星条旗とダビデの星:ホワイトハウスで政権幹部に直談判 ユダヤ教指導者が語る舞台裏 | 毎日新聞 (original) (raw)

ユダヤ教聖職者のリーバイ・シェムトフ氏=米ワシントンで2024年6月5日、松井聡撮影

ユダヤ教聖職者のリーバイ・シェムトフ氏=米ワシントンで2024年6月5日、松井聡撮影

イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区最南部ラファで、軍事作戦を徐々に拡大していた5月13日。米国のユダヤ教指導者(ラビ)で軍事作戦を支持するリーバイ・シェムトフ氏は、ホワイトハウスの一室にいた。

出席者と向き合っていたのは、イスラエルの後ろ盾となってきたバイデン政権のファイナー米大統領副補佐官(国家安全保障担当)。ユダヤ系の有力者らは定期的にホワイトハウスに招かれ、政府高官と非公開で意見交換しているのだ。

パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘を巡り、米国とイスラエルの親密な関係が注目されています。米国内では若者を中心に変化を求める声があり、米大統領選への影響も指摘されます。米ユダヤ系社会の動きを中心に両国関係をひもときます。
第1回 米ユダヤ系団体が仕掛ける「落選運動」 涙のむ親パレスチナ候補
第2回 ホワイトハウスで政権幹部に直談判 ユダヤ教指導者が語る舞台裏
第3回 ユダヤ系市民に広がる「分断」 ガザ紛争が拍車
第4回 「イスラエルは真珠湾と同じ」 米キリスト教右派が共鳴する理由
第5回 パレスチナ学生と「財布」 板挟みになる米有力大
第6回 親イスラエルと親パレスチナ 「主戦場」のSNSを巡る攻防

問題になった「報道」

この日の話題の一つは、直前に米紙ワシントン・ポストが報じたスクープ記事だった。「ラファへの本格侵攻に反対するバイデン政権は、イスラエルが侵攻を自制すれば機密情報を提供する」。裏を返せば、イスラエルの後ろ盾となってきたはずのバイデン政権が、これまではイスラエルに機密情報を提供してこなかったということだ。軍事作戦の支持者からすれば、到底受け入れられなかった。

「この報道は事実なのでしょうか」。シェムトフ氏はおもむろに切り出した。ファイナー氏が「事実ではありません」と即答すると、シェムトフ氏は「それでは、マスコミに報道が事実ではないと伝える必要がありますね」と迫った。

この会合後間もなく、ホワイトハウスは「米政府はイスラエルに現在も機密情報を提供している」と報道を否定する声明を出した。

「ホワイトハウスのラビ」「キャピトルヒル(連邦議会)のラビ」――。シェムトフ氏は政界とのつながりの強さからこう呼ばれ、ホワイトハウスで毎年行われるユダヤ教の光の祭り「ハヌカ」も取り仕切る。

超党派で関係深める

その人脈は民主、共和両党にまたがり、バイデン大統領のほか、トランプ氏、オバマ氏ら歴代大統領とも長年親交を温めてきた。ユダヤ教徒であるトランプ氏の長女イバンカ氏とその夫クシュナー氏はワシントンに住んでいた当時、シェムトフ氏のシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝施設)の信徒だった。

「30年以上政界と関わっていますが、大切なのは党派を超えて人脈をつくることです。常にそのバランスを気遣ってきました」。ワシントンの大使館が集まる一…