出張者のための中国語講座 (original) (raw)

〇【男】**呂洞賓**(りょどうひん、ルゥドンピン)

**呂洞賓**は、背に剣を負った書生で、

青年或いは中年男性として描かれる。

唐時代の実在の人物とされ、

幼いころから聡明であった。

科挙の試験を受けたものの合格せず、

漢鍾離について修行し仙人になったとされている。

民衆の救済に努めることを心に誓い、

各地に神出鬼没して奇跡を現し,民衆の災禍を救ったという。

〇【女】**何仙姑**(かせんこ、ハァシェングー)

八仙の唯一の女性で、仙姑は仙女の意味である。

唐の時代、雲母渓にいた何素の娘で、

十四、五歳のとき、夢に神人が現れて、

「雲母の粉を食べなさい。そうすれば

身体が軽くなって、不死となるだろう」と言われた。

明け方、目が覚めた後、言われたとおり

雲母の粉を食べてみると、

確かに身体が軽くなり仙術を授かったという。

〇【老】**張果老**(ちょうかろう、ヂァングォロウ)

老人を象徴する仙人で、

後ろを向いてロバに乗っている。

このロバは折りたたんで持ち歩くことができ、

水を吹きかけるともとに戻るという。

折りたたみ式のロバを瓢箪の中に

入れていたため 「瓢箪から駒(ロバ→小馬→駒)」

ということわざの由来であるとされている。

〇【少】韓湘子(かんしょうし、ハンシャンズゥ)

元々は唐代の文豪・韓愈の甥で、

韓愈の子弟たちが学問にはげむ中、

韓湘子は、酒に浸り放蕩していたが、

二十歳のころ、突然行方不明になり、

数年後にぼろをまとった姿で家に戻ったとき、

いつの間にか仙術を操るようになっていたという。

明八仙と暗八仙

八仙は、それぞれ神通力を発揮する法器を所持しており、

それらは、暗八仙と呼ばれています。

一方、八仙が描かれた絵のことを明八仙と言います。

これらの持ち物の特徴からも、誰がどの八仙かわかります。

瓢箪(ピャオダン):**李鉄拐(りてっかい)または鉄拐李**

雲陽板(ユンヤンバン):**曹国舅**(そうこっきゅう)

芭蕉(バジャオシャン):漢鍾離(かんしょうり)または**鍾離権**(しょうりけん)

花籠(ファロン): 藍采和(らんさいわ)

宝剣(バオジエン):**呂洞賓**(りょどうひん)

蓮の花(ハァファ):**何仙姑**(かせんこ)

魚鼓(ユゥグゥ):**張果老**(ちょうかろう)

横笛(ディズゥ):韓湘子(かんしょうし)

日本の七福神と似た存在で、中国には八仙というものがあります。

七福神が日本で定着しているように、

八仙は中国では誰もが知る存在です。

日本の七福神と同様におめでたい存在として、

絵画や陶磁器などに描かれ、

しかも七福神と同じく船に乗っています。

七福神は、その名前の通り神仏であるのに対し、

八仙は、元々は人間であり、道教による修行を経て、

不老不死や道教の術を獲得し、仙人になったとされる存在です。

道教は、漢民族による土着の宗教です。

多神教なので、様々な神や仙人が居てややこしいのですが、

中華圏の文化を理解するのに欠かせない存在です。

八仙(バーシェン)

八仙はそれぞれ、貴、賤、富、貧、

男、女、老、少を代表し様々な階層の人々から

信仰を集めてきました。

〇【賤】**李鉄拐**(りてっかい、リーティエグァイ)

または鉄拐李 (てっかいり、テッグァイリー)

李鉄拐は、ボロボロの服を着て、

足の不自由な物乞いの姿をしています。

元々がっしりした体格の道士でしたが、

あるとき、太上老君に崋山で会うことになり、

魂を遊離させ、戻ってくるまでの間に、

自分の肉体を弟子に焼かれてしまいました。

戻る肉体を失った李鉄拐は、

偶然、飢え死にした乞食の遺体を見つけ、

その肉体を借りて蘇ったため、

ぼろ布をまとい、杖をつく姿をしています。

〇【貴】**曹国舅**(そうこっきゅう、ツォウゴォジュウ)

北宋建国の元勲、曹彬の五男の曹玘の子。

仁宗の皇后(曹皇后)の弟であるため、

国舅(天子の外戚の呼称)と呼ばれる。

貴族の社会に生きていたため役人の服を着て

整った身なりをしています。

弟の曹景植が姉の権力を笠に着て悪事

を働くのを見かねて、役人の服を脱いで

山ごもりの修行をしました。あるとき、

すでに仙人になっていた呂洞賓鍾離権に出会い、

神仙の仲間入りを果たしたという。

〇【富】漢鍾離(かんしょうり、ハンジョンリー)

または**鍾離権**(しょうりけん)

漢鍾離は、頭に二つのあげまきを結い、

太った腹を晒したものとして描かれています。

元々は、漢に仕えて出世し将軍になり、

漢が滅んだ後は西晋に仕えたという。

しかしある戦いで敗れ、終南山に逃げ込むも

道に迷ってしまう。山中をさまよい歩いていると、

東華帝君に出会い、仙術を授かったという。

〇【貧】藍采和(らんさいわ、ランツォイハァ)

若々しい容姿をした少年として描かれている。

いつも拍板(拍子木)を持ち、

横笛を吹きながら仙道の教えを音楽にのせて、

町中を歩いたといいます。彼は神出鬼没で、

現れたと思いきや、すぐまた不意にいなくなってしまう。

度々天下を周遊しており、

いつまで経っても年をとることはなかったという。

中国神話は、存在するものの、

日本で有名なのは、中国の歴史や故事成語

長い歴史を有する割には、なぜ神話は

有名ではないのでしょうか?

実は、これは中国内でも同じで、

神話は知識として知っている、

或いは様々な伝説の一つのような位置づけです。

これにはいくつか原因があると考えられます。

論語に、「子、怪力乱神を語らず」とあるとおり、

儒教は諸外国の宗教とは異なり、

神仏や死後の世界などは認めていません。

孔子は紀元前500年代の人であり、

後に劉邦漢王朝を建国すると儒教が国教化されました。

このような歴史的経緯、さらに現代中国が

共産主義体制ということもあって、

多くの中国人は無宗教です。

神話はどうしても、伝説や逸話を

超越するような話が多く、宗教的要素を

持っているため、無宗教の人が多い中では

定着しにくいようです。

「民族の神話を学ばなかった民族は、

例外なく滅んでいる」という歴史学者

言葉がありますが、中国の長い歴史は、

王朝交代の歴史であるとともに、

異民族が侵略により王朝を建てたことが

何度もあります。歴代王朝で、

漢民族が皇帝というのは意外と少ないです。

神話はその民族の成り立ちと密接に

関わっているため、歴史的な特徴から、

歴史の主役は人であって、

神になりにくいようです。

一方、王朝交代が一度も無い日本とは対照的です。

祀られている神々は、ほとんどが道教の神であって、

中国神話の神々ではないです。

道教の神々は、黄帝老子関羽

神格化されたり、後の時代になって

道教の哲学の中から神格化されたものが多く、

中国神話から出たものではありません。

仏教、儒教道教が三教とされていますが、

儒教はそもそも宗教というより、

哲学や思想に近いです。

仏教は、古代中国であれだけ隆盛を

極めたにもかかわらず、現代中国では

信仰者は驚くほど少なく、伝統ある仏閣も、

観光地化しています。

それに比べて、道教は、漢民族に広く定着していて、

中国国外の漢民族社会にも広がっています。

2回に渡って、中国の霊獣(神獣ともいう)について紹介してきました。

今回は、さらにその続編です。

1. 白澤(はくたく、バイザァ)

東望山(江蘇省徐州市銅山区)に白澤という獣が住んでいたという。

頭には牛のような二本角があり、下顎には山羊のような髭を蓄え、

眼が額にもう一つあり、更に胴体の側面に眼が三つあり、

もう片方の側面にも三つあるとすれば合計で九つの眼を持っている。

白澤は人間の言葉を操り、そのときの為政者が有徳であれば姿をみせたと言う。

そのような生態から、白澤麒麟鳳凰などと同類の瑞獣とみなされる。

白澤は徳の高い為政者の治世に姿を現すとされることと、

病魔よけになると信じられていることから、

為政者は身近に白澤に関するものを置いた。

中国の皇帝は護衛隊の先頭に「白澤旗」を掲げたといわれる。

2. 獬豸(かいち、シエジィ)

大きいものは牛、小さいものはヒツジに似ているとされる。

頭の真ん中には長い一角を持つことから一角獣とも呼ばれ、

この角を折った者は死ぬと言われる。

人の紛争が起きると、角を使って

理が通っていない一方を突き倒す。

次第に獬豸はより正義感のある性格付け

がなされてゆき、正義や公正を象徴する

祥獣(瑞獣の一種)となった。

古代中国では法律を執行する役人が

被った帽子(法冠)に獬豸が飾られ、

獬豸冠と称した。

清の時代の役人の着物にも獬豸が刺繍されていた。

日本の狛犬の起源ともされる。

3.九尾狐

9本の尾をもつキツネの霊獣である。

時の皇帝の徳が良いと世の中に

現われる瑞獣の一つとして記されているほか、

「九」という数字は子孫繁栄を

示しているともあり、陽数を持った

瑞兆を示す霊獣であるとしている。

この九尾狐は、日本では霊獣ではなく、

妖怪として伝承されている。

古代中国の傾国の美女とされる妲己や褒姒は、

九尾狐が化けたものであるとされ、

その後、少女に化けた上で、

吉備真備遣唐使を務めた遣唐使船に乗り、

日本にたどり着いたという。

そして、最初は藻女(みくずめ)と呼ばれたとされ、

子に恵まれない夫婦の手で大切に育てられ、美しく成長した。

18歳で宮中で仕え、のちに鳥羽上皇

仕える女官となって玉藻前と呼ばれる。

その美貌と博識から次第に鳥羽上皇に寵愛されるようになった。

しかし、鳥羽上皇が日に日に病に伏せるようになり、

陰陽師である安倍泰成が、その原因は玉藻前

仕業と見抜き、呪文を唱えると、

玉藻前九尾狐となり、宮中を脱走したという。

ちなみに、『地獄先生ぬ~べ~』に出てくる妖狐玉藻は、

この九尾の狐が名前の由来のようです。

さて、宮中を脱走した九尾狐は、

安倍泰成が指揮する討伐軍に追い詰められ、

息絶え、巨大な石に変化し、

近づく人間や動物の命を奪うことから、

殺生石と恐れられるようになりました。

この殺生石は、栃木県那須市に今もあり、

国や県の名勝として登録され、観光名所となっていて、

毎年、那須九尾まつりが開催されています、、、

が、なんとこの殺生石、2022年に真っ二つに

割れていたことが発見され、

大きな話題となり、地元で慰霊祭と

平和祈願祭が行われました。

前回は、四神を取り上げましたが、

中国の伝説上の生きもので有名なものと言えば、

やはり、次は**鳳凰**でしょうか。

伝説上の生き物のことを、霊獣と言ったりしますが、

今回は、それらの中で特別な**瑞獣**を取り上げます。

中国語では、神獣(しんじゅう、シェンショウ)と言います。

瑞獣(ずいじゅう、ルイショウ)

**瑞獣**は、古代中国で、動物達の長とされ、

中でも四大霊獣が有名で、瑞兆(良いことが起こる前兆)

として姿を現すとされています。中国では、

代表的なものとして、四大~~とまとめられるのですが、

その四種類はどれが該当するのかに諸説あります。

ここでは、最も有名なものを紹介します。

キリンビールの由来となっている霊獣です。

仁政を行う君主の元に現れるとされています。

以前、大河ドラマで「麒麟が来る」という

タイトルの由来にもなっていましたね。

徳の高い君主による平安な治世か、優れた知性を持つ人が

生まれると姿を現すとされる五色の霊鳥です。

日本では、平等院鳳凰堂の名前や、

金閣寺鳳凰が有名ですね。ちなみに、

鳳凰と不死鳥(フェニックス)は、似てますが別のものです。

中国では、実は龍は1種類ではなく、複数あります。

四大瑞獣に分類されるのは応龍で、

古代、**黄帝**に仕えていたとされます。

黄帝が、乱を起した蚩尤(しゆう、チーヨウ)と争った時、

嵐を起こして、**黄帝**を支援したものの、

この戦いで殺生を行ったため邪気を帯び、

天界に戻れなくなり、以降は、中国南方に棲むようになり、

このため、中国の南方には雨が多いのだとか。

四神の**黄龍瑞獣応龍**の違いで分かりやすいのは、

黄龍は5本爪で、応龍は3本爪ということです。

ですので、中国の皇帝の服は黄色で、龍の爪は5本です。

中国語では、「五爪天子,四爪諸侯,三爪大夫」と言って、

5本爪の龍は皇帝を象徴するもので、

他の諸侯や大夫は5本爪の龍を許されていません。

ちなみに、ドラゴンボール神龍は4本爪です。

さて、は皇帝の象徴、**鳳凰**は皇后の象徴とされたことから、

現代中国においても、男性の名前には龍、

女性の名前に鳳凰を付けることがしばしばあります。

ブルースリーの中国名は李小龍(リーシャオロン)で、

ジャッキーチェンは成龍(チェンロン)です。

四神にも玄武という亀がいますが、霊獣にも

**霊亀**という亀がいます。これは、亀は長寿であり、

祭祀にも用いられたことから、長寿の亀は霊力を

持つとされました、亀は千年生きれば毛が生え、

五千年越せば神亀となり、万年生きれば霊亀

呼ばれます。そして、霊亀は、背に不老不死の

仙人が住むという蓬莱山を背負うほど巨大なものとなります。

黄龍応龍玄武と**霊亀**と、

少し似た霊獣が出てきましたが、もう一度まとめますと、

四神或いは五神・・・四象を具現化した霊獣で、

四方位を守護、或いは季節などを現す。

・**四大瑞獣**・・・動物たちの長に位置し、

瑞兆の時に現れるとされる。

です。

中国では、神話よりも様々な伝説や、

ことわざの由来となった故事などの方が有名で、

古代から現代日本にまで影響を与えています。

今回は、中国の伝説上の四神と霊獣について紹介します。

四神(ししん、スゥシェン)

四神とは、青龍(蒼龍)、白虎朱雀玄武の霊獣のことです。

三国志関羽の武器である青龍偃月刀、幕末の会津藩白虎隊

平安京の**朱雀門**などの名前の由来にもなっています。

ちなみに、日本では、中国の刀のことを青龍刀と言うことがありますが、

中国語で正しくは、柳葉刀(りゅうようとう、リュウイェダオ)です。

さて、四神は、元々、四書五経の中の

易経』で四象が起源とされています。

易経』は、古代中国の陰陽、**四象八卦**から、

森羅万象を解明するという一種の哲学書であり、

**四象**とは、太陽、小陽、少陰、太陰を指し、

四季、方位などを指します。

ここからが面白いのですが、この抽象的な

概念であった**四象**に獣としての実態を持たせて

わかりやすくしたのが四神です。

四神→霊獣・・・方位、五行、色、季節

〇太陽→朱雀・・・南、火、赤、夏

〇小陽→白虎・・・西、金、白、秋

〇少陰→青龍・・・東、木、緑、春

〇太陰→玄武・・・北、水、黒、冬

さらに、これらの中央に、**黄龍**を位置づけ、五神とし、

〇中央→**黄龍**・・・中央、土、黄、土用

が加わることがあります。

黄龍は、四神の長とされることから、

古代中国では、皇帝を象徴するものとして、

龍や黄色が皇帝の服装や装飾品に用いられました。

古代日本において、平安京が都とされたのは、

その地形が「四神相応」に合致していたことが挙げられます。

・東(青龍):大文字山

・西(白虎):嵐山

・南(朱雀):巨椋(おぐら)池

・北(玄武):丹波高地

現在では、巨椋池は、干拓工事などによって消失していますが、

「京都の五社」と呼ばれる神社が、四神に位置付けられています。

八坂神社白虎松尾大社

朱雀城南宮玄武上賀茂神社(賀茂別雷神社)であり、

その四神の中心を司っているのが平安神宮です。

・城南宮 京都五社めぐり:https://www.jonangu.com/gosyameguri.html

夏が暑くて冬は寒い、しかも外から攻めやすく守りにくい

という京都ですが、都が置かれたのは、

古代の陰陽五行の影響が大きかったようです。

中国神話を、過去2回紹介してきました。

第1回目に紹介した三皇のうち、

女媧伏羲については、

兄妹とも、夫婦とも伝えられ、

この神話の言い伝え内容(設定?)がはっきりしないところがあります。

さらに、ここからもっと不思議な話があります。

仮に兄妹だとすると、その親や創造主に

位置づけられる神は誰なのかということです。

伏羲については、

西北にある華胥の国(かしょのくに)の娘が

雷沢(らいたく)の地で大きな足跡を踏み、

その時に宿した子が伏羲であったとされています。

との言い伝えがあります。ということは、

人類創造前に、人類が居たのか、

これらは神代のことなのかがわかりません。

華胥の国は、後の**黄帝**が、昼寝の夢に見た理想郷とされ、

為政者はなく、人々は自然に従って行き、

欲望がなく、とても長寿で、

よく治まっていたとされています。

ここから、華胥の夢という言葉は、

心地よい昼寝を指す言葉の由来とされています。

さて、大きな足跡を踏んで、

子を宿したという不思議なエピソードですが、

実は、周王朝、姫氏の祖先とされる

后稷(こうしょく)も、**姜嫄**(きょうげん)という女性が、

野に出て、巨人の足跡を見て、面白がり、

これを踏んだところ、

子(后稷)を宿したとのエピソードがあります。

これら2つの神話のエピソードからすると、

神の時代と人類創造の間に、巨人の存在が

うかがえるような内容です。

また、別の神話には、龍伯国(りゅうはくこく)

という龍伯という巨人が住む国の存在が紹介されています。

一方、旧約聖書の中には、神と人間とのハーフとして、

ネフィリムという巨人が「人類が繫栄する前に

大地を支配していた。お互い争って滅んだ」

と紹介されています。

各国に、巨人伝説が存在しますが、

中国神話にも巨人伝説が垣間見えるのが面白いです。

中国の神話は、『史記』、『山海経』、

列子』などで紹介されています。

日本のように『古事記』『日本書紀』、

キリスト教の『聖書』のように、

体系化されておらず、言い伝えを

まとめられたものなので、諸説ありという状態です。