世紀 | | | | 9 | ローマ帝国 | フランス17~18世紀 | 19世紀末~20世紀にかけてのアジア・アフリカの独立運動 | | | | 10 | 内陸アジア世界の歴史上の6人の人物 | 北米と南米の独立運動 | 冷戦の開始から終了 | |

コメント

同志社大学の世界史は大問3題×50点=150点満点の構成です。ぶんぶんの計算では穴埋め(記号)が2点、他が3点です(過去には4点問題もあり)。

時代は古代~中世、近世~近代(18世紀まで)、19世紀以降から現代までが各1題、地域は非ヨーロッパから1題、ヨーロッパ(ギリシア・ローマ、アメリカ含む)から2題です。時代と場所は6試験日でまんべんなく出題されています。

首都圏最難関私立の学部別入試は学部ごとの出題で形式や内容が違いますが、同志社大学の場合は学部別といえ併願が被らない学部がセットになっています。多少形式や内容に試験日ことの特徴は感じますが、試したい力と難易度はほぼ同じです。

ジャンル別では政治史が中心ですが、8割の壁になるのが高校三年生の二学期に習う19~20世紀の範囲、次に文化史(表の橙色)さらに戦後史(同青色)および中央ユーラシアや海域(同紫色)などのグローバルトピックです。

「定番の範囲は完クリし、三年二学期の範囲は授業と定期考査で完成させ、授業で手薄になる範囲は自習する」は他の偏差値上位大学にも共通する鉄則です。日頃の学習と受験に対する意識が大事ということです。

2 解答例(2日分)

① 凡例

用語欄:正解の語句(多少語句を補ってある)。正誤判定問題についてはの正文(○)の内容または誤文(×)の間違い箇所

難易度(ぶんぶんの分析)

◎:必答

○:解答できる

△:やや細かい内容、複数の知識を渡らせる

▲:かなり無理

×:ドボン(教科書には載っていない。載っていても答えられない)

内(内容)○~×問題のふるい落としポイント

ま 紛らわしい

や ややこしい(書きづらいカタカナや漢字の用語)

こ 事項の細かいいつどこ誰何

り 理解・推理

ぜ 有名事項の前後知識

ゆ 由来もの

て 抵抗もの

ク 他教科クロスオーバー

グ グローバルもの

年号 年号の知識必要

地図 地図問題(都市 川などの位置)

形式

空欄:選択肢ありのリード文穴埋め

記述:リード文空欄または下線部について用語を書く

単独正誤:選択肢の中から正しいもの/誤りを含むものを選ぶ

複合正誤:ふたつの文章の正誤の組み合わせを選ぶ

時代整序:用語/文章を古いものから順に並べる

地図位置:地図上の位置を選ぶ

組み合わせ:ふたつの事項の正しい組み合わせを選ぶ

正文の数:正しい選択肢の数を数字で書く

正文組み合わせ:正しい文章がどれとどれかの組み合わせを選ぶ

② 解答例(2月5日、2月6日)

空欄、記述、単独正誤のうち短答は解答例の欄に解答例を、それ以外は解答例に問い、内容に正誤判定を書いてあります。前半のⅠ~Ⅲが2月5日、後半が2月6日。

大問 解答例 内容 タイプ
1 ニネヴェ 3 シュメール人の都市ではない 単独正誤
1 カッシート 3 オリエントを統一していない 単独正誤
1 カルタゴ 1 ギリシア人の植民市ではない 単独正誤
1 ダキア 4 ローマ共和政の属州ではない 単独正誤
1 トロイヤ 2 ギリシア本土ではない 単独正誤
2 世界の古代文明の特徴 3 水田=河姆渡神の子=エジプト計画都市=ドーラヴィーラ 組み合わせ
3 メソポタミア南部の都市成立の背景 3 メソポタミア=灌漑農業の発達 単独正誤
4 世界史上の都市と商業 1 ペイシストラトス=商工業奨励 単独正誤
5 アテネアゴラに建てられた建築物の年代順 8 ペイシストラトスクレイステネス→前2C→前1C 時代整序 年号
6 歴史上の社会と娯楽の関係 4 アテネ=演劇上演 単独正誤
7 世界史上の宮殿 3 イエズス会円明園の建設 単独正誤
8 人皇帝の時代 1 ゲルマン人ササン朝の侵入 単独正誤
9 医学の発展と伝染病 2 ジェンナー=種痘法 天然痘インディオの人口減少 組み合わせ
10 伝染病についての資料の読み取りの正しい組み合わせ 7 W〇ペリクレスZ○伝染病にはアポロンが関わっている 正文組み合わせ
11 ジッグラト 記述
11 フェイディアス 記述
11 フォロ=ロマーノ 記述
11 記述
1 コンスタンティノープル 11 空欄
1 レイマン1世 18 空欄
1 イラク 7 レイマン1世がサファヴィー朝から奪う 空欄
1 ハプスブルク 25 空欄
1 シーア派 14 空欄
1 f アッバース1世 4 空欄
1 g ティムール 23 空欄
1 h ロディー朝 39 空欄
1 i アクバル 2 空欄
1 j マンサブダール制 34 空欄
1 k アウラングゼーブ 1 空欄
2 李朝 2 16~18世紀に存在していない政権 単独正誤
3 スーフィー 記述
4 ラシード=アディーンについて 2 集史=イル=ハン国 組み合わせ
5 ジズヤ 記述
6 オスマン帝国の政策 4 ユダヤ教徒キリスト教徒の共同体に自治が認められた 単独正誤
7 シク教 記述
8 ゴア 記述
9 インド洋の交易について 2 スマトラ島=シュリーヴィジャヤ=港市国家を従えた 単独正誤
10 近世イスラーム帝国とヨーロッパの関係 2 ○カピチュレーション 不平等条約のもと 正文組み合わせ
1 ロンドン 16 空欄
1 パリ 10 空欄
1 イギリス 3 空欄
1 ドイツ 7 空欄
2 ウィーン会議 記述
2 ヴィクトリア女王 1837年に即位 記述
2 クリミア戦争 1853年に開始 記述
2 ナポレオン3世 セーヌ県知事のオスマンのパリ改造 記述
2 ダイムラー 内燃機関 記述
3 A イギリス植民地帝国 3 a×香港島割譲は天津条約ではなく南京条約b〇コンバウン朝を滅ぼしインド帝国編入 複合正誤
3 B 産業革命 1 a○ジョン=ケイ飛び杼b〇スティーブンソン蒸気機関車 複合正誤
3 C 1867年 1 a〇北ドイツ連邦b〇オーストリア=ハンガリー帝国 複合正誤
3 D 印象派 2 a〇光や色彩の表現を重視b×「ムーラン=ド=ラ=ギャレット」はミレーではなくルノアール 複合正誤
3 E 新しい世界認識 1 a〇ダーウィン種の起源b〇スペンサー社会ダーウィン主義 複合正誤
3 F 市場の独占 3 a×大企業を中心とする企業集団はトラストではなくコンツェルンb○1890年反トラスト法 複合正誤
3 G 科学技術の進歩 3 a×無線はドイツではなくイタリアのマルコーニb〇ライト兄弟アメリ 複合正誤
3 H アジアアフリカ 4 a×南ア戦争でトランスヴァールとオレンジがケープ植民地に統合b×インド大反乱後も藩王国は存続 複合正誤
3 I バルカン半島 2 a〇サンステファノ条約でバルカン三国独立b×ベルリン条約でブルガリアは領土拡大ではなく縮小 複合正誤
1 司馬遷 20 空欄
1 山東 19 空欄 地図
1 匈奴 10 空欄
1 劉邦 34 空欄
1 安史の乱 1 空欄
1 f 黄巣の乱 16 空欄
1 g 遼河 35 空欄
1 h 女真 22 空欄
1 i 淮河 36 空欄
2 本草綱目 記述
3 四川省について 3 トウガラシは13世紀ではなく16世紀以降にもたらされた 単独正誤 年号
4 歴史上の長距離輸送と商品 2 a〇ソグド人オアシスの道奢侈品交易b×コバルトは青磁ではなく染付に使われた 複合正誤
5 覇者 記述
6 均輸法と平準法の説明 5 均輸法=Z 平準法=X 組み合わせ
7 唐代の流通・商業に関して正しい文 1 ムスリム商人が広州揚州に来る 正文の数
8 両税法 記述
9 藩鎮 記述
10 1 北方民族との関係 4 a×燕雲十六州は後晋からb×契丹は二重統治 複合正誤
10 2 1 a〇北宋契丹澶淵の盟b〇北宋は金と結んで契丹を攻撃 複合正誤
11 山西商人 長城に近い 記述
12 交鈔 記述
1 結婚税 縁組で領外に出る時に払う 記述
1 不輸不入権 記述
1 シャンパーニュ地方 記述
1 フッガー家 記述
1 貨幣地代 記述
1 独立自営農民 記述
1 ジャックリーの乱 記述
1 商業革命 記述
2 恩貸地制 1 空欄
2 君主と臣下の双方に義務 3 空欄
2 三圃制 2 空欄
2 地中海交易 3 空欄
2 ツンフト闘争 3 空欄
2 火砲 1 空欄
2 ユダヤ 4 空欄
2 グーツヘルシャフト 2 空欄
3 A ジェノヴァ 3 コロンブスの出身地 単独正誤
3 B ベルリン 19 文中にない 大陸封鎖令 単独正誤
3 C ロンドン 12 ギリシア独立の国際会議1830年 単独正誤
3 D フランクフルト 13 国民議会 単独正誤
3 E ニュルンベルク 14 国際軍事裁判所 単独正誤
1 セルビア 10 空欄
1 ローザ=ルクセンブルク 20 空欄
1 マクドナルド 16 空欄
1 アルバニア 1 空欄
2 ミドハト=パシャ 記述
2 ブルガリア 記述
2 セーヴル条約 記述
2 フィウメ 記述
2 ソフホーズ 記述
3 WW1終了までのドイツの出来事 4 無制限潜水艦作戦→ロシアと講和→キール軍港→ヴィルヘルム2世亡命 時代整序
4 19世紀末~20世紀初頭の同盟関係 2 a○ビスマルク外交の内容b×日英同盟→英仏協商の順 複合正誤
4 女性参政権 3 a×フランスの女性参政権は1940年代b〇トルコでも政教分離で女性参政権 複合正誤
4 ヴェルサイユ体制の条約 1 a〇オーストリアサンジェルマン条約b〇ハンガリートリアノン条約 複合正誤
4 トルコ共和国 1 a〇ケマルギリシアからイズミル奪還b〇ローザンヌ条約で主演回復 複合正誤
4 イギリス選挙法改正 4 a×第1回では秘密投票は実施されてないb×都市労働者の選挙権は第2回 複合正誤
4 教皇庁とイタリア 3 a×ラテラン条約b〇1870年の教皇領併合がきっかけ 複合正誤
4 世界恐慌前のドイツ経済 2 a〇ドーズ案の内容b×ヤング案では賠償総額の削減が合意 複合正誤
4 国際連盟 3 a×ドイツの加盟は1926年b〇ソ連1934年加盟 複合正誤

フォロ・ロマーノは東西約300m、南北約100mに渡って存在する古代ローマの政治の中心部の遺跡。フォロ広場とパラティーノの宮殿の建築。パブリックドメイン

3 分析編(概要)

① 合格には80%以上の正解

| | 2/5 | 2/6 | 2/7 | 2/8 | 2/9 | 2/10 | 合計 | | | ------ | --- | --- | --- | --- | ---- | --- | ----------------------------------------------------------------- | | ◎ | 32 | 34 | 42 | 30 | 40 | 40 | 218 | | ○ | 14 | 19 | 17 | 10 | 7 | 11 | 78 | | △ | 6 | 4 | 3 | 10 | 10 | 6 | 39 | | ▲ | 4 | 3 | 1 | 7 | 2 | 4 | 21 | | 小計 | 56 | 60 | 63 | 57 | 59 | 61 | 356 | | 目標% | 85% | 89% | 93% | 77% | 87% | 87% | |

ぶんぶんの見立てでは合格には8割越えが必要です。同志社大学の合格者平均もそれに近いです。合格者は強者揃いです。「点を取らせる」問題での取りこぼしは不合格につながります。

② 差がつくところ

○~▲問題のふるい落としポイント

| | 2/5 | 2/6 | 2/7 | 2/8 | 2/9 | 2/10 | 合計 | | | ------- | --- | --- | --- | --- | ---- | -- | -- | | 紛らわしい | 1 | 5 | 7 | 1 | 0 | 0 | 14 | | ややこしい | 2 | 0 | 2 | 1 | 1 | 3 | 9 | | 細かい | 10 | 4 | 4 | 14 | 7 | 11 | 50 | | 理解 | 7 | 10 | 4 | 8 | 3 | 1 | 33 | | 前後 | 2 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 5 | | 由来 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | | 抵抗 | 0 | 2 | 0 | 2 | 8 | 2 | 14 | | クロスオーバー | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | | グローバル | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | | 年号 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | | 地図 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | | 小計 | 23 | 25 | 20 | 27 | 19 | 20 | |

中堅私立だと紛らわしい問題の判別が合否に関わりますが、同志社大学で「細かい」(事項の正確ないつ・どこ・だれ)と「理解」(教科書の記述内容)がふるい落としポイントです。これは「複合正誤」問題で問われます。

一問一答記述問題は平易ですが、「ややこしい」(漢字やカタカナの書きにくいもの)が崖っぷち問題です。難関大学ならではの「権力に抵抗した人」も頻出です。

したがって同志社大学で高得点を取るためには、空欄補充は一問一答の正確な知識、記述問題は書きづらいもののトレーニング、複合正誤問題は教科書の記述内容の理解が必要といえます。

③ 出題形式

2024年度

2024 2/5 2/6 2/7 2/8 2/9 2/10 合計
空欄 15 21 39 25 28 23 151
記述 13 19 15 13 14 16 90
単独正誤 13 6 2 0 1 4 26
複合正誤 9 11 6 16 11 14 67
時代整序 1 1 0 1 0 1 4
地図位置 0 0 0 0 0 0 0
組み合わせ 3 1 0 0 2 3 9
正文の数 0 1 1 2 1 0 5
正文組み合わせ 2 0 0 0 2 0 4
小計 56 60 63 57 59 61 356

参考 2018年~2024年

年度別合計 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 小計 割合
空欄 172 160 174 176 168 153 151 1154 45.7%
記述 96 93 97 95 92 92 90 655 25.9%
単独正誤 50 31 38 40 36 53 26 274 10.8%
複合正誤 31 64 39 32 45 49 67 327 12.9%
時代整序 1 1 4 3 11 2 4 26 1.0%
地図位置 1 0 0 1 0 0 0 2 0.1%
組み合わせ 2 7 11 11 3 2 9 45 1.8%
正文の数 3 3 2 8 6 4 5 31 1.2%
正文組み合わせ 0 0 0 0 0 9 4 13 0.5%
小計 356 359 365 366 361 364 356 2527

2024年については、2月5日が空欄補充が少なく新傾向問題がやや多いです。この日は文系学部の全学日程で最も受験者が多く、ここで文科省の顔をたてた新傾向の出題をして後は通常運転という戦略です(バラしたらダメか)。

7年分を見ると、選択肢付き空欄補充は減少傾向、単独正誤も年度によって差があるもののやや減少です。記述問題は同程度です。

代わって複合正誤問題はやや増加、共通テストの「あーX」的な組み合わせ問題、三つの文章の正誤の組み合わせを選ぶ問題が2023年から増加傾向です。問題数が多少減った分解答に手間のかかる問題が増えているといえます。

4 分析編(老舗の味編)

① 複合正誤(同志社大学スペシャル)

2024年の6試験日中の複合正誤問題、356題中67問のうち◎以外の43問

| | 大問 | 問 | 枝 | 解答例 | 記 | 内容 | タイプ | 難 | タ | | | ----- | - | -- | --- | ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | -- | ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | ---- | - | -- | | 205 | Ⅲ | 3 | D | 印象派 | 2 | a〇光や色彩の表現を重視b×「ムーラン=ド=ラ=ギャレット」はミレーではなくルノワール | 複合正誤 | △ | こ | | 205 | Ⅲ | 3 | E | 新しい世界認識 | 1 | a〇ダーウィン種の起源』b〇スペンサーは社会ダーウィン主義 | 複合正誤 | ○ | り | | 205 | Ⅲ | 3 | F | 市場の独占 | 3 | a×大企業を中心とする企業集団はトラストではなくコンツェルンb○1890年反トラスト法 | 複合正誤 | △ | こ | | 205 | Ⅲ | 3 | G | 科学技術の進歩 | 3 | a×無線はドイツではなくイタリアのマルコーニb〇ライト兄弟アメリカ | 複合正誤 | △ | こ | | 205 | Ⅲ | 3 | H | アジアアフリカ | 4 | a×南ア戦争でトランスヴァールとオレンジがケープ植民地に統合b×インド大反乱後も藩王国は存続 | 複合正誤 | △ | り | | 205 | Ⅲ | 3 | I | バルカン半島 | 2 | a〇サンステファノ条約でバルカン三国独立b×ベルリン条約でブルガリアは領土拡大ではなく縮小 | 複合正誤 | ▲ | り | | 206 | Ⅰ | 4 | | 歴史上の長距離輸送と商品 | 2 | a〇ソグド人オアシスの道奢侈品交易b×コバルトは青磁ではなく染付に使われた | 複合正誤 | △ | り | | 206 | Ⅰ | 10 | 2 | 同 | 1 | a〇北宋契丹澶淵の盟b〇北宋は金と結んで契丹を攻撃 | 複合正誤 | ○ | り | | 206 | Ⅲ | 4 | ② | 女性参政権 | 3 | a×フランスの女性参政権は1940年代b〇トルコでも政教分離で女性参政権 | 複合正誤 | ▲ | こ | | 206 | Ⅲ | 4 | ③ | ヴェルサイユ体制の条約 | 1 | a〇オーストリアはサンジェルマン条約b〇ハンガリートリアノン条約 | 複合正誤 | △ | ま | | 206 | Ⅲ | 4 | ④ | トルコ共和国 | 1 | a〇ケマルはギリシアからイズミル奪還b〇ローザンヌ条約で主権回復 | 複合正誤 | ○ | り | | 206 | Ⅲ | 4 | ⑤ | イギリス選挙法改正 | 4 | a×第1回では秘密投票は実施されてないb×都市労働者の選挙権は第2回 | 複合正誤 | ▲ | り | | 206 | Ⅲ | 4 | ⑦ | 世界恐慌前のドイツ経済 | 2 | a〇ドーズ案の内容b×ヤング案では賠償総額の削減が合意 | 複合正誤 | △ | ま | | 206 | Ⅲ | 4 | ⑧ | 国際連盟 | 3 | a×ドイツの加盟は1926年b〇ソ連1934年加盟 | 複合正誤 | ○ | 年号 | | 207 | Ⅲ | 2 | ② | ウィーン体制期の思想 | 1 | a〇サン=シモン b〇リスト保護貿易 | 複合正誤 | ○ | り | | 207 | Ⅲ | 2 | ④ | ポーランドについて | 1 | a〇WW1後に復活 b〇アレクサンドル2世の専制 | 複合正誤 | ○ | り | | 207 | Ⅲ | 2 | ⑤ | マルクスの思想 | 2 | a〇共産党宣言 b×資本論は自由放任経済ではない | 複合正誤 | ○ | り | | 208 | Ⅰ | 1 | 1) | メソアメリカ文明 | 3 | a×ジャガーはオルメカ b○アステカ=テノチティトラン | 複合正誤 | △ | こ | | 208 | Ⅰ | 1 | 2) | インカ帝国 | 4 | a×インカの文字はキープ b×インカの新しい首都はリマ | 複合正誤 | △ | こ | | 208 | Ⅰ | 1 | 3) | ラテンアメリカの支配 | 1 | a○アシエントの説明 b○アメリカの由来 | 複合正誤 | ○ | り | | 208 | Ⅱ | 2 | あ | トリエント公会議 | 1 | a○教皇の至上権 b○禁書目録宗教裁判 | 複合正誤 | ○ | り | | 208 | Ⅱ | 2 | い | フェリペ2世 | 1 | a○メアリ1世と結婚 b○カトーカンブレジ条約 | 複合正誤 | ○ | り | | 208 | Ⅱ | 2 | う | 喜望峰 | 3 | a×ジョアン2世の命 b○マゼラン西回り | 複合正誤 | ○ | り | | 208 | Ⅱ | 2 | え | カルヴァン | 4 | a×ツヴィングリチューリヒ b×長老派は牧師を監督ではなく補佐する | 複合正誤 | ▲ | り | | 208 | Ⅱ | 2 | か | 領邦教会 | 2 | a○領邦教会の内容b×領民の信仰の自由はない | 複合正誤 | ○ | り | | 208 | Ⅱ | 2 | き | ルター | 2 | a○ヴォルムス議会で自説の撤回拒否 b×ザクセン選帝侯にかくまわれる | 複合正誤 | △ | こ | | 209 | Ⅰ | 2 | A | ローマの皇帝 | 3 | a×分割統治はディオクレティアヌス b〇コンスタンティヌス帝はソリドゥス金貨 | 複合正誤 | ○ | こ | | 209 | Ⅰ | 2 | B | ビザンツ帝国 | 3 | a×ビザンツ文化の世界史的意義 b〇ユスティニアヌスローマ法大全 | 複合正誤 | △ | り | | 209 | Ⅰ | 2 | C | ゲルマン人 | 2 | a〇西ゴート=イベリア半島 b×アッティラは西ローマに敗れる | 複合正誤 | △ | こ | | 209 | Ⅱ | 4 | い | ルイジアナ | 2 | a〇パリ条約 b×ルイジアナを購入したのはジェファソン | 複合正誤 | △ | こ | | 209 | Ⅱ | 4 | う | ムガル帝国 | 3 | a×タージマハルはシャージャハーン b〇シヴァージーマラーター王国 | 複合正誤 | △ | こ | | 209 | Ⅱ | 4 | え | スウェーデン | 2 | a〇リンネ植物学 b×NATO加盟はEU加盟より後 | 複合正誤 | ▲ | こ | | 209 | Ⅲ | 5 | | サレカット=イスラーム | 3 | a×パン=イスラーム主義とは関係ない b〇最初は相互扶助的 | 複合正誤 | △ | て | | 209 | Ⅲ | 6 | | インドとパキスタンの独立 | 3 | a×ガンディーはヒンドゥー教徒に暗殺されるb 〇カシミール紛争 | 複合正誤 | ○ | り | | 210 | Ⅰ | 5 | | ウイグルについて | 1 | a〇キルギスの攻撃 b〇独自の文字マニ教 | 複合正誤 | ○ | こ | | 210 | Ⅰ | 8 | | トルキスタンについて | 3 | a×カラハン朝はトルコ系 b〇左宗棠はヤークーブ=ベクから新疆奪回 | 複合正誤 | ▲ | こ | | 210 | Ⅰ | 13 | | 8世紀の中国周辺部 | 1 | a〇吐蕃は一時長安占領 b〇南詔の台頭 | 複合正誤 | ○ | こ | | 210 | Ⅰ | 17 | | キリスト教と東方の関係 | 2 | a〇唐代の長安に伝わる b×教皇庁アヴィニョンにあったのは14世紀 | 複合正誤 | ○ | 年号 | | 210 | Ⅱ | 3 | Z | 19~20Cのラテンアメリカ | 3 | a×ディアス b〇パン=アメリカ会議 | 複合正誤 | ○ | こ | | 210 | Ⅲ | 3 | 1) | WW2後の東欧 | 3 | a×ワルシャワ条約機構は8カ国 b〇チェコスロヴァキアクーデタ | 複合正誤 | ▲ | こ | | 210 | Ⅲ | 3 | 2) | 中華人民共和国 | 2 | a〇1949年ソ連原爆実験成功 b×ドイツ民主共和国ソ連の占領下 | 複合正誤 | ▲ | 年号 | | 210 | Ⅲ | 3 | 4) | ニクソン | 2 | a〇任期途中で辞職b×中国との国交樹立はもっと後 | 複合正誤 | △ | こ | | 210 | Ⅲ | 3 | 5) | デタント | 2 | a〇CSCヘルシンキ宣言b×東方外交はブラント | 複合正誤 | △ | こ |

356題中67問(18.8%)がこの形式なので、この出来が合否に関わります。そのうち43問(12%)がやや難しく、詳しく見ると細かい内容が19、教科書の理解を試すものが18あります。

1)判別が紛らわしいもの

2月6日 Ⅲ 設問4 ⑤

ⅰ連合国とオーストリアの間にはサン=ジェルマン条約が結ばれた。正

ⅱ連合国とハンガリーの間にはトリアノン条約が結ばれた。正

紛らわしい用語の定番。当ブログの読者なら瞬殺。

2月6日 Ⅲ 設問4 ⑦

ⅰ賠償金支払いの新方式であるドーズ案をきっかけとして、ドイツではアメリカ資本の導入が進んだ。正

ⅱ1929年のヤング案では、賠償金額の削減が認められず、ドイツ経済回復の足かせとなった。誤

用語の内容が紛らわしい問題。ドーズ案は年支払金額の減額(5年間)とアメリカ資本の導入、ヤング案は賠償金総額の削減と返済期間の緩和。

2)事項の細かいいつどこだれ

2月9日 Ⅰ 設問2 C

西ゴート王国イベリア半島を支配した。正

フン族アッティラは、東ローマとゲルマン人の連合軍に敗れた。誤

カタラウヌムの戦いは知っていても、誰と戦ったのかまでは難しい。

2月9日 Ⅱ 設問4 え

スウェーデン出身のリンネが植物分類学を確立した。正

スウェーデンヨーロッパ連合北大西洋条約機構の双方とも発足と同時に加盟した。誤

スウェーデンはロシアのウクライナ侵攻を踏まえて2022年5月にフィンランドとともにNATO加盟を申請し、トルコが2024年1月、ハンガリーが同2月に承認して32番目の加盟となった。ウクライナ関連のニュースでやっていた。ちなみにEU加盟は1995 年。時事問題かつスウェーデンのヨーロッパ内での立ち位置に関する問題。

3)教科書の内容理解

2月5日 Ⅲ 設問3 H

南アフリカ戦争により、ケープ植民地はトランスヴァール共和国オレンジ自由国に併合された。誤

bイギリスはインド人傭兵の反乱を機にムガル工程を廃し、藩王国も全廃した。誤

藩王国の取り潰し政策がインド大反乱を招いたので、インド帝国はその領域を直轄領と藩王国の間接統治に分け、現地支配層を懐柔した。教科書の理解を問う。

2月6日 Ⅲ 設問4 ⑤

1832年の選挙法改正により、秘密投票が実施された。誤

1884年の選挙法改正においては、都市労働者が選挙権を獲得した。誤

第一回選挙法改正の後に起きたチャーチスト運動で「秘密投票」が要求にあがっていることからⅰは誤文と判断できる。知識をつなげて推理する問題。ⅱは紛らわしいものの鉄板。

「私立は暗記中心で思考力を測っていない」とうそぶく素人有識者がいるが、同志社大学については客観式の方が正確な知識や教科書の内容理解が求められる。

オーギュスト・ルノワール、ル・ムーラン・ド・ラ・ギャレット(1876年)オルセー美術館。パリのモンマルトルにあるダンスホールを題材にしています。

難関私立では美術史や音楽史が頻出です(慶應国立西洋美術館ロダンの彫刻を答えさせていた)。ぶんぶんは「ディスタンクシオン問題」と命名しています。

ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020年12月 (NHK100分de名著)

② 記述

6試験日の記述式90問中やや答えづらい36問

日程 大問 枝問 答え
205 11 ジッグラト
205 11 フェイディアス
205 11 フォロ=ロマーノ
205 8 ゴア
205 2 ダイムラー
206 11 山西商人
206 1 結婚税
206 1 商業革命
206 2 セーヴル条約
206 2 フィウメ
206 2 ソフホーズ
207 4 唯名論
207 5 サレルノ大学
207 6 ローランの歌
207 4 金陵
207 6 壬辰
207 3 啓蒙思想
207 7 フィヒテ
208 4 単性論
208 5 マンサ=ムーサ
208 3 アドリアノープル
208 3 カルロス1世
208 3 ガレー船
208 8 WASP
208 9 棍棒外交
208 10 マッカーシズム
208 11 ブレトン=ウッズ体制
209 3 ユリアヌス
209 2 ヴレンヌ逃亡事件
209 2 サン=キュロット
209 2 パフレヴィー2世
210 2 冒頓単于
210 11 柔然
210 12 ソンツェン=ガンポ
210 4 ムラ―ト
210 2 連帯

356問中一問一答の記述式が90問(約25%)、うち答えづらいのが36問(約10%)です。合格者平均80%の第二関門になっています。

「紛らわしい」はWW1の講和条約アメリカ大統領の「○○政策」、「ややこしい」は書きづらいカタカナや「ど忘れ」する漢字です。

「理解もの」では、概念用語では「商業革命」、紛らわしいものでもある「山西商人」と「唯名論」はリード文のヒントが教科書の記述になっています。

その他「細かいもの」「前後もの」「抵抗もの」(マッカーシズムは難関では頻出)と難関私立大学らしい用語が並びます。授業の時から「難関大学はここまで聞いてくる!」と思ってギラギラしましょう。ただし自分で細かい用語を探して覚える必要はありません。

同志社に限らず難関私立大学や国公立の二次試験の一問一答のふるい落としポイントは、紛らわしい、ややこしい語句を正確に書ける、有名な事項については「いつ・どこ・だれ」や教科書の記述内容とセットで覚える、有名な事項の前後のものにも興味を抱く、権力に抵抗した人に思いをはせる、です。

4 分析編(新傾向編)

① 組み合わせ

2月5日 Ⅰ 設問2

世界各地の古代文明の特徴についての記述あ~うと、その文明を代表する遺跡X~Zの組み合わせとして正しいものを、次の選択肢1~6から一つ選びなさい

世界各地の古代文明の特徴

あ 大河の下流部に形成され、水田耕作がさかんであった。

い 大河の定期的な氾濫によって豊かな農業がおこなわれ、神(神の子)とされる王が強大な権力を持った。

う 計画的に建設された年には沐浴場が備わり、動物と未解読の文字が刻まれた印章が多くみられる。

文明を代表する遺跡

X アマルナ

Y 河姆渡

Z ドーラヴィーラ

(選択肢は省略)

共通テストの「あーX」問題は、用語「あ、い」のうち問題文に合致する方を選び、その説明として正しい「X、Y」を組み合わせて選ぶ。同志社でも2月5日Ⅱの4のような名前と著書の組み合わせを選ぶ問題は従来からあった。

これは三つの組み合わせ。X~Zの用語を知っていれば「あーY いーX うーZ」と即答だがYとZは「前後もの」知識。見た目は共通テストで内容は私立的な問題。

② 正文の数

2月6日 Ⅰ 設問7

唐代の流通・商業の発展について述べた以下のア~ウのうち、正しい文はいくつあるか。正しい文の数を1~3で答えなさい。正しい文がない場合は数字4を記入しなさい。

海上貿易の活発化を受けて大運河が広州まで延伸された。

イ 海路で中国に至るムスリム商人が増え、広州・揚州などの港町が栄えた。

貨幣経済が発達し、会子とよばれる紙幣が流通した。

首都圏私立大学風の出題で、「数を答える」だとまぐれ当たりの可能性もあるので、選択肢に1,2、4、6のような番号を振って足した数を入れる大学もある。四つの選択肢から正しいものを選ぶよりはドキドキするが正確な知識があれば無問題。

ウに関して、唐代の手形である飛銭が北宋の交子、南宋の会子の原型というのは私立大学でよく見かける。これも「前後もの」。

③ 正文組み合わせ問題

2月5日 Ⅱ 設問10

記述X~Zについて、内容が正しい文の記号の組み合わせを、次の1~8から一つ選び、番号を記入しなさい

X サファヴィー朝はスペイン人をペルシア湾ホルムズ島から追放した。

Y オスマン帝国がフランスなどの商人に与えたカピチュレーションは、19世紀になると不平等条約のもとになった。

Z 18世紀にムガル帝国の統治が弱体化する中で、スペイン継承戦争と連動して起こったプラッシーの戦いにおいて、イギリス東インド会社がフランスとベンガルの地方政権の連合軍を破った。

1 X 2 Y 3 Z 4 X・Y

5 X・Z 6 Y・Z 7 X・Y・Z 8 なし

正文の数を記入する問題のまぐれ当たり防止バージョン。一問一答の知識で解答できる(X=誤 スペイン→ポルトガル、Z=誤、スペイン継承戦争七年戦争)。

④ 共通テスト2023年本試験を意識した問題

2月5日 Ⅰ 設問5

アテネアゴラに建てられた建造物や施設について、下線部4と同じ段落の文章を参考にしながら、古いものから年代順に正しく配列したものを一つ選びなさい。

正解:南東の泉場→会議場→アッタロスのストア→アグリッパの音楽堂

おそらく共通テスト2023年本試験 問題番号27を意識した問題。

この問題は共通テストを「より思考力を測る問題」と評価する人には文章を読解して順番を判断する良問らしいが、制限時間の中で根拠をもって解答するなら1カルケドン公会議=451年→3グレゴリウス1世=6世紀末→2ベーダ(リード文に731年)と年号で解く方が確実。もちろん読解でも同じ結論に達する。

同志社の問題は文章中のヒント(括弧内)から、「南東の泉場」(アテネを支配していた僭主=ペイシストラトス)→「会議場」(部族制=クレイステネス)→「アッタロスのストア」(小アジアのペルガモン王国=東地中海は前2世紀に征服される)→「アグリッパの音楽堂」(初代ローマ皇帝)の順番になる。つまり通常の時代整序問題。

2月5日 Ⅰ 設問10

下線部9の伝染病についての次の資料A・B(省略)に関するW~Zを読み、内容が正しい文の記号の組み合わせを選択肢から一つ選び記号で答えなさい。

W 資料Aの伝染病の流行は、アテネの指導者ペリクレスの命を奪った

X 資料Bの伝染病が広まったきっかけは、当時ローマ帝国の東方にあったササン朝との戦争であった

Y 資料A・Bとも、伝染病はアテネローマ市よりも先に、エジプトで広まったと伝えている

Z 資料A・Bとも、伝染病の流行には同じ神が関わっているという理解を伝えている

選択肢がW、X、Y、Z、WX、WY、WZ、XY、XZ、YZ、WXY、WXZ、WYZ、XYZ、YXYZ、なしと16種類もあり、同志社大学もうっかり選択肢にWZを二つ入れてしまい訂正を出すほどの複雑さ。(*_*)

資料文の語句を拾うと、W=「ペロポネス戦争」から正、X=出典が『自省録』なので誤(年号)、Y=文中に「エチオピアから始まり」とあるので誤、Z=資料Aはデルフィの神託の神、資料Bはアポロン神なので正(細かい)、とYのみ「国語の問題」で残りは一問一答問題。

まとめ

今回取り上げた2024年同志社大学の特に全学入試の問題は、空欄補充や四択の正誤問題が減った一方で、共通テスト風味の新機軸問題が追加されています。同志社大学文科省や入試改革を意識していることがうかがわれます。

ただ問題を詳しく検討すると、同志社大学受験生なら当然準備している、基本的な知識に加えてもう少し先の知識(細かい「いつどこなに」、重要事項の前後の知識)でクリアできます。だから国立の併願で同志社を受験するなら、共通テスト対策と並行して同志社の過去問で力をつけて、共通テストも高得点を狙いましょう。

おわりに