星条旗とダビデの星:親パレスチナ学生と「財布」 板挟みになる米有力大 | 毎日新聞 (original) (raw)

米ジョージ・ワシントン大で行われた親パレスチナのデモ=ワシントンで2024年4月25日、松井聡撮影

米ジョージ・ワシントン大で行われた親パレスチナのデモ=ワシントンで2024年4月25日、松井聡撮影

パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエル軍による戦闘で人道危機が深刻化していた4月25日夕、首都ワシントンにあるジョージ・ワシントン大のキャンパスでは、親パレスチナのデモが行われていた。

パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘を巡り、米国とイスラエルの親密な関係が注目されています。米国内では若者を中心に変化を求める声があり、米大統領選への影響も指摘されます。米ユダヤ系社会の動きを中心に両国関係をひもときます。
第1回 米ユダヤ系団体が仕掛ける「落選運動」 涙のむ親パレスチナ候補
第2回 ホワイトハウスで政権幹部に直談判 ユダヤ教指導者が語る舞台裏
第3回 ユダヤ系市民に広がる「分断」 ガザ紛争が拍車
第4回 「イスラエルは真珠湾と同じ」 米キリスト教右派が共鳴する理由
第5回 パレスチナ学生と「財布」 板挟みになる米有力大
第6回 親イスラエルと親パレスチナ 「主戦場」のSNSを巡る攻防

「イスラエルはすぐに停戦しろ!」。数百人の学生らが大声を上げる脇で、米国とイスラエルの国旗が合わさった旗を掲げる男子学生2人がいた。

記者が声をかけると、そのうち1人はユダヤ系で、こう言い切った。「最近はキャンパス内でも襲われるのではないかという恐怖感がある。だから今日は勇気を振り絞って旗を掲げて、デモに反対する姿勢を示した。そもそもの発端はハマスが攻撃して人質を取ったからだ。このデモは明らかに反ユダヤ主義だ」

この学生は普段、キッパ(ユダヤ教徒の小さい帽子)の上に野球帽をかぶって、ユダヤ系であることを隠してキャンパス内で過ごしている。「なぜ我々がおびえて暮らさなければいけないのか。ユダヤ人であることは罪ではないはずだ」。結局、同大でのデモは5月に入って警官隊に排除された。

全米の大学に広がるデモ排除

デモの強制排除は他の大学でも相次いだ。デモが全米に拡大する「震源地」となったニューヨークのコロンビア大でも4~5月に数百人の逮捕者を出し、大学当局の要請を受けて一時すべての出入り口には警官隊が配備された。

キャンパスへの警察介入にはユダヤ系学生の反応も割れた。「私はとても不安に感じていました。心強いです」と警官隊に声をかける学生がいた一方、別の学生は「私は抗議デモに反ユダヤ主義の雰囲気は感じなかった。警察の介入はやり過ぎだ」と疑問視した。

親パレスチナは反ユダヤ主義か――。米メディアではこうした「問い」が度々取り上げられている。

有力ユダヤ系団体「名誉毀損(きそん)防止同盟」(ADL)が全米のユダヤ系大学生を対象に実施した調査によれば、昨年10月のハマスとイスラエルの戦闘開始を受け、73%が学内で反ユダヤ主義を経験したり見たりしたと回答。自分がユダヤ系であることを学内で知られても平気だと答えた人の割合は、戦闘開始前からほぼ半…